地震保険の契約が増加

 

地震保険の都道府県別契約件数(新規と保有)を
損害保険料率算出機構が毎月公表しています。
算出機構のHPへ

新契約件数の推移をみると、東日本大震災後の
2011年4月に前年同月比で10%増となり、
6月まで2けた増が続きました。
その後は徐々に伸びが鈍化し、10月は3%の増加です。

ただ、岩手、宮城、福島の3県では、今でも契約が
ハイペースで伸びています。10月は岩手県が21%増、
宮城県が36%増、福島県が47%増となっています。

他方、西日本では新契約の前年割れが目立つなかで、
沖縄県だけは17%の増加となりました。
よく見ると、2けた増は大震災の発生前からです。

沖縄県では大地震は発生しないと考えられていたためか、
地震保険加入率は10%と全国で最も低い水準です。
ところが、2010年2月にマグニチュード7.0の地震が発生し、
沖縄でも大きな地震が起こることが実感されました。
地震保険の伸びはその影響かもしれません。

リスクが顕在化した後には、やはりニーズが高まるのですね。

※写真は高知県・安芸の町並みです。

 

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保険会社の利益の源泉

 

近年のコンバインドレシオを見てもわかるとおり、
損保は保険収支の低迷に悩まされています。
他方、生保の危険差益は安定して推移しています。

保険会社の利益の源泉について、少し考えてみましょう
(資産運用力については今回は触れないことにします)。

利益の中核をなす「危険差益」は、想定した発生率
(=保険料の基となる発生率)を実際の発生率が下回ると
生じるという説明が一般的です。

ただ、これだと料率を高めに設定すれば利益が出ることになり、
「不完全競争だから利益が出る」となってしまいます。
生保の危険差益は不完全競争によるところが大きいのかは?ですが、
完全競争においても保険会社は儲けることができるのでしょうか。

まず「大量の自社データを活用したプライシング」はどうでしょう。
不十分なデータでは大数の法則が働きにくく、
安定して事業を行うことができません。
プライシングの巧拙が利益の源泉というのは言えそうです。

「分散効果」も考えられますね。
地域分散や事業分散により全体としての引受リスクが下がれば
リスク対比のリターンを高めることができるでしょう。
使う資本が少なくてすめば、他に回すことができます。

「選択効果」はどうでしょうか。
健康診断などにより、生保では契約後しばらくは選択効果があり、
危険差益が出やすいことが知られています。
ただ、経済価値ベースで考えた場合、利益の源泉と言えるかどうか。

「選択効果」とは違いますが、不完全競争の市場を選ぶことで
利益をしばらく上げることはできるかもしれませんが...

現状はともかく、市場が全体として完全競争に向かうのであれば、
「大量の自社データを活用したプライシング」「分散効果」、
この2つを意識した戦略が重要ということになりますね。

それでは小規模な保険会社は生き残れないのか。
いつか別の機会に考えてみたいと思います。

※写真は三菱財閥の創業者である岩崎弥太郎の生家です。
 安芸という町の中心からかなり離れたところにありました。

 

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コダックの経営破綻

 

米イーストマン・コダックが破産法11条の適用を申請しました
(19日)。

17日の日経コラム「一目均衡」は興味深い内容でしたね。
西條都夫編集委員による「コダックはなぜ躓いたのか」です。

写真用フィルムの王者だった米イーストマン・コダックが
経営危機に陥ったのは、デジタルカメラの普及によって
銀塩フィルムの市場が消失したのが直接の要因ですが、
それだけではないというものです。

西條氏はコダックの失敗として次の2つを挙げています。

・まだまだ写真フィルムが全盛だった1990年代に
 「選択と集中」の原則に沿ってフィルム以外の事業を
 次々と外に切り出し、将来の成長の種まで社外に
 流出させてしまったこと

・同じ時期に、最大のライバルの富士フイルムを
 政治力でねじ伏せようとしたこと

コダックは経営破綻に追い込まれてしまいましたが、
同じくフィルムを基盤とした富士フイルムは生き残りました。

両社を比較した英エコノミスト誌の翻訳記事も見つけました。
「『津波が来るのを目の当たりにして、何も打つ手がない』
状態に近い」と、コダックにやや同情的なことも書いてありますが、

「現状に満足する独占企業になっていた」
「完璧な製品を作るメンタリティーに捕らわれていた」
「自社のマーケティングとブランドに大きな自信を持っていた」

などの記述もあります。
JB PRESSのHPへ

日本の保険業界にとっても参考になりそうですね。

※写真は高知の桂浜です。

 

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高知の路面電車

 

高知では「とでん」と呼ばれる路面電車が健在です
(土佐電気鉄道なので「とでん」)。
路線長25kmは広島に次ぎ第2位。
日本各地で活躍した車両がゴトゴト走っていて、
なつかしい感じがしました。

ただ、いろいろ見てみると、どうも高知県の交通政策は
相変わらず自動車中心のようで、民間会社が運営する
路面電車はかなり厳しそうです。

何より車両がかなり老朽化しています。
写真右の「ハートラム」は1編成だけ(2002年に導入)。
大半は製造されてから50年もたっている車両のようで、
これにはびっくりです。

レトロな雰囲気はよいのですが、旧型車両は揺れますし、
スピードが非常に遅いので、時間がかかります。
新型車両なら乗り降りも快適なのですが。

JR高知駅とのアクセス改善や路面の芝生化など
何もしていないわけではないのは理解できるのですが。
他の交通機関とのアクセスや停留所の改善など
広島などほかの都市と比べると取り組みはまだまだ。

2010年作成の「高知都市圏の交通計画マスタープラン」では、
人口減少や高齢化、中心市街地の衰退を示したうえで、
「都市機能がコンパクトに集約した都市構造を目指す」
としています。ここまではよくわかる話です。

ところが、このマスタープランのなかで、交通施設の
整備方針として掲げられている内容はなぜか道路の整備ばかり。
公共交通については別途検討するとしていますが、
プランとして中途半端な感は否めません。
高知都市圏の交通計画マスタープラン(PDF)

検討するうちに路面電車が廃止、なんてことにならぬよう
願うばかりです。

 

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2011年の自然災害

 

ミュンヘン再保険の調査によると、2011年に発生した
世界の自然災害による損失は過去最大だったそうです。

経済損失は3800億ドルで、これまで最大だった
2005年の2200億ドルを大幅に上回りました。
保険金支払額(見込みを含む)は1050億ドルで、
やはり2005年の1010億ドルを上回り、過去最高です。

確かに昨年は大規模な自然災害が相次いで起こりました。
上位5災害は次の通りです。

 ・東日本大震災(経済損失2100億ドル、保険損失350~400億ドル)
 ・タイの洪水(400億ドル、100億ドル)
 ・ニュージーランドの地震(160億ドル、130億ドル)
 ・米国のトルネード(150億ドル、73億ドル)
 ・米国等のハリケーン・アイリーン(150億ドル、70億ドル)

これをみると、東日本大震災とタイの洪水だけで経済損失の2/3、
保険損失の半分程度を占めることがわかりますね。
タイの洪水が100億ドルもの保険損失になるとは驚きでした。

※写真は高知城です。

 

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高知の喫茶店文化

 

正月休みに高知へ行ってきました。
南国土佐とはいえ、真冬の高知は寒かった...

高知で面白かったのは「喫茶店」です。

喫茶店と言えば名古屋のモーニングが有名ですが、
人口千人当たり喫茶店数は高知県が全国トップです
(ちなみに2位は岐阜県、3位が愛知県)。

しかも、喫茶メニューよりも食事が充実していてびっくり。

私たちがたまたま入った喫茶店「純」の例をあげると、
飲み物は「コーヒー」「カフェオレ」「ミルクティー」「ミルク」
くらいしかないのに、トーストなどの朝食メニューのほか、
「野菜いため定食」「うどん」「親子丼」「卵焼き定食」など、
食事メニューがざっと20くらいありました。

競争が激しいためか、お茶受けが出るのも当然のようです。
私たちはカステラをいただきました。

ネットで調べてみると、高知の喫茶店は独特なようで、
飲み物だけではなく、本格的な食事をする場なのだそうです。
人口が少ないため、専門的な飲食店が成り立ちにくく、
全国チェーンのフードサービスが進出したのも遅かった、
という事情もあるのだとか。

次に高知へ行く機会があれば、カツオのたたきだけではなく、
喫茶店の食事にも挑戦してみたいですね。

 

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日銀券が過去最高を更新

 

あけましておめでとうございます。
年末からのユーロ安の流れが続いているようですね。
引き続き不安定な金融市場を予感させます。

さて、日銀が30日に公表した12月実績速報によると、
年末の日銀券残高が83兆9970億円となり、
過去最高を更新したそうです。

超低金利の影響でいわゆる「たんす預金」が増えているほか、
東日本大震災を契機に、手元に現金を用意しておく
家庭や企業が多かったのではないかと見られています。

預貸率の低下もそうですが、日銀が資金を供給しても
経済活動に回らず、お金が滞ってしまっているのでしょう。

この日銀券の残高は、単に現金の動向を示すだけではなく、
日銀が保有する国債残高の上限ともなっています。

最近の国債保有残高は63兆円前後で推移しています。
日銀券の残高が増え続けていることもあって、
国債残高が増えているにもかかわらず、
今のところ上限まで約20兆円の余裕があります。

ただ、日銀による国債買い増しへのプレッシャーは
引き続き強そうですし、他方で、何らかの要因により
「たんす預金」が急減することも考えられます。

ちなみに、2001年の銀行券残高は60兆円程度、
国債保有残高は約45兆円でした。

上限までの余裕がなくなったとき、日銀はどうするのでしょうか。
難しい判断を迫られそうです。

中央銀行の国債購入と言えば、ECB(欧州中央銀行)が
国債引き受けの増額を市場から迫られていますね。

「財政規律を歪めるべきではない」という声(主にドイツ)と
「市場の安定化を優先すべき」という意見が対立していますが、
国債の大量償還を迎えるこの数カ月が最初の山場となりそうです。

※写真は鎌倉・鶴岡八幡宮です。
 正月にはこんな写真は撮れないでしょうね^^

 

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借金漬けの野田家

 

いろいろあった2011年もあとわずか。
東日本大震災の発生と原発事故、欧州ソブリン危機、
そして日本の財政問題。

いずれも深刻なものばかりで、かつ、解決はこれから。
特に財政問題は、市場のターゲットとなったイタリアが
2013年の収支均衡に向けて具体的に動き出したのに対し、
日本はほんとにこれからですものね。

24日の朝日新聞(時事通信)です。
—————————-
高齢の両親の医療費はかさむ一方。給料だけではやり繰りできず、
借金漬けのサラリーマン家庭、野田家はいまや破産寸前--(中略)

夫の年収は423万円だが、支出は903万円。消費者金融から
年収よりも多い442万円を借り(国債発行)、37万円のへそくり
(税外収入)で食いつなぐ瀬戸際の生活だ。

支出が前年度比20万円減るのは保険料(年金国庫負担の一部)を
長男に払わせるため。東日本大震災の義援金には次男の貯金
(復興特別会計)を使う。

危機の主因は伸び悩む年収と、年々増え続ける両親の医療費
(社会保障費)にある。しかし、社長も両親も「無駄遣いするからだ」
「へそくりがあるだろう」と取り付く島もない。
—————————-

それでは皆さま、来年も引き続きよろしくお願いします。

※鎌倉の瑞泉寺です。年末なのに紅葉がきれいでした。

 

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「リスクオフ」規制が助長?

 

27日の日経に小平龍四郎編集委員による
「『リスクオフ』規制が助長?」という記事がありました。
これまで株式の比率を下げてきた生命保険会社が
規制強化で「リスクオフ」を続ける、というものです。

この記事のなかに、

「支払い余力規制が強くなりすぎると、株式投資などを通じて
 経済に成長資金を供給してきた生保の役割が変わってしまう
 --国際決済銀行(BIS)はそう警告している」

という記述があったので、元のレポートを探してみました。

記事に出所が書いていないので特定できないのですが、
おそらく7月の「保険会社と年金基金の債券投資戦略」
というレポートではないかと思います。
BISのHP

確かにレポートには、

「伝統的に長期投資家である生保や年金基金が、
 新たな会計や規制により、その役割を果たすのが難しくなっている」

とあります。しかしよく読むと、

「彼らが債券市場において果たしてきた長期投資家としての役割に
 影響を与えかねない大きな課題に直面している」

とあり、そもそも株式市場についてコメントしているのではなく、
「ソルベンシー規制の強化 → 生保が株式売却」という議論を
展開しているわけではありません。

しかも、同じレポートのなかで、

・ソルベンシーⅡの資本コストをカバーするための収益目標は、
 生保のような長期投資家にとっては達成が容易

・そのうえ分散効果が実質的な株式へのリスクチャージを
 半分程度に減らす可能性がある

・したがって、EUソルベンシーⅡの導入後も、株式は引き続き
 投資可能な資産クラスであり続ける

と結論付けています。

ということで、少なくともこのレポートを引用して
「BISが規制強化による株式市場への影響を警告」
というのはおかしい話ですね。

ただ、私の知らない別の「警告」があるのかもしれませんので、
ご存じのかたはぜひ教えていただけませんでしょうか。

※写真は横浜の歴史的建築物です。

 

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視聴率40%

 

「家政婦のミタ」最終回の平均視聴率が40.0%(関東地区)と、
ドラマでは史上5位(大河ドラマなどを除く)だったそうですね。
三田さんが微笑むシーンを私もちらっと見ました。

この「視聴率」が気になったので、少し調べてみました。
ビデオリサーチのHPへ

現在、視聴率を調査・公表しているのはビデオリサーチだけなのですね。
ニールセンは10年前に撤退していました。

まず、一般に「視聴率」と言われるのは「世帯視聴率」のことで、
「テレビ所有世帯のうち、どのくらいの世帯がテレビをつけていたか」
を示す割合なのだそうです。

例えば、調査対象600世帯のうち、240世帯が「家政婦のミタ」を
見ていれば、世帯視聴率は40%となりますが、
当然ながら「10人に4人が見ていた」ことにはなりません。

世帯に複数のテレビがあることも考慮すると、
「テレビ所有世帯のうち4割で、世帯の誰かが『家政婦のミタ』を見ていた」
ということになりますね。

調査対象は関東地区の場合、ランダムに選んだ600世帯に
お願いしているとのこと。これは意外に少ないように感じました。
毎月25世帯を入れ替え、2年間ですべての対象世帯が
入れ替わるようにしているそうです。

ただ、協力世帯は実際にどう決まるのでしょうね。
ランダムに対象世帯を選ぶようですが、そもそも母集団のデータは
何を使っているのでしょうか。
連絡先がわかる世帯は年々減っているでしょうし。

結果的にテレビをよく見る人が協力世帯になっているように
思えてしまうのですが...

まあ、統計上の誤差もそこそこ大きいようですし、
あくまで参考情報として取り扱う数字なのでしょうね。

※写真は横浜・赤レンガ倉庫のクリスマス市場です。

 

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