03. 保険市場の動向

保険モニタリングレポートから

8月6日に金融庁が「2026年 保険モニタリングレポート」を公表しました。いわゆる損保問題への行政対応のほか、不祥事も頻発しているため、保険流通に関する記述が例年よりも多いという印象です。担当者の皆さんが多忙な日々を送ったことがうかがえます。
2025事務年度の保険行政の実績はレポートをご覧いただくとして、ここでは保険流通に関する今後の取組方針の記述を取り上げてみましょう。

保険代理店との適切な関係の構築に向けた対応(生命保険会社)
・過度の便宜供与の防止に向けた社内規則及び管理態勢に沿った業務運営の実態や、保険代理店への出向を継続する生命保険会社に対して、社内規則の内容や社内規則に基づく継続的な出向の適切性の判断・検証の状況についてモニタリングを実施する(10ページ)

営業職員管理態勢の高度化
・生命保険協会による「着眼点」に基づく取組の進展や各社の対応状況を継続的にフォローするとともに、業界全体の取組を後押しする同協会の役割発揮についても確認していく(32ページ)

乗合代理店向け保険商品の販売手数料等に関するモニタリング
(医療保険に係る初年度手数料水準の動向に関する分析結果を踏まえて)
・販売の傾向については、手数料水準だけでなく、新(競合)商品の販売時期や代理店手数料の支払方法のほか、保険代理店における推奨の実態等様々な要素が絡むため、さらなる分析を行い、「代理店手数料と比較推奨販売の関係性」について、引き続きモニタリングを継続していく(38ページ)
・乗合代理店における比較推奨販売やアフターフォローに係る業務負荷の実態のほか、支払タイプの違いによる販売の動向等についてさらなる分析を行い、「代理店手数料と比較推奨販売の関係性」について、引き続きモニタリングを継続していく(40ページ)
・2025事務年度においては医療保険に係る大局的な分析から開始したが、2026事務年度においても引き続き当アンケ-トの分析を深めていく(41ページ)

営業社員等による不適切な金銭の取扱い
・これらの事案については、現在も調査・確認を進めているところであり、その結果を踏まえ、必要な対策について精査していく
・保険契約者等の保護の観点から、生命保険会社における内部管理態勢の実効性や再発防止策の実施状況に加え、業界の自主的な取組についても継続的にモニタリングしていく
(いずれも49ページ)

保険代理店に対するモニタリングの強化に向けて
・改正保険業法の施行を踏まえ、財務局も含めた当局のモニタリング体制を強化し、上乗せ規制が課される保険代理店を中心に、新たな制度に係る各種管理態勢の整備状況等を重点的にモニタリングする
・モニタリングでは、リスクや問題の性質に応じてオンサイト(立入検査)とオフサイト(立入を行わないモニタリング)を適宜組み合わせ、問題が認められた保険代理店に対しては、必要な対応を講じていく
・保険会社が保険代理店の規模、特性を踏まえて適時適切にリスクを検知し対応を図るための管理態勢を構築しているかなど、保険会社による保険代理店管理の実効性に着眼したモニタリングに取り組んでいく
(いずれも49ページ)

なお、今回のコラムは「保険監督を巡る国際的な動向」だけでした。ちなみにレポート25ページの注記には、日本のIAIGsが以下の7社であると記されていました。

・株式会社第一ライフグループ
・東京海上ホールディングス株式会社
・MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス株式会社
・SOMPOホールディングス株式会社
・住友生命保険相互会社
・日本生命保険相互会社
・明治安田生命保険相互会社

※写真は四日市あすなろう鉄道です。

 

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クロ現『保険金詐欺の闇』

7月21日(火)夜7時半放送のNHKクローズアップ現代「追跡!”空き家”連続放火事件 狙われた火災保険」にゲスト出演しました(28日まではこちらで見逃し配信中です)。
クローズアップ現代へのゲスト出演は2017年2023年についで3回目でした。今回は保険金詐欺がテーマだったので、解説者が私でいいのかとも思いましたが、保険の利用者と提供者のギャップを埋めることを標榜し、一般向けの教養書『保険ビジネス』を世に出したりもしていますので、喜んでお受けすることにしました。

当日は午前中に福岡で授業があったので、午後の便で東京・渋谷のNHKに向かいました。17:30からキャスター(星麻琴さん)を交えた打ち合わせを1時間くらい行った後、リハーサル、本番という流れ。キャスターが代わっても、事前の打ち合わせをしっかり行うところや、関係者全員で番組を作り上げていくところなどは、これまでと全く同じでした。
ただし、途中から出演者が星さんと私だけだったので、話をする時間が多かったのと、最後のまとめはほぼお任せだったので、カウントダウンを見ながら何とかまとめようと、ヒヤヒヤでした。うまく収まってよかったです。

番組では紹介しませんでしたが、日本損害保険協会では「保険金不正請求に関する意識調査」を行っています。
2026年5月に公表された直近の調査結果(PDF)によると、「保険金詐欺をするための保険加入」については82%の人が「社会から許されない」と回答したのに対し、「業者からの教唆による保険金請求」を「許されない」と回答したのは48%でした。「許される」という回答もなんと18%に及んでいて、このうち16-19歳では男性が34%、女性が40%、20代では男性が27%、女性が22%と、若年層ほど「許される」という回答割合が高くなっていました。
また、ケガやレッカー等の架空請求、アフロス契約(事故が起きてから保険に入り、保険金を請求)については7割近い人が「保険金詐欺に該当する」と回答したのに対し、業者からの教唆による保険金請求を「該当する」と答えたのは44%だけ。別の問題でも、「保険金を請求する時に、業者から『経年劣化部分も保険で直せる』と言われたとおりに申告しても、契約者に責任はない」という問いの正答率は34%と低く、保険に対する理解の低さが浮き彫りになっています。

金融リテラシーを高めるには老後の資産形成に関する教育だけではなく、リスクへの備えについてもリテラシーを高める取り組みがもっと必要だと改めて思いました。

 

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中小企業の地震リスク対応

保険代理店向けメールマガジンInswatch Vol.1336(2026.7.13)に寄稿した記事を当ブログでもご紹介いたします。写真は昨年ゼミで訪問した熊本地震の現場です。
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中小企業の地震保険加入率は低い

先日、私のゼミ(大学3年生と4年生の約20名)で、熊本に本拠を置く保険代理店の皆さんに熊本地震の体験を踏まえた講義を行っていただきました。その際に、2016年の熊本地震を受けて、熊本県では家計向け地震保険の加入率が急上昇する一方、中小企業の多くは地震をカバーする損害保険に加入していないという話になりました。
日本損害保険協会は21年から中小企業を対象に「リスク意識・対策実態調査」を行っています。直近の25年調査によると、企業を取り巻くリスクとして多くの会社が「自然災害(地震・風水災等)」を挙げ、約8割が地震危険補償特約を「知っている」「聞いたことがある」と回答したにもかかわらず、勤務先が地震危険補償特約に加入している割合は30.9%でした。しかも、調査のたびに加入割合が下がる傾向にあります。
参考までに、火災保険は58.6%、休業補償保険は11.3%、会社役員賠償責任保険は9.1%、サイバー保険は8.8%でした。

自分のところは大丈夫

調査では、地震をカバーする保険に加入していない理由も聞いています。回答の上位は「わからない・特に理由はない(38.2%)」「リスクが発生する可能性は低いと考えているため(26.0%)」「対策をする費用に余裕がないため(10.5%)」「リスクによって生じる影響・損失がわからないため(8.0%)」となっていて、火災保険と同じ傾向でした。
興味深いことに、21年調査や22年調査では「対策をする費用に余裕がないため」という回答が、「リスクが発生する可能性は低いと考えているため」を上回っていて、「保険料を他のことに使いたいから」という回答も上位を占めていました。当時は新型コロナ禍の影響で業況が悪く、当時に比べれば業況が回復したということでしょうか。
22年3月の福島県沖地震、24年1月の能登半島地震のように、その後も多額の保険金を支払うような地震が発生しています。「リスクが発生する可能性は低いと考えているため」という回答は、単に「自分のところは大丈夫だろう」というだけで、地震リスクをそれほど深刻に受け止めていないのかもしれません。

公助への過度な期待?

中小企業が地震リスクをそれほど深刻に受け止めない背景の1つとして、おそらく「何かあったら政府が助けてくれる」という意識もあるのではないかと見ています。
熊本地震では、被災した中小企業の施設・設備の復旧を支援するグループ補助金が提供されました。復興のリード役となりうる2社以上がグループを構成して復興事業計画を策定し、県の認定を受ければ、復旧費用の75%の支援を受けられる制度でした。能登半島地震でも、補助率75%の「なりわい再建支援補助金」があり、さらに、自己負担分に使える5年間無利子の特別融資もありました。
補助金申請には一定のハードルがあるとはいえ、こうした近年の事例が、結果として公助への過度な期待を生じさせている可能性はありそうです(チャリティ・ハザードと言います)。公助には限界があり、自助を促すような公助のあり方を模索すべきなのでしょう。
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生命保険の加入状況

大学のゼミの関係で、生命保険文化センターによる「生活保障に関する調査」で生命保険の加入状況について確認する機会がありました。
生命保険の加入状況の調査といえば、同じく生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」が有名ですが、「生活保障に関する調査」でも個人ベースの加入状況を調査しています。いずれも3年おきの調査です。

例えば次のようなことがわかります。

【加入率】
・2025年の生命保険・生命共済の加入率(個人年金やグループ保険を除く)は80.0%で、この20年間は概ね横ばいで推移。
・いわゆる保障中核層にあたる30代男性、40代男性の加入率がいずれも低下傾向なのに対し、60代男性と60代女性の加入率が上昇傾向。

【2025年の加入状況・加入意向】
・払込保険料(一時払を除く生命保険・個人年金)は平均17.8万円で、一貫して減少傾向が続く。
・生命保険加入金額は996万円(男性1,439万円、女性661万円)で、一貫して減少傾向が続く。
・他方、必要と考える死亡保険金は30代男性が平均3,025万円、40代男性が2,728万円。
・死亡保障に対して「準備意向あり」は、30代男性が67.6%、40代男性が74.1%と意外に高い。

【直近加入契約の加入のきっかけ】
・30代男性、40段男性は「家族や友人などにすすめられて」「結婚をしたので」「子どもが誕生したので」などが上位。
・60代男性、70代男性、70代女性は「営業職員や窓口ですすめられて」がトップ。

【直近加入契約の加入チャネル】
・男女ともに「営業職員」がトップだが、30代男性と40代男性は「保険代理店」も多い。50代男性と60代男性は「営業職員」が回答の過半数。
・情報入手経路でも、50代男性と60代男性は約4割が「営業職員」と回答。
・今後の加入意向のあるチャネルは、50代男性と60代男性・女性は「営業職員」で、他の年代は「営業職員」「通信販売」「保険代理店」が拮抗。

以上、ざっとデータを眺めたところ、営業職員チャネルは30代や40代にうまくアクセスできておらず、チャネルとしての認知度も必ずしも高くはなく、結果として営業活動の中心が50代以上(おそらく既契約者が中心)となっているようです。だから一時払終身なのでしょう。
営業職員への回帰どころか、ビジネスモデルの機能不全が着実に進行しているのではないでしょうか。

※写真は築地市場に向かう貨物線の遺構です。

 

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自賠責保険の料率引き上げ

メディアでも報じられた通り、4月30日開催の自動車損害賠償責任保険審議会での了承を受けて、11月1日から自賠責保険の基準料率が平均6.2%上昇することとなりました。内訳は純保険料率が1.9%の引き上げ、付加保険料率(社費と代理店手数料)が4.3%の引き上げです。
詳しくはこちら(損害保険料率算出機構のサイト)をご覧ください。

業界のかたには釈迦に説法かもしれませんが、同じ自動車保険でも、自賠責保険と任意保険では支払保険金の内訳が大きく異なります。
自賠責保険は対人賠償責任しかカバーしていないので、当然ながら支払保険金は自動車事故による死亡や後遺障害、傷害への賠償責任に限られます。これに対し、任意保険では支払保険金の約8割を車両保険と対物賠償責任が占めています。両者の保険金の大半は修理費なので、近年の物価上昇の影響を強く受けていることがわかります。

では、物価上昇の影響を受けにくいはずの自賠責保険の料率がなぜ上げるのかというと、付加保険料部分(主に物件費)が物価上昇の影響を受けているのと、料率引き下げに活用してきた滞留資金の残高調整が必要になったためだそうです。自賠責保険はノーロス・ノープロフィットの原則で運営されていて、社費部分も当てはまります。

ちなみに、2020年の民法(債権法)で法定利率が年5%から3%に下がり、支払保険金が増加するとみられていました(逸失利益の計算で割引率が小さくなるため)。ただし、料率算出機構「自動車保険の概況」を見るかぎりでは、2021年に死亡保険金の単価がやや上昇したものの、その後は高齢者割合の増加などに吸収され、大きな影響を及ぼしてはいない模様です。

※船旅と在来線特急の旅を楽しみました

 

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「第2の柱」の実効性

プルデンシャル生命の営業職員による金銭詐取問題をはじめ、近年、保険会社や代理店による不祥事が後を絶ちません。そのなかで、「金融庁は何をしていたのか」「検査で見抜けなかったのか」など、金融庁の監督に対する社会の目線も厳しくなっているように感じます。

金融庁のリソース不足については2024年にIMFが指摘していますし、ブログでも何回か触れてきました。例えばこちら(金融庁のリソース拡充を)やこちら(過度の便宜供与)、こちら(日本の保険行政)などです。
ただし、リソース不足だけではなく、主として銀行を念頭に置いた検査・監督の見直しが、保険行政にはむしろ裏目に出たとも考えています。最近になって、2024年12月に日本保険学会・関東部会で報告した「ソルベンシー規制『第2の柱』の実効性に関する考察」の論文のPDFファイルが公表されました。この論文の「おわりに」で私は次のように述べています。

以下、少し長いですが、該当箇所を引用しましょう。
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この間、金融庁は検査・監督の大幅な見直しを行った。(中略)いわゆる重箱の隅をつつくような検査ではなく、「モニタリング・データや随時のヒアリング等により金融機関の分析を行い、金融機関の特性を把握し、その内容に応じて検証の重点を判断し、重点的な課題の性質に応じてオンサイト(立入検査)とオフサイト(立入を行わないモニタリング)、個別金融機関のモニタリングと水平的なモニタリング(同一課題についての金融機関横断的なモニタリング)等を使い分けていく」とした。実際、定期検査中心のモニタリングから、オン・オフ一体の継続的なモニタリングに移行し、検査局もなくなった。
この改革は、銀行監督についてはともかく、保険部門の監督に関してはうまく機能していない可能性がある。もともとのリソース不足に加え、少数の専門性の高い人材を新たなソルベンシー規制(特に経済価値ベースの健全性指標の開発)に配置せざるをえないなか、周期的な立入検査をなくしたことにより、リスクの把握が難しくなった点は否めない。方針転換とともに、保険行政としては、立入検査に代わるリスク情報の収集と分析の枠組みを確立すべきだったが、その取り組みが進まなかったのであろう。加えて、保険会社の経営情報はわかりにくい、理解が難しいとされる(特に生命保険会社)。2年程度のローテーション人事では、いくら優秀なスタッフであっても、しっかりした枠組みがなければリスク情報の分析は難しい。
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それでも保険行政の現場は何とかがんばっているのですが、現場だけで取り組めることは限られています。せっかく7月から監督局が2つに分かれ、銀行行政に引きずられにくくなるのですから、ぜひ機会を生かしてほしいところです。

※福岡に嵐が来ました(私は会っていません)

 

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営業速報に見る自動車保険の動向

保険代理店向けメールマガジンInswatch Vol.1320(2026.3.9)に寄稿した記事を当ブログでもご紹介いたします。グラフも付けておきますね。

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保険料単価の上昇で高い増収率

大手損保の東京海上日動(以下、TM)、三井住友海上(MS)、あいおいニッセイ同和損保(AD)、損保ジャパン(SJ)の4社は、主要種目別の営業ベース収入保険料の速報を翌月上旬に公表しています(例えば2月の数値を3月5日に公表)。
このうち、自動車保険の対前年増収率の推移を見ると、25年度は平均して4、5%程度の増収となっています。ここ数年では最も高い増収率です。自動車保険の契約台数は各社ともに微減なので、増収には保険料単価の上昇が大きく寄与しています。すなわち、24年から(SJは25年から)の数次にわたる料率引き上げ効果が大きいと言えるでしょう。
報道等によると、近年の料率引き上げは次の通りです。

24年1月:SJを除く3社(平均+2.5~3%)
25年1月:4社(平均+3.5~5.6%)
25年10月:TM(平均+8.5%)
26年1月:TMを除く3社(平均+6~7.5%)
26年7月:SJ(予定)

自動車保険は概ね1年契約なので、満期更改となった契約から新しい料率が反映されます。満期到来の時期は契約によってまちまちなので、もし契約台数が横ばいであれば、料率を引き上げた月だけではなく、引き上げ後1年間は改定による保険料単価の上昇効果が続きます。
もちろん、等級制度による無事故割引(あるいは有事故等級から無事故等級への復帰)などもあるので、料率引き上げがそのまま保険料単価の上昇に反映されるわけではありません。

改定前後で増収率が大きく変動する会社も

ただ、営業速報によると、むしろ料率引き上げの直前に高い増収となる会社もあるようです。25年1月改定では、MSの増収率が大きく動きました(前年11、12月が高い増収率となり、1月にガクンと下がりました)が、他の3社はそうでもなかったようです。もっとも、26年1月の改定では、MSをはじめ、改定を実施した3社ともに同じような増収率の変動が見られました。営業現場では、更改前の契約をいったん解約し、料率引き上げの前に契約しなおすといった実務があるのでしょうか?
他方で、TMの25年10月の改定では、9月から増収率が高まり、11月(8%超の増収)を異常値とすると、改定後の大きな落ち込みは起こっていません。同社では25年1月の改定でも、MSで見られたような増収率の変化はありませんでした。
業務品質を重視した代理店手数料ポイント制度に移行しつつあるなかで、これらの違いが何によるものなのかは気になるところです。

もっとも、2月13日に各社が公表した第3四半期(25年4-12月期)の決算説明資料によると、自動車保険の損害率は依然として高い水準です。事故件数は総じて横ばいながら、対物・車両の保険金単価の上昇率が引き続き高いことが主因となっています。
数次にわたる料率引き上げによって、自動車保険の収支悪化には歯止めがかかったとはいえ、保険会社が安定して黒字を確保できている状況ではなさそうです。
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※写真は福岡・六本松です。

 

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生命保険市場の変化

最初にご案内です。2021年に出版した『利用者と提供者の視点で学ぶ 保険の教科書』(中央経済社)の第2版が出ました。アマゾンだと20日から取り扱いのようです。
第2版では図表を直近データに更新しただけではなく、国内金利の上昇を踏まえた記述にしたり、損害保険業界の「保険金不正請求事件」と「保険料カルテル問題」を取り上げたりしています。入門書として読みやすさを優先した『保険ビジネス』では少し物足りないかたや、保険について体系的に学びたいかたは、ぜひ本書をご覧ください。

ところで、生命保険協会は統計資料として会員各社の主要業績を取りまとめていて、全社合計データをサイトで公表しています。このうち年次統計の「新契約年換算保険料(ANP)」では、「個人保険」「個人年金保険」「第三分野」それぞれの内訳や、払込方法別(平準払/一時払)、通貨別(円/米ドル/ユーロ/豪ドル/その他)のデータも公表しています。
さらに、協会では年次統計のCDを「生命保険事業概況」として外部に提供していて、こちらには同じデータが会社別にも載っています。

年末に入手した2024年度版をもとに、新型コロナ禍直前の2019年度から2024年度までの新契約ANPを眺めてみたところ、近年の生保市場の変化が見えてきました。以下、いくつかご紹介しましょう。
まず、全社合計の新契約ANPは、コロナ禍の落ち込みを乗り越え、2024年度は2019年度の約1.3倍に拡大しました。ただし、平準払はほぼ横ばいで、増えたのは一時払です。

新契約ANP  1.93兆円 ⇒ 2.56兆円
 平準払  1.36兆円 ⇒ 1.37兆円
 一時払  0.57兆円 ⇒ 1.18兆円

平準払は全体的に低調で、第1分野は変額保険を除くと減少。第3分野も2019年度の水準を下回っています。
他方、一時払の販売拡大の牽引役は円建です。2024年度は円建のANPが外貨建に匹敵する水準となりました。残念ながら半期データは公表されていないのですが、おそらく傾向は変わっていないと思います。

会社別データも興味深いです。例えば大手4社(日本、第一、住友、明治安田)の新契約ANP、うち一時払とその割合は次のとおりです(2024年度)。

日本 2339億円/562億円(19.6%)
第一 959億円/-(-%)
住友 962億円/549億円(57.1%)
MY 1261億円/524億円(41.5%)

これだと、一時払を提供していない第一生命と、新契約ANPに占める一時払の割合が4、5割もある住友生命、明治安田生命の数字を単純に比べても、あまり意味を成さないということになりますね。ちなみに、住友生命の一時払は円建が目立つのに対し、明治安田生命は外貨建が中心でした。

損保系生保3社(あんしん、MSA、ひまわり)では、一時払や外貨建をほとんど提供していない点は共通していましたが、平準払の内訳は結構違っていました。あんしん生命はこの5年間に、新契約ANPの中核が第3分野から変額保険に変わりました。MSA生命は第3分野が減少する一方で変額以外の第1分野を伸ばし、ひまわり生命は第3分野とともに変額保険にも注力しているようです。

もっとも、あと2か月ほどで2025年度が終わるという時期なので、やや古い情報ではあります。
各社が決算発表の際、あるいはディスクロージャー誌でこの情報を出してくれるといいのですが。

※写真は東京・日本橋です。

 

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「企業は保険リテラシーを高めよ」

日本経済新聞には『私見卓見』という投稿欄があります。12月25日に掲載された「企業は保険リテラシーを高めよ(会員限定)」という松本浩司さん(会社顧問・保険仲立人)による投稿記事をご覧になったでしょうか。
そのなかに次のような提案がありました。

・損害保険会社と企業の関係を「プロ対アマ」から「プロ対プロ」に転換するには、企業の保険リテラシーを高めることが不可欠。
・そのための一歩として、上場企業に「保険購入によるリスクヘッジ状況」の開示を求めてはどうか。
・どのリスクを保険でどこまでカバーしているかを示すことで、保険を経営リスク管理の一部としてとらえる契機となる。

もちろん、問題は企業のリスクマネジメント意識が総じて低いことであって、保険に加入しているかどうかではないという意見もあるとは思います。はじめに保険ありきではなく、まずはリスクを認識し、そのうえで保険を含めた対応策を検討するのがリスクマネジメントの本来あるべき姿です。
とはいえ、それを承知のうえで私も松本さんの意見に賛成でして、既にそのような主張をしてきました(例えば『金融資本市場展望』の投稿記事(有料媒体)など)。

大企業は保険会社にだまされ続けてきた被害者なのでしょうか。一連の損保問題のうち、企業向け保険に関する問題の根底には、企業のリスクマネジメント意識が低く、表面的なコスト(保険料)にのみ関心があり、あとは親密かつ協力的な保険会社におまかせという姿勢があって、それこそが、いびつな取引慣行が今日まで続いた一因だと考えられます。
しかし、残念ながら損保問題を受けた改革のラインナップには、大企業に対して直接働きかけるものはほとんど盛り込まれませんでした(あえて言えば、企業内代理店の特定契約比率規制の適用拡大と、保険会社からの出向者引き揚げくらいでしょうか)。

いくら保険会社に本来あるべき保険取引を求めても、相手にその気がなければ正常化は難しく、むしろ取引自体が細ってしまうかもしれません。金融庁にはぜひ企業向け保険市場の踏み込んだモニタリングを行うとともに、有価証券報告書「事業等のリスク」に、重要リスクのうち保険でカバーしているものを定量的に示すよう、働きかけていただきたいです。

なお、本件に関しては、損害保険会社の開示も不足しています。損保の決算説明資料などを見ても、火災保険全体としての収支が改善しつつあることはわかるのですが、企業向け保険がどうなっているのかを知る手掛かりがほとんど示されていません。
どうしたものでしょうか。

※再建工事中の首里城(沖縄)を見学しました。

 

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山火事のリスク

福岡大学植村ゼミは今年度もRIS(全国学生保険学ゼミナール)に参加し、12月6日から7日にかけて東京の東洋大学白山キャンパスで、何とか以下の報告を行うことができました。

1班「早期離職について~飲食業の事例から~」
2班「山火事のリスクについて」
3班「インフルエンサー起用に潜む企業のリスクと保険の対策案」

いずれも自分の専門分野からはやや遠いので、知らなかったことが多々あったのですが、なかでも「山火事のリスク」は考えていた以上に深刻なものだとわかりました。

2025年は熊による被害のほか、大規模な山火事も目立ちましたよね。
2月に発生した岩手県大船渡市での山林火災は焼失面積が3000ヘクタールを超え、大船渡市によると被害総額が102億円に達したそうです。大規模な山火事は岡山県岡山市(3月)、愛媛県今治市(3月)でも発生し、最近でも群馬県の妙義山や神奈川県の日向山で、自衛隊に出動を要請するような山林火災が起きています。

実のところ、山火事の発生件数は中長期的には減少傾向にあります。こちらのサイト(東京海上ホールディングス)にもあるように、かつては年に数千件もの山火事が発生していましたが、今は年1000件程度です。山火事の原因はたき火や火入れなど人為的なものが大半を占めるので、林業の衰退や都市部への流出などから、かつてに比べると山に人が入らなくなったことが大きいと考えられます。

ところが、発生件数は減っている一方、発生すると大規模化してしまうリスクは非常に高まっているようなのです。
キャンプで薪(まき)に火をつけるのはなかなか大変ですよね。山林も同じで、火種があっても樹木はすぐには燃えません。しかし、もともとは人工林だったのに長い間放置されている森林には、燃えやすい下草や枯れ枝などがたくさんあって、これがいわば「燃料」となって樹木にも火がついてしまうのです。しかも、間伐が行われていないので木々が密集し、燃え広がりやすくなっています。

先ほどのサイトでは気候変動の影響を挙げていましたが、私のゼミ生たちはそれ以外の要因として「林業の衰退などで山林が荒廃」「現場の関係者にはリスク意識が希薄」といったことに気づき、大規模な山火事の発生を防ぐには、火事が起きてから消防などに委ねるだけではなく、米国のようにリスクを事前に小さくする取り組みが不可欠であるという結論に至りました。
熊による被害でもそうですが、森林に関するリスクを小さくするには、もはや対処療法や補助金を出すだけの行政では限界なのでしょう。

※大濠公園の日本庭園でイベントをやっていました。

 

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