最近の執筆・取材対応など

備忘録をかねて、最近発表された論文や記事をまとめてご紹介します
(全文を公表するわけにはいかないので、要点のみ)。

生損保決算に関するもの

保険毎日新聞「生損保決算を読み解く」

7月1日に生保決算、3日に損保決算のインタビュー記事が出ました。
このうち生保ではトップラインの動向のほか、6月7日のブログにも書きましたが、決算対応の売却益計上について、「もしかしたら業界人には違和感がないのかもしれないが、機関投資家である本来の生命保険会社の投資行動としては疑問に感じる」などと述べています。
取材は6月18日にzoomで行われました。

週刊金融財政事情(2020.7.6)「大手損保グループの2020年3月期決算」

「再保険市場ハード化のなか、リスクベース経営の浸透がカギに」という副題が付いています。
後述するInswatch Professional Reportとの違いを出すため、こちらでは出再保険の回収状況や出再保険料の規模などを示しつつ、今後の収支動向に注目としています。記事には書きませんでしたが、データを見ると、東京海上日動と他の大手3社の出再戦略はかなり異なるようです。
なお、きんざいもオンライン版を始めたそうです
(私の記事は有料となります)。

Inswatch Professional Report「2019年度決算発表から-3メガ損保を中心に」

同じ損保決算でも、Inswatchでは新型コロナ関連支払い(見込み)の「内外格差」を多少深掘りしてみました。
おそらく、日本は経済規模の割に企業向け保険が普及していないということは言えるのでしょう。ただ、改めて数字を確認すると、この10年間で新種保険の収入保険料は市場全体を上回るペースで成長しており、企業のリスクマネジメント意識の高まりとともに、さらなる成長が期待できそうです。

論文発表

「保険市場の変化--過去10年と今後の展望」『保険学雑誌』 第649号(2000年6月)
(令和元年度日本保険学会大会シンポジウム「保険法10年の経験と今後の課題」)

「低金利下における生命保険会社の金利リスク対応--日本・台湾・ドイツ・韓国の事例から考える」『生命保険論集』(2020年6月20日発行)

前者は昨年の日本保険学会大会で登壇者の1人として発表したもので、法律の専門家に混じり、保険法制定後の保険市場において象徴的と考えられる動きをいくつか紹介しました。
後者は1月に韓国・釜山で発表したものの日本語版です。次に韓国に行けるのは果たしていつになるのでしょうね。

※NHKに行ったのは出演のためではなく、みずほ銀行のATMを使わせてもらいました^^

 

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有識者会議の報告書

経済価値ベースのソルベンシー規制の導入などについて検討を行ってきた有識者会議の報告書が公表されました。
「ソルベンシー規制の今後あるべき姿として、経済価値ベースで保険会社のソルベンシーを評価する方法を目指すべきである(5ページ)」と提言した2007年4月の報告書(PDF)の公表から10年以上がたち、「保険会社の内部管理において経済価値ベースの考え方を取り入れる動きが進む一方、保険監督者国際機構(IAIS)における国際資本基準(ICS)をはじめとする国際的な動向の進展もみられた」(報告書1ページより)なかで出されたものです。

個人的な注目点をいくつか取り上げてみましょう。

検討タイムラインの設定

2007年の報告書にも「平成22年(2010年)を見据えて不断の作業を進める」とありましたが、今回の報告書では2025年の導入を前提に、より具体的なタイムラインが示されました。

・2022年頃 制度の基本的な内容を暫定的に決定
・2024年春頃 基準の最終化
・2025年4月より施行

まずは2022年をターゲットに、金融庁が来月からの2事業年度で制度の基本的な内容を詰めていくことになります。

第1の柱と第2の柱の関係

報告書では「保険会社の内部管理のあり方も踏まえた多面的な健全性政策」を念頭に、新たな健全性政策の内容を「3つの柱」の考え方に即して整理しています。

・第1の柱(ソルベンシー規制)
・第2の柱(内部管理と監督上の検証)
・第3の柱(情報開示)

第1の柱と第2の柱のバランスは結構難しくて、第1の柱のあり方によって、報告書でも懸念する意見があるように、保険会社のリスク管理の高度化が停滞する可能性があります。さりとて「第2の柱で見ればいい」となってしまうと、監督介入が遅れたり、恣意的なものとなったりしてしまいます。

「経済価値ベースの第1の柱は2025 年に導入することを前提として検討を進めていくべきである。一方、それまでに保険会社の内部管理態勢及び金融庁の監督態勢の双方を高度化し、経済価値ベースの制度への円滑な移行を促す観点からは、第2の柱に関する取組みは、第1の柱の導入を待たずに早期に開始することが適当である」(33ページ)

「リスクとソルベンシーの自己評価(ORSA)上では、割引率につき標準モデル上の手法(終局金利(UFR)に基づく補外等)以外の手法も用いて評価を行うことや、自社の保険契約・運用資産のポートフォリオの特性を反映した粒度の高いデータに基づく、より精緻なリスク計測手法を用いること等も視野に入りうる」(35ページ)

報告書のこうした記述を見るかぎりでは、第1の柱はあくまで「最大公約数」であり、リスク管理の高度化を促すフェーズでは、第2の柱が重要という整理のようです。

「厳格化」には触れず

2007年4月の報告書(PDF)では、ソルベンシー・マージン比率の信頼性を向上させて行く努力が必要として、次の記載がありました。

「段階的な取組みの一歩として、例えば95%程度を信頼水準引上げの目標とするのであれば、保険会社に対する財務上の影響や、健全性評価に対する信頼性の向上の両面からみて適当ではないかと考えられる。(中略)そして、経済価値ベースのリスク評価への移行を前提とした上で、国際的な動向も見据え、更に信頼水準を引き上げていくことが適切である」

所要資本(リスク量)の計算を90%から95%へ引き上げるのはあくまで段階的な取り組みの一歩であり、経済価値ベースの規制に移るとともに、さらにハードルを上げることが提案されていました。

今回の報告書には、第1の柱における信頼水準について記載がありません。
ただ、「国内規制における標準モデルについては、ICSと基本的な構造は共通にしつつ検討を進めていくことが適当である」(14ページ)とあり、これまでの国内フィールドテストでもICSを参照してきたことから、普通に考えればICSの「99.5%」がそのまま採用されるのでしょう。
20年に1回から200年に1回の水準に上がるので、前回の変化よりも大きそうですね。

※宮崎県産の完熟マンゴーと福岡県産のブルーベリーです♪

 

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保険代理店との対話

金融庁(および財務局)は6月が年度末なので、連日いろいろな公表物が出ています。
保険関係では19日(金)に関東財務局が保険代理店に対するヒアリングの実施結果を公表しています。タイトルは「保険代理店との対話を通じて『見て、聞いて、感じた』こと。」です。

改正保険業法の施行から3年以上が経過したので、保険代理店に対してアンケート調査とヒアリングを実施し、新たな保険募集ルールの定着状況を確認したとのこと。「行政の現場は事務室や会議室だけではない。保険募集の現場を知らずに監督ができるのか?」と考え、対話を実施したそうです(本当にそう書いてあります)。

具体的な記述のなかには、代理店経営に参考になるものもありそうです。

読後感として、あえて辛口のコメントをするとしたら、次の2点でしょうか。
1つは対話を終えて、当局として現状をどう評価し、今後どうしたいのかが、必ずしも明らかになっていない点です。
「多くの気付きや強い感銘を与えてもらえるものであった」とは書いてあるのですが、それでは「保険募集の現場は変わったのか(=新ルールが定着し、意図していた効果を発揮しているか)」という当局の疑問は果たして解消したのでしょうか。

もう1つは、ヒアリングを実施したのは2019年10月から2020年2月というコロナ流行前であっても、その後のコロナ禍で保険代理店の経営環境が大きく変わっているのに、それについては全く触れていない点です。
例えば、「電話募集がメインであったところ、『顧客に顔もみせない営業方針なのか』と苦情を承り、全ての契約者と面談を実施することにした。結果、的確な意向把握等といった業務改善に至っている」という事例をいま紹介されても…とつい思ってしまいます。

3月以降のコロナ禍での新たな知見はなかったのでしょうか。現場ではいろいろなことが起きていると思うのですよね。
オンライン営業を求める代理店と、解禁を渋る保険会社との攻防が各所であったとも聞きますし。

もちろん、保険代理店に対する監督当局の理解が深まるのは非常にいいことなので、この知見を関東財務局(の今の担当者)だけに留めてしまってはもったいないです。金融庁とも連携し、継続して取り組んでいただければと思います。

※写真は福岡市赤煉瓦文化館。日本生命の九州支店だった建物だそうです。

 

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2020年度上期ヒット商品番付

日経MJ(日経流通新聞)では半年ごとに「ヒット商品番付」を発表しています。
「消費動向や世相を踏まえ、売れ行き、開発の着眼点、産業構造や生活者心理に与えた影響などを総合的に判断して作成した」とのことで、日経流通新聞が創刊された1971年から発表されている人気の企画です。

先週発表された2020年上期のヒット商品番付は次のとおりでした(上位のみ)。

<東>
横綱:オンライン生活ツール
大関:応援消費
関脇:無観客ライブ
小結:手渡しなし宅配

<西>
横綱:任天堂「あつまれどうぶつの森」
大関:おうちごはん
関脇:テークアウト
小結:湖池屋「プライドポテト」

一見してコロナ関連が並んでいますね。
個人的には「zoom飲み会」を挙げたいです。福岡にいても東京にいる皆さんと飲み会ができるというのは画期的でした。

ところで、昨年12月に発表された2019年の番付上位は次のとおりでした。

<東>
横綱:ラグビーW杯
大関:令和
関脇:天気の子
小結:ウーバーイーツ

<西>
横綱:キャッシュレス
大関:タピオカ
関脇:サントリー「こだわり酒場のレモンサワー」
小結:任天堂「ニンテンドースイッチライト」

遠い昔のように感じると思いきや、「ウーバーイーツ」「キャッシュレス」「ニンテンドースイッチ」ですか。
コロナ禍で生活様式が変わる前からこれらはヒットしていたのですね。

 

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コロナ禍での生保販売動向

inswatch Vol.1036(2020.6.8)に寄稿した記事のご紹介です。
3社の決算は本日(6月10日)もまだ発表されていません。

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2019年度決算はまだ出そろっていません(6月5日時点でアクサ生命、エヌエヌ生命、メットライフ生命などが未公表)が、公表された会社のデータを使い、新型コロナの影響が出始めた1-3月期の各社販売動向を確認してみました。

保険料収入は既契約の影響が大きい

メディアでは生保決算について「保険料等収入」「基礎利益」の動きを説明するものが多く、私は毎度のように「保険料等収入は売上高には当たらない」「基礎利益は本業の儲けを示していない」と指摘しています。決算データから何を知りたいのかという視点が抜け落ちていて、定例の作業となってしまっているのでしょう。
その点、今回の日経新聞の生保決算報道は、保険料等収入とともに新契約年換算保険料を載せ(6月3日付)、基礎利益だけでなく最終利益の推移を示す(5月29日付)など、定型パターンではなくてよかったと思います。

例えば1-3月期のデータを見ると、営業自粛が続くかんぽ生命の保険料収入は前年同期比で25%の減少と、それほど落ち込んでいるようには見えません。しかし、新契約年換算保険料は前年同期の1%以下の水準です。かんぽ生命の販売の現状を示しているのはどちらでしょうか。
第一フロンティア生命のように、一時払いの貯蓄性商品を主力としている会社では、保険料収入と新契約年換算保険料が同じような動きをします。逆に言えば、保険料収入は貯蓄性商品(特に一時払い)の販売動向に大きく左右されるということで、これを事業会社の売上高になぞらえるのは無理があります。

コロナ禍の影響は

政府による緊急事態宣言の発令は4月になってからですが、思い起こせばすでに3月には活動自粛モードが強まっていました。私は2月下旬からテレワークを本格的に始めています。保険の対面販売活動にもかなりの影響があったと考えられます。
とはいえ、1-3月の業績動向を確認しても、新契約がここで大きく落ち込んだという会社はほとんど見られませんでした。前年同期比で年換算保険料や販売件数が2桁のマイナスという会社はいくつも見られます。しかし、多くの場合、1-3月だけでなく、昨年4月からその傾向が続いています。これは経営者保険の販売停止・見直しをはじめ、新型コロナとは別の要因が強く影響していると見るべきでしょう(コロナ禍対応で海外金利が下がり、外貨建て保険が売れなくなったということはありそうです)。

4-6月は対面販売の自粛や停止により、新契約の落ち込みが予想されます。ただ、もしかしたら保険ショップや一般代理店を主力チャネルとする会社に比べ、営業職員を主力とする会社(特に伝統的な国内系生保)の業績はそれほど落ち込まないかもしれません。
というのも、彼らは新契約の大半を既契約市場で獲得しているので、顧客を訪問できない時期が続いても、ベテラン営業職員であればそう簡単に顧客との繋がりがなくなったりはせず、常に見込み客を確保できる状況にあるからです。1-3月の契約動向にもこうしたチャネル特性が反映されているのでしょう。
もちろん、採用活動の難しさなどから、会社全体としては先細りとなる恐れはあります。でも、伝統チャネルの底力を軽視はできないでしょう。

極論すれば、今後はオンラインをフル活用した、新たな時代のビジネスモデルを築いた販売組織か、あるいは、すでに揺るぎのない顧客基盤を築いている募集人でなければ、生き残るのが難しい時代となるのかもしれません。今後の業績データに注目したいと思います。
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※大学近くのラーメン店なので「初心者」が多いのかもしれません

 

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生保決算(1-3月データ)から

2019年度決算では、新型コロナ禍に伴う金融市場の乱高下の影響で、多額の有価証券評価損を計上した国内系生保がいくつかありました。評価損の内訳は「株式等」「外国証券」が大半を占めています。
例によって四半期ごとに分けて見てみると、評価損の計上に合わせるかのように、有価証券売却益が1-3月期になって急増している会社がみられます。

好意的に見れば、価格が下がる前に利益を確定したのかもしれません。しかし、この時期だけ突出して売却益が多く、かつ、比較的動きが小さかった国内債券もそこそこ含まれているとなると、通常の資産運用というよりは、3月決算を意識した利益計上を行ったのではないかと考えてしまいます。
資産運用で積極的にリスクをとるという経営判断は理解できるとしても、決算を作りに行くような行動は、どう理解したらいいのでしょうか。

新型コロナ対応といえば、3月以降、大手生保の契約者貸付が急増しているというニュースがありました(5/24のNHKなど)。
そこで、各社の契約者貸付(保険約款貸付)を確認してみると、大手生保(日本、第一、住友、明治安田)の貸付残高は3か月前と比べてむしろ減っていました。
本格的に増えたのは4月以降なのかもしれませんが、中小企業を顧客基盤とする大同生命では貸付残高が急増していますし、顧客に中小企業のオーナーが多そうなソニー生命やプルデンシャル生命でも、通常よりも増えていますので、顧客基盤のちがいが大きいようです。NHKは取材する相手を間違えたのでは…

1-3月になって解約返戻金が急に増えた会社もありました。第一フロンティア生命とMSプライマリー生命が顕著に増えていて、明治安田生命や住友生命でも増えているので、おそらく銀行で一時払いの貯蓄性保険に加入した人が、何らかの理由で保険を解約したのでしょう。

※アクロス山の登頂に成功しました(笑)

 

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対面販売の自粛を活かす

インシュアランス生保版(2020年5月号第4集)に執筆したコラムです。
東日本大震災の時も感じましたが、非常時には元々抱えていた経営課題も浮き彫りになります。
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非対面販売の活用

新型コロナ対応で保険営業の対面販売の自粛が続くなか、営業職員による訪問販売を主力とする大手生保が、既契約者とその家族に限り、一部の商品について非対面での加入解禁に踏み切るとのこと。代理店に対しても、限定的にではあるが、非対面による加入を認める動きが徐々に広がりつつあるようだ。
対面での営業活動を、オンライン営業を含めた非対面に置き換えるのはそう簡単ではない。zoomなどを使ったオンライン営業であれば、対面とほぼ同じことができるとはいえ、相手のネット環境にも左右されるうえ、長時間になるとリアルな打ち合わせよりも集中力がなくなってしまいがちだ。

しかし、特効薬が登場するまで、ウイルスとの共存を余儀なくされるのであれば、対面販売を再現するという発想ではなく、非対面ならではの販売モデル確立に向けて、いち早く動くべきではないかと考える。
オンライン営業を含めた非対面販売には、移動時間がかからない、証拠を残しやすい、同じ場所に集まらなくても打ち合わせができる、などの特徴がある。消費者としては、これまでは家庭や職場で営業パーソンから一対一で話を聞いていたものが、オンラインであれば他の家族にも打ち合わせに加わってもらいやすくなるし、保険に詳しい知人に同席してもらうのもハードルが低くなる。個人的な感覚かもしれないが、セールスを受けているという圧迫感もオンラインのほうが弱い。

職人芸からの脱却を図る

何よりも、これまで営業パーソンの「職人芸」に頼っていた営業活動を共有化することで、組織としてのマーケティング活動ができることが大きい。とりわけ伝統的な生保の営業職員チャネルでは、そもそも新型コロナ以前からビジネスモデルの賞味期限が取りざたされていた。かつてに比べればやや改善したとはいえ、大量採用・大量脱落の構造は今も残り、顧客開拓からクロージングまで、基本的に個人のスキルにかかっている。
今回の対面販売の自粛がなくても、こうしたモデルの限界は意識されていたことだろう。この機会に、例えばデータサイエンスを全面的に用いるなどして、新しい時代に合った販売モデルを模索すべきである。

保険販売、特に生命保険は訪問販売でなければ売れないという声も根強い。確かに、ニーズが顕在化している自動車保険などに比べると、生命保険(死亡保険)は自らが保険金を受け取ることはなく、遺族保障の必要性を想像してもらわなければならない。各種の保障を組み合わせた商品も多く、業界以外の人は説明を受けても理解するのが難しい(業界人は、例えば携帯電話の説明を受けたときのことを思い出してほしい)。
ただ、せっかく新型コロナ禍で家族のきずなが強まり、保障に対する人々の意識も変化していると思われるのに、一歩踏み出さなければ、みすみすその機会を逃すことになりかねない。もはや危機対応の段階から、新たなビジネスモデルを模索する段階にきているのではないか。
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※写真は福大オリジナルクッキーです

 

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大手損保グループ経営の現状

先週は大手損保グループ各社のIRミーティングがあり、いろいろと気付きがありました
(いずれも対面形式ではなかったので、福岡にいてもアクセスできました)。

まず、損保事業への新型コロナの影響は、国内と海外(欧米)でだいぶ異なっているようです。
東京海上やMS&ADでは、海外事業で数百億円規模の保険金支払いが発生する見込みです。主にイベント中止や事業中断などの保険ではないかと思います(取引信用保険も考えられますね)。
他方で国内では、2期連続で風水災による多額の保険金支払いが発生したものの、新型コロナ絡みの支払いは今のところ目立ちません。いわゆる新種保険の普及は国内ではまだまだということなのでしょう。

再保険市場のハード化もはっきりしました。長い間、保険料率の低下基調が続いていたものが、少し前から上昇基調に転じたようです。
このところ世界的に自然災害が多発し、国内でも1兆円を超える自然災害に伴う保険金支払いが2期連続で発生したうえ、新型コロナ関連の支払いや金融市場の不安定さも加わり、再保険市場はハードマーケットに転じた模様です。
確かに損保各社の出再保険料(火災保険)をみると、各社ともかなりのペースで増えていることがわかります。

もっとも、各社とも政策株式保有を減らしてきているとはいえ、引き続き株価下落がグループにとっての最大リスクか、それに近いということも確認できました(金利リスクも大きいですね)。

※ラタトゥユとカルパッチョを作りました。
 すいかは今季初です。

 

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生保決算の概要

例年とちがい、生保決算はまだ出そろっていませんが、国内系生保に関しては大まかな傾向は見えたのではないかと思います。

まず、資産価格変動の影響です。
一時は株価が大きく値下がりしたものの、結果的に日経平均株価は前年度末から10%程度の下げにとどまりました。それでも株式保有の多い会社では、株価下落で支払余力が圧迫を受けています。
他方で、米国をはじめ海外金利が大きく下がり、こちらは外国公社債の時価を押し上げています(ただし、為替はやや円高なので、影響が相殺されているところもあります)。
これらは損益計算書には部分的にしか出てきませんが、公表されているEV(エンベディッド・バリュー)を見ると、会社価値への影響としては最も大きい要因だったようです。

保険関係では、会社によっては経営者保険の販売停止などにより、新契約価値が影響を受けています。第三分野の新契約年換算保険料が軒並み前年割れとなっているのもちょっと気になります。ただし、新型コロナの影響は、この段階ではほとんど見られません。
なお、大手生保が相次いで投入した健康増進型保険も大ヒットとまではいかなかった模様です。

こうしたことは、保険料等収入と基礎利益だけ追いかけていては、全く見えてきません。
メディアは今回のかんぽ生命(=営業を自粛していた)や大同生命(=経営者保険の販売を停止していた)の基礎利益が増えたのを見て、この指標に何も疑問を感じなかったとしたら、さすがにおかしいと思います。

国内系生保の経営が総じて保険ではなく、資産運用に左右されやすいのは、リスクの取り方がそうなっているからです。
このことについて、第一生命ホールディングスは決算説明会資料(PDF)のなかで、日本の大手生保グループとして初めてグループ統合リスク量の内訳を開示し、金利・株式を中心とした市場関連リスクが全体の7割を占めることを明らかにしました。
同社は金利リスクと株式リスクの削減に取り組み、市場の変動に左右されにくいリスクプロファイルにしていくとのことです。

※自宅からビーチまで歩いて行けました!

 

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日産生命破綻処理に関する覚書き

保険会社の2019年度決算発表が始まりました。
まずは上場生命保険会社グループということで、15日に第一生命ホールディングス、T&Dホールディングス、日本郵政・かんぽ生命の決算発表がありまして、今週は損保決算、(非上場の)生保決算と続きます。

政府の緊急事態宣言が出たのは4月上旬なので、今回の決算発表では対面販売自粛の影響は営業数値にほとんど出てこないのではないかと思います。
他方で、非対面での保険販売を主力とするライフネット生命は4月の業績速報(PDF)で、新契約業績が過去最高を更新したことを明らかにしました。アドバンスクリエイトも4月の業績概要(PDF)で、保険代理店事業において、対面販売が落ち込む一方、通信販売が急増したことを示しています。

予定利率の引下げ

さて、タイトルは「日産生命破綻処理に関する覚書き」でしたね。
生命保険経営学会の機関誌「生命保険経営」最新号(第88巻第3号)に、明治安田生命保険の佐藤元彦さんによる同名の論文が掲載されました。

1997年4月に破綻した日産生命の破綻処理は、その後も相次いだ生保破綻の処理に大きな影響を与えました。
なかでも、「既契約の予定利率引下げ」と「早期解約控除の設定」は、次の東邦生命(1999年破綻)をはじめ、全ての破綻処理で採用されています。

論文によると、保護基金の発動、イコール契約条件の変更ということではなかったそうです。しかし、「収支上の必要性から予定利率引下げは余儀ないものだった」(論文より引用)。論文の注記には、「資金援助上限額2000億円だけで処理が可能だったとしたら、予定利率は引下げなかったであろう」とありましたが、資金不足が大きく、そうもいかなかったようです。

数年後にアクサが日本団体生命を買収し、破綻後ではないので、当然ながら高利率の契約もそのまま引き受けています。当時のアクサがどう判断したのかはわかりませんが、もし将来収支がマイナスでも、顧客基盤や新契約獲得能力など(いわゆる「のれん」ですね)に大きな価値があると判断すれば、条件変更なしでの破綻処理もありえたのかもしれません。
もっとも、破綻により日産生命の事業基盤はダメージを受けており、のれんを高く見積もることもできず、予定利率の引下げはやむを得なかったということなのでしょう。

新日産生命構想

「新日産生命構想」は本当にあったのですね。
破綻した日産生命の既契約の受け皿会社を、日立・日産グループ各社の共同出資で新設するというもので、既契約の維持管理だけでなく、新契約の獲得も行う保険会社を新たに立ち上げる構想でした。日産生命の欠損額が大きく、保護基金の資金援助2000億円では賄いきれないので、「残りの欠損額については、新日産生命の営業力と予定利率引下げ後の既契約の収益力を評価し、営業権として資産計上することで補う」(論文より引用)というスキームです。

残念ながら日立・日産グループからの出資を得られず、新日産生命構想は頓挫しました。論文には早期解約控除についての言及がなく、日立・日産グループの信用が拠りどころということで、出資者としては再破綻の可能性を意識したのかもしれません。

早期解約控除

最終的に日産生命の破綻処理は、生命保険協会の100%出資により、既契約の維持管理のみを行う受け皿会社(あおば生命)を新設し、そこに日産生命の契約を移転するスキームとなりました。既契約に対しては予定利率引下げなど基礎率の変更を行い、さらに、ここで「早期解約控除」が出てきます。

早期解約控除とは、業務再開後の数年間は、通常の解約控除に加え、一定額の解約控除を上乗せするというものです。
初年度の控除率を15%としたのは、「(保護基金からの)資金援助がなされない場合、およそ15%程度の積立金毀損が発生する」との見解を佐藤さんは示しています。この15%が妥当だったのかどうかはわかりませんが、あおば生命の経営を安定させるのに寄与したのは間違いないでしょう。後に生保協会があおば生命を売却できたのも、「既契約の予定利率引下げ」「早期解約控除の設定」をセットで実施したからだと思います。

会員以外のかたが論文を読めるようになるのは2022年1月になってからですが、破綻処理策の原案作成者による覚書きは貴重だと思いまして、ブログで紹介しました。

※緑が濃くなりましたね。

 

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