業態別の金利リスク量

 

半年ごとに出される日本銀行「金融システムレポート」が
今月19日に公表されています。
日銀のHPへ

金融機関の現状を知るうえで大変役に立つので、
過去にもこのブログで何回か取り上げています。
すでに「秒読み」となり何かと慌ただしくて、
レポートのフォローが遅くなってしまいました...

このレポートには保険会社に関する記述もありました。
まず目を引いたのが「負債デュレーションの試算値」です。
グラフを見ると、この5年間どんどん長期化したものが、
今後は反対に短期化していく試算となっていました。

ただ、よくよく見ると、長期化といっても15.2年から15.4年。
短期化も10年間で同程度なので、グラフの見かけはともかく、
むしろ「あまり変動しない」と見るべきでしょうか。

とはいえ、このような意欲的な分析は好感できるのですが、
最後ののBOX(コラム)「生命保険会社の金利リスク量」は、
本文に比べるとちょっと残念なコラムでした。

コラムでは「業態別の金利リスク量」を計算し、

「銀行の国債保有残高は生保よりも大きいが、デュレーションが
 短いため、銀行の金利リスク量は生保よりも小さい」

としています。

「ここでの金利リスク量は、国債保有に限定したリスク量
 である点には注意が必要」

と書いてあるものの、そもそもこの計算の目的がよくわかりません。

筆者は業態別の保有状況ではなく、あえて金利リスク量を示し、
生保が国債の金利リスクの最大の引き受け手である
ということを明らかにしています。
それなら生保経営はどうなっているのか、という話に
普通はなりますよね。金融システムレポートなのですから。

しかし、生保経営に与える影響ということであれば、
少なくとも会計上の保有区分を反映しなければ不十分です。
国債保有だけ取り上げて「生保の金利リスクは大きい」
という分析はないでしょう。

あるいは、保有区分とは関係なく、時価評価して見れば
生保の金利上昇リスクは大きいと言いたいのであれば、
資産に加え、負債を含めた経済価値ベースで見なければ、
生保経営への影響はわかりません。

この点について、コラムでは経済価値ベース的な分析結果を
示しているのですが、

「金利リスクをバランスシート全体で把握するためには、
 資産サイド・負債サイド双方を時価ベースで捉えるべき
 との見方もある」

という書きぶりなので、結局のところ生保経営にとって
金利上昇リスクは大きいのか、大きくないのか、
読者は混乱しそうです。

そもそも生保はなぜ超長期債を保有しているかといえば、
負債で抱えている金利リスクを軽減するためです。
金利リスクを増やす行為ではないのです。
だからこそ「責任準備金対応債券」なんていう区分があったり、
経済価値ベースで評価しようという流れがあったりするのですね。

筆者の意図がどうであれ、このコラムの読者が、
「生保の金利(上昇)リスクは銀行よりも大変」
といった誤った印象を持たないことを祈ります。

※女子校の文化祭に初めて行きました^^

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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