バンコクでの日本の存在感

まずはご案内です。日本証券アナリスト協会の機関誌『証券アナリストジャーナル』9月号の特集は「経済価値ベースのソルベンシー規制の導入の影響」です。武蔵大学・大野先生の解題に続き、以下の論文が掲載されています。

・経済価値ベースのソルベンシー規制─概要と課題(植村信保)
・経済価値ベース指標を活用したERMの高度化(森本祐司)
・新規制下のERM経営─資産運用のリスクテイクとその管理(砂本直樹)
・IAIG向けの規制が日本の生命保険会社に与える影響(増井正幸)

証券アナリストジャーナルで保険分野の特集が組まれるのは珍しいように思います。機会がありましたらぜひご覧ください。

さて、先週に続きバンコク出張に関する話です。今回の訪問でも、2019年の視察の際に訪れた日本人が多く住む地域(高架鉄道BTSのアソーク駅、プロンポン駅、トンロー駅の周辺)に足を運んでみました。

外務省の海外在留邦人数調査統計によると、バンコクに住む日本人は約5万人で、ロサンゼルス都市圏(6万人強)についで世界第2位の規模です。調査の対象は在留期間3か月以上なので、短期滞在を含めるとさらに多くの人が暮らしているのでしょう。
現地では「日本人が減った」という声を何度か耳にしました。過去のデータを見ると、確かに2021年の約6万人をピークに減少に転じています。ただし、この傾向はタイだけではなさそうなので、コロナ禍以降、企業が海外駐在を減らしているとか、現地化を進めているとか、そういった話かもしれません。

5万人もの日本人がいて、かつ、多くの人が特定の地域に住んでいるので、ここではタイ語も英語も使わず、日本語だけで生活できてしまいます。日本人学校には2000人近い児童・生徒が通っていて、日本人向けのスーパー(フジスーパー)も複数あります。日本語OKの病院や薬局も見かけましたし、写真の居酒屋(酔い処あかね)はほとんど日本にいるのと同じ雰囲気でした。
2019年からの変化としては、この地域に限らず、緑色のユニフォームを着たデリバリーサービスのスタッフをあちこちで見かけたことでしょうか。グラブとLINEのサービス(どちらも緑色)が普及しているようです。

もっとも、もう少し長い目で見ると、タイが日系企業の製造拠点であり続けるとしても、もはや労働力が安いからというのではなく、次のステップに来ているのだと思います。中国系など非日系企業との競争も激しくなっているようです。
数日前にジェトロが「正念場を迎える「アジアのデトロイト」(タイ)」というレポートを出していて、このなかで中国企業によるバッテリー式電気自動車(BEV)の販売が増えていることを示しています。

町を歩くと、韓国文化の存在感の高さにも驚かされました。日本もそうですが、タイの若い人はK-POPや韓国ドラマが大好きなようですし、韓国のスターや韓国風(?)のタイ人スターを使った広告をあちこちで見かけました。
日本文化はどこに行ったのかといえば、食とキャラクターではかなり強みを発揮しているようです。先ほどの居酒屋は日本人向けですが、日本の外食チェーンはショッピングモールにいくつもあって、ジャンルも多様でした。キャラクターでは定番のドラえもんやポケモンのほか、モンチッチが大人気とか。

かつてはアジアの先進国は日本だけで、バンコクでは日本の存在感がダントツだったのだと思います。それがいまは、日本が衰退したというよりは、中国や韓国が強力なライバルとして台頭し、しのぎを削る時代になったということなのでしょう。

 

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タイのコロナ保険問題

金融庁が28日にパブコメの結果を公表し、乗合代理店における比較説明・推奨販売の見直し(いわゆるハ方式の廃止)がようやく確定しました。施行まで1年半の経過措置が設けられましたが、金融庁は「顧客の最善の利益を勘案した業務運営を図る観点から、(中略)可能な限り速やかに体制整備を行い、比較推奨販売を適切に実施されることが望ましい」としています。

さて、夏休み期間を利用してタイのバンコクに来ています。バンコク訪問は2019年以来で、このときはこのような記事を書いています。その後のコロナ禍を経て、バンコクはどう変わったのでしょうか。1日歩いただけなので、デジタル化がさらに進んだことくらいしかまだわかりませんが…
ご存じかもしれませんが、タイの損害保険業界はコロナ禍の影響を強く受けました。以前、台湾損保によるコロナ保険の失敗についてこのブログダイヤモンドオンライン(有料会員限定)などでお伝えしましたが、タイでも損害保険会社がコロナ専用保険を大々的に提供し、その後の感染拡大で保険会社が支払いの急増に直面しました。
ただし、台湾損保はグループからの資本増強などで破綻は免れましたが、タイでは大手を含めた複数の保険会社が経営破綻しています。

しかも、この問題は過去の話ではないのですね。タイにも日本の保護機構のようなセーフティネット(損害保険基金)があって、破綻会社の未払いの保険債務を全額肩代わりするしくみのため、基金が多額の未払い債務を抱えてしまいました。財源は保険会社からの供出金だけで、財源不足・人員不足から支払いが滞っているとのこと。保険金を受け取るには10年かかると報じられています。
そもそも台湾と同じく、コロナ専用保険が大人気になった(というか、保険会社がコロナ専用保険を大規模に提供してしまった)というのも興味深いです。もちろん、国が違えば社会保障制度や経済構造なども違うので、単純に比べることはできませんが、参考になることもあるのではと期待しています。

 

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保険会計の見直しは不可欠

8月14日の日経に「生保11社、資本規制クリア(会員限定)」という記事が出ていました。2026年3月期から適用の新規制(いわゆる経済価値ベースのソルベンシー規制)について報じたものです。
規制上のESRを数値の大きい順に並べたり、金利上昇でESRが下がってしまう理由の説明がおかしかったりと突っ込みどころはあるものの、金利変動について資産だけではなく負債もみる新たな指標(ESR)が導入されたときちんと説明する内容でした。一般読者に向けた新規制のまとまった紹介は、自分が関わったダイヤモンドの保険ラボくらいしか見当たらなかったので、この報道を総じてポジティブに受け止めました。

ところが、その数日後(18日)の日経に載ったのが「生保、国内債含み損拡大(会員限定)」という記事です。2026年6月末時点で、主要生保13社の国内債券の含み損が増え、国内株式の含み益を上回ったというもので、「金利上昇、財務圧迫リスク」という副題がついていました。
しかし、金利が上がれば保険負債も小さくなっているはずなのに、この記事ではなぜか資産サイドの国内債含み損だけを強調しています。数日前に報じた経済価値ベースの考え方はどこに行ってしまったのでしょうか。

他方で、記事では債券含み損が実現損となる可能性を指摘します。例えばALMについて触れ、金利上昇でオーバーヘッジを解消しようとすると債券売却損が生じるとしています。さらに、大量解約の発生に伴う債券の売却損を「最大のリスク」としています。
とはいえ、他の理由でも含み損となった債券を売却すれば会計上、損失が出ます。それだけの話です。そもそも含み損が実現損になっても経済価値ベースで見ればニュートラルなので、財務は圧迫されません。
ちなみに新規制の開示情報(感応度分析)をざっと確認したところ、大手生保の場合、円金利の上昇で資産の減少よりも保険負債の減少のほうが大きいようで、オーバーヘッジ状態ではなさそうでした。また、円ベースの平準払い商品はそもそも保障を得るために加入しているので、信用不安でも起きないかぎり、金利上昇で大量解約が起きる可能性はかなり小さいでしょう。一時払いの貯蓄性商品では解約が起きやすいとはいえ、円ベースで低利率の一時払い商品の保険負債を多く抱え、その金利リスクを超長期債でヘッジしている会社は一部だとみています。

2つの記事から言えることは、経済価値ベースの規制が導入され、資産と負債の両方をあわせて見なければならない、資産含み損益だけ見ても意味がないとわかったとしても、現行会計がそのままだと、毎期の決算では経済価値ベースの情報が限られている(あるいは開示していても会計情報を重視してしまう)こともあって、これまでどおりメディアは資産含み損益だけに注目してしまい、かつ、会計上の実現損益への影響をことさら気にしてしまうということです。これは日経だけではありません。国内債の含み損と株式含み益を比べてしまうのも、会計損益への潜在的な影響を意識してのことでしょう。
そもそも現行会計に弱点があり、会計情報では保険会社の経営内容がよくわからないので、新規制では経済価値ベースの考えを採用したわけです。しかし、現行会計をこのままにしておくと、新規制の意義とされる「契約者保護」「保険会社のリスク管理高度化」「消費者・市場関係者への情報提供」の妨げになるということが、図らずも示されたように思います。

※写真は小樽(北海道)です。

 

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自然災害の猛威

保険代理店向けメールマガジンInswatch Vol.1340(2026.8.17)に寄稿した記事を当ブログでもご紹介いたします。千葉の豪雨にもびっくりしました。
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前回の本誌で「2016年の熊本地震を受けて、熊本県では家計向け地震保険の加入率が急上昇する一方、中小企業の多くは地震をカバーする損害保険に加入していない」と書きましたが、まさかその直後に大地震が起きるとは思いませんでした。保険が被災した方々の役に立つといいですね。

火山災害の遺構を見学

今回も大学ネタで恐縮です。リスクと保険を学ぶ植村ゼミでは夏休みを利用して、約35年前に雲仙普賢岳の大規模な噴火による被害を受けた長崎県島原を訪問し、自然災害の猛威や復興の取り組みを見聞きしました。
島原は有明海をはさんで熊本の対岸に位置しており、今回の熊本地震では島原市と雲仙市で震度4、南島原市で震度5強を観測し、市街地の背後の山(眉山)では表層の一部が崩れました。とはいえ、長崎県では熊本のような被害はなく(物が落ちる程度)、ホテルも通常営業でした。
ただし、熊本地震の被災状況が連日報じられ、九州観光が自粛モードとなっているためか、翌日立ち寄った長崎市街には、夏休み期間にもかかわらず観光客の姿が例年よりもやや少なかったように見えました。

災害の猛威

普賢岳の噴火と言えば、多くの報道関係者が犠牲になった1991年6月の火砕流の印象が強いかもしれません。この火砕流では43名の死者・行方不明者が出ました。取材中の報道関係者だけではなく、警戒にあたっていた地元の消防団員や同行したタクシー運転手なども犠牲になりました。
しかし、災害はこの火砕流だけではありませんでした。91年以降、火砕流や土石流が何度も発生し、多くの家屋が被害にあっています。南島原市の道の駅ひまわりの隣りには、土砂に埋もれた被災家屋を災害遺構としてそのまま保存してあります。ふもとの小学校(大野木場小学校)も焼失しました。火砕流の直撃こそ受けなかったものの、学校を熱風が襲い、校舎全体が焼けてしまったそうです(こちらの災害遺構も見学できます)。もちろん、降灰による影響を含め、農地への甚大な被害も出ています。

バスで山のほうを訪れると、火砕流で焼け野原となったところに草木が生えていました。30年以上経って自然に回復したのかと思いきや、そうではありません。焼け野原となった土地が自然に再生するまでには、なんと数百年もの時間がかかるのだそうです。
山肌が見えたままだと、大雨などにより土砂が流れてしまい、災害を招くかもしれません。そこで人の手で種をまき、樹木を植えるなどして、ようやく今の姿になったとのことでした。

地震保険の補償対象

日本列島の周囲では複数のプレートがぶつかり合っていることから、地震も火山も多く、火山噴火による災害は日本中で起きています。もっとも、同じ自然災害でも地震と噴火では特質が異なり、火山災害の場合、いったん噴火が始まると、数日間、数か月間と続くことが多いようです。
なお、噴火による災害が火災保険ではカバーされない一方、地震保険(家計向け)の補償対象というのは、一般の人にとっては盲点かもしれません。島原ではそのようなことも頭をよぎりました。
日本地震再保険によると、当時の普賢岳の噴火では、地震保険の支払いとして247件、12億円強の保険金を支払ったそうです。
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保険モニタリングレポートから

8月6日に金融庁が「2026年 保険モニタリングレポート」を公表しました。いわゆる損保問題への行政対応のほか、不祥事も頻発しているため、保険流通に関する記述が例年よりも多いという印象です。担当者の皆さんが多忙な日々を送ったことがうかがえます。
2025事務年度の保険行政の実績はレポートをご覧いただくとして、ここでは保険流通に関する今後の取組方針の記述を取り上げてみましょう。

保険代理店との適切な関係の構築に向けた対応(生命保険会社)
・過度の便宜供与の防止に向けた社内規則及び管理態勢に沿った業務運営の実態や、保険代理店への出向を継続する生命保険会社に対して、社内規則の内容や社内規則に基づく継続的な出向の適切性の判断・検証の状況についてモニタリングを実施する(10ページ)

営業職員管理態勢の高度化
・生命保険協会による「着眼点」に基づく取組の進展や各社の対応状況を継続的にフォローするとともに、業界全体の取組を後押しする同協会の役割発揮についても確認していく(32ページ)

乗合代理店向け保険商品の販売手数料等に関するモニタリング
(医療保険に係る初年度手数料水準の動向に関する分析結果を踏まえて)
・販売の傾向については、手数料水準だけでなく、新(競合)商品の販売時期や代理店手数料の支払方法のほか、保険代理店における推奨の実態等様々な要素が絡むため、さらなる分析を行い、「代理店手数料と比較推奨販売の関係性」について、引き続きモニタリングを継続していく(38ページ)
・乗合代理店における比較推奨販売やアフターフォローに係る業務負荷の実態のほか、支払タイプの違いによる販売の動向等についてさらなる分析を行い、「代理店手数料と比較推奨販売の関係性」について、引き続きモニタリングを継続していく(40ページ)
・2025事務年度においては医療保険に係る大局的な分析から開始したが、2026事務年度においても引き続き当アンケ-トの分析を深めていく(41ページ)

営業社員等による不適切な金銭の取扱い
・これらの事案については、現在も調査・確認を進めているところであり、その結果を踏まえ、必要な対策について精査していく
・保険契約者等の保護の観点から、生命保険会社における内部管理態勢の実効性や再発防止策の実施状況に加え、業界の自主的な取組についても継続的にモニタリングしていく
(いずれも49ページ)

保険代理店に対するモニタリングの強化に向けて
・改正保険業法の施行を踏まえ、財務局も含めた当局のモニタリング体制を強化し、上乗せ規制が課される保険代理店を中心に、新たな制度に係る各種管理態勢の整備状況等を重点的にモニタリングする
・モニタリングでは、リスクや問題の性質に応じてオンサイト(立入検査)とオフサイト(立入を行わないモニタリング)を適宜組み合わせ、問題が認められた保険代理店に対しては、必要な対応を講じていく
・保険会社が保険代理店の規模、特性を踏まえて適時適切にリスクを検知し対応を図るための管理態勢を構築しているかなど、保険会社による保険代理店管理の実効性に着眼したモニタリングに取り組んでいく
(いずれも49ページ)

なお、今回のコラムは「保険監督を巡る国際的な動向」だけでした。ちなみにレポート25ページの注記には、日本のIAIGsが以下の7社であると記されていました。

・株式会社第一ライフグループ
・東京海上ホールディングス株式会社
・MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス株式会社
・SOMPOホールディングス株式会社
・住友生命保険相互会社
・日本生命保険相互会社
・明治安田生命保険相互会社

※写真は四日市あすなろう鉄道です。

 

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新規制「第3の柱」開示状況

福岡大学では前期の定期試験が終わったところです。
私は「保険論入門」「保険論」の講義を担当しています。定期試験では毎回、語群選択問題を出題の柱としているのですが、それだけだと学生が時間を持て余してしまうので(?)、記述問題もいくつか出しています。
今回は「自動車保険のノンフリート等級制度」「高齢化と生命保険(=責任準備金の存在を問うもの)」「生保と損保のセーフティネットの違い」などを出したところ、どうもセーフティネットの問題は学生にとって難しかったようです。

さて、保険会社のサイトに2026年版のディスクロージャー誌(名称は統合報告書、アニュアルレポートなど)がアップされていますので、主要生損保の新ソルベンシー規制「第3の柱」に関する開示状況を確認してみました(単体ベース)。

日本生命:開示あり
第一生命:10月公表予定(追補版)
住友生命:開示あり
明治安田生命:開示あり
朝日生命:開示あり
太陽生命:開示あり
大同生命:開示あり
フコク生命:10月末までに開示予定
ソニー生命:9月頃開示予定
かんぽ生命:開示あり
アクサ生命:開示あり
アフラック生命:開示あり
プルデンシャル生命:10月末までに開示予定
ジブラルタ生命:10月末までに開示予定
メットライフ生命:10月末までに公表予定
マニュライフ生命:10月末までに追記予定
東京海上日動:10月末までに開示
三井住友海上:10月末までに開示
損保ジャパン:10月末の予定
共栄火災:10月に開示予定

確認した上記20社のうち、開示があったのは9社でした。初年度特例として10月末までに開示すればOKとはいえ、もう少し多くの会社がこのタイミングで開示すると思っていたのですが…
あと、開示はあくまで2025年度末の数値だけなので、変動要因分析はないのですね。利用者からすると、開示初年度にも2期分の開示がほしかったです。

開示内容の分析は後日ということで、まずは採点をがんばらなければ。

※今はゼミ旅行の引率中です。

 

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クロ現『保険金詐欺の闇』

7月21日(火)夜7時半放送のNHKクローズアップ現代「追跡!”空き家”連続放火事件 狙われた火災保険」にゲスト出演しました(28日まではこちらで見逃し配信中です)。
クローズアップ現代へのゲスト出演は2017年2023年についで3回目でした。今回は保険金詐欺がテーマだったので、解説者が私でいいのかとも思いましたが、保険の利用者と提供者のギャップを埋めることを標榜し、一般向けの教養書『保険ビジネス』を世に出したりもしていますので、喜んでお受けすることにしました。

当日は午前中に福岡で授業があったので、午後の便で東京・渋谷のNHKに向かいました。17:30からキャスター(星麻琴さん)を交えた打ち合わせを1時間くらい行った後、リハーサル、本番という流れ。キャスターが代わっても、事前の打ち合わせをしっかり行うところや、関係者全員で番組を作り上げていくところなどは、これまでと全く同じでした。
ただし、途中から出演者が星さんと私だけだったので、話をする時間が多かったのと、最後のまとめはほぼお任せだったので、カウントダウンを見ながら何とかまとめようと、ヒヤヒヤでした。うまく収まってよかったです。

番組では紹介しませんでしたが、日本損害保険協会では「保険金不正請求に関する意識調査」を行っています。
2026年5月に公表された直近の調査結果(PDF)によると、「保険金詐欺をするための保険加入」については82%の人が「社会から許されない」と回答したのに対し、「業者からの教唆による保険金請求」を「許されない」と回答したのは48%でした。「許される」という回答もなんと18%に及んでいて、このうち16-19歳では男性が34%、女性が40%、20代では男性が27%、女性が22%と、若年層ほど「許される」という回答割合が高くなっていました。
また、ケガやレッカー等の架空請求、アフロス契約(事故が起きてから保険に入り、保険金を請求)については7割近い人が「保険金詐欺に該当する」と回答したのに対し、業者からの教唆による保険金請求を「該当する」と答えたのは44%だけ。別の問題でも、「保険金を請求する時に、業者から『経年劣化部分も保険で直せる』と言われたとおりに申告しても、契約者に責任はない」という問いの正答率は34%と低く、保険に対する理解の低さが浮き彫りになっています。

金融リテラシーを高めるには老後の資産形成に関する教育だけではなく、リスクへの備えについてもリテラシーを高める取り組みがもっと必要だと改めて思いました。

 

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書評『戦国日本VSヨーロッパ』

週刊金融財政事情(2026年7月14日号)に載った書評「一人一冊」を当ブログでも紹介します。今回は『戦国日本VSヨーロッパ グローバルヒストリーで読み解く信長・秀吉・家康の対外戦略』を取り上げました。

以下、引用となります。
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教科書には載らない戦国史の事実

長崎観光の定番スポットである大浦天主堂(グラバー園の近く)は、現存する日本最古の教会で、国宝に指定されている。その正式名称は「日本二十六殉教者聖堂」で、16世紀末に豊臣秀吉の命令で処刑された26人の殉教者(1862年に聖人となった)に捧げた教会である。堂内には19世紀に描かれた「日本二十六聖人殉教図」も展示されている。

かつて日本史を学んだ人は、長崎に行ったことがなくても、織田信長と同じくキリスト教を擁護していた秀吉が一転してバテレン(宣教師)追放令を出したことを覚えているだろう。そして前述のとおり、宣教師とキリシタン26人を長崎で処刑したと記憶しているのではないだろうか。
ただし、私たちが学校で学んだ歴史は、キリシタン勢力の拡大に手を焼いていた秀吉による「(日本における)新興宗教への対応」であった。一方、大浦天主堂や隣接するキリシタン博物館の展示は、当然ながら「弾圧を受けた宗教者の目線」によるものだ。いずれも「政治や侵略の色」は薄い。

ところが本書によると、そもそもキリスト教化と植民地化はスペインの海外戦略の両輪で、実際、当時の長崎はイエズス会の支配下にあった。強大な軍事力を持つ日本を武力で征服するのは難しいため、キリシタンを増やし、キリスト教の国にする思惑があった。秀吉はその野望に気付いたため、キリシタン対応を一転させ、その中で殉教事件も起きた。驚くべきことに、スペインがこの事件を口実にして武力に訴え、世界戦争となる可能性もあったという。

本書は、2020年に放送された『NHKスペシャル戦国〜激動の世界と日本〜』を書籍化したものだ。地球規模での人やモノの動き、文化の伝播に着目する「グローバルヒストリー」の視点で戦国史を見直し、この時代の日本が世界史に影響を与える存在だったことを明らかにしている。
例えば、戦国最後の戦いである大坂の陣(1614〜15年)で、徳川方がオランダ製やイギリス製の大砲を使ったことはよく知られている。では、「豊臣方にカトリック勢力が協力した」「徳川方の勝利に貢献したオランダが日本の銀を得てスペインに対抗した」「平和になった日本で失業した侍をオランダが傭兵として植民地争奪戦に活用した」といった話をご存じだろうか。

本書には資料に裏打ちされた興味深い話が次々と登場する。戦国日本は、豊富な鉱山資源を持ち軍事的にも強大で、世界史の最前線にいたのだと分かる。
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中小企業の地震リスク対応

保険代理店向けメールマガジンInswatch Vol.1336(2026.7.13)に寄稿した記事を当ブログでもご紹介いたします。写真は昨年ゼミで訪問した熊本地震の現場です。
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中小企業の地震保険加入率は低い

先日、私のゼミ(大学3年生と4年生の約20名)で、熊本に本拠を置く保険代理店の皆さんに熊本地震の体験を踏まえた講義を行っていただきました。その際に、2016年の熊本地震を受けて、熊本県では家計向け地震保険の加入率が急上昇する一方、中小企業の多くは地震をカバーする損害保険に加入していないという話になりました。
日本損害保険協会は21年から中小企業を対象に「リスク意識・対策実態調査」を行っています。直近の25年調査によると、企業を取り巻くリスクとして多くの会社が「自然災害(地震・風水災等)」を挙げ、約8割が地震危険補償特約を「知っている」「聞いたことがある」と回答したにもかかわらず、勤務先が地震危険補償特約に加入している割合は30.9%でした。しかも、調査のたびに加入割合が下がる傾向にあります。
参考までに、火災保険は58.6%、休業補償保険は11.3%、会社役員賠償責任保険は9.1%、サイバー保険は8.8%でした。

自分のところは大丈夫

調査では、地震をカバーする保険に加入していない理由も聞いています。回答の上位は「わからない・特に理由はない(38.2%)」「リスクが発生する可能性は低いと考えているため(26.0%)」「対策をする費用に余裕がないため(10.5%)」「リスクによって生じる影響・損失がわからないため(8.0%)」となっていて、火災保険と同じ傾向でした。
興味深いことに、21年調査や22年調査では「対策をする費用に余裕がないため」という回答が、「リスクが発生する可能性は低いと考えているため」を上回っていて、「保険料を他のことに使いたいから」という回答も上位を占めていました。当時は新型コロナ禍の影響で業況が悪く、当時に比べれば業況が回復したということでしょうか。
22年3月の福島県沖地震、24年1月の能登半島地震のように、その後も多額の保険金を支払うような地震が発生しています。「リスクが発生する可能性は低いと考えているため」という回答は、単に「自分のところは大丈夫だろう」というだけで、地震リスクをそれほど深刻に受け止めていないのかもしれません。

公助への過度な期待?

中小企業が地震リスクをそれほど深刻に受け止めない背景の1つとして、おそらく「何かあったら政府が助けてくれる」という意識もあるのではないかと見ています。
熊本地震では、被災した中小企業の施設・設備の復旧を支援するグループ補助金が提供されました。復興のリード役となりうる2社以上がグループを構成して復興事業計画を策定し、県の認定を受ければ、復旧費用の75%の支援を受けられる制度でした。能登半島地震でも、補助率75%の「なりわい再建支援補助金」があり、さらに、自己負担分に使える5年間無利子の特別融資もありました。
補助金申請には一定のハードルがあるとはいえ、こうした近年の事例が、結果として公助への過度な期待を生じさせている可能性はありそうです(チャリティ・ハザードと言います)。公助には限界があり、自助を促すような公助のあり方を模索すべきなのでしょう。
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生命保険の加入状況

大学のゼミの関係で、生命保険文化センターによる「生活保障に関する調査」で生命保険の加入状況について確認する機会がありました。
生命保険の加入状況の調査といえば、同じく生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」が有名ですが、「生活保障に関する調査」でも個人ベースの加入状況を調査しています。いずれも3年おきの調査です。

例えば次のようなことがわかります。

【加入率】
・2025年の生命保険・生命共済の加入率(個人年金やグループ保険を除く)は80.0%で、この20年間は概ね横ばいで推移。
・いわゆる保障中核層にあたる30代男性、40代男性の加入率がいずれも低下傾向なのに対し、60代男性と60代女性の加入率が上昇傾向。

【2025年の加入状況・加入意向】
・払込保険料(一時払を除く生命保険・個人年金)は平均17.8万円で、一貫して減少傾向が続く。
・生命保険加入金額は996万円(男性1,439万円、女性661万円)で、一貫して減少傾向が続く。
・他方、必要と考える死亡保険金は30代男性が平均3,025万円、40代男性が2,728万円。
・死亡保障に対して「準備意向あり」は、30代男性が67.6%、40代男性が74.1%と意外に高い。

【直近加入契約の加入のきっかけ】
・30代男性、40段男性は「家族や友人などにすすめられて」「結婚をしたので」「子どもが誕生したので」などが上位。
・60代男性、70代男性、70代女性は「営業職員や窓口ですすめられて」がトップ。

【直近加入契約の加入チャネル】
・男女ともに「営業職員」がトップだが、30代男性と40代男性は「保険代理店」も多い。50代男性と60代男性は「営業職員」が回答の過半数。
・情報入手経路でも、50代男性と60代男性は約4割が「営業職員」と回答。
・今後の加入意向のあるチャネルは、50代男性と60代男性・女性は「営業職員」で、他の年代は「営業職員」「通信販売」「保険代理店」が拮抗。

以上、ざっとデータを眺めたところ、営業職員チャネルは30代や40代にうまくアクセスできておらず、チャネルとしての認知度も必ずしも高くはなく、結果として営業活動の中心が50代以上(おそらく既契約者が中心)となっているようです。だから一時払終身なのでしょう。
営業職員への回帰どころか、ビジネスモデルの機能不全が着実に進行しているのではないでしょうか。

※写真は築地市場に向かう貨物線の遺構です。

 

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