保険代理店向けメールマガジンInswatch Vol.1288(2025.7.7)に寄稿した記事を当ブログでもご紹介いたします。
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自動車事故の映像記録
先日、私の担当するゼミ(少人数クラス)にて、九州で保険代理店を営む皆さんに、自動車等の運転に関わるリスクをテーマにした出張授業を行っていただきました。
若者のクルマ離れと言われるようになって久しいですが、大都市圏とは違い、福岡のような地方都市では、通学時の自動車利用は自粛を求められているとはいえ、依然として若年層にも自動車が身近な存在です。
授業のなかでドライブレコーダー(ドラレコ)が記録した事故映像を観る機会があり、学生にはもちろん、近年はすっかりペーパードライバーとなっている私にも大変参考になりました。「どうしてここで曲がるの?」「どうして正面に人が歩いているのが見えないの?」といった映像もあって、人間の注意力には限界があるというか、状況によって信じられないほど注意力が散漫になり得ることがよくわかりました。
ドラレコ普及は頭打ちに
こうしたことがわかるのは、ドラレコが普及したおかげです。ソニー損害保険が毎年行っている「全国カーライフ実態調査」によると、2024年のドラレコ搭載率は51.9%で、あおり運転の社会問題化などもあって、この10年間で普及が一気に進みました(2014年の搭載率は8.1%)。別の調査でも、個人向けドラレコの普及率は概ね5、6割といったところのようです。
なんといっても、事故映像があれば責任関係が明らかになりやすく、過失割合の判断もしやすいという大きなメリットがあります。自動車事故の際、当事者双方の主張が食い違うことは多々ある(というか通常は食い違う)そうですが、事故映像があれば無理な主張は通りません。
ただし、同じソニー損保の調査で「ドラレコを選ぶ際に重視した点」として挙がったもののうち、断トツの1位は「価格」でした(複数回答形式)。低価格のドラレコでは前方1カメラのものもあり、事故映像として役に立たない場合も多いはずですが、ドラレコのもう一段の普及には価格が制約になっていることがうかがえます。
実のところ、ドラレコの国内出荷台数は21年度をピークに減少傾向となっています。意識の高いユーザーへの普及が一巡し、ここから先は何かインセンティブ(強制を含む)が必要なのでしょう。代理店の皆さんとしても、しっかりしたドラレコの付いていない自動車の保険は受け付けないというのが、経営のあるべき姿なのかもしれませんね。
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