スイスの存在感

 

ヨーロッパ大陸のなかで、スイスはユニークな存在です。

九州と同じくらいの面積にもかかわらず、
ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の
4つの国語があり、地域によって言語圏が分かれています。

全てのスイス人が4つの国語を話せるわけではありません。
言葉が通じないときは、英語で会話することが多いとか。

宗教もカトリックが42%、プロテスタントが35%です。
宗教改革の立役者の一人であるツヴィングリの地元だから、
もっとプロテスタントが多いのかと思っていました。

スイスが永世中立国というのも有名ですね。
ヨーロッパの中心にありながらEUに加盟せず、
通貨はユーロではなくスイスフランです。

ただし、国際連合には2002年に加盟しています。
ヨーロッパが統合し、経済がグローバル化するなかで、
小国スイスがどのように存在感を発揮していくのか。
今は歴史的な転換期にいるのかもしれません。

最後に少しだけ保険の話を。

スイスはEUではないので、ソルベンシーⅡの対象ではありません。
独自に「スイス・ソルベンシー・テスト」という最先端の規制を導入し、
「経済価値ベース」「内部モデルの活用」をすでに実現しています。

このあたりも、EUより先に進み、存在感を発揮しようという
意識の表れなのかもしれません。

 

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日本への関心

 

海外では大震災の発生以降、日本への同情もあり、
日本への関心が高まっていると言われていますが、
実際のところはどうなのでしょうか?

出張中に話をした相手は保険関係者が中心です。
ヨーロッパ各国だけではなく、米国やカナダ、シンガポール、
マレーシアなど、いろいろな地域から来た皆さんと
話をする機会がありました。

そのなかで、「地震は大丈夫だった?」と聞いてきたのは
シンガポール、マレーシアのアジア勢だけ。
彼らは本当に心配してくれていました。

一方、欧州勢の関心は原発問題に集中していたようです。
特に多かった話題は、

「フクシマをきっかけに、ドイツ、スイスと原発停止に動いている」

というもの。日本への関心もさることながら、
むしろこれは自分たちの話でしょうか。

こちらが提供した話題のなかで盛り上がったのは
6月からの「スーパークールビズ」の話でした。

「テレビで観たけど、アロハシャツと短パンはクールじゃないね」

といったコメントもいただきました^^

あと、日本の食べ物については皆さん関心が非常に高いようです。
日本食はこの10年ですっかりグローバル化した感があります。

 

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スイスの首都は?

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チューリヒでもジュネーブでもなく、ベルンです。
でも、首都というには非常に小さな町でした。

旧市街はU字型に蛇行した川に囲まれていて、
いわば天然の要塞になっています。
そこに中世の街並みがそっくり残っているのです。
世界遺産にも指定されています。

昼は観光客で賑わっていましたが、夜10時過ぎに歩くと
静かで人通りもあまりなく、中世の息吹を感じました。

 

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スーツケースが壊れた!

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久しぶりの海外出張ということで、スーツケースで駅に向かったところ、
しばらくするとスーツケースの動きが極端に悪くなりました。
駅でひっくり返してみると、なんとキャスターの車輪が割れています。
しかも、4つのうち3つがです。

どうやら古くなった車輪のゴムが劣化し、久しぶりに使ったので
割れてしまったようなのですが、さて、どうしたものか。
必死に考えます。

「チェックインの締め切りまで30分あるから、そこで何とかする?」
「かばん屋があれば、そこで新しいのを買う?」
「だめだったら、重いけどホテルまで何とか担ぎ、現地で買う?」
「現地で買うなら、どの時間が使える?」

幸い、成田空港(第1ターミナル)にかばん屋があったので、
そこでスーツケースを購入し、荷物を詰め替えることができました。
何とかチェックインにも間に合い、やれやれです。
飛行機に乗る前にこんなに疲れたのは初めてでした。

かばん屋の店員さんに、「こんな人は時々いますか?」
と聞いたところ、「毎日ひとりは必ずいらっしゃいますよ」だって。
皆さんもご用心くださいね。

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※ミュンヘン中央駅です。空港にかばん屋がなかったら、
 スーツケースを担いで横断するところでした。

 

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人はなぜ逃げおくれるのか

 

「人はなぜ逃げおくれるのか-災害の心理学」
(広瀬忠弘、2004年、集英社新書)

東日本大震災が発生した際の反省もあり、
タイトルに惹かれて読みました。
著者の広瀬さんの専門は「災害心理学」です。

次の①と②のうち、どちらが正しいでしょうか。

①地震や火事に巻き込まれると、多くの人々はパニックになる。
②地震や火事に巻き込まれても、多くの人々はパニックにならない。

正解は②です。

私たちは何となく、「危険に直面したらすぐに逃げるだろう」
「みんなが逃げるのでパニックになるかもしれない」
といったイメージを持っていますよね。

ところが、実際には「これくらいなら大丈夫だろう」という
正常性バイアスが働き、危険をなかなか実感できず、
逃げ遅れてしまうことが多々あるそうです。
現代人は危険に対して鈍感なのですね。

また、映画やドラマの影響かもしれませんが、
災害や事故が起きると、人々が恐怖にかられ、
理性や判断力をかなぐり捨てて逃げまどう、
そんなイメージもあります。

しかし、災害時にパニックが起こることはまれであり、
そのような異常行動はめったに起きない、というのが
災害心理の専門家の「常識」なのだそうです。

著者は災害とパニックを短絡的に結びつける
古い災害感を「パニック神話」として警鐘を鳴らしています。

パニックを恐れて情報を過少に伝えてしまった結果、
大きな犠牲につながったケースはいくつもあるそうですし、
災害や事故の原因をむやみにパニックのせいにすると、
事態を曖昧にし、問題を糊塗する恐れがあるとのこと。

これはERMにもつながる話かもしれませんね。

※写真は井の頭公園です。

 

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再保険への理解が進むか

 

報道によると、大手損保3グループの東日本大震災での
支払見込額は6000億円近くに達します(地震保険を除く)。

しかし、公表された正味の支払見込額は2000億円程度です。
差額の約4000億円の大半は再保険でカバーされるのでしょう。

JA共済連の建物更生共済は家計向けの地震リスクを持つので、
JA共済の支払見込額は6500億円に達するとか。

ただ、「農林金融2004・4」によると、「一事故で2500億円を
超える損害部分に対する額について再保険会社から
再保険金が支払われることになっている」そうですから、
スキームが変わっていなければ、やはり正味の支払額は
限られるのでしょう。

再保険というと、一般になじみがないだけでなく、
金融・保険業界関係者や学識経験者の間でも
色眼鏡というか、あまり理解されていないように感じることが
多々ありました。

大成火災が海外再保険取引に伴う損失発生で破綻した事件も
そうした状況に拍車をかけたのかもしれません。

しかし、今回の震災は再保険の重要性を再確認する
いい機会になったのではないでしょうか。

保険会社も再保険を所与のものとして扱うのではなく、
リスク管理のなかにきちんと組み込むようになるといいですね。

 

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主要生保の決算発表

 

主要生保の2011年3月期決算が出そろいました。
報道とは少し違う視点からコメントしてみましょう。

保険料等収入で明治安田生命が第一生命グループを
逆転したことが話題になっていますが、
一時払い商品の販売しだいで大きく変わるので、
あまり意味があるとは思えません。

私が注目したのは営業職員数の減少です。

ここ数年、主要生保は営業職員チャネルの改革に取り組み、
職員を数年かけてじっくり育てる姿勢を打ち出していました。
そのためか、主要生保の営業職員数は2008年3月期を底に
増加傾向にありました。

ところが2011年3月期の職員数は、前期に比べ大きく減っています
(8社合計で21.4万人 → 20.4万人)。
現場で何が起きているのか気になるところです。

震災の影響がそれほど大きくなかったため(?)、
報道ではソルベンシー・マージン比率の新基準も注目されました。

「基準の厳格化 → 株式売却」といった思い込みに近い
報道が目立つなかで、ロイターは一味違う記事を出しています。

記事によると、住友生命は「特別の行動を取ることは考えていない」、
日本生命も「従来のスタンスを大きく変えることなく、資産運用していきたい」
と述べたとのこと。
これを見ると、各社の目線はすでに新基準への対応ではなく、
その先にあることが伺えます。

ロイターのHPへ

他方、「規制強まり体力低下」という見出しをつけたのが朝日新聞。
最もしてほしくない誤解を全国紙がやってしまいました。

比率の算出基準が厳しくなった、つまり、モノサシが変わったのであって、
保険会社の体力が変わったわけではありませんよね。

朝日新聞のHPへ

「従来の基準より6割ほども下がった」、というのも変です。
1000%前後のものが600%前後に下がったのですから、
「4割ほども下がった」あるいは「従来の基準の6割ほどに下がった」
のはず。

あまり難しい話ではないと思うのですが。

※写真は募金活動をしていた宮城県登米市の中学生たちから
 いただいたカードです。修学旅行のプログラムとして
 自分たちで募金活動を企画したとか。いい話ですね。

 

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JARIPフォーラム

開催中に大震災に見舞われ、やむなく中断した
日本保険・年金リスク学会(JARIP)主催のフォーラム
「ソルベンシーⅡと保険会社のERM」ですが、
2カ月たって再度開催することができました(23日)。

今回私はパネリストのほか、恥ずかしながら基調講演を務めました。

パネリストの顔ぶれは、明治大学の松山直樹さんを除けば
週刊金融財政事情の誌上座談会と同じです。
もともとはリアルな座談会の後、誌上座談会に突入する予定でしたが、
これは仕方がありません。

モデレータの森本祐司さんが挙げた論点を再度ご紹介しましょう。

1.ソルベンシーⅡ、特に経済価値ベースの評価を基準にした
  自己資本比率規制が、保険会社のERMにどのような影響を
  与えると考えるか。

2.経済価値ベースの規制の導入=保険会社ERMの進展と
  なるのか?懸念点はないか?

3.ERMのサクセスファクター/望ましいERMの実現に向けて
  優先的に実施すべきは?

私以外のパネリストの皆さんは、実際に保険会社のなかで
ERMを実践している、あるいは実践してきたかたなので、
体験に基づいた話は大変参考になります。

水を飲む気のない馬に、水を飲ませることはできません。
飲む気にさせるにはどうしたらいいか。
いろいろな方法を考えていく必要がありそうです。

ご参考までに、本日(24日)こちらが公表となりましたので、
リンクしておきます。 → 金融庁のHPへ

※あくまで個人的なコメントということでお願いします。

 

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大手損保の決算発表

大手損保3グループの決算発表がありました(19日)。

朝日新聞では決算発表に絡め、
「保険金支払い2.3兆円 震災で損保・共済」
という記事を掲載し、他のメディアも、

「大手損保 震災で赤字や減益に」(NHK)
「東京海上など2社減益 NKSJ赤字転落」(毎日)
「地震保険 重い負担」(産経)

と大震災の影響を報じています。

確かに国内の自然災害による保険金支払額は
過去最大級の見通しですが、大手損保の経営体力には
大きな影響を与えなかったと総括できそうです。

まず、業界全体で9700億円とされる「地震保険」の支払いは
危険準備金を事前に積んでおり、決算へはニュートラルです。

企業向け地震特約など「地震保険」以外の発生保険金は
大手3グループで約2000億円でした。

小さい数字ではないにせよ、過去最大ではありません。
台風災害が頻発した2004年度の発生保険金は
正味ベースで5000億円を超えています。

大震災の発生後、一時的に暴落した株価が戻ったのも
ラッキーでした。
有価証券含み損益への影響はざっと見て▲8500億円程度。
リーマンショックの2008年度は3兆円以上の減少でした。

むしろ心配なのは、自動車保険の収支悪化に
全く歯止めがかからないことです。
自動車保険のコンバインドレシオが100%を下回った
大手損保は1社もなく、軒並み悪化しました。

正味収入保険料(除く自賠責)の5割以上を占める
最大種目である自動車保険の赤字構造が
定着してしまった感があります。

※写真は松崎の旧家です。
 「内国生命病災保険」という会社があったのですね。

 

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一時払終身保険のALM

 

報道によると、明治安田生命の銀行チャネルを通じた
一時払終身保険の収入保険料が1兆円を超えたそうです
(2010年度)。
記事では住友生命や日本生命の商品も紹介されています。

他方、第一生命グループは定額の一時払終身保険ではなく、
同じ一時払いでも変額終身保険に力を入れているとか。
死亡保険金は保証されていますが、解約返戻金は
運用成果に左右されます。

同じ大手生保でも銀行窓販の販売戦略がここまで異なるのは
非常に興味深いですね。

興味深いといえば、記事のなかにも、
「金利上昇時に解約が殺到する可能性が高く、リスク管理が難しい」
とあるように、私も一時払終身保険のALMは気になるところです。

営業職員チャネルによる平準払いの終身保険と違い、
銀行チャネルを通じた一時払終身保険には、
「一時払い」「銀行チャネル」「高齢層」「貯蓄重視」
などの特徴がありそうです。

平準払いの終身保険であれば、予定利率が低い契約でも
おそらく契約者の多くは保障目的で加入しているので、
金利上昇時に解約が殺到する可能性は低いでしょう。

ですから金利リスクを減らすには、マッチング戦略が
基本となるように思います(解約等への考慮も必要ですが)。

他方、銀行に勧められて一時払終身保険に加入した場合、
金利上昇時にどのような行動がとられることになるのでしょう。
解約返戻金が一時払い保険料を上回った状況であれば、
銀行は顧客に他の商品への乗り換えを勧めそうです。

しかし、例えば相続対応として加入した面が強ければ、
思ったほどは解約に動かないのかもしれません。

つまり、保険会社は超長期の金利リスクの管理をしつつ、
顧客の持つ解約オプションにも備える必要があるわけです。
しかも、顧客がそのオプションを行使するかどうかは
金融市場の動向だけでは決まりません。

果たして各社がどのようなALMを構築しているのか、
非常に興味がありますね。

※写真は鶴見川の源流の泉です。
 ボランティアのかたが案内してくれました。

 

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