05. 金融・経済全般

震災後の円高

大震災後に円高が進んだ背景として、
「保険会社が多額の保険金支払いに備え、海外資産の売却を進める」
という話を耳にします。

それはないだろう、というのが私の見解です。

例えば損保です。

地震保険の責任限度額は政府分を入れると5.5兆円。
このうち元受会社の負担分は0.6兆円にすぎません。
これに地震火災費用保険、企業保険の一部がどの程度加わるかどうか。

しかも、請求は一気にというよりは五月雨式に来ますし、
請求があれば即支払いというものでもありません
(もちろん可能な限り迅速な支払いは求められますが)。

再保険からの回収には時間差があり
一時的な資金負担は考えられるとしても、
昨年度末の現預金・コールローンの残高は1.2兆円、
国債も4.4兆円あります(インシュアランス統計号より)。
加えて毎月の収入保険料や当座貸越等も活用できます。

他方、損保が保有する外国証券は4.4兆円です(同)。
このなかには円建外債やヘッジ付きもあるでしょうし、
そもそも外国為替市場の規模は1日100兆円単位ということを
忘れてはなりません。

生保については、より現実的な話ではありません。

仮に数万人への支払いだったとしても
数百億円から数千億円というオーダーにしかならず、
生保が保有する流動性の高い資産残高
(現預金・コールローンは約7兆円、国債は12兆円)
を考えると、ほとんど問題になりません。

また、生保の外国証券残高は数十兆円になるものの、
公表資料によると、ヘッジ付きがかなりを占めています。
強いストレスを受けたのは日本なので、
海外資産を一気に手放す理由がありません。

円高の背景はよくわかりませんが、こうしてみると、
少なくとも保険会社が「犯人」ではないように思えます。
いかがでしょうか?

 

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林原の倒産

 

岡山を代表する優良企業と言われていた林原が
2/2に会社更生法の適用を申請しました。

林原は不動産で稼ぎ、研究開発に投資するといった
同族企業ならではの事業構造だったようです。
これが甘味料「トレハロース」や抗がん剤「インターフェロン」など
世界的な発明につながっています。

しかし、不動産投資や研究開発費が過剰債務となり、
さらに、多額の簿外債務など不正経理問題も発覚し、
経営が行き詰まった模様です。

ERMという観点から林原の倒産をみると、
やはりガバナンスの欠如ということになるのでしょうね。

非上場の同族企業で、社長は就任してから50年にもなります。
メインバンクの中国銀行は林原が10%強の大株主です。
外部チェックが入りにくかったのは明らかでしょう。
会計監査人も置いていなかったそうです
(銀行は何をしていたのでしょうか?)。

よくある話と言えばそれまでですが、
ある程度の社会的存在になると、それでは済まないでしょう。

※地元・大倉山の梅林です(下の写真は大倉山記念館)。

 

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S&Pの日本国債格下げ

 

27日の夕方にこのニュースを聞いた時、
AA水準にとどまったうえ、アウトルックが「安定的」だったため、
「やっぱりね」といった程度の感想でした。

市場関係者の多くも同じような反応だったようです。
ですから、ここまで大きく報道されるとは予想外でした。

今回の格下げ報道を、与野党の政治家が警告と受け止め、
財政再建に向けた議論を促す効果があるのであれば、
むしろポジティブな話かもしれませんね。

ただ、「疎い」発言の揚げ足取りに終わってしまう可能性も
否定できません。

S&Pは発表分のなかで、

「連立与党が参議院選挙で過半数議席を確保できなかったこともあり、
 民主党政権には債務問題に対する一貫した戦略が欠けている」

「国債発行額の承認を含めた、2011年度予算案と関連法案が
 国会の承認を得られない可能性さえあるとS&Pはみている」

と、政治の混乱を格下げ要因のひとつに挙げています。
単に政府の借金が増えたから格下げ、ではないのですね。

財政健全化への道筋を示せるかどうか。
自分の子孫にこれ以上つけを回すのは勘弁してほしいです。

※今年は富士山がよく見えますね。

 

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ハッピーベンダー事業

 

テレビで自動販売機(飲料)の契約トラブルの話をみました。

詳しくはこちら(毎日放送HPへ)

通常の自販機ビジネスは、飲料メーカーが設置場所を借り、
設置先は場所代として手数料を受け取るというものです。

一方、A社が提供する「ハッピーベンダー事業」では、
個人・法人が自販機のオーナー(リース契約を結ぶ)となり、
A社の支援のもとで、自販機事業の運営をします。

番組によると、このA社は、

「ほとんど赤字にならない」
「高い収益をあげることができるサイドビジネス」

として、事業主を募集していたようです。

ところが、実際には自販機の大半が赤字となり、
事業主にはリース料の支払い負担だけが残る事態が相次ぎ、
トラブルになっているとのこと。

このハッピーベンダー事業のポイントは
「リース契約」だと思います。

契約した事業主はおそらく、月々の収入と支払いを比べて、
「リスクが少ない」「魅力的なサイドビジネス」と判断したのでしょう。

しかし、リース契約の本質は、物を介した「借り入れ」です。
100万円の自販機のリース契約を結ぶということは、
100万円の借金をして自販機を買ったのと大差ありません。
ここが理解されていたのかどうか。

たぶん、「借金して自販機のオーナーになりませんか」
と言われていたら、契約しなかった人も多かったのではないでしょうか。

A社の行為が法的にどうなのかはわかりません。
ただ、改めて金融の基本的な知識の重要さを感じました。

学校でパソコンの使い方を教えるくらいなら、
基本的な金融教育をもっとやったほうが有益でしょうね。

※写真は年末に訪れた「姨捨駅」です。
 まるで展望台のような駅でした。おすすめです。

 

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農協からの信共分離

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政府の行政刷新会議「規制・制度改革に関する分科会」では
JA(農協)から金融(信用)事業、保険(共済)事業を分離し、
農業関係の事業に専念させる改革を検討するそうです。

2008年度のJA部門別損益(770組合の合計)をみると、
信用事業(2143億円)と共済事業(1712億円)の黒字で
購買、販売、指導といった農業関連事業の赤字を補い、
2189億円の当期利益を計上しています。
このような損益構造は08年度だけではありません。

JAの信用事業は組合員から貯金を集め、貸出を行います。
貯貸率は3割弱にすぎず、多くは信連への預金に回ります。
貯金・預金の利ざやは資金運用収益の半分を占めており、
信連や農林中金の運用益が信用事業を支えているのです。

他方、共済事業はJA共済連との共同引受とはいえ、
JAでは引受リスクを負わず、販売に特化しています。
つまり、共済事業は実質的に手数料ビジネスです。

こうして見ると、信共分離のハードルは高そうですが、
やはり気になるのがJAのガバナンスの問題です。

JAは協同組織であり、組合員のために存在します。
ただ、同じ組合員でも、貯金者や共済加入者と、
農業関連事業の利用者ではJAに求めるものが違うはず。

例えば、共済加入者にとって、掛け金は安いほうがいいでしょう。
しかし、JAの経営を考えれば掛け金が安くなると、
JAに入ってくる手数料(付加掛金)が減ってしまいます。

兼業農家が圧倒的に多く、かつ、准組合員も多い
(組合員の約半数が准組合員です)なかで、
貯金者や共済加入者の利益が十分守られているのか、
今後の議論に期待しましょう。

※いつもの通り、個人的なコメントということでお願いします。

※左は丸の内、右は新横浜の駅ビルです。

 

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金融システムレポート

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先日(9/28)日本銀行が「金融システムレポート」を発表しました。

ここ数年、日銀は半年に1度のペースで同レポートを出しています。
足元の金融システムについて様々な分析があり、参考になります。
日銀HPへ

今回のレポートに、「蓄積が進む金利リスク」という分析がありました。
銀行による国債保有残高はすでに100兆円を超え、
金利リスク量(ここでは100bpv)も増えているというものです。

特に地域銀行での増加が顕著で、
100bpvは自己資本(TierⅠ)の30%に達しています。
平均残存期間をみると、大手行が2年程度まで短期化する一方、
地域銀行はむしろ残存期間を伸ばしています(3.5年超)。

もちろん、流動性預金の残存期間をどう見るか、
つまり、平均残存期間を1、2カ月とみるか、あるいは、
コア預金を踏まえ、例えば5年程度とみるかによって、
金利リスクの評価は全く異なります。

しかし、残存期間を5年程度とみる前提は、
「低金利が続き、資金移動が低調」というものです。
この前提が崩れることはないのでしょうか。
生保の負債とはかなり特性が異なるように思うのですが。

そうだとすると、やはり地域銀行の金利リスクは
もはや無視できる状況ではないのかもしれません。

※いつもの通り、個人的なコメントということでご理解下さい。

※この週末は地元のお祭りでした。
 ただ、残念ながら今回は所用につき不参加でした。
 数年前に雨の中おみこしを延々と担いだのを思い出します。

 

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交通系電子マネー

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JR東日本の「スイカ」と関東私鉄の「パスモ」による
決済が伸びているという報道がありました(28日の日経)。
8月の総決済件数は「スイカ」が前年比で40%増、
「パスモ」が37%増です。
猛暑の影響で、駅で飲料を購入する人が増えたとか。

もう少し調べてみると、7月のデータですが、
「スイカ」「パスモ」合計の月間利用件数は5565万件と、
1年前から30%増えています。

ただし、発行枚数が4655万枚なので、
1枚当りの利用件数は月1.2件となります(1年前は1.1件)。

依然として「スイカ」「パスモ」を乗車券(定期券など)としてのみ
使っている人が大部分を占めているのだとは思いますが、
他方で、日常的に電子マネーを小口決済の中心としている
ユーザーも一定程度存在するということなのでしょう。
利用者の裾野も広がってきているように感じます。

おそらく、小銭を持ち歩かない人はまだまだ少数派でしょう。
ただ、コンビニや自販機を中心に、利用できるところがかなり増えたので、
1枚当りの利用件数は今後もしばらく伸び続けるのではないでしょうか。

かく言う私はまだ小銭派です。
コンビニや自販機ではたまにしか買い物をしない
(近所のスーパーでは「パスモ」が使えません)
ということもありますが、古い人なのかもしれません^^

※写真は大黒埠頭側から見た横浜ベイブリッジです。

 

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低金利貸出の増加

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バーゼル銀行委員会による新たな自己資本規制は
2013年から2019年にかけて段階的に実施される方向となりました。
銀行は大規模な増資や資産圧縮に動く必要はなくなりましたが、
毎期の利益から内部留保を積み上げていかなければなりません。

しかし、長引く低金利の影響に加え、低迷する資金需要、
激しい金利競争などの結果、銀行の低金利貸出が増えています。
日本銀行の統計をみると、国内銀行の貸出に占める
金利1%未満の貸出は全体の25%に達しています。

10年前であれば、金利3%以上の貸出は全体の15%、
5年前でも全体の10%はありました。
それが、直近では全体の7%まで下がっています。

すでに調達金利はほとんど下がる余地はないでしょうし、
クレジットコストも無視できません。
日本の銀行はどうやって利益を上げていくのでしょうか。

※写真は金沢の歴史的町並みです。

 

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初のペイオフ発動

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日本振興銀行が経営破綻し、一定額(元本1000万円とその利息)
を超える預金者に影響が生じることとなりました。
保護されない預金者が出るのは現行制度になって初めてことです。

すべての破綻処理でペイオフが発動されるわけではないにせよ、
預金削減が現実に起こりうる世の中になったことが示されました。

もっとも、保険会社の破綻処理では銀行等と違い、
以前から契約者負担が基本となっています。

生命保険契約者保護機構の補償対象は保険金額ではなく、
破綻時の責任準備金(正確には全期チルメル式ベース)の
9割ですし、高予定利率契約ではさらに低い水準となります。

加えて、生保は満期や終期までの期間が長いことが多いため、
予定利率引き下げの影響を強く受けます。
特に高予定利率契約の場合、将来受け取る保険金や年金が
大幅に減ってしまいます。

損保も契約者負担がセットです。
自動車保険や個人向け火災保険など、当初3ヶ月間だけは
保険金額が100%補償される種目もあります(詳しくはこちら → 保護機構HPへ)。
しかし、100%補償の対象ではない種目も多いので要注意です。

もちろん、早期発見、早期対応の仕組みが機能することが
重要なのは言うまでもありません。

※写真は金沢です。こんなモダンな駅に生まれ変わっていたのですね。

 

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マイカー保有、初の減少

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7日の日経3面に、世帯当たりの自動車保有台数が
調査開始以来、初めてマイナスになったという記事が載りました。
大都市圏や若年層と40代の減少が目立つとのことです。

せっかくなので元データを見てみると、そもそもこの統計は
新聞にあるように自家用車の保有台数調査ではなく、
総務省が7/30に発表した「平成21年全国消費実態調査」の
「主要耐久消費財に関する結果」ということがわかりました。

総務省統計局HPへ

主要耐久消費財なので、自動車だけではなく、ルームエアコンや
携帯電話、テレビなど40数品目の所有状況を調査しています。
例えば、H16年よりも所有が増えているものとしては、
薄型テレビ(ちなみにブラウン管テレビは大幅に減少)、
携帯電話、ルームエアコン、パソコン、温水洗浄便座などです。

さて、自動車ですが、H元年以降の動きをみると、
軽自動車が伸び続ける一方、小型自動車が減少傾向、
普通自動車と輸入自動車は今回初めて減少となっています。

普通&輸入自動車の減少は景気低迷の影響が大きいのでしょう。
ただ、自動車を保有する世帯(単身世帯を除く)のうち、
約半数が2台以上を保有していることや、
地方や高齢世帯で保有が伸びていることを踏まえると、
自動車は地方の高齢世帯の必需品(おそらく一人一台)
という性格をますます強めているようです。

ちなみに横浜市港北区に家族4人で住んでいる私は
久しく車を所有していません(自転車は4台あります)。
子どもが小さいうちは不便に感じることもありましたが、
今では全くそのようなことはありません。

しかも、車がないと家計が年間70万円助かるという試算もあり
(私の場合)、よほど運転するのが好きでなければ
車を持つ意味はほとんどありません。
おそらくこのような消費者が増えているのでしょう。

 

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