05. 金融・経済全般

社外取締役による座談会

2013年に政府による成長戦略の一環としてコーポレートガバナンス改革が始まってから、社外取締役を選任する上場会社が急速に増え、2名以上の独立社外取締役を選任する上場会社の比率は95%に達しています(市場第一部)。
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この変化は率直に言ってすごいと思いつつ、当然ながら形だけ整っていても意味はないので、実質的な役割を果たせるかどうかが焦点となります。
経済産業省が7月末に「社外取締役の在り方に関する実務指針(社外取締役ガイドライン)」を公表したのも、まさにそのような問題意識からです。

ところで、第一生命ホールディングス「アニュアルレポート2020」に「社外取締役による座談会」が載っていて、読んでみると形式的なコメントばかりではなく、興味深いものでした。

例えば、次のようなコメントがありました。

「社外取締役と社内取締役の間のコミュニケーションが、質、量ともに高まっていることと、そのコミュニケーションも形式的なものではなくて、ガチンコの議論が展開できている、もしくはそうなったということが挙げられます」【朱取締役】

「社外取締役による自律的な取組みが本格的に始まり、それが定着してきたということです(中略)昨年の2月か3月頃から自発的に社外取締役全員で集まって議論するようになり、当初は食事をして懇談するところから始まったのですが、回を重ねるごとに、テーマを決めて、誰かが資料を用意しそれをもとに議論するといったことも始めました」【井上取締役】

「第一生命ホールディングスの取締役の方々は第一生命グループ全体の取締役であり、グループ全体のマネジメントに権限と責任を有しています。取締役が自己の専担範囲の業務執行はしっかりと行うが、他の取締役の担当業務にはあまり関心がない、そのような状況に将来陥っては困ります」【増田取締役】

会社からインプットをしてもらうというレベルから、社外取締役による自律的な取り組みとなってはじめて、取締役どうしのまともな議論ができるようになってきたということなのでしょう。いい流れだと思います。

※40年前に筑肥線・小笹駅があったところです。看板の前あたりだと思うのですが…
 取材したところ、駅前の通りは今よりも低くて、大雨が降ると水没して大変だったそうです。

 

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2020年度上期ヒット商品番付

日経MJ(日経流通新聞)では半年ごとに「ヒット商品番付」を発表しています。
「消費動向や世相を踏まえ、売れ行き、開発の着眼点、産業構造や生活者心理に与えた影響などを総合的に判断して作成した」とのことで、日経流通新聞が創刊された1971年から発表されている人気の企画です。

先週発表された2020年上期のヒット商品番付は次のとおりでした(上位のみ)。

<東>
横綱:オンライン生活ツール
大関:応援消費
関脇:無観客ライブ
小結:手渡しなし宅配

<西>
横綱:任天堂「あつまれどうぶつの森」
大関:おうちごはん
関脇:テークアウト
小結:湖池屋「プライドポテト」

一見してコロナ関連が並んでいますね。
個人的には「zoom飲み会」を挙げたいです。福岡にいても東京にいる皆さんと飲み会ができるというのは画期的でした。

ところで、昨年12月に発表された2019年の番付上位は次のとおりでした。

<東>
横綱:ラグビーW杯
大関:令和
関脇:天気の子
小結:ウーバーイーツ

<西>
横綱:キャッシュレス
大関:タピオカ
関脇:サントリー「こだわり酒場のレモンサワー」
小結:任天堂「ニンテンドースイッチライト」

遠い昔のように感じると思いきや、「ウーバーイーツ」「キャッシュレス」「ニンテンドースイッチ」ですか。
コロナ禍で生活様式が変わる前からこれらはヒットしていたのですね。

 

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諮問委員会のメンバー

大学の授業がようやく始まり、遠隔授業(オンライン授業や課題学習など)を試行錯誤しながら行っています。
オンライン授業は発信者(=私)のネット環境によるところが大きく、初回の授業では早々に課題学習に切り替えざるをえなくなり、あとからレジュメに音声をつけたものを作成し、学生の皆さんに提供しました(実は音声付きファイルをアップするのも大変でした)。緊急事態宣言がひと月ほど延長されるようなので、こうした格闘がしばらく続きそうです。

※福岡大学商学部2年生の皆さんは、5日、6日とゼミ相談をやりますので、お気軽に連絡(メール)してくださいね。

その緊急事態宣言ですが、けさの日経新聞にあるとおり、宣言の内容を変更するには「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」の分析結果を踏まえて政府が方針案を策定し、これを「基本的対処方針等諮問委員会(新型インフルエンザ等対策有識者会議の下部組織)」に諮ったうえで、国会報告を経て、最終決定するという流れになっています。

かつての同僚である増島弁護士のつぶやきを見て、諮問委員会のメンバー(PDF)を改めて確認すると、16人のうち12人は専門家会議のメンバー(PDF)で、16人のうち14人が感染症の専門家(あとの2人は弁護士)となっていました。専門家会議も諮問委員会も(おそらく厚生労働省が選んだ)感染症の専門家と少数の法律の専門家で構成されていて、しかも、現状分析と政府方針の妥当性判断をほぼ同じメンバーが行っているのですね。

海外諸国と同じく、日本でも徐々に出口を探っていく局面となるでしょうし、今後はかつてないほどの悪い経済指標が次々に出てくるなかで、経済をどうやって立て直すかを考える必要性が高まります。その際に、政府方針の妥当性判断を行う諮問委員会に経済の専門家が1人もいないというのは確かにちょっと心配です。

今後、再度の感染拡大を心配する感染症の専門家と、経済活動の自粛緩和を求める世論とがぶつかりあうこともありうるでしょう。ただ、いまの立て付けだと、政府は感染症の専門家の意見にしたがうか、あるいは、世論に押し切られ、何となく「政治判断」してしまうか、いずれかになるのでしょうか。

※男の手料理。ジャーマンポテトを作りました♪

 

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超低金利が浮き彫りにする金融機関経営の課題

インシュアランス生保版(2020年3月号第3集)にコラムを執筆しました。
タイトルが長くなってしまい、編集者にご迷惑をかけたかもしれません。
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金融関係者が集まる会合で話をする機会があり、超低金利の継続が銀行と生命保険会社の経営に及ぼす影響について解説した。
日本銀行のマイナス金利政策による副作用として銀行の収益悪化が挙げられている。多くの生命保険会社にとっても、金利水準の低下は経営を圧迫する要因だ。しかし、低金利が銀行にも生命保険会社にも悪影響を及ぼすとは、考えてみれば不思議ではないか。

低金利と銀行経営

かつて銀行はむしろ金利低下の恩恵を受けていた。銀行は預金などの短期調達と、貸出金などの長期運用の利ザヤが主要な収益源の1つであり、イールドカーブ(利回り曲線)が右肩上がりであれば、比較的容易に収益を稼ぐことができた。しかも、金利低下に合わせて預金金利を下げれば、貸出金が折り返しとなるまで利ザヤは拡大する。バランスシートで説明するならば、金利低下で資産価値が高まるのに対し、負債(預金)の価値はあまり変わらないため、純資産(資産-負債)は増加する。ところがマイナス金利政策で、短期金利から10年金利までほぼ0%となり、イールドカーブが右肩上がりでなくなってしまった。これでは長短金利差に起因する利ザヤを稼ぐことはできない。

伝統的な銀行ビジネスの利ザヤの源泉は長短金利差と、貸出先の信用リスクである。マイナス金利政策で利ザヤが稼げなくなったのは、イールドカーブの平坦化以前の問題として、信用リスクに応じた貸出が質、量ともにできていなかったためだ。個人だけでなく、企業も資金余剰主体となって久しく、特に地方部では人口減少の影響も資金需要に影響を及ぼしている。ただ、あえて厳しい言いかたをすれば、これらは20年以上前からわかっていた話であり、銀行経営者は金利低下の恩恵を受けていた時期にビジネスモデルの修正を行うべきだったのだろう。

低金利と生保経営

生命保険会社はどうか。銀行になぞらえれば、多くの生保は保険販売による超長期調達(しかも固定金利)と、有価証券を中心とした長期運用という資金構造であり、金利水準が下がると固定金利の保険負債が重荷となる。2000年前後に中堅生保の経営が相次いで破綻したのは、1990年代前半からの金利低下に耐えられなかったことが一因だ。その後も金利水準は下がり続け、ついにマイナス金利となっても今の生保が一定の健全性を確保できているのは、株式などの資産運用リスクを減らし、保障性商品の販売に力を入れることで、資産運用以外でリターンを上げるビジネスモデルを構築・維持してきたためだ。

もっとも、マイナス金利政策以降の生保経営には首をかしげることも多い。経営リスクを保険引き受けではなく、外国証券など資産運用によるリスクテイクに配分する行動が目立ち、その一方でコストのかさむハイブリッド調達(劣後債発行など)を積極的に行っている。こうした姿を見ると、生保のビジネスモデルの持続性にも危うさを感じる。地域金融機関の苦境は対岸の火事ではない。
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※写真は桜島です。福岡から鹿児島まで新幹線で1時間ちょっとなのですね。

 

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地域金融機関の経営統合

2月7日に金融庁は地域金融機関の経営とガバナンスの向上に資する主要論点(コア・イシュー)を公表しました(3月9日までパブコメ受付中)。

「あくまで経営トップや取締役会等が自らの経営やガバナンスの現状を振り返るに当たって、参考として活用されることを目的とするもの」
「金融庁のモニタリングにおいて、本文書を一つの解を前提にチェックリストとして用いるものではなく、いわゆる『コンプライ・オア・エクスプレイン』を求めるものではない」

と明記されていますが、これまでの地域金融機関の動きの鈍さや危機意識の低さに金融庁は業を煮やしているのでしょう。

ところでクイズです。次の銀行持株会社の傘下にある銀行はどこでしょうか?

1.じもとホールディングス
2.めぶきフィナンシャルグループ
3.三十三フィナンシャルグループ
4.西日本フィナンシャルホールディングス
5.九州フィナンシャルグループ

すべて答えられたら、かなりの地銀通ですね♪

金融庁の遠藤長官は昨年末の共同通信のインタビューで、「地方銀行が地域の企業や経済を支える存在であり続けるための手段として有効ならば、他行との経営統合や合併、資本業務提携を進めるべきだ」と述べたそうです。ただし長官は、「金融庁が促しているのは健全性の確保であって再編ではない。統合や合併はそれぞれの経営判断だ」とも語っています。
合併してもビジネスモデルが変わらなければ時間稼ぎにしかなりませんし、持株会社方式の経営統合の場合は、時間稼ぎにもならないかもしれません。

週刊金融財政事情の2月10日号のコラム「支店長室のウラオモテ」にこんなコメントが載っていました。

「本部機能の一部を統合したところで、審査や人事機能が各行ごとのままであれば、行員の行動様式はまったく変わらない」
「(システムの一本化について)それぞれのシステム部門がベンダーの後ろ盾を得て優位性を主張しており、今後も全く話が進みそうにない。そうこうしているうちに、銀行の稼ぐ力は大幅に落ちてしまった。メンツ争いをしている時間的余裕はもうないはず」

金融庁が過剰介入の批判を覚悟して(?)地域金融機関の経営に関わろうとする気持ちもわかります。

<地銀を中核とした銀行持株会社>
・フィデアホールディングス(荘内銀行、北都銀行)
・じもとホールディングス(きらやか銀行:山形しあわせ銀行と殖産銀行が合併、仙台銀行)
・第四北越フィナンシャルグループ(第四銀行、北越銀行)
・めぶきフィナンシャルグループ(常陽銀行、足利銀行) 
・東京きらぼしフィナンシャルグループ(きらぼし銀行:東京都民銀行、八千代銀行、新銀行東京が合併)
・コンコルディア・フィナンシャルグループ(横浜銀行、東日本銀行)
・三十三フィナンシャルグループ(三重銀行、第三銀行)
・ほくほくフィナンシャルグループ(北陸銀行、北海道銀行)
・池田泉州ホールディングス(池田泉州銀行:池田銀行と泉州銀行が合併)
・関西みらいフィナンシャルグループ(関西みらい銀行:関西アーバン銀行と近畿大阪銀行が合併、みなと銀行)
・山口フィナンシャルグループ(山口銀行、もみじ銀行、北九州銀行)
・トモニホールディングス(香川銀行、徳島大正銀行:徳島銀行と大正銀行が合併)
・ふくおかフィナンシャルグループ(福岡銀行、熊本銀行、親和銀行、十八銀行)
・西日本フィナンシャルホールディングス(西日本シティ銀行:西日本銀行と福岡シティ銀行が合併、長崎銀行)
・九州フィナンシャルグループ(肥後銀行、鹿児島銀行)

 

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ESGと企業価値向上

11日の日経1面で「投資家指針、ESG明記」とあるのを見て、思わず首を傾げてしまいました。
記事には金融庁が、機関投資家の行動原則を定めたスチュワードシップ・コードを2020年春に改訂し、ESG(環境・社会・統治)投資を重視する内容を初めて明記するとあります。でも、私は2014年のコード策定時からESGに関連する記述があったと思っていたので、記憶ちがいかどうか過去の資料を確認してみました
(今はこういうことが簡単にできて、便利になりました)。

確認すると、やはりコード策定時の原則3(機関投資家は、投資先企業の持続的成長に向けてスチュワードシップ責任を適切に果たすため、当該企業の状況を的確に把握すべきである)の指針に、ESGに関連する記述がありました。

<指針3-3>
把握する内容としては、例えば、投資先企業のガバナンス、企業戦略、業績、資本構造、リスク(社会・環境問題に関連するリスクを含む)への対応など、非財務面の事項を含む様々な事項が想定されるが、特にどのような事項に着目するかについては、機関投資家ごとに運用方針には違いがあり、また、投資先企業ごとに把握すべき事項の重要性も異なることから、機関投資家は、自らのスチュワードシップ責任に照らし、自ら判断を行うべきである。(後略)

この時点ではEとSはリスク要因としての位置づけですが、2017年の改訂版では次のように、ESG要素がリスクだけでなく収益機会であることを意識した記述になりました。

<指針3-3>
把握する内容としては、例えば、投資先企業のガバナンス、企業戦略、業績、資本構造、事業におけるリスク・収益機会(社会・環境問題に関連するものを含む)及びそうしたリスク・収益機会への対応など、非財務面の事項を含む様々な事項が想定されるが、特にどのような事項に着目するかについては、機関投資家ごとに運用方針には違いがあり、また、投資先企業ごとに把握すべき事項の重要性も異なることから、機関投資家は、自らのスチュワードシップ責任に照らし、自ら判断を行うべきである。(後略)

加えて、注記ではありますが、「ガバナンスと共にESG要素と呼ばれる」という記述も加わり、ESGが明記(?)されました。

今回の改定案では、指針3-3は「運用方針」が「投資戦略」に改められただけですが、原則1(機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たすための明確な方針を策定し、これを公表すべきである)の指針1-1で「ESG」が明記され、確かにこれまで以上にESGの要素を重視する記述となっています
(ここで「ESG」と明記しているので、指針3-3の注記はなくなっています)。

<指針1-1>
機関投資家は、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解のほか投資戦略に応じたESG要素を含む中長期的な持続可能性(以下、「サステナビリティ」という。)の考慮に基づく建設的な「目的を持った対話」(エンゲージメント)などを通じて、当該企業の企業価値の向上やその持続的成長を促すことにより、顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図るべきである。

もっとも、今回の改訂ではESGがキーワードというよりは、(ESG要素を含む)サステナビリティの考慮が強調されていると理解すべきなのでしょう。

蛇足かもしれませんが、指針1-1や3-3を改めて読むと、ESG(特にEとS)であれば何でもいいのではなく、企業価値の持続的な向上につながるかどうかという視点での記述になっていて、ちょっと安心しました。

※写真は「みなとみらいぷかりさん橋」です。

 

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地銀経営の厳しさ

日銀の金融システムレポート

先週24日に日本銀行が半期ごとの「金融システムレポート」を公表しました。
今回のレポートでは定例のマクロ・ストレステスト(目先のストレス発生を想定したテスト)に加え、今後10年間に金融機関が経費削減、非資金利益の拡大といった経営効率の改善に向けた取り組みを行った場合、どの程度の効果が見込まれるかというシミュレーションを行っています。

結果としてはこうした取り組みが行われることの重要性が示されているのですが、特に非資金利益を増やすのはそう簡単ではないこともうかがえます。
レポート(73ページ)によると、コア業務粗利益に占める非資金利益の割合は、地域銀行は概ね横ばいで推移しているのですね。近年の地銀は投資信託や一時払い保険の販売に力を入れていると思っていたのですが、大手行とちがい、右肩上がりではありません。

投信から保険へ

他方でこんなデータもあります。
金融審議会「市場ワーキング・グループ(第25回)」資料によると、金融機関による投資信託の販売額は2017年度に増えて、2018年度は前年割れとなりました。預り残高もやや減り気味です。

     2016 2017 2018
主要行等 3.8  5.0  2.7 兆円
地域銀行 1.7  2.0  1.3 兆円

これを補うようにして伸びたのが外貨建て一時払い保険です(残高も右肩上がりです)。投信よりも手数料率が高いので、見掛けよりも銀行経営には貢献していそうです。

     2016 2017 2018
主要行等 1.1  1.2  1.4 兆円
地域銀行 0.5  0.7  1.0 兆円

非資金利益を伸ばせるのか

このような状況のなかで、外貨建て保険をめぐるトラブルが問題となっているわけでして、金融機関が非資金利益を増やしていくにはハードルがあることもはっきりしてきました。
銀行は商品を提供するだけなので、為替変動や保険会社が破綻するリスクを負っていないのは確かですが、広い意味での経営リスクを抱えるということかと思います。
まさに経営陣によるリスクアペタイトの設定と、その実行が求められているのではないでしょうか。

※水曜日は娘とここでデートでした♪

 

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独自の利益指標

9月20日の日経新聞に「増える独自の利益指標(リンクは有料会員限定)」という記事が載りました。IFRSを採用する企業で「事業利益」「コア営業利益」といった独自の利益指標を開示する企業が増えているというレポートで、武田や三菱ケミカル、アサヒグループなどの事例を紹介しています。
ただ、「比較しにくい難点も」「市場関係者からは懸念の声が上がっている(経営者にとって都合の良いものができる、など)」「IFRSを策定するIASBも企業間で指標を比較しにくいのは問題だとして、対策に乗り出した」など、なんだか否定的なトーンなのが気になりました。

記事をよく読むと、「会計原則に基づかない独自指標を開示する会社が増えている」という話と、「IFRSでは損益計算書のフォーマットを細かく規定していない(原則主義なので)」という話がごっちゃになっているのですね
(全体として「細則主義の日本基準がいい」と主張しているようにも読めます)。

独自指標の開示について、市場関係者は本当に懸念しているのでしょうか。
会計上の指標では事業特性をうまく説明できないということは、IFRSでも日本基準でもよくある話です。身近なところでは損保の「グループ修正利益」がありますね(6月のブログで取り上げています)。
投資家が知りたいのは期間損益そのものではなく、企業価値を評価するうえでの手掛かりです。記事中のコメントにあるように「会社によっては利益を良く見せたいとのインセンティブが働くので見極める必要がある」というのはそのとおりですが、会計ベースの指標しか信じられないということはないと思います。

後者の「原則主義と細則主義のどちらがいいか」という話については、確かに原則主義のIFRSでは企業の裁量に委ねられるところがあるため、開示にばらつきが出るのはデメリットと言えるのかもしれません。しかし、細則主義はルールが詳細に決まっているからこそ、形式さえ整えればいいという発想になり、かえって本当の姿を示さなくなるという欠点があることを忘れてはならないと思います。

※バンコク高架鉄道の優先席です。イラストがかわいいですね。

 

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西村先生の訃報に接して

元大蔵省の銀行局長で早稲田大学名誉教授の西村吉正先生が亡くなりました(8日)。
西村さんといえば、住専問題の国会答弁という印象が強いかもしれませんが、私にとっては大学院時代の恩師として、大変お世話になったかたです。

私は2005年から2008年にかけて西村ゼミに所属し、先生に保険会社の破綻研究の指導をしていただきました。
ゼミでは毎回持ち回りで発表者を務めることになっていて、なんと先生もそのローテーションに入るという貴重なゼミでした。
そういえば2007年の春だったと思いますが、麻疹(はしか)が大流行して大学閉鎖となり、先生の自宅でゼミを行ったこともありました。

他にもいろいろと思い出がありますが、まずは先生のご冥福を心からお祈りします。

金融行政の敗因

西村先生の著作といえば、やはり1999年に出た「金融行政の敗因」を挙げたいと思います。
不良債権問題と対峙した金融行政の当事者が、退職のすぐあとに自らの体験を振り返るというのは、そう簡単ではなかったはずです
(成功体験なら別でしょうけど)。
しかし本書では、自らが関わった大和銀行事件についても、住専処理についても、きちんと振り返り、かつ、反省すべき点を整理しているところがすごいです。

久しぶりに読み返してみると、生保に関連して次のような記述がありました。

「あまり気づかれないが、このこと(=低金利政策)によって生命保険の仕組みに無理が生じていることは非常に重要な問題である。(中略)短期間ならともかく、こんなに長期にわたって異常な金利水準が続くと運営に支障を生じるのは当然である。」

「逆ざやによって生命保険会社の経営は危機に瀕しているが、これも低金利政策の副作用である。それによって経営が破綻し、保険加入者が損害を受けるならば、金融システム維持という根拠とは別の理由で、政策責任者たる国家が何らかの対応を迫られる問題である。」

当時の保険行政は大蔵省銀行局のなかにある保険部が担っていました。
生保の連鎖的な経営破綻は本書が出た後の2000年前後に起きるのですが、1994年7月から2年間銀行局長を務めたかたが「低金利政策の副作用」という言葉を使い、「国家が何らかの対応を迫られる問題」とまで語っているのは、考えてみれば相当踏み込んだ記述だと思います。

もっとも、当時の保険部は銀行局のなかにあったとはいえ、「関東軍」などと揶揄されていたことを踏まえると、別の見方もできるのかもしれません。
結果としては、銀行とはちがい生損保の破綻に公的資金が使われることはなく、しかも「異常」という認識だった低金利はより低い水準で常態化してしまいました。

※写真は2011年3月の最終講義です。
 「なまはげ」はゼミ仲間の懇親会だったかな…

 

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金融行政方針ほか

出張前ということで、今週公表された金融庁と厚労省の資料から手短にコメントします。

金融行政の実績と方針

金融庁は28日に「利用者を中心とした新時代の金融サービス~金融行政のこれまでの実践と今後の方針~(令和元事務年度)」を公表しました。
本文をみると、金融行政の重点施策として最初に「金融デジタライゼーション戦略の推進」を挙げているほか、地域金融について20ページもの記述があります。

保険関係では、「顧客本位の業務運営の定着」「持続可能なビジネスモデルの構築」「ガバナンスの機能発揮」とありますが、保険販売に関わるかたはこちらよりも、27ページからの「販売会社による顧客本位の業務運営」に注目したほうがいいかもしれません。

今回のキーワードの一つは「心理的安全性」ですね。
本文87ページのコラムによると、心理的安全性とは、「一人ひとりが不安を感じることなく、安心して発言・行動できる場の状況や雰囲気」だそうです。もともとは職場等でのチーム構成員とリーダーとの対話場面を想定しているようですが、「金融機関と金融庁の対話に当たっては『心理的安全性』が重要である」と、立ち位置の違いはあるもののフラットな対話を心掛けているとしています。

厚労省若手チームの提言

厚労省は27日に「将来の公的年金の財政見通し(財政検証)」を公表していますが、こちらのレポート(厚生労働省の業務・組織改革のための緊急提言)も興味深く読みました。

2017年に経済産業省の次官・若手プロジェクトが社会構造の変化と中長期的な政策の考え方を示したことがありました。
資料はこちら(PDF)
今回の厚労省若手チームの提言はそうした政策提言ではなく、働き方改革の旗振り役による、自らの改革の必要性を問うものです。別の言いかたをすれば「ブラック企業における現場の悲鳴」でしょうか。
とはいえ、この提言も正式に公表されたものですから、実情はもっとひどいと思って読んだほうがいいのかもしれません。

「国会答弁資料については、国会開会中はほぼ毎日、深夜に全ての部局が作成をした後、各部局の書記室や大臣官房総務課において、質疑者順・質問順・質問ごとに並べ、場合によっては全部で1,000ページ超に及ぶ資料組みを行い、かつ、資料ごとに問番号等を記載したインデックスを付けるという作業を行っている」(本文28ページ)

「厚生労働省においては、平成30年に1,569回の審議会、検討会等を開催しており、この数は、他省庁と比べても圧倒的に多い。この審議会等の会場設営、受付、資料配布などは、各部局の担当者や、担当ラインではない現業業務のある職員の協力により行われている」(29ページ)

「現在、厚生労働省には、ひと月に平均で10万件を超える電話が寄せられてきている。このうちの相当数は、国民の皆様からのご意見、ご要望等であるが、現在の厚生労働省の『国民の皆様の声受付窓口』の体制では、ひと月に千数百件程度しか対応できておらず、残りは全て、本省内で該当政策の企画立案等を担当する職員がその応答等を行っている」(31ページ)

金融庁に在籍していたときに、いろいろと驚いている私に周囲の皆さんが、「他の省庁に比べて金融庁はずっとマシ」と話していたのを思い出しました。
いずれにしても、このままではいけないでしょう。

※娘がついに20歳になりました。
 父と孫娘の誕生パーティーです。

 

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