生保の2013年4-6月期決算

先週末に生保の4-6月期決算が発表されました。

注目の「ポートフォリオ・リバランス」はと言えば、
株式は実質的に横ばい、外国証券はやや増加
(ヘッジ外債が多いと思いますが、詳細は不明)
といったところでしょうか。

公社債は、様子見モードが強かったなかで、
会計上の金利上昇リスクを意識してか、
「その他有価証券区分」の公社債を減らし、
「責任準備金債券」を増やす動きが目立ちました。

今回の注目は「解約返戻金」かもしれません。
前年同期と比べると、大手では住友生命、
外資系等ではメットライフアリコやジブラルタ、
ハートフォード、三井住友海上プライマリーなどで
解約返戻金が大きく増えています。

これらの会社に共通するのは、銀行を通じた
変額年金または外貨建年金の契約が多いことです。
株高や円安が進み、低迷していた運用実績が回復。
解約すると利益が出るようになったのでしょう。

実はこの傾向はすでに1-3月期から見られますが、
変額年金で最大手だったハートフォード生命
(現在は新規販売を休止中)の解約返戻金は、
4-6月期だけで期首総資産の7%強に達しました。

※いただいた鰹節を実家で削りました(家には削り器がないので)。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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原稿を書きました

 

週末を過ぎてもブログが更新されないので、
「夏休み!」、あるいは、暑さで倒れたのでは?
と思われたかもしれませんね。

実は週末にかけて原稿の締め切りに追われ、
スポーツジムもブログの更新もままならず、
ようやく一息ついているところです。

発売前ですが、執筆者特権(?)ということで。
今回の原稿は週刊東洋経済でして、
5年ぶりに4大共済の分析レポートが出ます
(保険&共済の特集だそうです)。

執筆時間が短かったとはいえ、材料は豊富です。
経営陣へのインタビューもそれぞれ3時間前後。
5年ぶりにもかかわらず、4共済のうち3共済が
前回と同じ役員だったのが印象的でした。

アナリストの視点から、4大共済の経営の現状と
方向性が浮き彫りになる記事を目指しました。
共済にご関心のあるかたはどうぞご覧下さい。
来週19日の発売予定です。

原稿執筆と言えば、保険代理店向けメールマガジン
「inswatch」の最新号にも書いています。

今回のテーマは損保代理店でして、
発表された代理店統計を「読んで」みました。

※夏生まれの父と娘の誕生会を実家で行いました。
 家族の行事は大事ですよね。

 

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「リスクと向きあう」

環境リスク評価研究のパイオニアである中西準子さんによる
「環境リスク学」「リスクと向きあう」を続けて読みました。
それぞれに、「不安の海の羅針盤」「福島原発事故以後」
という副題がついています。

「環境リスク学」は、横浜国大での中西先生の最終講義
「ファクトにこだわり続けた輩がたどり着いたリスク論」のほか、
中西さんによるリスク評価や環境リスクに関する論文から
構成されています。

「リスクと向きあう」のほうは、「福島原発事故に直面して」
「時代の証言者 リスクを計る(=読売新聞の連載)」
の二部構成で、後半は「私の履歴書」のような感じですが、
前半は読みごたえがありました。

中西さんのリスク評価は、
「リスクとリスクがぶつかる時、どうするか」
というところから始まっています。

例えば、原発事故の危険を避けようとすれば、
しばらくは化石燃料への依存を増やさなければならず、
温暖化による悪影響の可能性を高めることになります。
このバランスをどうするかという問題です。

この「リスク・トレードオフ」に答えるには、二つのリスクを
できるだけ共通の尺度で比べることが必要です。

中西さんは河川の計画をしていて、人の安全のためにいいことと、
生態系保全のためにいいことが矛盾することがあると気づき、
悩んだ末にこのリスク評価の研究に取り組むようになったそうです。

保険会社や金融機関におけるリスク論とはやや距離があると
感じられるかもしれませんが、私には興味深い話ばかりでした。

 

中西さんのHPも見つけました → 「中西準子のホームページ」へ

※一見どこのジャングルだろうといった感じですが、
 実は浜離宮の写真です。

 

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郵政・アフラック提携

木曜日(25日)の日経一面トップには驚きました。
その後26日に正式発表となっています。
アフラックのHPへ

Bloombergの取材を受け、私のコメントが載りました。

「TPP交渉をにらんで、日本として米国の求めに対応する姿勢を
 示しているように見え、アナウンスメント効果の方が大きい」

「郵政の販売網は魅力的だが、マーケットが急に激変するような
 ことはないだろう」

というものです。

報道ではしばしば「がん保険ではアフラックが7割のシェアを持つ」
「アフラックとメットライフアリコの米国勢が約8割のシェアを握る」
と言われていますが、これはあくまで保有契約高の話。

確かに第三分野(特約を除く)は大手生損保が取り扱えない
時代が続きましたが、2000年代初頭に完全自由化されました。

がん保険のパイオニアであるアフラックとはいえ、
さすがに新契約シェアは5割前後まで下がっています。
市場シェアを言うのであれば、こちらでしょう。

次に、市場がひっくり返るほどインパクトがある話なのかどうか。
これにはアフラックと第一生命の業務提携が参考になりそうです。

第一生命は提携後、がん保険を自社で開発せず、
アフラックの商品を営業職員チャネルで提供しています。
データを探してみると、ピーク時で年30万件くらい、
新契約年換算保険料で約100億円を販売していました
(現在はもっと小さい数字です)。

他方、第一生命の個人保険新契約件数は年120万件程度、
かんぽ生命(=販売網は主に郵便局)は年220万件程度なので、
郵便局では第一生命の約2倍の生保を売っていることになります。

がん保険の新契約件数は市場全体で150万件前後です。
仮に郵便局ネットワークでアフラックのがん保険を、
ピーク時の第一生命の2倍(60万件)売ったとすると、
アフラックの新契約シェアは単純計算で64%となります。

市場構造が変わるほどのインパクトではなさそうですし、
そもそも「60万件」は直観としてかなりハードルが高そうです。
第一生命の主力商品は各種保障を組み合わせたもの、
かんぽ生命は養老保険や学資保険など、貯蓄性の高い
商品が多いので、「2倍」にはかなり無理がありそうです。

また、市場が成長しているのであればともかく、
一般のイメージと違い、がん保険の新契約件数は
10年前とあまり変わっていません。

ということで上記のコメントとなるのですが、わからないことが一つ。
今回の件が本当に「TPPでの日米交渉に好影響」なのでしょうか。

米国は保険市場における対等な競争条件を求めています。
国有企業の日本郵政が米系生保との提携を拡大しても、
「対等な競争条件」につながる話ではありませんよね。

※いつものように個人的なコメントとということでお願いします。

※最近、黄色い銀座線に乗ることが増えました。
 車両が増えたのでしょうか?

 

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事業会社の経営管理

ある会合で、事業会社の経営管理の問題点について
スピーチを聞く機会がありました。
中小企業ではなく、大企業を念頭に置いた話です。

・自己資本比率が高ければ財務の健全性が高いのか?

・無借金経営(実質を含む)が望ましい経営なのか?

・「営業利益」で部門別の損益管理をしていていいのか?

当然ながら、いずれも企業価値の拡大という観点からは
誤りです。

経営リスクに見合う自己資本が重要なのであって、
自己資本比率だけを見ても意味はありません。
それに、自己資本のコストは非常に高いので、
「自己資本が多いほどいい」なんてことはありえません。

また、営業利益で損益管理を行っているということは、
借入利息も資本コストも見ていないということです。
これでは企業価値への貢献度はわかりません。

この15年間、専ら保険会社や銀行を対象にしており、
たまに先進的な事業会社の例を勉強する程度だったので、
上記のような問題提起はちょっとしたショックでした。

「資本コスト」「エコノミックキャピタル」といった概念は、
事業会社では一部の財務スペシャリストだけにしか
浸透していないのでしょうか。

※某大学の光景です。私たちの時代には「資格取得」よりも
 「合宿免許」「海外旅行」だったように思います...

 

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旧日本軍にみるリーダー論

 

「日本型リーダーはなぜ失敗するのか」を読みました。
著者は半藤一利さん。文春新書です。

昭和史と太平洋戦争の「歴史探偵」である著者が、
太平洋戦争の教訓からリーダーの条件を考えたものです。
資料調査と当事者への取材に基づいた記述が多く、
読みやすい本でした。

日本型リーダーシップとは、「参謀が大事」という考えです。
その起源は戊辰戦争と西南戦争にあります。
「総大将は戦いに疎くても参謀さえしっかりしていれば勝てる」
二つの成功体験がこの考え方を決定づけました。

さらに日露戦争の勝利です。
後にリーダーの理想像とされた「海の東郷」「陸の大山」は、
実際には参謀の上にただ乗っかっていたわけではなく、
戦場では指示を出し作戦を指揮していたようです。

それにもかかわらず、「威厳と人徳」のリーダー像が
作られていきます。
日露戦争の大勝利の栄光を汚さないため、
だまって部下の作戦・行動を見守る静かにして重々しく
堂々たる総大将が日本型リーダーの理想像とされていきます。

参謀任せの「太っ腹リーダー像」が生み出され、
「威厳と仁徳」の将を支えるために参謀重視となり、
上が下に依存する習慣が通例となりました。

その結果、本当の意思決定者がわからなくなり、
権威を笠にきて権限を振り回す参謀が輩出され、
根拠なき自己過信や傲慢な無知、底知れぬ無責任が
戦場でまかり通ったとか。

著者は、エリート集団による「独善性」「硬直性」「不勉強」
「情報無視」は現在に通じていると述べていますが、
残念ながら同感です。

※写真は伊豆の代官・江川家です。
 NHK大河ドラマ「篤姫」で篤姫の実家として使われたとか。

 

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「黒田緩和」妨げる規制

 

本日(9日)の日経15面「一目均衡」について。

同じような記事のたびにコメントするのもどうかと思いつつ、
役所の人事異動のタイミングでこのような記事が出ると、
やはり見過ごすことができません。

編集委員の土屋直也さんによるこの記事の趣旨は
主に次の通りです。日経HPへ(有料版)

・生保が国債市場から動かず、株式シフトが進まないのは、
 ソルベンシーマージン規制が強化され続けてきたから。

・生保規制では「健全性」を追求しすぎるあまり、長期投資や
 リスク投資の抑制という副作用を引き起こしている。

ソルベンシーマージン規制は強化され続けてなんかいません。
2007年に規制強化を打ち出して以降、まだ1回だけです。

それにリスク係数20%(分散効果を考慮すれば15%程度)は
決して厳しくありません。
参考までに、過去10年間のうち、日経平均株価が2割以上
変動した年は5回もありました。

ですから、日本の生保規制は「『健全性』を追求しすぎる」
「程々のバランスが大事」といった段階ではなく、
あれだけの犠牲者(=中堅生保の連続破綻)が出たにも
かかわらず、ようやく規制を多少強化したところなのです。

このあたりの認識をきちんと持っていただきたいものですね。
少し調べればわかる話なのですが...

一方、そもそも生保では、規制が求める健全性基準よりも
はるかに厳しい水準でリスク管理をしています。
そのうえで、株式を保有し、外債に投資しているのですね。

記事には、ソルベンシーマージン比率の強化を受けて
一部生保が2012年度に株式投資を減らしたとありますが、
12年度決算をよく見ると、株式を増やしている会社もありますし、
外債投資を増やした会社も散見されました。

このような事実を無視して、
「規制が強化されたから生保が株式投資を増やせない」だなんて、
生保の経営者が聞いたら怒ると思います。

日銀の異次元緩和を受けても機関投資家がポートフォリオを
見直さないのはなぜか。

機関投資家にもいろいろありますが、少なくとも生保は
投資家である前に、保障の担い手としての責務を果たす必要が
あるからだと思います。皆さんの便利な貯金箱ではありません。

このことを生保破綻の歴史も教えています。

※写真は伊豆・韮山の反射炉。
 幕末の代官・江川英龍が手がけたものです。

 

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楽天vsアナリスト

 

先週の火曜日(2日)に発表されたものなので、
もう話題としては過去の話になりつつありますが、
やはり「アナリスト」としては触れないわけにいきません。

JASDAQに上場している楽天が、あるアナリストのレポートに対し、
改善を要望したものの、十分な修正がなされなかったとして、
面会の経緯とともに次の一文を公表しました
(東証への適時開示というかたちで)。

「当社としては同氏による過去及び将来のレポートは当社への
 投資判断の一助とはなりえないと判断しており、投資家の皆様に
 おかれても参考とされないようお勧め致します。また、当社は今後
 同氏の取材については一切お受けしません。」

楽天のHPへ

開示内容が会社とアナリストのやり取りの経緯だけであれば、
投資家への情報としてわかるのですが、最後の一文はいただけません。

まず、アナリストレポートが投資判断の一助となるかどうかは
投資家が判断するものであり、(気持ちはわかるとはいえ、)
投資対象である会社が判断するものではありません。

そうはいっても、何度説明しても理解してくれないアナリストや
投資家もいるでしょうから、私は反論はありだと考えています。

ただし、「今後同氏の取材については一切お受けしません」
というくだりは楽天にとってマイナスでしかありません。

あくまで想像ですが、楽天はどのアナリストにも同じ水準の
情報しか提供していないと思います。
しかし、こう書いてしまったことで、市場は楽天を、
選択的に情報を出す会社だと判断せざるをえないはず。

楽天はどうして最後の一文を出してしまったのでしょうか。

せっかくなので、楽天がどのようなIR資料を使っているのか
いくつか見てみました。

楽天というと一般にはネット通販のイメージがありますが、
もはやバランスシートは金融会社そのものなのですね。
ノンバンクに加え、銀行、証券、生命保険とそろっており、
確かに金融の知識がないと分析は難しそうです。

そういえば、ソニーのアナリストも金融・保険事業の扱いに
苦心していたのを思い出しました。

楽天生命は昨年10月にグループ入りしたばかり
(旧アイリオ生命ですね)。
保険料収入、資産規模ともに300億円弱の会社ですが、
2013年度第1四半期のスライド資料を見ていたら、
MCEVを公表していて驚きました(簡易計算ベースとのこと)。

※地方鉄道シリーズ(?)第2弾は伊豆箱根鉄道。
 修善寺(写真右)に行ったときのものです。

 

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早大保険規制研シンポ

 

早稲田大学の保険規制問題研究所が28日、
保険募集をテーマに公開シンポジウムを開催しました。

プログラムの前半は研究所メンバーによる発表、
後半は日本代協の岡部さん、仲立人協会の葛石さん
のスピーチと、フロアとの質疑応答でした
(私は参加者としてフロアにいました)。

いずれも先の金融審・募集WG報告書を踏まえたもので、
参加者も多く、今回の報告書の関心の高さが伺えました。

発表のうち、大塚英明先生の「『意向把握』について」は、
顧客の意向を知りつつ、意向どおりの保障を提供しなかった場合、
代理店は賠償責任を問われるようになる、という興味深いものでした。

話を聞いていて、同じ募集人でも、生保中心の大型乗合代理店と、
損保プロ代理店では、保険会社との関係はかなり異なることが
改めてわかりました。

日本代協・岡部さんの資料によると、

・現行の乗合承認制度の問題(=要は保険会社が承認しない)
・代理店の販売方針と代手体系等のミスマッチ

など、保険会社に対する損保プロ代理店の弱さが示されています。
フロアからもそのような声が上がりました(代理店のかたから)。

ただ、従来の、「行政→保険会社→代理店」という流れに加え、
「行政→代理店」が加わるということは、場合によっては、
保険会社による拡大解釈や予防的措置に従わなくてすむ
ということになるのかもしれません。

とはいえ、受け身のままでは何も変わらないのでしょうね。

※写真は早慶戦としてみました(慶大で講義があったので)。

 

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公社債の残存期間別残高

 

生保は以前から「有価証券残存期間別残高」という
データを公表しています
(大手中堅9社以外はディスクロージャー資料のみ)。

このデータを見ると、各社が保有する公社債の
残存期間を年々長期化してきたことがうかがえます。

例えば、1年以下=0.5年、1~3年=2年、3~5年=4年、
5~7年=6年、7~10年=8.5年、10年超=15年として
残存期間を推定してみましょう。

2003/3期と2013/3期の推定残存期間を比べると、

 日本生命 6.6年 → 11.7年
 第一生命 5.7年 → 12.3年
 住友生命 5.0年 → 12.2年
 明治安田 5.8年 → 12.0年

こんな感じになっています。

ただ、このところ困ったことが生じてきました。
いまや生保が保有する公社債の7、8割が「10年超」なのです。

ところが、10年超の債券がひとくくりで公表されているので、
20年債でも40年債でも同じ区分に入ってしまうのですね。

上記の推定では「10年超」を「15年」として計算しましたが、
もし「20年」で計算すると、残存期間は15年程度となります。
20年国債を中心に買っている会社と、40年国債もそこそこ
買っている会社では、残存期間はかなり異なるはず。
今の開示ではこのあたりは全くわかりません。

せっかく「有価証券残存期間別残高」を公表しているのに、
公社債の7、8割が同じ「10年超」の区分となっている。
このような現状を踏まえ、次回の決算発表までには
ぜひ「10年超」の細分化をお願いしたいです。

※左の写真は先週の父の日のプレゼントです♪

 

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