前回のブログで、大手損保の自然災害に伴う発生保険金について、
次のように書きました。
「かなり大きな金額のようにも見えますが、大手損保の純資産は
やや減ったとはいえ4兆円近くあります。異常危険準備金も約2兆円です」
「過去最大級の自然災害に伴う発生保険金といっても、その程度
(=株価が10~15%下がった程度)のインパクトということです」
各社も投資家等に対し、具体的な説明をしています。
「“資本バッファ”は直近で5500億円レベルを上回っており、絶対額としては
低いレベルというべきものではありませんが、減少したことも事実ですので、
保有リスクの削減を従来以上に加速することを検討しております」
(MS&AD、2/13)
「2011年9月末のサープラスは約6900億円だったが、その後の要因を
勘案するとサープラス5000億円程度まで縮小している」(NKSJ、1/27)
多額の支払いで余裕がやや減ったとはいえ、財務基盤は揺らいでいない、
といったところなのでしょう。
ただ、JPモルガンの損失発生をめぐる一連の報道を見ていると、
損失発生による影響を余剰資本の範囲内に収めただけでは、
リスク管理として十分ではないことがうかがえます。
10日にJPモルガンが発表した損失は約20億ドルです。
JPモルガンのTier1コア資本は1220億ドルもありますし、
損失が多少膨れても、期間損益で十分吸収できるレベルでしょう。
しかし、今回の件がJPモルガンの今後のビジネスに与えた影響は
計りしれません。
報道されているだけでも、次のような「衝撃」がありました。
・リスク管理に定評のあった大手銀行による損失発生だった
・金融規制強化の流れのなかでデリバティブ損失が発生してしまった
・特定市場におけるポジションが大きくなりすぎており、
それを経営陣が十分把握していなかったとみられる
・VaRモデルによるリスク評価の難しさが表面化した
(モデルの見直しによる影響が報道されています) など
今回の損失はいまのJPモルガンにとって、
発生させてはいけない損失だったと思われてなりません。
言い換えれば、経営陣がとるべきリスクを間違えたのではないか、と。
リスクの洗い出しとリスク選好(アペタイト)はERMを構築するうえで
極めて重要な要素ですが、そう簡単ではないことがわかりますね。
あのJPモルガンの経営陣でさえ間違えるのですから。
リスク管理の世界は奥が深いです。
※写真は鶴見の総持寺です。初めて境内に入りました。