11月は保険会社の中間決算が発表される月です。
3月に比べると株価も長期金利も下がっているので、
各社のEVはそこそこ減っているのではないかと想像されます。
ところで、生保の利益指標の一つに「基礎利益」があります。
経常利益から有価証券売却損益や評価損など臨時的な損益を
控除したもので、今やすっかり定着した感がありますね。
ニッセイ基礎研・荻原邦男さんの最近のレポートによると、
「導入の背景には、『生保の多くが逆ざや状態に陥っているなかで、
利差損ではあるものの、トータルで見ると利益はプラスであることを
明示する』という目的があった」
とありました。ニッセイ基礎研HPへ
基礎利益は歴史の長い生保が「3利源ではプラス」
ということを示すために開発されたという面もあることは
知っておいたほうがいいかもしれません。
確かに当時(基礎利益の導入は2000年度決算から)は
「逆ざやが累積していて大変」といった珍説もありましたからね。
荻原さんはレポートのなかで、基礎利益の留意点として
次の3つを挙げています。
①変額年金の保証にかかる責任準備金の繰入・取崩が
基礎利益を撹乱する要素となっている
②インカムゲインとキャピタルゲインの区分が曖昧で、
各社で経費処理方法に差異がある
③基礎利益イコール公表されている3利源ではない
これらに加え、次のような点もありそうです。
④有配当契約が多い会社のほうが基礎利益が大きくなりやすい。
特に大半が配当として流出してしまう団体保険の死差益は
基礎利益を実質的にかさ上げしてしまっている。
(これは主に大手生保ですね)
⑤いわゆるヘッジ外債を保有していると、ヘッジコストは
キャピタル損益となり、円債を保有するより基礎利益が大きくなる。
⑥保有契約に対し新契約が大きい会社の場合には、
新契約獲得コストがかさみ、基礎利益が小さくなりやすい。
(これは大手だけ見ているとわからない話かもしれません)
⑦追加的な責任準備金の繰入が基礎利益のマイナス要因
となっている会社がある。
特に⑥は基礎利益の本質的な弱点です。
大手を中心に見る場合には基礎利益は有用かもしれませんが、
業界全体を見る場合には、かなり留意が必要だと思います。
※右の写真は「卒業旅行」で見た釧路湿原の夕日です。