05. 金融・経済全般

経営者の「逃走」を止める

日経新聞の朝刊に「やさしい経済学」というコラムがあるのをご存じでしょうか(経済教室と同じ面です)。経済に関するテーマを研究者が何回かに分けてわかりやすく解説するというもので、執筆者によっては「やさしくない経済学」だったりもします(個人の感想です^^)。

8月17日からは東京都立大学の松田千恵子さんによる「新時代の企業統治」が始まりました。松田先生はかつて格付会社ムーディーズでアナリストだったかたで、2011年から現在の大学(当時は首都大学東京)を拠点に活躍されています。
1回あたり800字程度しかないコラムでコーポレートガバナンスの解説を行うのは、自分だったら途方に暮れてしまいそうですが、各回とも充実した内容で、かつ、大変わかりやすくて参考になります。

19日のコラム(3回目)では近年の日本のガバナンス改革について触れ、

 守りのガバナンス:経営者の「暴走」を止める
 攻めのガバナンス:経営者の「逃走」を止める

とありました。「逃走」という表現はこれまで思いつかなかったので、社外取締役の経験も豊富な松田先生ならではの表現なのかもしれません。そういえば松田先生は以前、別のコラムで「社外取締役」という言葉のおかしさについても書いていました。

「それ(=社外取締役という言葉)が意味を持つのは、終身雇用の下で『ウチの論理』が通用する身内を大事にしてきた企業だけだ」(2018年12月25日の日経夕刊コラム「十字路」より引用)

今回の連載はこれまでのところ、(1)経営者の暴走を防ぐ仕組み、(2)従業員を律する内部統制、(3)「攻め」の経営で成長促す、(4)未分化だった「監督」と「執行」、と続いてきました。おそらく全10回ですので、後半のコラムも楽しみにしたいと思います。

※今シーズンも各種かき氷を美味しくいただきました♪

 

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法人税のいびつな構造

今回のブログはインシュアランス生保版(2021年8月号第1集)に執筆したコラムのご紹介です(見出しはブログのオリジナルです)。
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国の税収が過去最高を更新

財務省によると、2020年度の国の税収総額が前の年度を4%上回り、過去最高を更新した。コロナショックの影響で名目GDPが4%も減ったにもかかわらず、法人税は増え、19年10月の税率引き上げ効果もあって消費税も増えた。もっとも、一般会計の歳出はコロナ対応もあって税収の2倍に膨れ上がっていて、増収効果は霞んでしまっている。

名目GDPが減っても法人税が増えたのは、「携帯電話やゲーム、自動車、食品といった産業の業績が好調」「米国や中国などの景気回復の恩恵もあり、製造業を中心に業績は底堅い」(いずれも日本経済新聞より引用)とのこと。08年のリーマンショック後には法人税が大きく落ち込んだのとは対照的である。新型コロナの影響で観光業や飲食業を中心に売り上げが大きく落ち込み、各種の中小企業支援策が実行されている状況なのに、「業績が底堅い」とはどういうことなのか。
推測を含むが、今回のコロナショックで影響を受けた中小企業は、もともと法人税をあまり納めていなかったので、税収への影響が小さかったと考えると、納得がいく。

誰が法人税を納めているか

最近公表された国税庁による令和元年度分の会社標本調査によると、利益計上法人は全体(274万社)の38%にすぎず、6割以上が欠損法人である。しかも、当年度の法人税11兆円のうち、会社数では0.6%にすぎない資本金1億円超の法人が約5割を負担し、資本金5千万円超(会社数では2.5%)まで広げると約6割を負担している。つまり、法人税の多くを負担しているのは少数の大企業であり、中小企業は法人税をあまり納めていないという実態が浮かび上がる。

このところ欠損法人の割合は年々下がっている。12年度には70%だったものが、19年度は61%となった。ただし、この間の変化は景気回復による業績の改善を示しているというよりは、高齢化に伴う廃業のほか、国税庁の尽力により、節税対策が年々難しくなってきたことも大きいように思う。経営者の皆さんにも心当たりがあるかもしれない。それでも6割の企業が法人税を納めていないというのはまともな状態ではない。

適切な支援のあり方は

こうした法人税のいびつな構造を踏まえると、政府が税収を増やすには中小企業への補助金的な支援ではなく大企業の生産性向上を支援し、かつ、消費税を支払う消費者を支援するのが合理的という結論になる。おそらく財務省はそんなことはわかっているのだろうけど、政治からの要請もあり、何かあると「中小企業支援」となってしまうのだろう。
見込みを上回った税収も、経済対策として多くが中小企業向けに使われてしまいかねない(国債の償還財源となる分を除く)。給与天引きによって確実に税金を徴収される勤め人のひがみに聞こえるかもしれないが、実際に誰が税金を納めているかを明確に示し、そのうえで税金の使い道を議論してほしい。
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※写真はハウステンボスの夜景です

 

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なぜ「他社の経営経験」なのか

7月16日(金)に日本代協 阪神ブロックWebセミナーで講師を務めました。
演題は「2020年度決算にみる大手損保グループの経営戦略」で、大手損保グループの経営が依然として市場環境の変動によって大きく振れることや、損保4社の各種指標の違いなどをご覧いただいたうえで、中期経営計画の注目点をお話ししました。いかがでしたでしょうか。

阪神ブロックといってもzoomを使ったセミナーだったので、私は福岡でスピーチを行いましたし、おそらく参加者の皆さんも各地に広がっていたのではないかと思います。懇親の場がなく、参加者の反応がわからないのは残念ですが、便利な時代になりました。

社外取締役の要件

最近、授業でコーポレートガバナンスの話をしていて、改めて気になったことがあります。
現在のコーポレートガバナンス・コードの補充原則4-11①の最後に、「独立社外取締役には、他社での経営経験を有する者を含めるべきである」とあるのをご存じでしょうか。2021年6月の改訂時に加わった文言です。
CGコード(修正履歴付きPDF)

改訂について議論したフォローアップ会議の資料によると、「独立社外取締役には、企業が経営環境の変化を見通し、経営戦略に反映させる上で、より重要な役割を果たすことが求められるため、他社での経営経験を有する者を含めることが肝要」なのだそうです。
しかし、そもそも日本のコーポレートガバナンス改革は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指すものであり、その背景には日本企業の経営陣が適切なリスクテイクをせず、株主に求められる資本コストを上回るリターンを総じて稼げておらず、世界に差をつけられてしまっていることがあります。それなのに「他社の経営経験を有する者を含めるのが肝要」とはどういうことでしょうか。
他社の経営経験者となると、多くの場合、日本企業の社長OBなどが候補になることを想定しているのでしょう(CEO等の経験者に限られるという趣旨ではないとはありますけど…)。しかし、過去30年間の日本の経営が総じてうまくいかなかったから、政府がガバナンス改革を進めているのですよね。どうしてこのような改訂になったのでしょうか。

なお、ガバナンス特集を組んだ週刊東洋経済(2021年7月10日号)のインタビュー記事で、東レの日覺社長は「(企業によって事業や状況は全く異なるので)よその経営経験者に社外取をお願いして経営方針を相談し、「いい意見をもらった」と喜ぶトップがいるのならば、そのトップはすごくレベルが低いから今すぐ辞めたほうがいい」と語っていました。
日覺社長は「会社の大事なことは社外の人間ではなく、事業をよく理解している社内の人間で話し合って決めるべきだ」とも語っていて、私の問題意識とはやや異なるようですが、社外取締役に何を期待するのかを考えると「他社の経営経験を有する者を含めるのが肝要」という結論にならない点は同じでした。

※15分の船旅を楽しみました。

 

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ガバナンス強化で稼ぐ力を高めるには

いきなり理屈っぽい話で恐縮ですが、企業価値を測るには、ファイナンス理論では将来キャッシュフローを資本コストで割り引いて算出します。将来キャッシュフローはその企業が事業から生み出すであろう「稼ぎ」であり、資本コスト(株主資本コスト)は事業のリスクに応じて株主が要求するリターンです。

ですから、例えば第一生命グループが最近、リスクテイクのあり方を変えることで資本コストの低下を目指すという経営計画を打ち出したのは、「分子の期待値は下がってしまうかもしれないけれど、それよりも分母を小さくすることができれば企業価値が高まる」という考えに基づくものだと考えられます。

これに対し、ここ数年、政府主導で進んできた日本のガバナンス改革は、分子の稼ぐ力を高めることを目指してきました。いわゆる「攻めのガバナンス」です。とはいえ、ガバナンス改革が分子・分母どちらに働きかけることになるかは、実証分析の蓄積を待たないと、何とも言えないように思います。

例えば、東証一部では2名以上の独立社外取締役を選任する会社が、2014年度の約2割から、今や9割を超えています。監査等委員会設置会社も増え、経営における監督と執行の分離が(少なくとも形としては)だいぶ浸透してきました。
しかし、社外取締役は総じてその会社が強みとするビジネスモデルに精通しているわけではないため、株主が社外取締役に期待するのは分子を高める役割よりも、まずは不祥事の防止など分母を下げる役割を期待するかもしれません。
あるいは、もし社外取締役のアドバイスを受けた経営陣がリターンの追及に舵を切ろうとしても、株主はそれを求めるかもしれませんが、他のステークホルダーは過度なリスクテイクだとして、リターンの追及にブレーキをかけようとするかもしれません。

そう考えると、ガバナンスの強化によって分子の将来キャッシュフローを高めるには、経営陣が常にリスクを意識した経営を行うこと、つまり、リスク・リターン・資本の3つを同時にコントロールして、それをきちんと説明できることが大前提となります。ガバナンスの強化とリスクマネジメントの高度化はセットで取り組むべきです。
少なくとも、リスクマネジャーを置かず、保険を相変わらず人事部や総務部で手配しているような会社では、攻めのガバナンスは期待できないし、やるべきでもないということですね。

※写真は博多駅です。

 

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選ばない消費者

キャピタスコンサルティングの保険チーム3人で執筆した『経済価値ベースの保険ERMの本質』の第2版が出ました。
初版の発行からまだ4年弱しかたっていませんが、経済価値ベースのソルベンシー規制導入を提言した金融庁有識者会議報告書の発表(2020年)を受け、新たな記述を加えることができました。ご覧いただければ幸いです。

さて、少し前の日経MJ(日経流通新聞)に「選ばない消費者」の話が出ていて、思わず目を留めました(5月12日付)。
今の若い世代は欲しい情報をネットで検索して収集するのではなく、アルゴリズムによって自らの嗜好に合った情報がSNSで提供されるので、検索しなくても自然と集まった情報のなかから欲しいものを購入する「選ばない消費者」となりつつあるそうです。

昔はテレビなどのマスメディアから受動的に情報を得ていた消費者が、ネットの出現により「比べて購入」が一般的になりました。保険の購入もそうですよね。かつては職場や家庭を訪れた保険募集人から話を聞き、おすすめプランを購入するだけだったものが、ネットの比較サイトなどで事前に調べてから保険募集人の話を聞く(あるいは事後的に調べる)のが当たり前となりました。

ところが時代が進み、私たちは日々スマホで膨大な情報に接するようになり、欲しい情報を探し当てるのが難しくなっています。どこかに情報はあるのだけど、見つけるにはそれなりに労力がかかりますし、疲れます。
そのようななかで、SNSはAIを使って利用者の好みを把握し、好みに合った情報を優先的に示しますので、利用者はいちいち検索しなくても欲しい情報が手に入る、すなわち、「選ばない消費者」が登場するというわけです。
偏った情報しか目に触れることがないというのは私にはかなり抵抗がありますが、SNSネイティブの世代にはむしろ心地よく感じるのかもしれません。

※近所のお店でマリトッツォを発見。思わず衝動買いしてしまいました。

 

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CGコードの改訂

4月6日にコーポレートガバナンス(CG)コードの改訂案が公表されました。
公表資料はこちら

改訂のポイントとして挙がっているのは、次の項目です。

・取締役会の機能発揮(プライム市場における独立社外取締役の選任など)
・企業の中核人材における多様性の確保
・サステナビリティを巡る課題への取組み
・上記以外の主な課題

東京証券取引所が準備を進めているプライム市場に関するものが目立ちますが、私が注目したのは、取締役会等の責務として初めて「ERM」が加わったことです。
これまでも基本原則4の「経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと」のもとで、補充原則4-3④に取締役会が監督に重点を置くべきものとして「先を見越したリスク管理体制の整備」がありました。これが今回の改訂案では「先を見越した全社的なリスク管理体制の整備」となり、取締役会が監督すべきものとなりました。ERMという用語こそ登場しないものの、過去の資料や議事録(例えば3月9日)からすると、ERMを意識した記述と考えられます。
資料・議事録はこちら

日本のCGコードは、経営者による過度なリスクテイクを抑えるというよりは、取るべきリスクをきちんとテイクするように促す、いわば攻めのガバナンスです。そのなかでERMが取り上げられたというのは自然な流れだと思います。

※写真は柳川の川下りです。

 

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プライム市場と流通株式

本題の前にいくつかご案内です。

損保総研のセミナー

1月26日(火)の夜に損保総研の特別講座で講師を務めます。
演題は「新たな健全性規制下における保険経営のあり方 ~アカデミズムの視点も含めて~」で、今回はweb配信のみとなっています。19:00から1時間お話しして、その後質疑応答とのこと。ご関心のあるかたは(有料ですが)ぜひご参加ください。1月19日締め切りだそうです。

保険毎日新聞のインタビュー記事

業界紙・保険毎日新聞に2020年4-9月期決算についてのインタビュー記事が載りました。14日が主要生保、15日が3メガ損保グループです。
それぞれ見出しだけご紹介すると、主要生保では「金融市場の回復が追い風に」「価格変動リスクを抑える動きも」「コロナ禍で各社の強み問われる状況に」、3メガ損保では、「海外事業を国内事業がカバー」「コロナ禍の活動制限がプラスに作用」「余剰人員の活用が今後の課題に」となっています。

さてさて、本題はこちらです。
昨年末に東京証券取引所から、取引所の市場区分を見直し、現在の市場第一部、市場第二部、マザーズ、JASDAQ(スタンダード・グロース)の5区分を改め、「スタンダード市場」「プライム市場」「グロース市場」の3区分に再編するという案の発表がありました。
詳しくはこちら(市場区分の見直しに向けた上場制度の整備について(第二次制度改正事項))をご覧ください。

市場区分の見直しとともに、東証は市場における流動性(=売買実績)を確保するために「流通株式」の定義を見直し、銀行や保険会社、事業法人等が持つ株式を、保有割合に関わらず流通株式から除くことにしました(現在は上場株式数の10%以上を所有する場合に除くルール)。
プライム市場の上場基準となる流通株式比率は35%以上(スタンダードとグロースは同25%以上)なので、銀行や保険会社、事業法人が安定株主となっている銘柄はプライム市場に上場しにくく、この基準によって政策株式の売却を加速させる狙いがあるのかもしれません。

ただし、所有目的が「純投資」であれば、銀行や保険会社が保有していても流通株式として取り扱うそうです。
3メガ損保グループが保有する株式は大半が政策保有株式なので流通株式から除く一方、大手生保の保有する株式は多くが「純投資」とされているため、流通株式として扱われます。結果として、生保の株式保有が増えるなんてことにならないかどうか、注目していく必要がありますね。

※この週末の福岡は好天で何よりでした。

 

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「半沢頭取」報道に思う

三菱UFJ銀行の頭取に半沢淳一常務が昇格するという人事(24日発表)を先取りする報道が22日にありました(日経、朝日、NHKなど多数)。

「計13人いる副頭取と専務を抜き、同行で初めて常務から頭取になる」(日経)
「テレビドラマ『半沢直樹』の原作者で、1988年に当時の三菱銀行に入行した池井戸潤さんとは同期だったということです」(NHK)

つまるところこの2点だったのですが、何だかなあという感じでしたね。

まず、持株会社の「指名・ガバナンス委員会」ではまだ決定していなかったのに、名前が出てしまったこと。関係者(必ずしもMUFG関係者とは限りません)がリークしたのでしょうけど、もし私が指名・ガバナンス委員会の委員だったらこうした報道は嫌ですよね。委員会とは別のところで人事が決まっているように思われてしまいますので。
トップ人事を発表前に出すのが重要なのは報道業界内部の価値観であって、情報の受け手にとって価値があるとは思えませんし、むしろ迷惑なことが多いと思います。

それから「若返り」「13人抜き」ですが、確かに金融界で55歳は若いです。ただ、「若返り」「13人抜き」という報道は、そもそも新卒生え抜きが経営幹部となることを前提にしたものです。外部人材だったら「〇人抜き」なんて記事にはなりませんよね。
「半沢さん」に話題性があるのはわかります。しかし、グローバル化を進める金融グループの幹部人事を、いつまで「社長が次の社長を決める」「日本人・中高年男性・新卒生え抜き」を前提に語るのでしょうか。

ちょうど数日前に「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」から「コロナ後の企業の変革に向けた取締役会の機能発揮及び企業の中核人材の多様性の確保」という提言が出ていますし、このような資料(取締役会の機能発揮と多様性確保(PDF))も参考になりますので、22日の人事報道に疑問を持たなかったかたはじっくりお読みいただければと思います。

※全くの個人的興味で恐縮ですが、ようやく訪問できました。

 

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今回の金融システムレポート

日本銀行が4月と10月に発表している金融システムレポートの最新版が出ています。
今回はコロナウイルスの感染拡大による影響が金融面でどのように表れているのかがわかります。図表をざっと眺めるだけでも参考になりそうです。

1か所だけ紹介すると、例えば2008年のリーマンショック時と比べた分析では、次のような評価が書かれています。

・感染症の拡大に伴う売上の減少により、中小企業の流動性と自己資本には、リーマンショック時よりも強いストレスが加わっているとみられる。

・もっとも、こうしたもとでも、中小企業全体では流動性や自己資本を手厚く確保する先が趨勢的に増えていたため、企業金融支援策が⼀切行われなかったと仮定した場合でも、手元資金が枯渇したり、債務超過に陥ったりしたであろう先の割合は、赤字先割合ほど大幅に上昇しない。

・最も強いストレスを受けている飲食・宿泊・対個人サービスを含め、この間の支援策は、流動性面のストレスに起因するデフォルト率の上昇圧力をほぼ相殺する効果を有している。

35ページの図表「地域別にみた企業の自己資本比率と現預金比率」は主要企業のものですが、この20年間の日本企業の自己資本比率や現預金比率が顕著に右肩上がりとなっているのがわかります。

確かに今回のようなストレス時には、こうした手元流動性や自己資本を手厚くする行動が吉と出ました。ただ、企業はストレスに耐えるために存在しているのではなく、リスクをとってリターンをあげるための存在ですので、これは手放しでほめられる話ではないのでしょうね。

※実家の武家屋敷が文化財に指定されている高校時代の友人に会ってきました。熊本です。

 

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新型コロナ禍は次のステージへ

今週のInswatch Vol.1054(2020.10.12)に寄稿したものです。
7-9月期の対面販売の数字はまずまずだったようですが、楽観視できないかもしれません。
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4-6月期の結果は異常値だが...

先月のInswatchでお伝えしたように、対面販売を主体とする生命保険会社では4-6月期に新規契約の獲得が極端に落ち込みました。7月の新規契約件数も前年同期に比べて45%の減少となりました(個人保険、生保42社合計)。
もっとも、4-6月期は緊急事態宣言が出され、営業活動を自粛していた期間だったため、落ち込みは当然の結果と受け止めることもできます。自動車保険の損害率が極端に改善したのも、経済・社会活動の自粛が強く影響していますので、これらは「異常値」と言えそうです。
社会から保険需要が消えてしまったわけではなく、むしろ不安心理の高まりが保険需要を掘り起こしている面もあるので、以前と同じような営業活動さえ再開できれば、業績は自ずと回復するはず。一時的ショックであれば、このように考えるのが自然です。

一時的ショックにとどまらない兆しも

期待に水を差すようで申しわけありませんが、新型コロナウイルスの感染拡大から半年ちょっと経ち、残念ながら一時的なショックでは済まない兆しが少しずつ見えてきました。
夏ごろまでは、活動自粛の直撃を受けた飲食業や旅行業など一部の業種を除き、新型コロナ禍でビジネスが蒸発するという状況ではなかったように思います。ところが、経済・社会活動の制限が一時的なものではなく、コロナ前の状態には当面戻れそうにないことがわかってきました。いったん感染が収まっても、しばらくすると再び感染が増え、活動を抑えざるをえなくなります。有効なワクチンが広く普及するまではその繰り返しです。
このため、影響は一部の業種だけではなく、全般的な個人所得の低迷や設備投資の減退などにつながる可能性が高まっています。そうなると、当然ながら保険需要も影響を受けるでしょう。

1日に発表された9月の日銀短観(全国企業短期経済観測調査)では、最も注目される「業況判断」が改善したため、景況感の悪化に歯止めがかかったという見方も出ているようです。しかし、同じ短観の「設備投資額(2020年度)」を見ると、製造業、非製造業ともに計画が下方修正され、全規模・全産業ではマイナスとなりました。設備投資の落ち込みは経済全体に波及しますので、要注意です。

金融市場の動向も安心できない

多くの生命保険会社は保険引受リスクよりも、金融市場の変動が経営に最も影響を与えるリスク要因となっています。
3月に新型コロナの感染拡大で金融市場が動揺したものの、その後は比較的安定しています(ただし、金利水準は世界的に極めて低い水準のままで、回復していません)。しかし、新型コロナ禍の影響が実体経済にどのような形で波及するかは不透明であり、金融市場が再び大きく動くこともありえます。保険会社はあらためて自社のリスクの取りかたを考え、必要な見直しを行う局面だと思います。

※出張で京都に来ています。

 

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