歴史的低金利

 

ドイツ・米国の長期金利が過去最低水準を更新しています。

 独10年債利回り=1.17%、30年債利回り=1.67%
 米10年債利回り=1.45% 30年債利回り=2.52%

ドイツの30年債利回りはなんと日本(1.78%)を下回っているのですね
(いずれもBloombergより。6/1時点)。

日本では歴史的低金利がもう10年以上続いていますが、
ドイツや米国では少し前まで長期金利が3%以上ありました。
保険アナリストとしては欧米保険会社の経営への影響が
気になるところです。

かつての日本の生保とは違い、一般に欧米の保険会社では
ALMを意識した資産運用を行っていると聞きます。

とはいえ、AXAやAllianzのEV(エンベディッド・バリュー)をみると、
金利感応度はそれなりに大きいようです。

例えばAXAでは、金利水準が1%下がると、生保のEEVが
34億ユーロ減少します。これは生保EEV381億ユーロの約9%です
(2011年末時点)。

Allianzでは影響がもっと大きく、金利1%の低下によって
MCEVは73億ユーロ減となり、MCEVは35%も減ってしまいます
(同)。

両グループはリスク管理態勢に定評があり、高格付を維持しています。
他の保険会社はどうなのでしょうか。

米国の変額年金も気になりますね。

米国では最低引出保証(GMWB)のついた変額年金が人気のようで、
終身保証も多いとか。
保証期間が長くなれば、金利による影響も大きくなるでしょう。

公表されている「Milliman Hedge Cost Index」によると、
終身保証のGMWBのヘッジコストは、すでに昨年後半以降、
リーマンショック後の2008年末の水準に匹敵しています。
金利要因による上昇が大きい模様ですが、詳細はよくわかりません。
MillimanのHPへ

材料不足でまだ何とも言えませんが、資産価格の下落だけではなく、
歴史的低金利による影響も無視できないかもしれません。

※昨日(2日)は横浜の開港祭でした。

 

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主要生保の2011年度決算

 

「12生保が増益」(日経) 「生保大手、全社増益」(朝日)
「生保決算 8社すべてで増益確保」(NHK)

25日(金)に出そろった生保の2011年度決算について、
メディアは基礎利益が増えたことに注目したようです。

基礎利益が増えた説明として、
「3月末にかけて株価が上昇し、運用成績が好転したためだ」(日経)
というのはややミスリードのように感じます。

大手4社の基礎利益は約1800億円増えていますが、
変額年金等の最低保証に係る影響は約400億円だけです。
それに基礎利益には株式の売買損益や評価損は入りません。

「全社とも増益となった理由の一つは、東日本大震災の
保険金支払いが震災直後の見込みより少なかったため、
多めに用意しておいたお金が戻ってきたことだ」(朝日)

2010年度には東日本大震災に係る支払備金の計上があり、
2011年度にはその影響がなくなったうえ、上記の理由から
全社増益になったという説明をするべきなのでしょうね。

Bloombergには、日本生命は「実質減益の厳しい内容だった」
というコメントが載っていました。BloombergのHPへ
保有契約高の減少が続き、第三分野の年換算保険料が
あまり増えていない現状を考えると、他社も胸を張って増益
という感じではなさそうです。

ただ、同じBloombergの記事によると、明治安田生命は
「それを除いても増益」だったそうです。
同社の場合、銀行窓販を中心に保険料収入が急増し、
資産平残が2兆円以上増えたことが影響しているのかもしれません。

ところで、以前このブログで大手生保の債券運用に関して、
「同社が『その他有価証券』の公社債をどんどん増やしている」
と書きました。生保の4-12月期決算から

今回も気になったので、さっそく12月末と比べてみると、
「その他有価証券」が急減し、「満期保有目的債券」が急増していました。
四半期決算もなかなか役に立ちますね。

※写真は旧東海道です(左が台町、右が軽井沢)

 

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損失発生をどう考えるか

 

前回のブログで、大手損保の自然災害に伴う発生保険金について、
次のように書きました。

 「かなり大きな金額のようにも見えますが、大手損保の純資産は
  やや減ったとはいえ4兆円近くあります。異常危険準備金も約2兆円です」

 「過去最大級の自然災害に伴う発生保険金といっても、その程度
  (=株価が10~15%下がった程度)のインパクトということです」

各社も投資家等に対し、具体的な説明をしています。

 「“資本バッファ”は直近で5500億円レベルを上回っており、絶対額としては
  低いレベルというべきものではありませんが、減少したことも事実ですので、
  保有リスクの削減を従来以上に加速することを検討しております」
  (MS&AD、2/13)

 「2011年9月末のサープラスは約6900億円だったが、その後の要因を
  勘案するとサープラス5000億円程度まで縮小している」(NKSJ、1/27)

多額の支払いで余裕がやや減ったとはいえ、財務基盤は揺らいでいない、
といったところなのでしょう。

ただ、JPモルガンの損失発生をめぐる一連の報道を見ていると、
損失発生による影響を余剰資本の範囲内に収めただけでは、
リスク管理として十分ではないことがうかがえます。

10日にJPモルガンが発表した損失は約20億ドルです。
JPモルガンのTier1コア資本は1220億ドルもありますし、
損失が多少膨れても、期間損益で十分吸収できるレベルでしょう。

しかし、今回の件がJPモルガンの今後のビジネスに与えた影響は
計りしれません。

報道されているだけでも、次のような「衝撃」がありました。

・リスク管理に定評のあった大手銀行による損失発生だった
・金融規制強化の流れのなかでデリバティブ損失が発生してしまった
・特定市場におけるポジションが大きくなりすぎており、
 それを経営陣が十分把握していなかったとみられる
・VaRモデルによるリスク評価の難しさが表面化した
 (モデルの見直しによる影響が報道されています)  など

今回の損失はいまのJPモルガンにとって、
発生させてはいけない損失だったと思われてなりません。
言い換えれば、経営陣がとるべきリスクを間違えたのではないか、と。

リスクの洗い出しとリスク選好(アペタイト)はERMを構築するうえで
極めて重要な要素ですが、そう簡単ではないことがわかりますね。
あのJPモルガンの経営陣でさえ間違えるのですから。

リスク管理の世界は奥が深いです。

※写真は鶴見の総持寺です。初めて境内に入りました。

 

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大手損保の2011年度決算

 

「損保の本業 最悪の赤字」「タイ洪水など打撃」(日経)
「損保 赤字膨らむ」(朝日) 「タイ洪水で5000億円支払い」(NHK)

大手損保の2011年度決算は、2011年4-12月期決算よりも
株価が上昇した分だけよくなったという印象です。
ただ、自然災害に伴う保険金支払額が大きかったためか、
例年よりメディアの扱いも大きかったようです
(もっとも、読売の記事は見当たりませんでしたが...→ 見つけました)

タイ洪水の話は以前書いていますね。2/18のブログへ
自然災害に伴う発生保険金としては過去最大級だと思いますし、
過去に日本の損保が経験したことのないタイプのものでした。

2011年度はタイに加え、国内でも台風など自然災害が多発し、
発生保険金額は、東日本大震災のあった2010年度の2倍以上
(家計地震保険を除く)となりました。
単体合算ベースで約6000億円といったところでしょうか。

損益上は異常危険準備金の取り崩しで緩和され、主に未払保険金
(≒支払備金に繰り入れた部分)だけが損益を圧迫するのですが、
財務上のインパクトとしてはやはり約6000億円と見るべきでしょう。

かなり大きな金額のようにも見えますが、
大手損保の純資産はやや減ったとはいえ4兆円近くあります。
異常危険準備金も約2兆円です。

別の視点から見てみましょう。
大手損保が保有する株式の時価は約5.5兆円です(単体合算)。
株価が1割下落しただけで5000億円以上も目減りしてしまいます。

2012/3末のTOPIXは854、5/18は725なので、▲15%です。
損保の保有株がTOPIXとどの程度連動しているかにもよりますが、
財務上のインパクトは2011年度の自然災害に匹敵しそうですね。

逆に言えば、過去最大級の自然災害に伴う発生保険金といっても、
その程度のインパクトということです。

なお、グローバルな損保市場では、多額の支払いが発生すると、
日本のように「損保は自然災害で大変だ」と騒ぐだけではなく、
「市場がハード化(=料率上昇)し、収益力が改善するのでは」
という見方も浮上するようです。
料率引き上げが日本市場よりも実現しやすいのでしょうね。

※写真は善福寺公園と東京女子大です

 

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不良債権問題

「政府は11日、国内銀行の不良債権処理を加速する
 総合対策を決めた。不動産への融資債権について
 国内銀行に新たに約3兆円の引当金を積むよう求めるほか、
 不良債権化した不動産資産をバランスシートから切り離して
 管理する構想を盛り込んだ。大手銀への資本注入も正式に決定。
 市場から不安視される銀行部門の健全化を進める方針だ」

「国内銀の不良債権は約18兆円とされるが、市場では
 『実際はもっと多いのではないか』との疑念も強い」

「市場の見方は厳しい。総合対策発表後、株価指数は
 一時前日比3%下落。(中略)市場には『計画が実現できるのか』
 との懐疑的な見方から、先行きを不安視する声はなお多い。」

この記事、かつての不良債権問題に苦しむ日本のようですが、
実は本日(12日)の日経からの引用です。
「政府」「国内銀」「株価指数」の前に「スペイン」が入ります
(金額もユーロです)。

日本の話だと思ってもう一度読むと、不良債権処理の強化に
公的資金の活用、バッドバンク構想、大手銀行の公的管理など、
1990年代後半の状況、すなわち、いくら処理を進めても、
不良債権が減るどころか、むしろ膨れ上がっていた時期のことを
思い出します。

日本の公示地価は1987年から91年に約2倍に上昇し、
その後15年くらい下げ続け、もとの水準に戻りました。
地価が下がると建設・不動産業の経営悪化が進むうえ、
担保としている不動産の価値も減ってしまいます。

スペインでは、住宅価格の上昇は2倍どころではありません。
ピーク時(2007年)からの下げも、まだ2割強なのですね。
しかも、2011年3月時点の建設・不動産向け貸出は、
商業銀行で37%、貯蓄銀行で53%に達するとのことです。
内閣府のHPへ

日本では当時、海外の金融市場からの資金調達には
「ジャパン・プレミアム」が発生したものの、国債利回りは下がり、
銀行が国債保有を増やしても問題にはなりませんでした。

しかし、スペインの10年国債利回りは6%に上がるなど、
市場から不安視されています。

ECBが供給する資金等で国債を買えば大きな利ザヤがとれる
(実際にスペインの銀行はそのようにしているようです)とはいえ、
ギリシャのPSI(民間による自発的な債務削減)を考えると、
スペイン国債は銀行経営者として安心して買える対象なのか
非常に悩ましいでしょうね。

日本で不良債権が目に見えて減ったのは2004年度以降です。
不良債権処理スキームだけではなく、借り手サイドへの対応
(企業再生スキームなど)に加え、経済状況の好転がありました。

スペインは今後どのような経緯をたどるのでしょうか。

※写真は自宅マンションのツツジです。
 一昨日にひょうが降り、いまはボロボロになってしまいました。

 

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保険金支払いの実績

 

保険コンサルタントの後田享さんによる日経電子版の連載
「保険会社が言わないホントの保険の話」をご存じでしょうか。
2011年7月から続いていて、独自の見方が勉強になります
(「プロ」からの反発は強いような気がしますが...)

5/4は「ネット保険の保険金支払いの実績は」でした。
「当選本数が伏せられたまま販売されている宝くじ」
という表現など、なかなか刺激的ですね。
日経のHPへ

分析対象がどうしてネット生保なのかはさておき、
生保各社がディスクロ誌で公表している「死亡率」や「特約発生率」、
さらに「第三分野発生率(発生保険金額÷経過保険料)」のデータを
どうやって使ったらいいかという課題はありそうです。

死亡率は年齢が高くなるにつれて高まるので、
ネット生保のような顧客の平均年齢が若い会社と、
成熟した会社を単純に比べても意味がないでしょう。
さらに、新しい契約が多い会社ほど選択効果が働き、
死亡率が低くなると思います。
職域など顧客基盤によっても差があるかもしれません。

それでも死亡率については、責任準備金の標準死亡率の制約があり、
保有契約がそれなりにあれば、「当選」の多さ・少なさが
それほど問題にはならないように思います
(低解約返戻金商品やリスク細分商品は考慮していません)。

しかし、第三分野には責任準備金の標準率がないこともあり、
公表されている発生率をどう使ったらいいか、頭を抱えてしまいます。
特に他社比較は難しいというのが率直なところです。

「医療(疾病)保険」と言っても、入院と手術では発生率が違うでしょうし、
有期か終身か、解約返戻金の有無なども数値に影響を与えます。
もちろん、保有契約の平均年齢が違えば、発生率も違うでしょう。

「より具体的な数字をもとに、保険活用の妥当性を説いてほしい」
という筆者の主張を実現するには、どうしたらいいのでしょうね。

 

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働く女性のマネーと老後

 

コクヨグループでオフィス通販のカウネットという会社が
全国の働く女性(=同社が運営するコミュニティの会員)を対象に
「マネーと老後」に関するアンケートの結果を発表しています。
わたしみがきHPへ

有効回答数が357名という小規模な調査ではありますが、
興味深い結果が出ていました。

まず、「毎月、自分のためにいくらくらい貯金をしていますか?」
という問いに対し、「貯金していない」という回答が26.6%もありました。

「自分のための貯金は予定通りできていますか?」
という問いに対しても、「全く貯金ができていない」という回答が
33.9%でした。

「本当は毎月、自分のためにいくらくらい貯金をしたいと思いますか」
では、「貯金したいと思わない」という回答はわずか2.8%なので、
「貯金していない」という人の大半は、「貯金したいけどできない」
ということなのでしょう。

他のアンケート調査でも、
「30代女性(未婚)の5人に1人は貯蓄ゼロ」(オルビス)
「10万円未満が18.3%」(とらばーゆ総研)
といった結果が出ています。

他方、生命保険の加入動向についてのアンケートもあり、
「生命保険に加入していない」という回答は12.3%でした。
「貯金していない」という回答よりもずっと少ないのですね。

加入している生命保険の種類は、医療保険とがん保険で7割、
終身保険が4割、個人年金が24%などとなっていました。
合計が100%を超えるのは、複数の保険に入っている人が
多いためでしょう。
妊娠中でも入れる医療保険

ニッセイ基礎研究所の調査でも、独身女性の生命保険加入率は
20代が46.1%、30代が71.6%、40代が84.6%となっており、
医療保険・入院保険の加入率が最も高くなっていました
(2011年2月レポート「独身女性の生命保険加入実態」より)。

カウネットのアンケートの結果を踏まえると、
貯金をしたくても全くできていないのに、生命保険には加入している
という働く女性が結構いるということになります。
大きなお世話ですが、どうしてそのようなことになっているのでしょうね。
働いているのであれば、健康保険にも加入していると思うのですが...

※写真は甲州街道・勝沼宿です。
 

 

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金融システムレポート

 

日本銀行が金融緩和策の強化に踏み切りました(27日)。
長期国債の買入れ額を10兆円程度増やすとともに、
買入れ対象の残存期間を3年まで延長しています。

日銀は2011年末時点ですでに日本国債の1割を保有しており、
今後さらに市場での存在感が高まるのかもしれません。

ところで、1週間以上経ってしまいましたが、その日本銀行が
「金融システムレポート」を公表しています(19日)。
このレポートは年2回作成されていて、
日本の金融の現状を知るうえで大変役に立ちます。
日銀金融システムレポートのHPへ

レポートを読んで、地域銀行が直面する経営環境の厳しさを
改めて感じました。

信用コスト率や不良債権比率が低い水準にとどまっているため、
地域銀行の経営は一見安定しているように見えます。

しかし、金融緩和の継続などから運用利ザヤが縮んでいるうえ、
主力取引先である中小企業の資金需要が低下しています。
大都市圏と比べ、地方圏の中小企業売上高は大きく落ち込み、
貸出残高も大都市圏と地方圏では動きが全く異なります。

地域銀行が残高を増やしてきた住宅ローンも明るくありません。
利ザヤが低下しているうえ、需要の頭打ちも近そうです。

つまり、地域銀行のビジネスの源泉となる市場が縮んでしまい、
それが徐々に顕在化する段階に入っているのですね。

他方、地域銀行の収益を補っているのが証券投資です。
レポートによると、金利リスク量(銀行勘定の100bpv)は
年々拡大しており、対TierⅠ比率は3割を超えています。

10年前は地域銀行の抱えるリスクの半分が信用リスクで、
残りが金利リスクと株式リスクで半々というイメージでした。
近年は全体の6、7割が市場リスク(金利と株式)となっています。

多くの地域銀行のALMがコア預金を踏まえた先進的なものに
進化しているとは考えにくいので、このリスクのとり方を
どう考えればいいのでしょうか。

地域銀行の経営を取り巻く現状が厳しいとはいえ、
金融危機のような目に見える厳しさに直面しているのではないため、
経営はなかなか思い切った手を打ちにくいのかもしれません。

いわば真綿で首を絞められつつある、あるいは「ゆでガエル」状態
(実際にやってみると、カエルは外に飛び出すそうです^^)
なのでしょうか。

このような顕在化しつつある「ビジネスリスク」に対応するには、
金融リスクの管理以上に経営陣の強いリーダーシップが
求められるのですが...

※写真は前回に続き勝沼です。桜が満開でした。

 

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勝沼とワイン

 

勝沼(山梨県甲州市)に行ってきました。
東京から電車で甲府に向かうと、山を抜けて、
雄大な景色が広がるところがあります。そこが勝沼です。

勝沼と言えばワイン。
全国一のワイン産地で、街のあちこちにワイナリーがあります。

日本でワインが作られるようになったのは明治になってからです。
山梨県は殖産興業の一環として明治3年にワイン醸造を始め、
勝沼でも明治10年に「大日本山梨葡萄酒会社」が設立されました。

さらに同じ明治10年には、2人の青年(高野正誠、土屋龍憲)を
フランスに派遣し、ワイン醸造技術を学ばせています。
この2人が帰国して勝沼のワイン作りが広がっていくのですが、
当時の勝沼の人たちの熱い心が伝わってくるようです。

勝沼が製糸業でも製茶業でもなく、ワインの醸造に情熱を傾けたのは、
もともと当地でブドウを作っていたためだと思います。

日本にブドウが入ってきたのは明治以降と思いこんでいましたが、
勝沼ではなんと平安時代末期にブドウ栽培が始まったとのことです
(奈良時代に僧行基が持ち込んだという説もあります)。
江戸時代にはブドウは甲州名物として有名だったそうです。

ただ、殖産興業としての評価は微妙なところでしょうか。
食生活の違いからワインは国内ではそれほど売れず、
生糸や茶のように海外に輸出することもできませんでした。

山梨のブドウは今でも生食用として栽培されるものが大半です。
生食用のうち出荷できなかったものをワインにするという時代が
長く続いてきたようです。
農家にワイン用のブドウを作ってもらうのは難しかったのでしょうか。
そうかといって、醸造業者が自らブドウを生産したくても、
農地規制により生産することができませんでした。

左の写真は勝沼で見かける典型的なブドウ畑です。
右は白ワインで有名なヴュルツブルグ(ドイツ)のブドウ畑です。
勝沼の棚栽培よりも、右のような垣根栽培のほうが
ワイン用のブドウ栽培には適しているようなのですが...
 

しかし、時代が変わり、品質向上に力を入れるワイナリーも増え、
国産ワインが内外で注目されるようになってきました。
殖産興業はまさにこれからかもしれませんね。

 

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追加金融緩和への期待

 

「円高・株安の流れが再び強まり、日銀が資産買い入れ基金の増額
 といった追加金融緩和に近く踏み切るとの見方が強まってきた」
 (4/10の日経)

「デフレ脱却に向けて、日銀はもはや緩和継続を辞めるわけにはいかない
 とのムードが金融市場で強まっている。日銀が追加緩和を見送った
 10日には、円高・株安で反応した」(4/11のロイター)

「米プライマリーディーラー(政府証券公認ディーラー)調査では、
 前週末発表の3月の米雇用統計で雇用者数の伸びが予想を大幅に
 下回ったことを受け、連邦準備理事会(FRB)が量的緩和第3弾(QE3)
 の実施に踏み切るとの予想が大勢となっていることが、明らかになった」
 (4/9のロイター)

金融市場を見ていると、市場の緩和期待が強まっているというよりは、
中央銀行が追加策を出しても、すぐに次の政策を期待される、
という状況に陥っているようです。
日銀とFRB、ECBで追加策の競争を迫られているようにも見えます。

確かに、2009年からのQE1でFRBが住宅ローン担保証券などを
大量に購入していなければ、米国の住宅価格は下げ止まらなかった
かもしれません。
欧州でも債務危機の深刻化を受け、ECBが昨年末と今年2月に
3年もの資金供給オペを実施した結果、市場の不安が後退しました
(足元ではまた不安の兆しが見えつつあるようですが...)。

しかし、素人目に見ても、こうした政策を長く続けて大丈夫なのか、
中央銀行がバランスシートをどんどん拡大し、その行き着く先には
何があるのかと心配になります。

 

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