Open Discussion Forum

 

日本アクチュアリー会(国際関係委員会)主催の
Open Discussion Forumでスピーチをしました(7日)。

このフォーラムは、
「日本で活動する外国人アクチュアリーと日本人アクチュアリーとが
 英語でのディスカッションを行なう公開討論会」
 (日本アクチュアリー会のHPより)ということで、
昨年に続き今回が2回目なのだそうです。

確かに日本と海外ではアクチュアリーの業務とされている内容に
なぜか違いがあるように思えますので、このような試みは
プロフェッシャルの団体として大変いいことだと思います。

しかし、いざ自分が登場するとなると冷や汗ものでした。

スピーチそのものは事前準備で何とかなりますが、
問題は質疑応答です。英語そのものは何とかわかったとしても、
相手が何を聞きたいのか、わからないことが結構あるのですね。
皆さんはそのような経験ありませんか。

さて、私はERM Sessionに登場し、「ERM and Regulation」という
テーマで20分ほど話をしました。そして質疑応答タイム...
...私への質問はなく、無事お役御免となりました^^;

同じERM Sessionで大手再保険グループRGAのERMについて
スピーチがあり、米国拠点のグループでも再保険会社は
やはり進んでいるんだなあと興味深く拝聴しました。

米国の投資家は一般にUS-GAAPベースの利益と株主還元に
関心があり、実際、RGAの投資家向け説明会資料をみても
ERMやリスクベースの話はあまり出てこないようです。

それでもRGAでは10年以上前からERMの構築を進め、
経済資本も計算し、さらに進化を続けているとか。
会場からの質問もRGAのかたに集中していました

私も「pricing actuary」「valuation actuary」という言葉に反応し、
つい横から質問してしまいました。

先日ある外資系保険会社のトップと話をしていた際に
「valuation actuaryが厳しいのでダンピングなどできない」
という話を聞いたところだったので、おっ、と思ったのです。
日本の会社に「valuation actuary」はいるでしょうか?
(スペルミスを修正しました)

まあ、受け身で質問を待つよりも、自分から出て行ったほうが、
つまり「守り」より「攻め」のほうがいいのではないかという
作戦でもありました^^

※いつものように個人的なコメントということでお願いします

※写真は会場のトリトンスクエアと、勝鬨橋から見た築地市場です。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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逆ざやと株式保有

 

10月28日のブログで日銀「金融システムレポート」の
生保に関するコラムについて、次のようにコメントしました。

 筆者の意図がどうであれ、このコラムの読者が、
 「生保の金利(上昇)リスクは銀行よりも大変」
 といった誤った印象を持たないことを祈ります。
 業態別の金利リスク量

しかし、案の定、今回の生保決算報道のなかで、こんな記事が。

 生保各社の9月中間決算では株式の運用リスクが鮮明に
 なった半面、歴史的な低金利が続く国債の含み益が
 財務基盤の健全性維持に貢献した。

 ただ衆院選後に発足する新政権の政策で、財政赤字に対する
 市場の懸念が高まれば国債価格が下落(金利上昇)し、
 一転して含み損が膨らむ危うさも抱え込んでいる。

 (中略)

 日銀の試算によると、国債の金利が1%上昇した場合に
 発生する評価損は、国内銀行・信用金庫の計5.3兆円に対し、
 生保は8兆円で、国債の保有リスクは国内金融機関の中で最大。
 金利が上昇に転じれば財務状態は急激に悪化する可能性がある。
 (SankeiBiz 11/28)

金利低下で逆ざやが拡大し、生保経営を苦しめているという見方が
一般的ななかで、この記事はむしろ金利は下がったほうがいい、
金利が上昇に転じれば財務状態が急激に悪化する可能性がある、
日銀もそのような試算をしている...

少し考えれば変だということがわかりそうなものですが...

その「逆ざや」ですが、一部で
「株式から公社債へのシフトが逆ざやを拡大させている」
という論調を耳にしました。

おそらく、日本生命と明治安田生命が「順ざや」なので、
そのように考えたのでしょう。

公表される「逆ざや」は、利息配当金収入を中心とする基礎利回りと
平均予定利率から計算しますので、確かに株式配当金が減れば、
逆ざやが拡大する要因となります。

でも、利息配当金収入に占める株式配当金のウエートは
大手4社で最も大きい日本生命で11%、明治安田生命が10%
(2011年度)と、そもそもあまり大きくありません

それではなぜ両社が「順ざや」なのでしょうか。
中間期のデータはないので、2011年度のデータを見てみましょう。

    基礎利回り 平均予定利率
 日本  2.69%    2.61% 
 第一  2.38%    2.73%
 住友  2.51%    2.89%
 明安  2.33%    2.25%

日本生命が順ざやなのは、4社のなかで基礎利回りが高く、
平均予定利率もやや低めであること。
明治安田生命は平均予定利率が低いことが主因です。

日本生命の基礎利回りが高いのは、外貨建資産のウエートが
高いことが効いているようです。ヘッジポジションも大きいのですが、
ヘッジコストは基礎利回りに反映されません。
あと、公社債に占める国債のウエートが第一と明治安田よりも
日本、住友は低いので、この影響もあるのかもしれません。

明治安田生命の平均予定利率が低いのは、
一つは団体年金一般勘定のウエートが大きいことがあります。
ただ、その分を考慮しても他社より40~50bpほど低いようです。
追加責任準備金の集中的な積み立てによる効果のほか、
そもそもの負債構造が違うのかもしれません。

参考までに、公表されたEEVをみると(日本生命は非公表)、
明治安田生命の保有契約価値が小さいので疑問に思ったところ、
第一と住友のリスクフリーレートが国債利回りなのに対し、
明治安田は金利スワップレートを使っているためとわかりました。

ということで、少なくとも「株式が多いから順ざや」といった
単純な話ではないということですね。

※写真は横浜市資源循環局(=ごみ処理を担当)のマスコット
 左が「イーオ」、右が「ふや星人ゴミーヨ」だそうです。
 ほかにも「へら星人ミーオ」「ふや星人ゴミーナ」がいました。

 

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アジア保険関係者との対話

 

生保の中間決算(上半期報告)が発表されています(28日)。

大手で注目は明治安田生命でしょうか。
株式評価損に目が行きがちですが、米国RMBSの増加、
「その他有価証券」から責任準備金対応債券へのシフトなど、
いろいろと動きがみられました。

とはいえ、まだ全体を見ていないので、
週末にでももう少しコメントしようと思います。

ところで、最近、アジア各国の保険関係者に対し、
日本の保険市場や保険行政の動向について
話をする機会が何回かありました。

私が先月まで保険行政でソルベンシー規制の検討や
ERMの推進にわっていたこともあり、これらに関連する質問が
多かったのですが、それでも質疑応答を通じ、
彼らの関心事項が浮かんできました。

最もよく聞かれた質問は、低金利に関するものです。

「歴史的低金利が続く日本で、生保はどうやって経営しているのか」
「長期にわたる低金利が保険市場にどのような影響を与えているか」
「低金利で生保経営が厳しくなるなかで、行政は何か支援をしたのか」

などなど。
いまや欧米だけではなく、アジア各国でも金利水準が低下し、
保険会社の経営が厳しくなっていることが伺えます。

もうひとつ、興味深いというか、回答が難しい質問として、
「財務の健全性と消費者保護のいずれに軸足が置かれているのか」
というものがありました。

保井俊之さんの著書「保険金不払い問題と日本の保険行政」では
日本の保険行政について、

 ・戦前、戦中、高度成長期と続いたコントロール(統制)指向の行政
 ・1999年からのコンティンジェンシー(危機管理)指向の行政
 ・2005年からのコンプライアンス(法令遵守)指向の行政
 ・2008年からのコンバージェンス(目標集束)指向の行政

という整理がなされており、実感できるところです。

しかし、財務の健全性か消費者保護かと二択で問われると、
「どちらも重視している」としか答えようがありません。
いろいろと説明しましたが、納得してもらえたかどうか。

日本では中堅生損保の相次ぐ破綻(=契約者負担あり)を経て、
かつ、銀行預金のペイオフも解禁されています。

これに対し、アジア各国の保険市場では、
多くがコントロール指向の強い行政の下にあるため、
契約者保護と言うと財務の健全性確保ではなく、
消費者目線の政策のことがイメージされるようです。

※写真は築地市場で活躍する運搬車「ターレー」です。
 大きなハンドルの後ろに立って運転します。

 

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損保の2012年4-9月期決算

 

大手損保の4-9月期決算が公表されました(19日)。

いつもながら、期間損益を重視する見方では、
損保の経営内容をつかむことはできないと感じます。

MS&ADとNKSJが赤字となった最大の原因は、
株価下落に伴い多額の有価証券評価損を計上したためです。

ただし、損保各社の減損基準は一般よりも厳しい(=3割基準)うえ、
経営統合により保有株式の取得価額が上がっているため、
評価損が発生しやすくなっていることを忘れてはなりません。

ここ数年、「本業不振」が決まり文句のようになっています。
しかし、火災保険のように自然災害の有無によって
収支が大きく振れる種目の場合、短期の損益を見て
黒字だ赤字だと言っても意味がないでしょう。

ちなみに、このところ自然災害が相次いでいるとはいえ、
過去10年間で大手損保の火災保険のコンバインドレシオが
100%を上回ったのは、2005/3と2012/3の2回だけです。
リスクベースで見たリターンはどうなっているのでしょうね。

自動車保険では、料率改善効果が表れているようです。
大手5社のうち、東京海上日動を除く4社でE/I損害率が
改善しています。さすがに流れが変わってきたのでしょうか。

とはいえ、収益性の改善が道半ばなのは間違いありません。
2、3兆円もの資本を使っておきながら、修正利益やコア利益が
500~800億円レベルというわけにはいかないはずですよね。

※11/10にJARIPの年次大会が東大駒場キャンパスでありました。
 キーワードは「見知らぬ明日」。リスク管理は奥が深いです。
 JARIPのHPへ

 

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基調講演を務めました

 

バンクオブニューヨークメロン証券が14日に開催した
「インシュアランス・フォーラム」で基調講演を務めました。

「最近の投資環境の変化とリスク・マネジメント」
というのがフォーラム全体のテーマだったので、
専門分野である保険会社のERMについてスピーチ。

特にリクエストがなかったのでパワポ・レジュメなしで
臨んだものの、会場には大きなスクリーンがあったので、
使ったほうがよかったかもしれませんね。

ということで、少しだけ中身についてご紹介しますと、
30分間で次のような話をしました。

・保険会社のERM・リスク管理態勢に対する
 保険行政や格付会社の関心は年々高まっている
 (これは両方の経験者として実感しているところです)

・ERMと従来型リスク管理の違い

・保険会社ERMの現状について
 進んだ会社とそうでない会社では違いが生じている?

30分のスピーチは、聞き手のときはそれなりに長いですが、
話し手としては非常に短く感じます。
内容を盛り込み過ぎて失敗することが多いので、
今回はかなり絞って話をしてみました。

フォーラムは私のスピーチの後、講演、プレゼンテーション、
パネルディスカッション(=私もパネリストとして再登場)と続き、
最後にワインテイスティングがありました。

※会場は東京駅(写真)に隣接したホテルでした。

 

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「生損保、相次ぎ資本調達」

 

日本の生損保が相次いで資本調達を進めている、
という掲題の日経記事をご覧になったでしょうか(9日)。
予想外に大きなスペースの記事でした。

保険会社の劣後債発行が続いているという話なのですが、
発行の狙いとして、運用環境の低迷が続いているほか、

「資本調達を急ぐ背景には、国際的な資本規制の厳格化がある」
「将来導入が見込まれる規制強化に前倒しで対応する狙い」

といった分析が続き、

「過度の規制強化は大手機関投資家である保険(会社)の
 投資意欲を委縮させ、それが資本市場の低迷を
 長引かせる悪循環を招く懸念がある」

「大手生保首脳は(将来の)規制が足かせになっていると指摘する」

と、規制強化が資本市場の低迷や経済への悪影響を招く
という論調になっています。

保険会社の劣後債発行が続くと、どうして規制強化への懸念が
記事の中心となってしまうのか、私には理解できません。

素直に考えれば、運用環境の悪化や自然災害の多発を受けて、
リスク管理上、資本調達に踏み切ったと書くのが自然な流れです。
それが「規制が強まるから対応が必要」という話になってしまうのは、
「資本調達は規制対応のために行うもの」という発想があるのでしょうか。

もちろん規制資本への対応を無視するわけにはいきませんが、
それは最低限クリアしなければならない条件であって、
多くの会社は自社のリスク管理のなかで資本政策を考えています。

せっかく保険会社がERMやリスク管理の高度化を進めているというのに、
そこを無視した論調は悲しいですね^^
あるいは、「リスク管理イコール規制対応」という会社があるのかも...

さらに加えると、現行規制は20年に一度起こるリスクへの対応しか
求めていません(資産運用の場合)。
多くの保険会社では、自社のリスク管理のなかでは、
はるかに厳しいレベルの対応を行っていると思われます。
このあたりも踏まえてほしかったですね。

※釧路・和商市場では、お店でご飯と刺身やイクラを買い、
 お好みの「勝手丼(海鮮丼)」を楽しむことができます(写真)。

 

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生保の基礎利益

 

11月は保険会社の中間決算が発表される月です。
3月に比べると株価も長期金利も下がっているので、
各社のEVはそこそこ減っているのではないかと想像されます。

ところで、生保の利益指標の一つに「基礎利益」があります。
経常利益から有価証券売却損益や評価損など臨時的な損益を
控除したもので、今やすっかり定着した感がありますね。

ニッセイ基礎研・荻原邦男さんの最近のレポートによると、

「導入の背景には、『生保の多くが逆ざや状態に陥っているなかで、
 利差損ではあるものの、トータルで見ると利益はプラスであることを
 明示する』という目的があった」

とありました。ニッセイ基礎研HPへ

基礎利益は歴史の長い生保が「3利源ではプラス」
ということを示すために開発されたという面もあることは
知っておいたほうがいいかもしれません。
確かに当時(基礎利益の導入は2000年度決算から)は
「逆ざやが累積していて大変」といった珍説もありましたからね。

荻原さんはレポートのなかで、基礎利益の留意点として
次の3つを挙げています。

①変額年金の保証にかかる責任準備金の繰入・取崩が
 基礎利益を撹乱する要素となっている

②インカムゲインとキャピタルゲインの区分が曖昧で、
 各社で経費処理方法に差異がある

③基礎利益イコール公表されている3利源ではない

これらに加え、次のような点もありそうです。

④有配当契約が多い会社のほうが基礎利益が大きくなりやすい。
 特に大半が配当として流出してしまう団体保険の死差益は
 基礎利益を実質的にかさ上げしてしまっている。
 (これは主に大手生保ですね)

⑤いわゆるヘッジ外債を保有していると、ヘッジコストは
 キャピタル損益となり、円債を保有するより基礎利益が大きくなる。

⑥保有契約に対し新契約が大きい会社の場合には、
 新契約獲得コストがかさみ、基礎利益が小さくなりやすい。
 (これは大手だけ見ているとわからない話かもしれません)

⑦追加的な責任準備金の繰入が基礎利益のマイナス要因
 となっている会社がある。

特に⑥は基礎利益の本質的な弱点です。
大手を中心に見る場合には基礎利益は有用かもしれませんが、
業界全体を見る場合には、かなり留意が必要だと思います。

※右の写真は「卒業旅行」で見た釧路湿原の夕日です。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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職場が変わりました

 

前回のブログで「秒読み」などと書いてしまいました^^
実は10月末で保険行政の現場を離れ、民間に戻りました。
お世話になった皆さま、本当にありがとうございました。

格付アナリスト時代にも行政とはそれなりに接点があり、
何となく知っていたつもりになっていましたが、
実際に飛び込んでみないとわからないことは多かったですね。

幸いオンサイト、オフサイトともに関わることができたので、
どれだけ貢献できたかはともかく、約2年半のあいだ、
充実した日々を過ごすことができました。

11月からは「キャピタスコンサルティング」社で勤務しています。
今度はより会社に近いところから、ERM・リスク管理等の
サポートができればと思っています。
引き続きご指導・ご支援のほど、よろしくお願いいたします。
キャピタスのHPへ

なお、仕事はコンサルティングとなりましたが、
このブログは「保険アナリスト」のままで緩く続けるつもりです。
これまでと同じく週1回くらいのペースとなりそうです。

※引き続き個人的なコメントということでお願いします。

 

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業態別の金利リスク量

 

半年ごとに出される日本銀行「金融システムレポート」が
今月19日に公表されています。
日銀のHPへ

金融機関の現状を知るうえで大変役に立つので、
過去にもこのブログで何回か取り上げています。
すでに「秒読み」となり何かと慌ただしくて、
レポートのフォローが遅くなってしまいました...

このレポートには保険会社に関する記述もありました。
まず目を引いたのが「負債デュレーションの試算値」です。
グラフを見ると、この5年間どんどん長期化したものが、
今後は反対に短期化していく試算となっていました。

ただ、よくよく見ると、長期化といっても15.2年から15.4年。
短期化も10年間で同程度なので、グラフの見かけはともかく、
むしろ「あまり変動しない」と見るべきでしょうか。

とはいえ、このような意欲的な分析は好感できるのですが、
最後ののBOX(コラム)「生命保険会社の金利リスク量」は、
本文に比べるとちょっと残念なコラムでした。

コラムでは「業態別の金利リスク量」を計算し、

「銀行の国債保有残高は生保よりも大きいが、デュレーションが
 短いため、銀行の金利リスク量は生保よりも小さい」

としています。

「ここでの金利リスク量は、国債保有に限定したリスク量
 である点には注意が必要」

と書いてあるものの、そもそもこの計算の目的がよくわかりません。

筆者は業態別の保有状況ではなく、あえて金利リスク量を示し、
生保が国債の金利リスクの最大の引き受け手である
ということを明らかにしています。
それなら生保経営はどうなっているのか、という話に
普通はなりますよね。金融システムレポートなのですから。

しかし、生保経営に与える影響ということであれば、
少なくとも会計上の保有区分を反映しなければ不十分です。
国債保有だけ取り上げて「生保の金利リスクは大きい」
という分析はないでしょう。

あるいは、保有区分とは関係なく、時価評価して見れば
生保の金利上昇リスクは大きいと言いたいのであれば、
資産に加え、負債を含めた経済価値ベースで見なければ、
生保経営への影響はわかりません。

この点について、コラムでは経済価値ベース的な分析結果を
示しているのですが、

「金利リスクをバランスシート全体で把握するためには、
 資産サイド・負債サイド双方を時価ベースで捉えるべき
 との見方もある」

という書きぶりなので、結局のところ生保経営にとって
金利上昇リスクは大きいのか、大きくないのか、
読者は混乱しそうです。

そもそも生保はなぜ超長期債を保有しているかといえば、
負債で抱えている金利リスクを軽減するためです。
金利リスクを増やす行為ではないのです。
だからこそ「責任準備金対応債券」なんていう区分があったり、
経済価値ベースで評価しようという流れがあったりするのですね。

筆者の意図がどうであれ、このコラムの読者が、
「生保の金利(上昇)リスクは銀行よりも大変」
といった誤った印象を持たないことを祈ります。

※女子校の文化祭に初めて行きました^^

 

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巨大災害・巨大リスクと保険

 

この週末に日本保険学会・年次大会のシンポジウム
「巨大災害・巨大リスクと保険」がありました(21日)。
昨年はパネリストだったので、今回は気楽に参加できました^^

今回のシンポジウムではパネリストが7人(!)だったので、
パネルディスカッションよりも報告が中心という感じでしたが、
例えば企業の巨大災害リスク管理状況や再保険市場の動向など、
いろいろと勉強になりました。
日本保険学会のHPへ

2011年は東日本大震災やタイの洪水、ニュージーランドの地震など
自然災害に伴う保険金支払いが過去最大規模に膨らんだのですが、
世界の再保険者の資本はわずかしか減らなかったのですね。

このため、一部を除き、再保険市場はハード化しなかったようです。
自然災害モデルの普及をはじめ、再保険者のリスクマネジメントが
進化したことが背景にあるのかもしれません。
近年はマーケットサイクルも小さくなっているとか。

大学の先生がたは地震保険制度への関心が強いようで、
パネルディスカッションでは専ら地震保険の話に集中しました。
確かに財務省の地震保険PTも進行中ですし、
参加された皆さんには身近に感じるテーマなのでしょう。

ただ、官と民の綱引きのような議論に終始するのではなく、
社会システムとして巨大災害・巨大リスクにどう対応するべきか、
そのなかで保険制度はどうあるべきか、といった大きな議論でも
よかったのではないかと感じました。

※会場は日大商学部でした。校舎が新しくなり、
 私が教えていた時とは大違いです(写真)。

 

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