どうするソルベンシー規制

日本保険・年金リスク学会(JARIP)の事務局から次のようなご案内をいただきました。森本さんがスピーチを行うのですね。
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経済価値ベースのソルベンシー規制導入が2025年に迫るなかで、おそらく「監督措置をどうするか」「これまでの早期是正措置の発動基準(SMR、実質資産負債差額、保険計理人の3号分析)をどうするか」などの議論を行っていることでしょう。

事業会社の破綻処理では一般債務を削減することで債務超過状態を解消します。すなわち、銀行などの債権者が痛手を被ることになります(株主の価値はすでにゼロになっています)。
これに対し、保険会社の負債の大半は責任準備金なので、過去の破綻処理を振り返ると、債務超過状態の解消は主に既契約者の負担で行われています。責任準備金の削減に加え、予定利率の引き下げを原資に「営業権」を資産計上し、さらに早期解約控除も設定しました。スポンサー企業の出資はバランスシートがきれいになってからです。

破綻生保の資産は例えばバルクセール等によって現金化され、これによって債務超過額が膨らみましたので、経済価値ベースの評価だからといって、破綻処理における契約者負担がなくなるのは難しいかもしれません。しかし、少なくとも現行会計ベースの発動基準よりは早期となり、既契約者の負担軽減につながると考えられます。

あとは契約者価額(≒解約返戻金)との関係でしょうか。金利上昇時の解約に備える必要はあるとしても、既契約者全員の解約返戻金を常に確保しておくことを保険会社に求めるのは、あまりに保守的すぎると思います。

経済価値ベースのソルベンシー規制を導入するということは、現行の「ロックイン方式の責任準備金」「将来収支分析」「SMR・実質資産負債差額」の3点セットから、ESRを軸とした枠組み(ORSA、情報開示を含む)に移ることだと思うのですが、いかがでしょうか。

※太宰府天満宮にもお参りしてきました。

 

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自動車保険の苦戦

今週のInswatch Vol.1168(2023.1.16)に寄稿した拙文をこちらでもご紹介します。同じ号で牧野司さんが最近話題のChatGPTを取り上げていますね。
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営業成績速報より

大手損害保険会社は投資家・アナリスト向けに月次の営業成績速報を公表しています。昨年12月までの累計(前年比)はご覧のとおりでした。

 東京海上日動  一般計:103.4%  自動車: 99.4%
 三井住友海上  一般計:103.1%  自動車: 99.0%
 あいおいND  一般計:103.5%  自動車:100.2%
 損保ジャパン  一般計:103.8%  自動車: 99.6%

各社とも一般計では3%程度の増収で、主に火災保険と海上保険がけん引役となっています。このうち火災保険に関しては、長期契約が昨年10月から5年に短縮となり、いわゆる駆け込み需要が営業成績を押し上げた効果もあったとみられます。加えて、料率引き上げによる影響もありそうです。
なお、12月の東京都区部の消費者物価指数が40年ぶりに4%台に達したことが話題になりましたが、上昇に寄与した主な内訳のなかに「火災・地震保険料(前年同月比6.2%)」という品目もありました。

他方で最大種目の自動車保険では、各社とも苦戦していることがうかがえます。12月単月で見ると、各社とも小幅ながら増収となっているものの、上半期の減収を挽回するほどの勢いはありません。料率引き下げが一段落しつつあるとはいえ、肝心の台数が伸びていないとみられ、コロナ禍の3年で最も厳しい営業成績となる可能性が高まっています。

自動車保険の収支も悪化

トップラインばかりでなく、自動車保険は収支も急速に悪化しているおそれがあります。昨年度決算では損害率が予想に反してコロナ前の水準まで戻らず、各社とも良好な収支を確保しました。ところが、4-9月期決算では一転して損害率が上昇に転じ、MS&AD傘下2社の損害率はコロナ前の水準を上回りました。自然災害による影響(上半期はひょう災があった)を除いたEI損害率です。
分母の収入保険料の伸びに期待ができないなかで、懸念されるのは物価上昇による影響です。申し上げるまでもなく、自動車保険の保険金は定額給付ではなく実損てん補なので、原材料費や人件費の上昇によって修理費が膨らむと、保険会社が支払う保険金も増加します。11月の決算発表時点では、各社とも「インフレの影響はまだ出ていない」とコメントしていましたが、さすがに足元では影響が出ているのではないでしょうか。今後の決算発表などに注目したいと思います。
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※写真は東京・湯島天神と不忍池です。

 

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保険ショップは代理店

大学の講義ではどうしても私が一方的に話をすることになるので、確認のために小テストを頻繁に行うようにしています。紙ベースではなくFormsを使っているので、あまり手間をかけずに管理できます。
確認テストなので9割以上の受講生が正答となるように問題を作っているつもりなのですが、たまに半分くらい間違えていたりすると、こちらの伝え方が悪かったのではないかと凹みます。

正答率が低い問題の代表例がこちらです(正誤問題)。

「複数の保険会社の商品を取り扱う来店型保険ショップは保険代理店ではなく、保険仲立人(保険ブローカー)である」

来店型保険ショップは保険代理店です。保険の流通市場(=誰が保険を販売しているか)の話をした後のテストなのに、ひどいときには半分以上の受講生が「正しい」を選んでしまいます。代理店と保険ブローカーの違いを板書しながら説明したり、乗合代理店の例として保険ショップの具体名を挙げて紹介したりしても、なぜか結果はあまり変わりません。
「複数の保険会社の商品を取り扱う」⇒「中立的な存在」⇒「仲立人」となってしまうのでしょうか。

大学で教えるようになって気がついたのは、同じ若年層でも大学生と社会人を等しくとらえるべきではないということです。個人差はあるにせよ、飲食店でのアルバイト経験くらいでは社会人と同じようなリテラシーは身についていないと考えるべきなのでしょう。特に私のような実務家出身の教員は、自分の話が学生に伝わっていない可能性を常に意識する必要がありそうです。

※学問の神様にお参りしてきました。

 

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高校生の金融教育

私は大学で「保険論」「リスクマネジメント論」を担当しています。今年のゼミ生の卒業論文には金融教育に関するものが3つもありました(全部で10のうち)。保険も広い意味では金融ですので違和感はありませんが、3人とも金融機関への就職を予定しているので、関心がそちらに向いたのかもしれません。
ご参考までに論文のタイトルは次の通りです。

「金融教育の実用性と効果」
「沖縄県の金融リテラシー」
「なぜ『貯蓄から投資へ』が進まなかったのか」

いずれも金融教育が重要だと考えている点では共通していて、昨年4月から高等学校で金融教育が必修となったことをポジティブに受け止めていました。

金融教育の必修化といっても、新たに「金融」という教科ができたのではありません。学習指導要領の改訂により、「高等学校の家庭科と公共の授業において、金融機関の役割や金融商品の特徴、資産形成について学ぶこととなったのが、大きな特徴」(日経ビジネスより引用)です。成人年齢の引き下げとあわせ、ニュースでも時々取り上げられてきました。

高校生がなぜ金融?(NHK)

ただし、こんな話も聞こえてきます。最近たまたま家庭科を担当する現役の高校教員(かつてのクラスメート)と話をする機会がありまして、昨年4月からの金融教育について話を向けてみました。すると、「これまでの授業内容に上乗せされた形なので、時間を確保するのが難しい」「内容を紹介することしかできていない」といったコメントがありました。
時々報じられるように教育現場の実態は厳しく、文部科学省も教師不足について実態調査を行うに至っています(2022年1月公表)。調査によると、2021年度の始業日時点で家庭科担任が1人もおらず授業を行えていなかった高校が3校あったとのことです(担当外の先生が臨時で担当しているケースを除く)。

※年末に四万温泉(群馬県)に行ってきました。

 

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京都の素敵なカフェ12選

大学講師のため京都に10数回通うことになり、せっかくなので毎週京都の魅力的なカフェでランチをすることにしました。昭和初期にオープンした老舗喫茶店や京都を代表するコーヒーチェーン、レトロな建物を改装したお店など、京都には個性的なカフェがいくつもあり、私が訪れたのはそのごく一部です。
なお、いずれも禁煙または分煙のお店(のはず)です。喫茶店にタバコは付きものとはいえ私には辛いので、全面喫煙可のため行くのをあきらめたお店もいくつかあります。

1.老舗喫茶店
2.リノベーションカフェ
3.町家カフェ

皆さんも京都観光などの際には素敵なカフェで過ごしてみてはいかがでしょうか。

※1月15日に4件追加したので「16選」ですね。

 

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町家カフェ

小川珈琲堺町錦店

2022年10月27日訪問。京都に本社を置く小川珈琲が2022年にオープンした店舗です。古い町家を改装した、おしゃれなお店でしたね。坪庭も素敵でした。ホットサンドとコーヒーをいただきました。
地下鉄烏丸線・四条駅から徒歩5分程度ですが、写真のとおり看板がないので要注意です。

スターバックスコーヒー京都二寧坂ヤサカ茶屋店

2022年10月7日訪問。二寧坂の日本家屋を改装したスタバで、畳に上がってコーヒーを飲むことができます。雨が降りしきるなか、1時間くらいまったりと過ごしました。

cafe bibliotic Hello!

2022年12月15日訪問。Cafe Bibliotic Hello!(カフェ ビブリオティック ハロー!)は、三条通りにある町家を改装したカフェで、バナナの木が目印です。中には大きな本棚があり、2階まで見渡せる開放的な空間が広がっています。

おしゃれなカフェなのですが、近所の人が自転車でやってくるような敷居の低さもいい感じです。パスタとコーヒーをいただきました。最寄駅は地下鉄東西線・京都市役所前駅でしょうか。徒歩10分くらいだと思います。

カフェ デ コラソン

2023年1月6日訪問。たまたま西陣あたりを散策していて見つけたお店です。「町家カフェ」ではありませんが、とりあえずこちらに。
住宅街にあるカウンターだけの小さなお店で、中に入ると目立つのは大きな焙煎機。コーヒーが美味しいだけではなく、落ち着ける空間でした。スタッフのかたとの会話も楽しかったです。

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リノベーションカフェ

前田珈琲明倫店

2022年11月24日訪問。京都芸術センター内のカフェなのですが、閉校した昔の小学校の建物を活用しているので、ノスタルジックな雰囲気であふれています。

メニューは給食ではなく前田珈琲のものなので、私はオムカレーとコーヒーをいただいました。地下鉄烏丸線・四条駅から徒歩5分くらいです。

前田珈琲文博店

2022年12月1日訪問。旧日本銀行京都支店(今は京都文化博物館別館)の金庫室が前田珈琲の店舗になっています。入場料はかかりません。

こちらではミートスパゲッティとコーヒーをいただきました。金庫室といっても天井が高くて開放的な空間でした。
地下鉄烏丸御池駅から徒歩5分くらいのところです。

カフェ・アンデパンダン

2022年12月22日訪問。三条通りにある旧毎日新聞京都支局ビル(現1928ビル)の地階をリノベーションしたカフェ。階段を降りると秘密めいた空間が広がっています。料理は本格的で、私はキーマと豚肉のあいがけカレーをいただきました。
地下鉄東西線・京都市役所前駅から徒歩5分くらいです。

d食堂

2022年12月8日訪問。四条近くの佛光寺というお寺の境内にあるカフェです。京都の食材を使ったこだわりの定食をおいしくいただきました。くつろげるカフェです。

中心部にあるお寺なので、昼休みの会社員があちこちでコンビニランチを食べている姿も見られました。
地下鉄烏丸線・四条駅から徒歩5分くらいのところにあります。

デザートカフェ長楽館

2023年1月5日訪問。煙草王と言われた実業家の村井吉兵衛が明治42年(1909年)に迎賓館として建てたところで、八坂神社や円山公園に隣接しています。当時の建物をカフェやレストランとして使っていて、京都市の文化財となっています。

ブレンドコーヒー1100円、カツサンドセット3300円と決してお安くはありませんが、内部を自由に見学できますし、寺社仏閣とは別の京都の歴史を感じる空間でした。

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老舗喫茶店

イノダコーヒ本店

2022年10月13日訪問。イノダコーヒは京都を代表するコーヒーチェーンの1つで、本店はいかにも老舗といった雰囲気です。私は本館でナポリタンと栗のケーキをいただきました(もちろんコーヒーも)。次回は旧館にも行ってみたいです。
地下鉄烏丸御池駅から徒歩5、6分のところにあります。

喫茶チロル

2022年10月20日訪問。二条城の近くにある老舗の喫茶店で、町の中心からやや外れているためか、敷居の低さがいい感じでした。私は目玉焼きを乗せたカレーをいただきましたが、カツカレーが有名なようですね。
地下鉄東西線・二条城前駅から徒歩5分くらいです。

前田珈琲室町本店

2022年11月10日訪問。京都ではお馴染みの前田珈琲。本店の建物はもともと呉服屋さんのものだったそうです。私は「ハーフふわふわタマゴサンド」とコーヒーのセットをいただきました。地下鉄烏丸線・四条駅のすぐ近くで、地元のかたが多かったような印象です。
ちなみに京都のたまごサンドは卵焼きが定番なのですね。

スマート珈琲店

2022年11月11日訪問。寺町通り(アーケード街)の三条寄りにある老舗喫茶店で、1階が喫茶、2階が洋食ランチに分かれています。私たち(この日は奥さんと一緒でした)は1階でコーヒーとタマゴサンドウィッチ、パンケーキをいただきました。タマゴサンドはやはり卵焼きのサンドです。妻いわく「懐かしい感じがする」とのことでした。
地下鉄東西線・京都市役所駅から数分です。

フランソワ喫茶室

2022年11月17日訪問。1934年創業の喫茶店で、店の建物は国の登録有形文化財に指定されています。店内にはクラシック音楽が流れ、落ち着いたひと時を過ごすことができました。こちらではピザトーストとチーズケーキをいただきました。
場所は四条河原町交差点の近くです。

虎屋菓寮

2023年1月6日訪問。京都のお雑煮が食べたくてホテルで聞いたら、こちらを紹介されました。
とらやは東京の和菓子屋さんだと思っていましたが、京都が発祥で、1869年の東京遷都に伴って東京に進出したのだそうです。
白味噌のお雑煮を満喫しました。

二軒茶屋

2023年1月12日訪問。「老舗喫茶店」のイメージからだいぶ外れてしまいますが、八坂神社の門前にある、室町時代創業の老舗茶屋です。外見とは違い、内部は新しい感じでした。
こちらでは名物の田楽豆腐と、またまた白味噌のお雑煮をいただきました。

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生保のヘッジ外債投資

少し前ですが、財務省が12月8日に公表した「対外及び対内証券売買契約等の状況」によると、7-9月に続き、10月以降も生命保険会社による外国証券の売り越しが続いているようです。上半期決算データや下半期の運用計画報道を踏まえると、ヘッジコストが高水準となっているなかで、主に為替ヘッジ付き外債(ヘッジ外債)の売却が続いているのではないでしょうか。

そもそも各社がヘッジ外債をどう位置付け、4-9月期にどう動いたのか、公表資料から探ってみましょう。

【日本生命】
・かねてから一般勘定資産の約7割を円金利資産に投資する方針を打ち出していて、IR資料によると、ヘッジ外債はリスク性資産ではなく円金利資産という位置付け。
・4-9月期はヘッジ外債よりもオープン外債を大きく減らしたように見える。

【第一生命】
・IR資料には「ヘッジ外債は円金利資産の代替として投資を行ってきた」とある。
・4-9月期には「リスク・リターンの観点からヘッジ外債の大幅な削減を実施(IR資料)」。決算データからも確認できる。

【住友生命】
・IR資料によると、一般勘定は運用目的に応じてALM運用、バランス運用の2つに区分して運営しており、ヘッジ外債は両方に組み入れ(円金利資産とは扱っていない模様)。
・7-9月期に外国公社債が減っているが、ヘッジ外債ではなさそう。報道によると下半期はヘッジ外債を減らす方針とのこと。

【明治安田生命】
・決算説明資料には資産構成やALMに関する説明がない。
・4-9月期にはヘッジ外債を大幅に減らし、オープン外債を増やしたように見える。

【富国生命】
・決算説明資料には「収益性が低下したヘッジ付外債の売却およびオープン外債化を進めた」、運用計画報道でも「ヘッジ外債のオープン化」という記述があった。決算データからもヘッジ外債の大幅な削減が確認できる。

富国生命のように、リスクテイクを行う中期方針のなかで外債投資を行い、為替ヘッジを機動的に行うなかでヘッジ外債を保有するといった会社は例外で、多くは円金利資産、あるいは円金利資産の代替としてヘッジ外債を保有しているようです。
しかし、超長期の円金利負債を抱える生命保険会社にとって、ヘッジ外債が円金利資産の代替になるというのは無理があるように思います。一時的には負債の金利リスクのヘッジ効果があるとしても、今回のようにヘッジコストの上昇で売却を迫られるようなこともあるので、追加的なリターンを狙う独立したカテゴリーとして取り扱うべきではないでしょうか。

※主役交代の準備が進んでいました。下鴨神社にて。

 

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実質資産負債差額の弊害

以前のブログで、2016年3月期決算において実質資産負債差額(実質純資産額)が1年前より増えているのは生保の経営実態を反映しておらず、金利水準の低下によって健全性はむしろ悪化していると書きました。2022年9月期決算ではそれとは反対のことが生じました。

実質資産負債差額を公表していない会社も多いので、ソルベンシーマージン総額に有価証券含み損益をすべて反映させ、かつ、負債性資本調達手段等(劣後債務など)を控除した数字を見てみました。すると、実質的な健全性に大きな変化がないか、改善したにもかかわらず、この半年間で数値が大きく減った会社が目立ちました。しかも、いくつかの会社ではおそらく実質資産負債差額がほぼなくなったこともうかがえました。
現行のソルベンシー規制において、実質資産負債差額はソルベンシーマージン比率(SMR)とともに早期是正措置の発動基準となっています。金融庁はSMRが0%を上回っていても、実質資産負債差額が負の値となる場合には、業務停止命令を出すことができます。
ただし、実質資産負債差額から、満期保有目的債券および責任準備金対応債券の時価評価額と帳簿価額の差額を除いた額が正の値となり、かつ、流動性資産が確保されている場合には、原則としてこの区分の措置はとられないこととなっています。
詳しくはこちらをご参照ください。

12月16日に金融庁が公表した「業界団体との意見交換会において金融庁が提起した主な論点」によると、金融庁は生命保険協会に対し、次のような話をしたようです(11月18日に開催)。

「特に、海外金利上昇に加え、国内の超長期債金利も上昇傾向にあり、各生命保険会社が保有する債券の評価損が拡大している。こうした中、生命保険会社の財務の健全性に直ちに問題が生じるとは考えていないが、一部の保険会社において、実質資産負債差額が減少するなどの影響が生じていると認識している」

「こうした市場環境を踏まえ、各生命保険会社においては、適切なALM管理を行うとともに保険金支払いに備えた十分な流動性資産を確保することが重要であり、金融庁としては、各生命保険会社における資産の運用状況や運用に係る適切なリスク管理の高度化について、引き続き緊密に意見交換をしていきたい」

2022年9月期決算で各社の実質資産負債差額が大きく減ったのは、主に内外金利の上昇によって資産含み損益が急減したためです。実質資産負債差額は資産のみが時価評価で、保険負債の評価はいわば取得原価ベースなので、本来は金利上昇で経営内容が改善した会社が多いはずなのに、ALMの一環として長期債を保有している会社ほど数値が減ってしまいました。
もちろんALMの観点からは、低金利の時期に獲得した契約が、金利上昇時に解約となる可能性を無視することはできません。しかし、SMRに加えて実質資産負債差額の確保を求めるということは、すべての保険負債が一気になくなっても耐えうる資産を確保するように求めることなので、規制として明らかに行きすぎです。一定の流動性を確保すれば十分であって、おそらく金融庁もそう考えていると思いたいです。

私はかなり前から実質資産負債差額の廃止を主張してきました(例えばこちら(PDF)の10ページ)が、今回の決算をきっかけに、議論が進むことを期待しています。

なお、今回の決算では保険負債とは関係なく、海外金利の上昇によって保有する外国証券の時価が下がり、実質資産負債差額が大きく減ったという会社もありえます。こうした疑念が生じるのは、外貨建ての保険負債がどの程度あるのか公表されていないためでして、業界ないしは金融庁は早期に手を打つべきだと思います。

※京都御所のガイドツアーに参加しました。おすすめですよ。

 

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