インシュアランス生保版(2023年7月号第1集)に寄稿したコラムをご紹介します。今回もしっかり「主張」させていただきました。
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損害保険と比べた生命保険の特徴として、契約期間が長いという点が挙げられる。生命保険会社が提供している医療保険も終身が主流となっているようである。これらの保険を提供する生命保険会社は、いわば遠い将来の約束を果たすために存在している。
このように書くと、生命保険に関わる皆さんは「いまさら何を言っているの?」と首を傾げるかもしれない。では、この5、6月に公表された決算関連資料から、皆さんは生命保険会社が抱えている保険負債の長さを把握できるだろうか。答えはノーである。
もし「そもそも被保険者がいつ亡くなるかわからないのだから、保険会社がいつ約束を果たすのかなんて事前にわかりようがない」とお考えであれば、保険の仕組みを勉強しなおすことをお勧めしたい。死亡率や発生率が概ねわかっているからこそ保険会社は保険料を決め、保障を提供できている。言い換えると、保険会社は保有する契約について、将来のどの時点でどの程度の支払いが発生するのか概ねわかっていて、それに合わせて資産運用を行っている。資産運用と保険引受は車の両輪ではなく、まず保険引受があって、それを全うするために資産運用がある。
資産と負債をどの程度対応させるかは各社の経営判断による。ただし例外を除き、各社は販売時に将来支払う保険金額が決まっている円建ての商品を主力としてきたため、その結果として何十年も先まで円の固定金利(予定利率)を保証している。ちょっと考えただけでも大変なビジネスだとわかるが、問題はその大変さを外部から知る手掛かりがほとんどないことにある。
実は1社だけ、この情報を直接外部に示している会社がある。第一生命ホールディングスは2年前から投資家向けの説明資料のなかで、第一生命の資産・保険負債のキャッシュフロー構造という図表を公表し、今後5年ごとの保険収支見込みなどを示している(最新版は5月29日公表資料の26ページに掲載)。
この図表を見ると、第一生命では現時点で50年先までの保険金支払いを見込んでいて、30年までのところは円金利資産で対応し、そこから先は金利変動のリスクをほぼそのまま抱えていることがわかる。過去に獲得した高利率の契約は今後20年くらいまでのところにあって、円金利資産をあてて金利リスクを小さくしたうえで、負債の高利率を賄うための別の方法を模索しているとみられる。こうした情報開示があって、初めて市場との建設的な対話が成り立つのだと思う。
遠い将来の約束を果たすのがどの程度大変で、それに対して経営がどう対応しているのかという情報は契約者にとっても重要である。こうした情報開示なしに「自己資本を積み上げました」「金利リスクを削減しました」と言っても説得力はない。第一生命に続く保険会社はいつ現れるのだろうか。
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※つかの間の晴天でした。このところ雨ばかりです。
※いつものように個人的なコメントということでお願いします。
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