働く女性のマネーと老後

 

コクヨグループでオフィス通販のカウネットという会社が
全国の働く女性(=同社が運営するコミュニティの会員)を対象に
「マネーと老後」に関するアンケートの結果を発表しています。
わたしみがきHPへ

有効回答数が357名という小規模な調査ではありますが、
興味深い結果が出ていました。

まず、「毎月、自分のためにいくらくらい貯金をしていますか?」
という問いに対し、「貯金していない」という回答が26.6%もありました。

「自分のための貯金は予定通りできていますか?」
という問いに対しても、「全く貯金ができていない」という回答が
33.9%でした。

「本当は毎月、自分のためにいくらくらい貯金をしたいと思いますか」
では、「貯金したいと思わない」という回答はわずか2.8%なので、
「貯金していない」という人の大半は、「貯金したいけどできない」
ということなのでしょう。

他のアンケート調査でも、
「30代女性(未婚)の5人に1人は貯蓄ゼロ」(オルビス)
「10万円未満が18.3%」(とらばーゆ総研)
といった結果が出ています。

他方、生命保険の加入動向についてのアンケートもあり、
「生命保険に加入していない」という回答は12.3%でした。
「貯金していない」という回答よりもずっと少ないのですね。

加入している生命保険の種類は、医療保険とがん保険で7割、
終身保険が4割、個人年金が24%などとなっていました。
合計が100%を超えるのは、複数の保険に入っている人が
多いためでしょう。
妊娠中でも入れる医療保険

ニッセイ基礎研究所の調査でも、独身女性の生命保険加入率は
20代が46.1%、30代が71.6%、40代が84.6%となっており、
医療保険・入院保険の加入率が最も高くなっていました
(2011年2月レポート「独身女性の生命保険加入実態」より)。

カウネットのアンケートの結果を踏まえると、
貯金をしたくても全くできていないのに、生命保険には加入している
という働く女性が結構いるということになります。
大きなお世話ですが、どうしてそのようなことになっているのでしょうね。
働いているのであれば、健康保険にも加入していると思うのですが...

※写真は甲州街道・勝沼宿です。
 

 

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金融システムレポート

 

日本銀行が金融緩和策の強化に踏み切りました(27日)。
長期国債の買入れ額を10兆円程度増やすとともに、
買入れ対象の残存期間を3年まで延長しています。

日銀は2011年末時点ですでに日本国債の1割を保有しており、
今後さらに市場での存在感が高まるのかもしれません。

ところで、1週間以上経ってしまいましたが、その日本銀行が
「金融システムレポート」を公表しています(19日)。
このレポートは年2回作成されていて、
日本の金融の現状を知るうえで大変役に立ちます。
日銀金融システムレポートのHPへ

レポートを読んで、地域銀行が直面する経営環境の厳しさを
改めて感じました。

信用コスト率や不良債権比率が低い水準にとどまっているため、
地域銀行の経営は一見安定しているように見えます。

しかし、金融緩和の継続などから運用利ザヤが縮んでいるうえ、
主力取引先である中小企業の資金需要が低下しています。
大都市圏と比べ、地方圏の中小企業売上高は大きく落ち込み、
貸出残高も大都市圏と地方圏では動きが全く異なります。

地域銀行が残高を増やしてきた住宅ローンも明るくありません。
利ザヤが低下しているうえ、需要の頭打ちも近そうです。

つまり、地域銀行のビジネスの源泉となる市場が縮んでしまい、
それが徐々に顕在化する段階に入っているのですね。

他方、地域銀行の収益を補っているのが証券投資です。
レポートによると、金利リスク量(銀行勘定の100bpv)は
年々拡大しており、対TierⅠ比率は3割を超えています。

10年前は地域銀行の抱えるリスクの半分が信用リスクで、
残りが金利リスクと株式リスクで半々というイメージでした。
近年は全体の6、7割が市場リスク(金利と株式)となっています。

多くの地域銀行のALMがコア預金を踏まえた先進的なものに
進化しているとは考えにくいので、このリスクのとり方を
どう考えればいいのでしょうか。

地域銀行の経営を取り巻く現状が厳しいとはいえ、
金融危機のような目に見える厳しさに直面しているのではないため、
経営はなかなか思い切った手を打ちにくいのかもしれません。

いわば真綿で首を絞められつつある、あるいは「ゆでガエル」状態
(実際にやってみると、カエルは外に飛び出すそうです^^)
なのでしょうか。

このような顕在化しつつある「ビジネスリスク」に対応するには、
金融リスクの管理以上に経営陣の強いリーダーシップが
求められるのですが...

※写真は前回に続き勝沼です。桜が満開でした。

 

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勝沼とワイン

 

勝沼(山梨県甲州市)に行ってきました。
東京から電車で甲府に向かうと、山を抜けて、
雄大な景色が広がるところがあります。そこが勝沼です。

勝沼と言えばワイン。
全国一のワイン産地で、街のあちこちにワイナリーがあります。

日本でワインが作られるようになったのは明治になってからです。
山梨県は殖産興業の一環として明治3年にワイン醸造を始め、
勝沼でも明治10年に「大日本山梨葡萄酒会社」が設立されました。

さらに同じ明治10年には、2人の青年(高野正誠、土屋龍憲)を
フランスに派遣し、ワイン醸造技術を学ばせています。
この2人が帰国して勝沼のワイン作りが広がっていくのですが、
当時の勝沼の人たちの熱い心が伝わってくるようです。

勝沼が製糸業でも製茶業でもなく、ワインの醸造に情熱を傾けたのは、
もともと当地でブドウを作っていたためだと思います。

日本にブドウが入ってきたのは明治以降と思いこんでいましたが、
勝沼ではなんと平安時代末期にブドウ栽培が始まったとのことです
(奈良時代に僧行基が持ち込んだという説もあります)。
江戸時代にはブドウは甲州名物として有名だったそうです。

ただ、殖産興業としての評価は微妙なところでしょうか。
食生活の違いからワインは国内ではそれほど売れず、
生糸や茶のように海外に輸出することもできませんでした。

山梨のブドウは今でも生食用として栽培されるものが大半です。
生食用のうち出荷できなかったものをワインにするという時代が
長く続いてきたようです。
農家にワイン用のブドウを作ってもらうのは難しかったのでしょうか。
そうかといって、醸造業者が自らブドウを生産したくても、
農地規制により生産することができませんでした。

左の写真は勝沼で見かける典型的なブドウ畑です。
右は白ワインで有名なヴュルツブルグ(ドイツ)のブドウ畑です。
勝沼の棚栽培よりも、右のような垣根栽培のほうが
ワイン用のブドウ栽培には適しているようなのですが...
 

しかし、時代が変わり、品質向上に力を入れるワイナリーも増え、
国産ワインが内外で注目されるようになってきました。
殖産興業はまさにこれからかもしれませんね。

 

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追加金融緩和への期待

 

「円高・株安の流れが再び強まり、日銀が資産買い入れ基金の増額
 といった追加金融緩和に近く踏み切るとの見方が強まってきた」
 (4/10の日経)

「デフレ脱却に向けて、日銀はもはや緩和継続を辞めるわけにはいかない
 とのムードが金融市場で強まっている。日銀が追加緩和を見送った
 10日には、円高・株安で反応した」(4/11のロイター)

「米プライマリーディーラー(政府証券公認ディーラー)調査では、
 前週末発表の3月の米雇用統計で雇用者数の伸びが予想を大幅に
 下回ったことを受け、連邦準備理事会(FRB)が量的緩和第3弾(QE3)
 の実施に踏み切るとの予想が大勢となっていることが、明らかになった」
 (4/9のロイター)

金融市場を見ていると、市場の緩和期待が強まっているというよりは、
中央銀行が追加策を出しても、すぐに次の政策を期待される、
という状況に陥っているようです。
日銀とFRB、ECBで追加策の競争を迫られているようにも見えます。

確かに、2009年からのQE1でFRBが住宅ローン担保証券などを
大量に購入していなければ、米国の住宅価格は下げ止まらなかった
かもしれません。
欧州でも債務危機の深刻化を受け、ECBが昨年末と今年2月に
3年もの資金供給オペを実施した結果、市場の不安が後退しました
(足元ではまた不安の兆しが見えつつあるようですが...)。

しかし、素人目に見ても、こうした政策を長く続けて大丈夫なのか、
中央銀行がバランスシートをどんどん拡大し、その行き着く先には
何があるのかと心配になります。

 

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保険会社の売上高

4月5日の共同通信から。
「大手損害保険5社が5日発表した2012年3月期の営業成績速報
 によると、売上高に当たる収入保険料が全社で増収となった。」

2月14日の朝日新聞から。
「銀行での窓口販売が伸びた明治安田生命は4~12月期で、
 売上高にあたる保険料等収入で日本生命を抜いて首位に立った。」

メディアでは保険会社の収入保険料/保険料等収入を
事業会社の売上高にあたる、としているようですね。

売上高とは一般に、商品やサービスを提供した対価として
顧客から受け取った代金のことです。
保険会社の場合、保障(補償)を提供する対価として
保険料を受け取っているのだから、これでいいのかもしれません。

ただ、例えばトヨタ自動車の売上高をみると、自動車だけではなく、
金融事業の収益も入っています。

保険会社にとって資産運用は保険事業と並ぶ本業なのだから、
売上高は保険料だけではない、という考え方もできそうです。
確かに保険会社の損益計算書には「売上高」がなく、
代わりに「経常収益」となっています。銀行も同様です。

ところが同じ「経常収益」でも、銀行の経常収益の内訳は、
貸出金利息や有価証券利息配当金などの「資産運用収益」と
「役務取引等収益」「その他業務収益」「その他経常収益」で、
保険会社の「収入保険料/保険料等収入」にあたる項目がありません。

保険会社が保険料を受け入れて、資産運用を行っているように、
銀行は預金を受け入れて、資産運用を行っているにもかかわらず、
銀行の「預金収入」は損益計算書を通らないのですね。

保険と預金では本質的に違いがあるのでしょうか。
将来キャッシュフローを提供するという点では両者は同じです。
定期預金であれば、一定期間後にキャッシュを支払いますし、
終身保険であれば、死亡をトリガーにキャッシュを支払います。

実際、米国の会計基準では、年金保険の収入保険料は
損益計算書に計上されません。

いろいろと考えてきましたが、どうやら「売上高」というものは
非常にあいまいであることがわかってきました。

それでも売上高が注目されるのは、世間のニーズとして
「取引規模の大小をざくっと知りたい」というものがあり、
そのニーズにある程度かなっているからなのでしょう。
銀行だったら「預金残高」でも「貸出金残高」でもいいですし、
保険会社なら「年換算保険料」でも「総資産」でもよさそうです。

いずれにしても、経営陣が最重要と考える指標ではないことを、
よく理解してもらいたいですね。

 

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日米の変額年金

東京海上日動フィナンシャル生命は28日、全保険商品の
新規取り扱いを7月から一時休止すると発表しました。
同社は変額年金保険を主力としてきた会社で、
変額年金の資産残高は1.9兆円に上ります(2011/12末)。

2008年の金融危機以降、変額年金の販売額は
大きく落ち込んでいます。
最大手だったハートフォード生命(同2.2兆円)は
2009年6月から保険商品の新規取り扱いを休止。
新規参入のアリアンツ生命が、営業開始からわずか3年半で
新契約休止を発表するといったこともありました。

これに対し、金融危機の震源地だった米国の動向は
日本とかなり異なるようです。

LIMRAによると、変額年金の販売額は2007年の1840億ドルから
2008年、2009年と大きく落ち込んだものの、その後は盛り返し、
2011年には1590億ドルと、2006年の水準に回復しました。
LIMRAのHPへ

主要プレーヤーの四半期ごとの売り上げを見ても、
MetLifeの市場シェア拡大やHartford Lifeの縮小、
あるいはAIGの回復など、それなりに動きはあるのですが、
日本のような極端な変動は見られません。

日米でどうしてこのような違いが出ているのでしょうか。
2年前にも同じテーマで書いているのですが(米国の変額年金販売)、
やはり販売チャネルの違いは大きいのでしょうね。
日本ではあまりに売り手主導になっているのだと思います。

銀行による一時払い商品の販売が、金融危機以降も
落ち込んでいないことはご存じのとおりです。
銀行が保険会社に求める商品は、投資商品というよりは、
預金代替商品なのでしょう。

日本の銀行が保険会社と長期的な関係を築こうという
意識が弱いのかどうかはわかりません。
ただ、事実として、多くの銀行が複数の保険会社の代理店となり、
結果的に売れ筋の商品が短期間で変わってきました。
米国ではどうなのでしょうね。

あと、保険会社が変額年金の最低保証を提供するに際し、
市場環境の違いも無視できません。
日本は10年国債利回りが1%前後で推移しているのに対し、
米国はだいぶ下がったとはいえ、10年債の利回りはまだ2%強です。
加えて株価動向の違いもあります。

もっとも、米国でもここまで金利水準が低くなると、
最低保証の提供はそう簡単ではないように思うのですが、
いかがでしょうか。

※写真は横浜赤レンガ倉庫です。
 商業施設としてリニューアルしてから10周年とのこと。

 

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生命再保険の分析

 

生命保険論集178号に、柳瀬典由さん(東京経済大学)による
「生命保険会社の商品・販売戦略と生命再保険によるリスク管理
 -2001年度から2010年度までのパネルデータ分析-」
が掲載されています。
日本の生命再保険市場を扱った貴重な論文です。
生命保険文化センターのHPへ

柳瀬さんは論文で元受生命保険会社の再保険料(=出再)が
1990年代前半に比べて大きく増加したことを示したうえで、
実証分析の結果、次の3点が明らかになったと述べています。

①保険種目が集中している、年金商品の取り扱いシェアが
 大きい生保会社ほど、出再に対して積極的
②新契約高を急激に拡大した会社ほど、再保険購入に積極的
③ソルベンシーマージン比率が高い会社ほど再保険購入に
 消極的である可能性

「2010年度の再保険料(合計額)は9820億円」とあるので、
そんなに大きいのかと思って調べてみたところ、
上位5社(マニュライフ、ハートフォード、プルデンシャル、
プルデンシャル・ジブラルタ・ファイナンシャル、メットライフアリコ)が
全体の7割、上位10社で9割を占めることがわかりました
(第一フロンティア、アイエヌジー、東京海上日動フィナンシャルなど)。

この顔ぶれからすると、変額年金の最低保証リスク対応が
かなりのウエートを占めていることが伺えます。
「出再に対して積極的」というよりは、「出再が前提」でしょうか。
グループ内への出再も多いですしね。

もうひとつ大きそうなのは、サープラス・リリーフ再保険です。
新契約の初期コストの未回収リスクの軽減を目的とするもので、
いくつかの会社で活用している模様です。
仮に日本がUS-GAAPのような新契約費を繰り延べる会計だったら
おそらく使われることはないのでしょう。

とはいえ、①と②はそれなりに実感と合うのですが、③はどうでしょうか。
資本不足の会社ほどリスクを回避しなければならないと思いますが、
活用状況からはあまり実感がわきません。

なお、受再サイドからも生命再保険について探してみました。
日本損害保険協会のデータを見ると、加盟会社の
正味収入保険料(生命再保険)は242億円でした(2010年度)。
これはトーア再保険によるもので、国内だけかどうかはわかりません。

加盟会社ではありませんが、スイス再保険日本支店の
正味収入保険料(その他)は106億円で、ここに生命再保険が
含まれるのではないかと思います。

いずれにしても、特定の用途を除いてみると、
日本の生命再保険市場はまだまだ未発達と言えそうです。

※写真はベルギービールです。

 

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「データはウソをつく」

 

前回に続き書評もどきということで、谷岡一郎さんの
「データはウソをつく」(ちくまプリマー新書)から。
副題に「科学的な社会調査の方法」とあり、
「事実」を認定するプロセスについて書かれています。

本書では私たちがやってしまいがちな間違いについて、
いくつかの事例を取り上げていて、これが面白いです。

昔、連合軍の戦闘機がドイツ軍にバタバタと撃ち落されるので、
ある連合軍の将軍が、命からがら帰ってきた機体を調べ、
尾翼のダメージがひどいことを発見しました。
そして本国に「尾翼を強化するように」と打電したそうです。

どこがおかしいかわかりますか。

本国からの返事はこうでした。

「尾翼をやられた戦闘機は一応帰ってきた。
 他の場所を撃たれた機が帰ってこなかったとすれば、
 強化するのは別のところではないか」

ということで、将軍は残ったものだけを見て考えた因果モデルを
頭から信じてしまったのですね。

もう一つの事例を紹介しましょう。

「ビール生産 大阪ドーム119杯分」

報道ではこのような表現をよく見かけますよね。
私もかつてメディアのバイトをしていたときに、
「わかりやすい記述」として指導を受けた記憶があります。

著者の谷岡さんはこのような表現について、
「わざとわかりにくくしている」「さっぱり意味をなさない」といいます。

「記事を書く側は、『どうだ、すごいだろ』という感覚で
 書いているのでしょうが、読む側としては、大人一人につき
 『バケツ○杯分』だとか、『大ビン○本分』と書いてくれるほうが、
 少なくとも実感できますからはるかにありがたい」

同感ですね。人間はあまりに大きな数字や小さすぎる数字は
消化できないのです。

リスクを扱っていると、データをもとに説明する機会が多いので、
著者の言う「数字を過信しない」「それだけに頼らない」「常に疑う」
という意識を持っている必要がありそうです。

ただし、だからといって数字を使わないほうがいいという主張では
決してありません。著者も「数字は有力な補強材」としています。
念のため。

※小学校の卒業式に出席しました。
 いまどきの小6女子はこんな感じです。

 

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守備力の評価方法

 

「僕は君たちに武器を配りたい」(講談社)を読みました。
著者は「京大NO.1若手人気教官」の瀧本哲史さんです。

「これから社会に旅立つ、あるいは旅立ったばかりの若者が、
 非常で残酷な日本社会を生き抜くための、『ゲリラ戦』のすすめ」

とありますが、社会に旅立ってからすでに20年以上たつ私にも
興味深い内容でした。

「コモディティ化」の潮流が、世界のあらゆる産業で
同時に進行するなかで、企業や個人にとって重要なのは
「コモディティにならないようにすること」です。

そのために、本書では「投資家的生き方」を勧めています。
詳しくは本書をご覧下さい。

ところで、本書では例え話として、メジャーリーグでの選手の
年棒査定方法を取り上げています(守備について)。

かつての野球選手は、エラーが少ない人ほど守備がうまい、
と見なされていました。

ただ、エラーの数で判断すると、簡単なフライを捕球しても、
エラーの危険を冒して難しい打球に飛びつきアウトにしても、
評価は同じです。難しい球を捕りにいってエラーをするより、
はじめからヒットにしてしまったほうが、評価は悪くなりません。

つまり、この評価方法では簡単にヒットを許してしまうことになり、
点を取られてしまう、すなわち、試合に勝てなくなってしまいます。

そこで現代のメジャーリーグでは、どれだけ自分の守備範囲で
アウトにすることに貢献したか、という観点から守備力を
評価するようになったそうです。
すべてのアウトカウント数27個のうち、その選手がいくつに
関わったかを見ていきます。
これだと積極性が高い選手ほど、評価が高まるわけです。

部分的にはいいと考えても、全体から見ると本末転倒、
ということは、リスク管理の世界でも起こりうる話ですよね。

※ようやく大倉山の梅も見ごろを迎えました

 

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FRBのストレステスト

米FRBは13日、大手銀行に実施したストレステストの結果を
公表しました。
一般に「ストレステスト」と言われていますが、正式名称は
「Comprehensive Capital Analysis and Review 2012」です。
FRBのニュースリリースへ

対象となった大手19グループのうち、15グループは
FRBが定めた仮想ストレスシナリオのもとでも、
ベンチマークとなる規制資本を維持できるという結果でした。

ただ、「不合格」となった4グループのなかに、
大手生保メットライフが入っていて、ちょっと驚きました。
コアTier1比率は5.1%と、基準である5%を上回ったものの、
Total Risk-Based Capital Ratioが6%でした(基準値は8%)。

今回のテストでメットライフが「不合格」となった
主なリスク要因は何だったのでしょうか。
このメットライフのコメントを見てもよくわかりません。
メットライフのHPへ

FRBの公表資料を見ると、ストレスシナリオによる損失が
どこで発生しているか、グループごとに示されています。

これによると、Wells Fargoのような銀行中心のグループでは
損失の大半はローンの引き当てによるものです。
CitigroupやJPMorgan Chaseでは引き当てのほかに
Trading and Counterparty Lossesが大きくなっています。

他方、メットライフの場合にはこれらの損失がほとんどなく、
有価証券の実現損が損失の大半を占めていました。

ストレステストではグループによるリスク・プロファイルの違いが
浮き彫りになるといいますが、まさにその通りの結果です。
もっとも、商業銀行や投資銀行と保険会社ですから、
損失の発生源が違うのは当たり前かもしれません。

なお、ストレスシナリオは、これまでよりも厳しいという印象です。
失業率は13%まで上がり、住宅価格が2割下落します。
株価は50%も下がり、長期金利も下がるというものです。

 

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