04. 保険商品、チャネル

生命保険の加入状況

大学のゼミの関係で、生命保険文化センターによる「生活保障に関する調査」で生命保険の加入状況について確認する機会がありました。
生命保険の加入状況の調査といえば、同じく生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」が有名ですが、「生活保障に関する調査」でも個人ベースの加入状況を調査しています。いずれも3年おきの調査です。

例えば次のようなことがわかります。

【加入率】
・2025年の生命保険・生命共済の加入率(個人年金やグループ保険を除く)は80.0%で、この20年間は概ね横ばいで推移。
・いわゆる保障中核層にあたる30代男性、40代男性の加入率がいずれも低下傾向なのに対し、60代男性と60代女性の加入率が上昇傾向。

【2025年の加入状況・加入意向】
・払込保険料(一時払を除く生命保険・個人年金)は平均17.8万円で、一貫して減少傾向が続く。
・生命保険加入金額は996万円(男性1,439万円、女性661万円)で、一貫して減少傾向が続く。
・他方、必要と考える死亡保険金は30代男性が平均3,025万円、40代男性が2,728万円。
・死亡保障に対して「準備意向あり」は、30代男性が67.6%、40代男性が74.1%と意外に高い。

【直近加入契約の加入のきっかけ】
・30代男性、40段男性は「家族や友人などにすすめられて」「結婚をしたので」「子どもが誕生したので」などが上位。
・60代男性、70代男性、70代女性は「営業職員や窓口ですすめられて」がトップ。

【直近加入契約の加入チャネル】
・男女ともに「営業職員」がトップだが、30代男性と40代男性は「保険代理店」も多い。50代男性と60代男性は「営業職員」が回答の過半数。
・情報入手経路でも、50代男性と60代男性は約4割が「営業職員」と回答。
・今後の加入意向のあるチャネルは、50代男性と60代男性・女性は「営業職員」で、他の年代は「営業職員」「通信販売」「保険代理店」が拮抗。

以上、ざっとデータを眺めたところ、営業職員チャネルは30代や40代にうまくアクセスできておらず、チャネルとしての認知度も必ずしも高くはなく、結果として営業活動の中心が50代以上(おそらく既契約者が中心)となっているようです。だから一時払終身なのでしょう。
営業職員への回帰どころか、ビジネスモデルの機能不全が着実に進行しているのではないでしょうか。

※写真は築地市場に向かう貨物線の遺構です。

 

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大手損保グループの決算資料から

保険代理店向けメールマガジンInswatch Vol.1332(2026.6.15)に寄稿した記事を当ブログでもご紹介いたします。
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自動車保険の契約台数が減少

5月下旬に公表された決算関連資料およびIR資料から、大手損保グループの主に自動車保険に関するデータを確認してみました。
まず、近年の料率引き上げを反映し、2025年度の大手4社(東京海上日動、三井住友海上、あいおいニッセイ同和、損保ジャパン)の収入保険料はいずれも高い伸びとなりました。ただし、前年度と違い、契約台数の落ち込みが目立ちます。損保ジャパンは微減にとどまったものの、他の3社は1~2%程度の減少で、ここまで減ったのは過去10年間で初めてです。

その一方で、東京海上ダイレクト(昨年10月にイーデザイン損保から商号を変更)と三井ダイレクト損保(来年4月に三井住友海上ダイレクト損保に商号変更予定)の収入保険料が急増しています。東京海上の場合にはブランド変更に伴う効果もありそうですが、物価上昇が続くなかで契約者の一部がダイレクト型損保に移っている可能性があります。
東京海上とMS&ADのIR資料からは、個人向けには従来よりもダイレクトチャネルで対応しようという姿がうかがえます。物価上昇で契約者が価格に敏感になっているというだけではなく、(そうは書いてありませんが)自立していない代理店の顧客にはダイレクト型への移行を促すなど、ポスト損保問題におけるチャネル戦略の一環として、グループ内のダイレクト型損保を再定義したのかもしれません。

収支改善は道半ば

ただし、これだけ料率を引き上げてきたにもかかわらず、自動車保険の損害率は高止まりしたままです。
ざっくりした収支動向をつかむため、EIベースの損害率(既経過保険料に対する発生損害額の割合)と事業費率を加算したコンバインドレシオを見ると、前年度よりも下がったとはいえ、25年度も東京海上日動を除く3社で100%超となりました。前年度は自然災害の影響もあったので、実質的にはほとんど下がっていないと言えます。支払保険金の約8割は車両保険と対物賠償責任保険なので、事故件数が横ばいのなかで、インフレによる修理費単価の上昇が続いている模様です。

手数料率の低下を見込む

他方で、事業費率は低下しました。自動車保険に限った事業費の内訳は公表されていないので、全社ベースとなってしまいますが、25年度は収入保険料に占める「諸手数料及び集金費(=大半が代理店手数料)」の割合が各社とも一段と下がりました。
3グループともに今後も事業費率の低下を見込んでおり、そのなかには代理店手数料率の低下も含まれています。IR資料によると、東京海上は「新たな業務分担&手数料体系で代理店手数料の総額は減少」、MS&ADは「品質を重視した手数料体系へのスムーズな移行により、手数料合計の削減を見込む」。SOMPOは「高リスクセグメント契約や長期契約に対する基準手数料の引き下げ等を通じ、リスク実態に見合った適正なコスト構造へ転換」とありました(一部記述を修正)。
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※写真は大村(長崎県)です。

 

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自賠責保険の料率引き上げ

メディアでも報じられた通り、4月30日開催の自動車損害賠償責任保険審議会での了承を受けて、11月1日から自賠責保険の基準料率が平均6.2%上昇することとなりました。内訳は純保険料率が1.9%の引き上げ、付加保険料率(社費と代理店手数料)が4.3%の引き上げです。
詳しくはこちら(損害保険料率算出機構のサイト)をご覧ください。

業界のかたには釈迦に説法かもしれませんが、同じ自動車保険でも、自賠責保険と任意保険では支払保険金の内訳が大きく異なります。
自賠責保険は対人賠償責任しかカバーしていないので、当然ながら支払保険金は自動車事故による死亡や後遺障害、傷害への賠償責任に限られます。これに対し、任意保険では支払保険金の約8割を車両保険と対物賠償責任が占めています。両者の保険金の大半は修理費なので、近年の物価上昇の影響を強く受けていることがわかります。

では、物価上昇の影響を受けにくいはずの自賠責保険の料率がなぜ上げるのかというと、付加保険料部分(主に物件費)が物価上昇の影響を受けているのと、料率引き下げに活用してきた滞留資金の残高調整が必要になったためだそうです。自賠責保険はノーロス・ノープロフィットの原則で運営されていて、社費部分も当てはまります。

ちなみに、2020年の民法(債権法)で法定利率が年5%から3%に下がり、支払保険金が増加するとみられていました(逸失利益の計算で割引率が小さくなるため)。ただし、料率算出機構「自動車保険の概況」を見るかぎりでは、2021年に死亡保険金の単価がやや上昇したものの、その後は高齢者割合の増加などに吸収され、大きな影響を及ぼしてはいない模様です。

※船旅と在来線特急の旅を楽しみました

 

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プルデンシャル生命の金銭不祥事

プルデンシャル生命保険の営業社員(退職者を含む)100名以上が、顧客から金銭をだまし取るなどの不適切行為を行っていたというショッキングな事件が発覚しました。
会社が2024年8月から「お客さま確認」を行った結果の概要はこちら(PDF)です。

23日の記者会見をネットで視聴しました。会社は不祥事を招いた原因について、次の3点を挙げています。
1.営業社員の活動管理および報酬制度上の課題
2.経営管理態勢の課題
3.組織風土の課題

不適切行為は1991年からとのことでしたが、同社のLP(ライフプランナー:営業社員)チャネルが変わっていったのは、おそらく2010年代ではないかと見ています。
創業者である坂口陽史氏が築いたLPチャネルは、単に米国流のフルコミッション・モデルを日本に導入したというのではなく、「顧客に生命保険の魔法の力を届ける」という強烈な使命感に支えられていたという認識です(なんとなく宗教的でもありましたが…)。
その後、2001年に親会社の米国プルデンシャルが株式会社化・上場を果たし、2002年に坂口氏が亡くなってからも、おそらくこうした「坂口イズム」はしばらく変わらなかったのだと思います。しかし、2008年からのグローバル経営危機を経て、グループのなかで安定して高い利益を上げていた日本事業への期待が高まる一方、2013年からの日銀による大規模な金融緩和政策で円金利が一段と低下し、それまでのように円建ての終身保険を中心に提供するのが難しくなるなかで、同社は外貨建ての資産形成を意識した保険に舵を切ることとなった模様です。こうした商品戦略の変更が会社の意向なのか、LP主導なのかはわかりませんが、例えば2019年度の新契約年換算保険料の8割弱は外貨建てでした
(ちなみに近年は外貨建てと変額保険の2本柱となっています)。

金融庁は今後どう動くのでしょうか。不祥事への直接的な対応を別にすると、ポイントは2つあると思います。
1つは、同社が示した再発防止策で十分と考えられるかどうかです。
フルコミッション型の報酬はLPだけではなく、営業管理職も同じなので、新契約業績重視の組織風土を払拭するにはビジネスモデルそのものの抜本的な見直しが必要となります。会見では今後報酬制度を見直し、LPの管理を強化し、経営管理態勢を改善するとのことですが、それが正しい処方箋なのかどうか。
そもそも金銭不祥事を起こしたLPがなぜ不祥事に走ってしまったのかを、会社は十分理解しているのでしょうか。不祥事を起こしたLPを擁護するつもりは全くありません。ただ、「業績に過度に連動する報酬制度は、金銭的利益を重視する志向を持つ人材を引き付け、営業社員の収入の不安定さが不適切行為につながるリスクを増大させていました」「金融機関社員として不適切な人材が採用されないよう、採用のプロセスを強化いたします」といった記述を見ると、どこか違和感を感じてしまいます。近年では毎年在籍者の1割強のLPが退職しているようですし、問題の根幹は「不適切な人材」なのでしょうか。

もう1つは、フルコミッション・モデルそのものにメスを入れるかどうかです。つまり、これはプルデンシャル生命だけの問題なのか、あるいは、このモデルで顧客本位の業務運営を行うにはリスクが大きすぎると判断するかどうか。
昨年8月に金融庁(関東財務局)が行政処分を行ったFPパートナーの件では、顧客の意向よりも代理店経営の都合を優先する実態が明らかになりました。損害保険会社も昨今の問題発覚を受け、代理店手数料のうち規模や増収に連動した部分を抑え、試行錯誤はあるにせよ、業務品質を重視する方向に進んでいます。
こうした事例・潮流を踏まえると、フルコミッション・モデルの保険販売をそのままにしておくことはできないと考えるのが自然です。

長くなりましたが、とりあえずコメントまで。

※NHK福岡です(番組出演ではありません)

 

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生保の営業職員チャネル(続き)

主要生保の4-9月期決算が出そろいましたので、前回の続きとして、公表資料から営業職員チャネルの販売動向を確認してみましょう。
日本生命、住友生命、明治安田生命はチャネル別の新契約年換算保険料や保険料収入などを「説明資料」のなかで開示しています(日本生命はグループベースなので大樹生命の営業職員を含む)。第一生命はグループのなかでチャネル別に会社を分けているので、第一生命の数値を営業職員チャネルのものとみなすことにしましょう。

各社の営業職員チャネルによる新契約年換算保険料(ANP)は以下の通りでした(カッコ内は前年同期比)。

日本 1042億円(+ 8.8%)
第一  530億円(▲ 5.4%)
住友  332億円(+22.1%)
MY  727億円(+68.4%)

他方で各社は「保障性商品」の新契約ANPも開示しています(日本生命は「主要保障性商品」、住友生命と明治安田生命は「保障性商品」として開示。第一生命は非開示だが「一時払い終身商品は主戦場ではない」と社長が言明しているので個人保険の数値を掲載)。

日本  323億円(▲ 5.6%)
第一  299億円(+21.0%)
住友  144億円(+ 7.1%)
MY  153億円(▲ 9.1%)

参考までに、第三分野(生前給付保障、医療保障等)の新契約ANPは以下の通りでした。

日本  217億円(+ 2.1%)
第一  229億円(+21.2%)
住友  141億円(+ 2.5%)
MY  180億円(▲20.0%)

これらの数値および日経報道などを踏まえると、第一生命はやや傾向が違うようです(昨年度に個人年金の販売が急増した反動あり)が、総じて円建て貯蓄性商品の予定利率を引き上げた会社の新契約ANPが大きく増えたことと、保障性商品の販売は引き続き低調であることがうかがえます。同じく営業職員を中核チャネルとする朝日生命や富国生命でも、同様の傾向が見られるようです。

とすると、気になるのは次の2点です。1つは「円建て貯蓄性商品の販売による弊害はないか」です。金利上昇時の解約リスクについて、今の情報開示では手掛かりがほとんどなく、営業職員チャネルとはいえリスクを貯めこんでいないかどうか心配です。収益性も気になりますし、さらに言えば、保障性商品の販売につながるものなのか、あるいは、そもそも貯蓄性商品の提供に軸足を移すのか、といったチャネル戦略も気になります。
もう1つは、保障性商品の提供に軸足を置き続けるのであれば、前回のブログでもコメントしたように「今の採用数や採用方針を続けるのかどうか」です。
このような視点で今後も見ていきたいと思います。

※飯塚市の旧伊藤伝右衛門邸を訪問しました。

 

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生保の営業職員チャネル

1週間ほど前の日経新聞に「生保が営業職の定着策(会員限定)」という記事が出ていました。生保各社が営業職(営業職員のことでしょうか?)の退職を減らす取り組みに力を入れているというもので、主要8社の在籍率の推移を調査したそうです。

まず、8社の調査をしたのであれば、8社のデータ(1年後から5年後まで)を記事中で使うだけではなく、そのまま出してほしかったです。紙の新聞はスペースの制約があるものの、電子版にはありません。メディアはファクトを出すのが重要な役割ではないでしょうか。

そのうえで、入社5年後の在籍率25%というのをどう考えるかです。
拙著『利用者と提供者の視点で学ぶ 保険の教科書』の150ページには、次のような記述があります。

「2005年に発覚した保険金不払い問題を経て、各社は新契約に過度に偏重した営業活動を改め、顧客訪問活動など既契約を重視する営業活動に舵を切りました」

「採用後の教育を重視し、固定給を増やすなど、早期退職を減らす取り組みもターンオーバー(大量採用・大量脱落)の改善に効果を上げたと考えられます」

確かに採用後1年程度で辞めてしまう営業職員はかなり減りました(記事には入社1年後の在籍率が平均71%とありました)。
在籍する営業職員の協力によって採用となった新人職員が、地縁・血縁に頼った販売が一巡すると営業活動が滞ってしまい、早々に退職に追い込まれるとともに、その職員が獲得した保険も短期で解約となるというパターンは、かつてに比べれば減っているのかもしれません。
もっとも、5年後の在籍率が25%まで下がってしまうということは、採用後の教育を重視し、育成期間の固定給を増やし、既契約重視の営業活動に舵を切っても、「採用⇒縁故販売⇒退職⇒解約」というパターンは変わっておらず、サイクルが長くなっただけという可能性もあります。

早期退職は減っていても、大手各社の公表データをつなぎ合わせると、営業職員による保障性商品の販売は総じて低調です。教育制度の拡充や給与体系の改善で在籍率が多少改善したとしても、このビジネスモデルが今後も持続可能なのかという疑問は残ります。

生命保険は本来、主に個人の生死にかかわるリスクマネジメントの手段の1つです。もちろん、ネットが普及した世界でも、「信用できる相手から話を聞いて買いたい」というニーズはあるでしょう。
しかし、いくら「生命保険(保障性商品)はニーズがネガティブなのでプッシュが必要」とか、「○○さんが勧めるのだから大丈夫」ということはあるにしても、そもそも大手4社合計で毎年2万人も採用し、資格取得によるふるい落としもほとんどない職員が、リスクへの備えを相談する相手となりうるのでしょうか。そこに根本的な疑問があるのですね。貯蓄性の強い商品であれば、なおさらです。

個人差がかなり大きいのは承知のうえで、問題の本質は営業職員の退職ではなく、今の採用数や採用方針を続けるのかどうかではないかと思います。

※秋の深まりを感じます。福岡大学にて。

 

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自然災害と車両保険

保険代理店向けメールマガジンInswatch Vol.1300(2025.10.13)に寄稿した記事を当ブログでもご紹介いたします。なんと、1300号なのですね!2000年8月が1号なので、26年めということでしょうか。おめでとうございます。
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地下駐車場での冠水

先月、三重県四日市市の地下駐車場が大雨で浸水し、200台以上の車が冠水するという事故がありました。本件では防水設備の不備により施設管理者の責任が問われるかもしれませんが、原則としては駐車場で冠水した車の修理は車の所有者が行うことになっています。
このようなときに役に立つのが車両保険です。しかし、損害保険料率算出機構によると、23年度末の車両保険の加入率は約47%と、対人賠償責任保険や対物賠償責任保険(いずれも約75%)に比べると低い水準です。
もっとも、約47%というのはややミスリードで、自家用普通乗用車、自家用小型乗用車、軽四輪乗用車だけでみれば、加入率は約55%です。これに自動車共済を加えると、加入率は約6割とみられます。

保険料の負担

とはいえ、自家用の3車種でも約4割が車両保険に加入していないということになります。もちろん、なかには古い車に乗っていて、十分な保険金額を設定できないというケースもありそうですが、車両保険に加入すると毎年の保険料がかなり高くなってしまうというのが、加入を見送る最大の理由ではないかと考えています。あくまでイメージですが、車両保険を付けなければ年間保険料が3万円、車両保険を付けると6万円、といったレベルでの違いがありますよね。
車両保険の保険料が大きくなりがちなのは、自動車保険のなかでも支払保険金の総額が大きいからです。同じく料率算出機構のデータによると、23年度の支払保険金のうち車両保険が全体の4割以上を占め、最大種目となっています。対人賠償責任保険は1件当たりの支払保険金が約95万円と大きい(車両保険は約40万円)のですが、支払件数が少ないので、支払保険金の総額は全体の3割強にとどまります。

自動車ユーザーにとって、毎年の保険料は大きな関心事項です。例えば、ソニー損害保険が8月に公表した全国カーライフ実態調査(2025年)によると、車の諸経費で負担に感じるものとして、「ガソリン代・燃料代」「自動車税」「車検・点検費」に次いで「自動車保険料」が高い割合で挙がっていました。
また、チューリッヒ保険が23年に公表した「自動車保険の見直しに関する実態調査」でも、ダイレクト型で自動車保険に加入したという回答者の割合がやや高い(35%)ことを踏まえても、現在加入している自動車保険で重視したポイントとして「保険料の安さ」が「事故対応」とともに上位に挙がっていて、保険料への関心の強さがわかります。

風水災害への備えとしての車両保険

ただし、車両保険が大雨による冠水など、地震などを除いた自然災害でも使えるという情報は自動車ユーザーにどの程度浸透しているのでしょうか。ネットで話題になったように、「自賠責保険は補償の対象外」という報道がなされるなど、自賠責保険と任意の自動車保険のちがいも常識ではなさそうなので、車両保険が交通事故だけではなく、一般的には風水災害による損害でも補償対象となると知っているユーザーは意外に少ないのではないでしょうか(あくまで個人の印象ですが)。
9月17日の日本損害保険協会によるニュースリリースによると、8月上旬の低気圧・前線による大雨での保険金支払額は約323億円で、このうち130億円が自動車保険(車両保険)だったそうです。風水災害への対応というとまずは火災保険ですが、車両保険も役に立っているということを保険業界はもっとアピールしてもいいのかもしれません。
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※懐かしのブルートレイン!門司港にて。

 

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保険代理店への行政処分

バタバタしていて1週間あいてしまいました。今週から来週にかけては東京・横浜で過ごしています。

さて、8月6日に金融庁(東海財務局・関東財務局)が、中古車販売大手の大型兼業代理店であるネクステージと、「マネードクター」を展開する保険専業代理店であるFPパートナーにそれぞれ行政処分を行いました(いずれも業務改善命令)。
ネクステージへの行政処分
FPパートナーへの行政処分

ネクステージへの行政処分

同社は2023年に旧ビッグモーター事件を受けて自主調査を行い、不正請求事案は確認されなかったと公表しています。その後、主要取引銀行の要請で外部弁護士による調査を行い、やはり不正請求事案は確認されなかったと報告しています。
しかし、今回の立入検査で、「調査担当の従業員は各々の主観に基づいて関係資料を確認し、問題がないとの判断を裏づける証拠も残していない」「関係資料が揃っていないなど不正請求の蓋然性がより高いと考えられる案件を調査対象外にしている」「調査対象期間外に発生した不正請求事案を把握していても、全容解明に向けた伏在調査を行っていない」「損害保険会社の調査で不正請求疑義事案を把握していても、事実確認のための調査の指示を行っていない」などが明らかになり、東海財務局は「現在でも不正請求事案が多数内在している蓋然性が高い」と判断しました。

問題の根底には、同社の経営陣が保険事業の重要性を認識しておらず、保険業法等の知見も欠如しているため、保険事業に関するガバナンスが機能不全となっていることがあると指摘しています。
1月に行政処分を受けたトヨタモビリティ、グッドスピードと同様に、この会社(あるいはこの業界)がこのまま保険代理店を続けていいのか疑問に感じる内容です。

日本損害保険業界は代理店業務品質評価制度を導入し、全ての代理店が自己点検チェックを行ったうえで、第三者機関が必要と判断した代理店を対象に第三者評価を行う方針です。しかし、問題が発生していてもまともな調査をしない(あるいはできない)ような会社に対し、関係者には申しわけありませんが、ある意味で性善説に基づいたこの評価制度の枠組みが果たして機能するのでしょうか。

FPパートナーへの行政処分

リリースによると、同社は訪問型の保険代理店としては業界最大手で、複数の保険会社の商品を比較推奨するビジネスモデルをとっています。同社は2024年6月に関連する開示を行い、①商品の優位性 ②商品提案の難度 ③保険会社の顧客サポート体制を総合的に判断し、各商品への社内評価を設定しているとしています。
しかし、実際には「保険会社からの便宜供与の実績に重点を置いて推奨商品の選定を行っている」「(医療保障を希望している顧客に対し)合理的な理由なく特定の保険会社を偏重して推奨していることが強く疑われる」など、保険会社からの便宜供与の実績を重視した保険募集管理態勢を構築していると関東財務局は判断しました。

ちなみにFPパートナーは、生命保険協会が2022年に導入した代理店業務品質評価において、2024年に評価基準の基本項目を全て達成した代理店として認定されています(2025年2月に評価結果を停止)。
業界団体による評価がダメで、当局の検査が絶対正しいと言うつもりはありませんが、書類審査とヒアリングを中心とした評価では、評価を受ける側は当然ながら自分に都合の悪いことは言わないので、なかなか難しいものがあるのでしょう。

※写真は福井です。

 

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過度の便宜供与

金融庁が12日に、保険金不正請求事案および保険料調整行為事案を受けた「保険会社向けの総合的な監督指針」の改正案を公表しました。ただし、保険業法の改正案が衆議院を通過したところでもありますし、これで終わりということではなく、さらなる改正も検討中という状況です。

今回の改正案では、保険会社は保険代理店等に対する過度の便宜供与を防ぐ必要があるとして、判断基準が示されました。
例えば以下のような行為も該当し得るとのことです(II-4-2-12 (1)過度の便宜供与の防止)。

(ア)保険会社の役職員が、保険代理店等から、他の保険会社の購入実績との比較を提示されるなど黙示の圧力を受けたことを背景として、自社の役職員に対し、数量等の報告やとりまとめを伴う物品の購入をあっせんする行為
(イ)保険代理店等が主催するイベント等において、保険会社の役職員等が保険業と関連性の低い役務を提供する形で参加・協力する行為
(ウ)保険代理店等が主催するイベント等において、保険会社の役職員等が休日や業務時間外に参加・協力する行為
(エ)本来は保険代理店等が負担すべき費用を保険会社が負担する行為、又は保険代理店等が自らの責任において行うべき業務に対し保険会社が役務を提供する行為
(オ)保険代理店等の求めに応じ、役務の対価としての実態がない又は保険会社若しくは保険代理店等において対価性の検証が困難な業務委託費、協賛金、商標使用料、広告費用等の金銭を拠出する行為

なお、保険代理店等には、保険代理店の役員・使用人や親会社、主要な取引先を含みます。

監督当局は保険会社に対し、過度の便宜供与の防止に係る取り組み状況について、必要に応じて報告を求める(業法128条報告徴求命令)とのことです。

他方で、保険募集人の体制整備の状況把握について、従来は「問題があると認められるとき」なのに対し、改正案では「オフサイトモニタリングを行う」「(特定保険募集人に対し)必要に応じて報告を求め、立入検査の実施を通じて把握」となっています。オフサイトモニタリングを通常業務として行うということですね。

ここでも、IMFに指摘された「金融庁のリソース不足」をどうやって解消するかという課題が見え隠れしています。

※今回は福岡大学のバラ園です。

 

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変額保険は買いか?

3月17日発売の週刊ダイヤモンドは保険特集「保険大激変」でした。
しばらく前から、ネット(ダイヤモンド・オンライン)で記事をアップしてから紙媒体で掲載という形になっていましたが、いよいよ4月から紙媒体の書店売りがなくなるそうです。時代の流れを感じます。

このところの変額保険ブーム?を踏まえ、特集の「Part 1」のトップは変額保険に関する記事でした。
私は現在の変額保険人気についてやや懐疑的に見ていまして、死亡保障として売るのであればともかく、資産運用商品としての加入者にとってのメリットは相続関係だけではないかと思ってしまうのですが、激論!変額保険「推進派vs否定派」という覆面座談会の記事を読んでも、推進派のおっしゃるメリットがよくわかりませんでした。
例えば、「変額保険の運用は、証券会社で口座を開設して自分で投資信託を買って運用するよりも優れていることもある」とありました。しかし、そのような客観的なデータがあるのでしょうか。「膨大な数の投資信託の中から良いものを選ぶのは、とてもハードルが高い」のはそうだとしても、だから選択肢が絞られている変額保険がいいという結論になるのは、やや議論に飛躍があるように思いました。
最近の変額保険の新商品は、保険料払込免除(P免)特約が充実していたり、告知が不要だったりする傾向にあるのですね。もっとも、保険会社はP免特約を賄う保険料を設定しているでしょうし、告知不要への対応もしている(そうでないと認可が下りないと思います)ので、そのぶんだけ資産運用商品としての魅力は削がれているはずですよね。
こうしたことをあれこれ考えるきっかけになる、時宜に合ったいい企画だったと思います。

覆面座談会といえば、代理店に出向している損保会社社員(転籍者を含む)による座談会記事も興味深く読みました。
「出向の場合は、だいたい損保会社に給与の4割程度を負担してもらえますが、転籍させるとそれはなくなる」「以前は出向元から『自社の契約を増やすように営業して、シェアアップを目指せ』と言われていました」なんて発言もありました。
今回問題となったのは乗合代理店ですが、専属代理店のあり方についても見直しが必要なのでしょうね。

※今年も学位記を渡すことができました。

 

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