リタイアメント準備度調査

 

先日、オランダに本社があるエイゴングループ
(日本ではソニー生命との合弁会社が営業)が、
「リタイアメント準備度調査」をまとめていて、
興味深い結果が出ていました。
調査レポート(PDFファイル)へ

この調査は日本、米国と欧州8カ国の1万人を対象に、
退職後の生活に対する意識と、退職後の生活資金の
準備状況に関する実態を調べたものです。

調査レポートのなかに、現役世代が退職に向けて
どの程度の準備が進んでいるのかを指数化した
「エイゴン・リタイアメント準備度指数」というものがあり、
日本が10カ国中最下位となっていました
(トップはドイツ、2位は米国です)。

準備度調査は次の6つの質問に対する回答から
算出されているようです。

<退職に向けた取り組み>
・退職後に十分な収入を確保するために自助努力は
 必要だと思うか?
・退職後に向けた資金計画を立てる必要性は認識
 しているか?
・退職後の生活や年金に関する金融知識はどの程度か?

<実態調査>
・退職に向けた計画はどの程度進んでいるか?
・資金準備のための貯蓄は進んでいるか?
・希望する生活を送るのに必要な収入の確保に向けた
 取り組みはどの程度進んでいるか

日本は、「自助努力の必要性を強く感じる」という回答が
87%に達し(ちなみ全体では71%、米国84%、ドイツ76%)、
「資金計画の必要性を強く認識している」という回答が
75%ありました(全体では62%、米国77%、ドイツ81%)。

別のアンケートでは、公的年金の給付が削減されるだろうと
考えている人が多いことも示されています。

ところが、「退職後の資金準備が進んでいる」という回答は
わずか11%(全体では25%、米国32%、ドイツ43%)、
「準備ができていない」という回答が64%もありました
(全体では46%、米国40%、ドイツ27%)。

公的年金は減ると思っているけど、依存度は大きい。
自助努力が必要と考えているけど、実践はできていない。
この結果をどう考えたらいいのでしょうか?

※週末の横浜中華街は賑やかですね。
 焼き小籠包の店に行列ができていました。

 

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内部統制とERM

 

日本価値創造ERM学会の研究発表大会・特別講演会に
出席しました(18日)。

こうした大会では何かと「気づき」を得られるものです。
今回は「内部統制」が私のなかでのキーワードとなりました
(大会プログラムはこちら → 学会HPへ)。

COSOをご存じでしょうか。元々はトレッドウェイ委員会
(=1987年に不正な財務報告に関する報告書をまとめた)
を財政的に支援する団体だったようですが、報告書を受けて、
COSOが1992/1994年に公表した内部統制フレームワークは、
内部統制のグローバルスタンダードのようなものとなっています

ちなみに18日の学会では、このCOSO内部統制フレームワークの
改訂案について箱田順哉会計士の特別講演がありました。
COSOのHPへ

ところで、COSOの内部統制(英語ではInternal Control)と
ERM、ガバナンスの関係を示すと、次のようになります。

 ガバナンス > ERM > Internal Control

つまり、Internal Control よりも ERM のほうが広い概念
ということになりますね。
確かに、同じCOSOが公表しているERMフレームワークと比べると、
目的に「戦略」が入っているのはERMのほうだけです。

他方、日本の会社法では大会社に対し、内部統制の基本方針を
定めるよう求めています。

会社法が求める内部統制とは、主に次の通りです。

 ・取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に
  関する体制(=コンプライアンス体制です)

 ・損失の危険の管理に関する規程その他の体制
  (=これはリスク管理体制ですね)

 ・取締役の職務の執行が効率的に行われることを
  確保するための体制

 ・使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを
  確保するための体制(=これもコンプライアンス体制です)

 ・当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る
  企業集団における業務の適正を確保するための体制

すなわち、会社法の内部統制には「リスク管理体制の構築」が
含まれていることがわかります。

例えば保険会社のディスクロージャー誌を見ると、
会社法を踏まえ、まず内部統制の基本方針を定めたうえで、
その下でリスク管理体制を構築し、規程を整備しているようです。

しかし、単なるリスク管理ではなくERMとなると、どうなるか。
ERMが内部統制よりも上位の概念ということは、
内部統制の下にあるリスク管理体制を整備するだけでは、
ERM態勢を構築したことにはならないのです。

「リスクを計量化して資本と対比することがERMではない」
などと時々話すのですが、この概念整理からもわかりますね。

今回はちょっと硬派な話になってしまいました。

※いつもの通り個人的なコメントということでお願いします。

※センター試験ということで、写真は湯島天神です。

 

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保険学の位置付けとは

 

先日ある会合で日本保険学会の理事長にお会いした際、
「保険学会に初めて女性の理事が誕生したんですよ!」
(明治大学の中林真理子先生です)というお話を伺っていたところ、
保険毎日新聞にその中林先生のインタビュー記事が載っていました。

このインタビューのなかに次のような話がありました。

「保険会社は学生たちの就職先人気ランキングの
 上位に入っているにもかかわらず、積極的に
 保険学を勉強したいと考える学生は少ない」

大手保険会社は昔から就職ランキング上位の常連ですね。
就職ランキングとは、そこで働いたことのない人たちによる
人気投票なので、あまり深い意味はないかもしれません。

まあ、「知名度が高い」「イメージがいい」くらいはありそうですが、
「知名度が高い」「イメージがいい」のはあくまで保険会社であって、
保険学ではない、という状況をどう考えればいいのでしょうか。

インタビューには、

「保険学は、金融・経済はもちろん、マーケティングや文化、
 法律など、多くの分野にまたがっており、その気になれば
 多くのことを学ぶことができる」

とあります。確かにそうです。

しかし、「保険経済学」「保険法学」「保険経営学」を示された学生は、
それだったら「経済学」「法学」「経営学」を勉強したほうがいいと
考えてしまうのかもしれません。

インタビューにもあるように、「保険学の位置付けが難しいものに
なってきている」ということなのでしょう。

1年ほど前にブログで取り上げた、一橋大学・米山高生先生の整理が
私には参考になるように感じます。

 「伝統的な保険論」は供給者の視点に立っており、
 収支相等の原則からはじまる保険論。
 予定調和的な世界を前提にしており、
 価格は保険数理による決定論的な世界で決まる。

 これに対し、「リスクマネジメント&保険」は需要側から
 マーケット(=自由競争)を前提に考えるもの。
 予定調和ではなく不確実な世界であり、
 価格は確率論的な世界で決まる。

 今後の保険教育は伝統的な保険論(保険数理を含む)に加え
 リスクマネジメント&保険、金融工学、コーポレートファイナンス
 の4領域が主軸になる。

いずれにしても、新しい理事には大いに期待したいです。

※遅ればせながら先日の大雪の写真です。
 ちょうど生協の配達日だったので、大変そうでした。

 

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国債市場関係者の見方

 

安倍政権の緊急経済対策が決まり、国債が増発されます。
市場は順調に消化できるのでしょうか。

これに関して、10日に財務省が「国債市場特別参加者会合」と
「国債投資家懇談会」を開催し、議事要旨を公表しています。
市場関係者の見方を知るうえで参考となりそうです。
国債市場特別参加者会合の議事要旨へ
国債投資家懇談会の議事要旨へ

ちなみに「国債市場特別参加者」とは、

「国債市場(発行市場及び流通市場)において重要な役割を果たし、
 国債管理政策の策定及び遂行に協力する者であって、
 国債市場に関する特別な責任及び資格を有する者」

として財務大臣が指定したプライマリーディーラーで、
メガバンクや大手・外資系証券など24社です(1/4現在)。

国債投資家懇談会のほうは投資家と学者・研究者がメンバー。
投資家メンバーは金融機関や大手投資家など15社で、
現在の保険会社メンバーはかんぽ生命、東京海上、日本生命
となっています。

超長期債について両会合の議事要旨を比べてみました。
プライマリーディーラーは総じて超長期債の発行増額には慎重、
投資家懇談会では「特定の投資家層の需要」をどう見るか、
といったところでしょうか。

下に抜粋しましたが、HPをご覧いただくと、なかなか興味深いです。

<国債市場特別参加者会合>
 ・超長期債の需給環境は良くないが、発行年限の長期化のために
  増額する場合、消去法的に30年債になる。

 ・現在の金融緩和環境を踏まえれば、5年債、10年債を中心に増額し、
  次に2年債、超長期債を増額すべきと考える。(中略)
  30年債は月1,000億円程度の増額は可能とみている。

 ・20年債、30年債については、これまでの入札結果が芳しくないことや
  世界的な金利環境を鑑みると増発負荷の許容度はやや低いと思われる。

 ・超長期債の増発はあくまでも5年債、10年債、2年債を増発した上で、
  それでも不足する場合に検討を行うべきである。

 ・平均償還年限の長期化を引き続き継続していくという全体の構図に
  若干違和感を覚えている。銀行主体の消化にならざるを得ないという
  構図であることや、満期が到来する年限を考慮すると、中長期債中心の
  増額になるのではないかと考えている。

<国債投資家懇談会>
 ・30年債がALMの中心であり、30年債で足りない部分を一部20年債で
  代替している状況である。国債の増発については、30年債について、
  一回当たりの発行額を1,000億円減額したとしても毎月発行を希望する。

 ・潜在的な長期化需要が、超長期ゾーンの価格形成に過度に影響を
  与えないためにも、市場の厚みを増すという観点から超長期債供給の
  拡大を継続的に行っていただきたい。具体的には、生命保険会社等の
  投資が拡大していることもあるため、30年債の増額を優先していただきたい。

 ・超長期債は、イールドカーブがスティープ化しており、増発は控えるべき。

 ・20年債については(中略)超長期の負債を保有する生保や年金に加え、
  銀行等も参入してきており、多少増額しても消化に不安はない。
  30年債については、引き続き超長期の負債を保有する生保を中心に
  潜在的なニーズがあると考えている。

 ・国内サイドの需給がよいのは分かるが、海外が平時になり金利上昇した
  場合には、影響を受けざるを得ないため、超長期ゾーンの増額は慎重に
  なる方がよいのではないか。

 ・超長期債は流動性が低いため、増発は慎重にすべきで、発行頻度は
  現状維持として頂きたい。

 ・超長期債については、特定の投資家層の需要はあるため、需給を
  壊さない範囲で増額は可能と考える。

 

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ダムの底に沈む温泉へ

 

今回は正月休みの最終日に行った鉄道旅行の話です。

JR吾妻(あがつま)線の沿線には温泉がたくさんあります。
有名な草津温泉をはじめ、万座温泉、四万温泉も沿線です。
「○○温泉」という駅も2つあります。

そのなかで、ダムが完成したら沈んでしまう温泉として知られる
川原湯温泉に行ってきました。
昭和の香りが漂う共同浴場と、男女共用の簡素な脱衣所と
浴槽しかない究極の露天風呂(写真右)をハシゴしました。

このダムとは、民主党政権が事業中止を打ち出したものの、
その後一転して工事再開となった、あの八ツ場(やんば)ダムです。

川原湯温泉は源頼朝が発見したとされる歴史ある温泉で、
最盛期には20件以上の旅館があったそうです。

しかし、激しい反対運動を経た後に、ダムに沈むことが決まり、
休業や廃業が相次ぎました。いまや営業中の旅館は4件のみです。
共同浴場の営業も早ければ年内で終了だそうです
(高台の代替地に移転する予定)。
訪問客が減ったためか、日中営業している食堂もありません。

唯一やっていた売店お福のおばあちゃんと話をしました
(お腹がすいたので、温泉まんじゅうをバラ売りしてもらいました^^)。

「人が減って、お店もなくなっちゃって。せっかく来てもらっても
 食べるところがないんだよねぇ」

「もう、(温泉街の)代替地に移った人たちもいるよ。
 でも、一番多いのは、他の場所に行っちゃった人たちかなぁ」

「代替地に移った知り合いが結構亡くなってるねぇ。
 明後日も葬式があるなぁ」

そんな話を明るい口調でするので、複雑な気持ちになりました。
もっとも、暗い口調で話されたら、きっと辛かったでしょうね。

※駅もダムに沈みます。左の塔のような建物は橋を造っているところです。

 

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リスク管理態勢のばらつき

 

あけましておめでとうございます。
2013年はどんな年になるでしょうか。楽しみですね。

さて、昨年で金融庁を卒業し、保険会社のリスク管理に
これまで以上に深く関わるようになったわけですが、
改めて感じるのは、日本の保険会社のリスク管理態勢には
ばらつきが非常に大きいということ。

「進んでいる」「遅れている」といった次元ではなく、
枠組みや管理手法が様々であるという話です。

日本の保険会社といえば、横並び意識が強い業種の
典型のように言われます。
確かに、格付アナリスト時代から15年以上、保険業界を
観察してきた経験からも、そのように感じることがあります。

保険商品やチャネルが多様化したとはいえ、
大手生保は営業職員を通じた保障の提供が主軸ですし、
損保は引き続き自動車保険が販売の中心です。
本社の経営組織が相似形だったりもします。

会社を超えた業界人のつながりが強いのも
この業界の特徴だと思います。
変な例ですが、私が金融庁を離れるという情報は
かなり早い段階から業界で共有されていたようです^^

しかし、どういうわけか、リスク管理態勢に関しては
独自の進化を遂げているようです。

金融庁の「ERMヒアリングの結果について」
(昨年9/6に公表)に、次のような記述があります。
金融庁HPへ

・(リスクレポートの)報告内容は各社ごと様々だった

・(統合リスク管理の具体的な管理方法について)
 各社により独自の枠組みを構築していた
 リスク管理ツールや管理方法が多様だった

・リスク量の計測に際しても(中略)ばらつきが大きかった
 リスク統合に関しても(中略)様々だった

・各社のALMの実施状況は(中略)ばらつきが非常に
 大きかった

もちろん、リスク管理態勢が横並びである必要はありません。
ビジネスモデルが異なれば、当然ながらそれに適した
リスク管理態勢も異なるはずです。

ただ、独自に構築してきた枠組みが、本当に自社に合った
枠組みとなっているのかは気になるところです。
大きなお世話かもしれませんが...

※写真は初詣で行った伊勢山皇大神宮です。

 

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なぜ記録を残すのか

 

年末の片付けをしていたら、御厨貴先生の新聞記事
「公文書管理 記録残さぬ風土 戦後から」が出てきました
(4/30の読売)。

日本には議事録や記録を公文書として残す伝統が
存在しなかったのではなく、敗戦後、大量の公文書を
焼却したうえ、その後の占領統治のなかで、議事録や
記録をなるべく残さぬことが普通になっていったのだそうです。

民間でもリスクマネジメントを構築するとなると、
やれ文書化だ、やれ記録だと、いろいろ面倒なこと(?)
を求められますよね。

なぜ記録を残さなければならないのか。
御厨先生は記事のなかでこう語っています。

 後世に残すためのアーカイブ化と言うと、ずっと後の
 歴史家のために、なぜ今の決済に忙しい我々がという
 官僚諸氏の不平不満が聞こえてくる。そうではないのだ。

 今の決済や決定を明快に行うためにも、記録や議事録という
 同時並行的によりそうブツの存在が必要なのだ。
 そう、今やっている自分を、もう一人の自分がじっと眺めている
 とでも言おうか。

 そしてそうした記録や議事録は、そう遠くない将来、
 同様のコトが起きた場合、まさにすぐさま応用が利く
 成果をもたらすはずだ。

政府でも民間でも同じことだと思います。

※写真はダイコン畑と直売所。三崎まぐろ祭りの帰りに立ち寄りました。
 皆さん、来年もよろしくお願いいたします。

 

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米国生保の資産運用

ニッセイ基礎研究所の松岡博司さんが、
「米国生保の経営は日本化するか」
というレポートを発表しています。よくまとまっていて参考になります。
ニッセイ基礎研HPへ

「(規制強化で)株を買えない生保」と、事あるごとに
日本の生保は株を買うべしと言わんばかりのキャンペーンをする
どこかの経済紙がありますね。
このレポートによると、米国生保の株式保有はわずか2.3%です
(一般勘定)。しかも、以前から株式保有は多くありません。

「生保は公社債投信になりさがっている」といった声も
時々銀行系のかたから耳にします。米国生保も同じです。
一般勘定資産の7割が内外公社債なのだそうです。

どうも日本では生保を長信銀などと同じ目線で見る向きが
いまだに多いようです。
生保が株式市場などに長期資金を供給するのは
あくまで副次的な役割であって、保障の提供こそが
生保が社会に存在する意義だと思います。

そして、予定利率が固定された長期の保障を提供するのは
日本でも米国でもそう簡単ではないということなのでしょう。

ところで、レポートに次のような記述がありました。

「保有公社債の平均残存期間は 9 年~10 年程度と長い。
 残存期間 20 年超という、たいへん期間の長い公社債が
 約 20%を占める」

気になったのは、米国生保の負債構造がどうなっているかです。

実は日本の大手生保の公社債残存期間も同程度なのです。
しかし、負債が長いので、金利リスクを相殺しきれていません。

米国生保は金利リスクをとらず、信用リスクでリターンをえる戦略
(金利リスクを本当にとっていないかどうかは別として)
と言われますが、日本の生保より一般勘定の負債が短いのでしょうか。

保有契約ベースであれば、依然、終身保険も大きいように思います。
期間の短い団体年金などで打ち消されているということなのか、
終身保険とはいえ、解約してしまうのが一般的なのか...

ご存じのかたがいらっしゃれば、ご教示いただきたいです。

※写真は錦糸町駅です。

 

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横須賀線の会話

 

帰宅途中の横須賀線。運よく座っていた私の前で
同じ会社の先輩・後輩と思われる二人の男性が
なぜかリスク管理の話を始めたので、思わず聞き耳...^^

後輩 「リスク管理って、わかっていることだけやってたんじゃ、
    リスク管理にならないんですよね。震災の時もそうだったし...」

先輩 「いや、そういうこと言うヤツいるけど、俺は同意しないね。
    キリがないじゃないか。例えば東京で震度9の地震が起きるとか、
    隕石が落ちてくるとか。そんなこと考えても意味がないね」

後輩 「そういう話じゃないんです。地震よりも津波のほうが深刻だなんて、
    今回の震災が発生するまで考えてもいなかったですよね。
    わかっているリスクを管理しているだけだと...」

先輩 「いやいや、もし東日本大震災並みのことが東京で起きたら、
    被害はあんなもんじゃすまないだろう?それに備えておくの?
    みんな高台に住むの?そんな馬鹿な話はないだろう」

後輩 「そうじゃなくて...(続く)」

30代とおぼしき後輩くんは「エマージング(新興)リスク」、つまり、
現在はリスクとして認識されていないリスクについて話しているのに、
40代と思われる先輩は全く理解してくれません。

思わず会話に割り込み後輩くんをサポートしたい衝動にかられましたが、
何とか自制しました(笑)

システム関連の会社の方々だったようです。

※ミッドタウンのイルミネーション(写真左)は見事でした。

 

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保険とシステミックリスク

 

19日の保険毎日新聞に、システミックリスクに関する
ジュネーブ協会による調査結果が紹介されていました。

この調査は、ジュネーブ協会がシステミックリスクに関する
銀行と保険会社を比べたものです。
日本勢は日本生命、第一生命、東京海上が入っていました。
調査結果(PDFファイル)

ジュネーブ協会は世界の主要保険会社をメンバーとする
非営利のシンクタンクです。
世界の保険関係者が意見交換を行う場にもなっています。
ジュネーブ協会のHPへ

リーマンショックを受けて、銀行についてはG-SIBs
(グローバルにシステム上重要な銀行)が選定され、
自己資本の上乗せが求められることになりました。

保険会社についてもG-SIIs、すなわちグローバルにシステム上
重要な保険会社への規制が検討されています。

これに対し、「保険会社が破綻してもシステミックリスクを
もたらさない」というのが保険業界の主張です。

確かに今回のジュネーブ協会の調査結果を見ても、
保険会社がシステミックリスクを引き起こす可能性は
銀行に比べるとかなり小さいことがわかります
(Level3資産の割合は意外に大きいのですね)。

ただし、システミックリスクがないのかと言われると、
そのような主張が受け入れられるのは難しい情勢です。

例えば日本銀行の白川総裁は昨年のIAIS総会で、

「保険会社の経営不安や破綻は、貯蓄性保険商品の解約や
 市場の心理的動揺などを通じて、金融システム全体の
 不安定化につながる可能性は否定できません」

という講演を行っています。

金融審議会WGでも、

「伝統的なシステミック・リスクはなくとも、マーケット型の
 システミック・リスクにより、連鎖的に金融市場の混乱を
 もたらすことはありうる。特に、金融商品を大量に保有している
 金融機関は、市場における金融資産の価格の変動を通じて、
 市場において新しいシステミック・リスクを引き起こす可能性がある」

といった議論が行われているようです。

 

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