討論型民主主義

 

「経済成長を追求しつつ、財政再建も果たすべき」
そう考えていた人にとって、今回の選挙は選択肢がない
何とも苦い選挙だったのではないでしょうか。

しかも、あれだけ裁判で違憲判決が出ているのに、
一票の格差は是正されず、そのまま選挙に突入です。
どうも民主主義の限界を感じてしまいます。

ところで、先日の台北のリスク・カンファレンスでは、
金融危機などのテーマのほか、「討論型民主主義」という
私には耳慣れないものがありました。

民主主義とは基本的に多数決で決めることです。
しかし、年金や原発など、私たちの社会が抱える課題は
唯一の解がなく、判断が難しいことばかり。

いざ投票となる際に、十分な情報を持たないまま、
意思決定を迫られることが多いのではないでしょうか。

台北の会議では、米スタンフォード大学のフィシュキン教授
が登壇し、Deliberative Democracy(討論型民主主義)の
スピーチを行いました。

討論型民主主義は、ある課題について、専門家から十分な
情報提供を受けたうえで、小グループでじっくり討論し、
よく練られた世論を形成しようというものです。
参加者についても、国民の縮図になるよう工夫されます。

具体的にはこちらの事例をご覧いただければと思いますが、
まだまだ実験段階とはいえ、苦い不美人投票ではなく、
このような形で民主主義のコストを払うのは、
ポジティブに考えられるのではないかと感じました。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします

※お祈りする若い女性が多かったので聞いてみたら、
 縁結びの神様として有名な場所だそうです(写真右)。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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外貨建資産が増加(台湾)

 

前回のブログで、国内生保の外貨建資産ウエートが
20%に達したと書きました。

ところが、台湾生保の海外投資はそんなレベルではなく、
一般勘定資産の43%を占めています(2013年末)。
2001年には12%だったそうですから、大きな変化です。

外貨建ての保険が多いのかと尋ねてみると、そうでもなく、
責任準備金の大半は自国通貨建てとのことでした。

台湾の生保も長引く低金利に悩まされています。
10年国債利回りが2008年以降、1%台で推移する一方、
ある資料によると、平均予定利率は4%近い水準です。

しかも、台湾には十分な超長期債市場は存在しません。
また、多額の危険差益を得られる環境でもなさそうです。

そこで、当局は海外投資等に対する各種規制を徐々に緩め、
結果として、今のような資産構成となったと考えられます。

某大手では一定規模の為替ヘッジを行っているようでしたが、
業界全体としては、「各社が為替変動準備金を積んでいる」
(当局=金融監督委員会が2012年に導入したもの)
という声を何度も耳にしました。

ところが、ある記事を見ると、地元格付会社のコメントとして、
「準備金残高は海外投資の0.5%未満しかない」
「準備金を積極的に積もうという動きは見られない」
とありました。TAIPEI TIMESへ

低金利で金利リスク(ALMリスク)が顕在化しているなかで、
毎期の会計上の損益を確保するため外貨建資産に傾斜し、
為替リスクを増やしているという姿が浮かび上がります。

台湾では2009年のKuo Hua Lifeに続き、今年8月には2つの生保
(Global Life、Singfor Life)が当局の管理下に置かれました。
他にも当局の健全性基準を下回っている会社が複数あるようです。

ただ、日本の破綻処理制度とは違い、台湾では保険契約者が
100%保護されており、公的資金を使う枠組みとなっています。
Kuo Hua Lifeの処理コストは約3000億円と言われています。

充実したセーフティネットは破綻生保の契約者には福音です。
しかし、経営者のモラルハザードを高めることにもなりかねず、
制度設計の難しさを感じました。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします

※かつて階段の上には神社があったそうです。

 

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外貨建資産が増加

 

出張で台北に来ています。
上着がいらないほど暖かいのに、厚着の人が多いです。
こちらに住んでいると、きっと寒く感じるのでしょう。

さて、前回に続き、主要生保の4-9月期決算から。

歴史の長い国内系生保の資産構成を見ると、
一般勘定に占める外貨建資産の比率が高まっており、
2014年9月末には9社合計で20%に達しました。

過去の推移をみると、比率の上昇が顕著となったのは
2012年度以降のことです。
特にこの上半期は外貨建資産が4.8兆円増えており、
増加資産(5.6兆円)の9割近くに達しました。

日銀の異次元緩和(と金利低下)・アベノミクスを受け、
国内長期債への投資にややブレーキがかかる一方、
生保資金は外貨建資産に向かっているようです。

外貨建資産への投資といっても、為替リスクを取った
資産運用には総じて慎重な姿勢を維持している模様。
(=ヘッジ付きが多いということ)。
国内債券の代替という意味合いがあるのでしょうか。

ただし、両者は同じ「円金利資産」とはいえ、
「負債を意識」という点では異なっていると思います。
ヘッジ外債は負債の金利リスクを減らそうとする
資産運用ではないからです。

それに、為替リスクを取っていないとしても、
現物と為替ヘッジの期間ミスマッチがあるとすれば、
イールドカーブの変化で勝ち負けがあるはず
(もちろん、ヘッジコストも変動します)。

ヘッジ外債にとって状況が悪くなりそうになった際、
果たして、ここまで積みあがった外債のポジションを
大きく減らすことができるかどうか。

市場流動性を心配しているのではありません。
外債のポジションが急減すると、おそらく各社の
利息配当金収入が大きく減ってしまうはずだからです。
まあ、そこまで考えてリスクテイクしているとは思いますが…

 

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保険料収入は売上高か?

 

主要生保の2014年4-9月期決算が出そろいました。
今回は保険料等収入で第一生命(連結ベース)が
日本生命を上回ったことに注目が集まっています。

ただ、生保の保険料収入を売上高とみなし、
競争を煽るような報道は、百害あって一利なしだと
私は考えています。

以前のブログで、「売上高」は非常に曖昧な概念であり、
保険料収入は生保の経営陣が最重要と考える指標ではない
と書きました。
保険会社の売上高

今回は別の切り口で見てみましょう。

保険料収入は、初年度保険料と次年度以降の保険料に
大別できます(ディスクロージャー誌に開示あり)。
次年度以降の保険料とは、保険料が月払いや年払いの
保有契約、つまり過去にとった契約から発生する保険料です。

第一生命の保険料等収入(単体)は約2.9兆円でした。
このうち、初年度保険料は0.6兆円で、あとは次年度以降の
保険料収入となっています(データは2013年度です)。

日本生命でも、2013年度の保険料等収入4.8兆円のうち、
3.7兆円が次年度以降の保険料です。

売上高というと、当期の営業活動によるイメージですが、
この保険料収入は売上高のイメージに合うでしょうか?

ディスクロ誌には、支払方法別の保険料明細も載っています
(個人保険、個人年金保険)。

第一生命の場合、2013年度の個人保険・個人年金保険の
保険料収入は約1.9兆円。このうち一時払は0.4兆円でした。

他方、本体で銀行窓販向けの一時払商品を提供している
明治安田生命の場合、個人分野の保険料収入2.4兆円のうち、
一時払いが1.2兆円を占めています。

2011年度はもっとすごくて、同分野の収入4.1兆円のうち、
一時払いが2.9兆円でした。
このように、保険料収入は一時払商品の販売により
大きく左右されてしまいます。

生保が一時払商品しか扱っていないのであればともかく、
主力は分割払いなので、やはりこれを売上高と呼ぶのは
無理がありそうです。

売上高のイメージにうまく合う指標が見当たらない
(あえて言えば新契約年換算保険料でしょうか?)
のも確かですが、報道が保険料収入に偏ってしまうと、
収益やリスクを軽視し、収入規模を追いかける会社が
出てきてしまうのではないかと、心配になります。

別件ですが、今週の週刊金融財政事情に、5月に紹介した
「世界の経営学者はいま何を考えているのか」
の書評が掲載されました。機会がありましたらご高覧下さい。

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※写真は南房総・館山の海岸です。遠くに富士山が見えました。

 

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3メガ損保が業績上方修正

 

19日に大手損保グループの中間決算発表があり、
3グループとも業績予想を上方修正しています。

<東京海上>
・グループ修正利益を2910億円⇒3220億円へ
・上方修正(+310億円)の内訳
  国内損保+ 20億円 *円安によるマイナス効果あり
  国内生保+140億円 *合併の影響あり
  海外保険+150億円 *円安効果は+60億円

<MS&AD>
・グループコア利益を1000億円⇒1200億円
・上方修正(+200億円)の内訳
  国内損保+150億円 *運用収支の改善が大きい
  国内生保+ 10億円 *EV増加額は+220億円
  海外保険+ 30億円

<損保ジャパン日本興亜(SJNK)>
・修正利益を1460億円⇒1569億円
・上方修正(+109億円)の内訳
  国内損保+132億円 *保険収支の改善など
  国内生保▲ 40億円 *金利低下の影響?
  海外保険+ 12億円

同じ上方修正でも、東京海上は海外保険の上振れ、
MS&ADとSJNKは国内損保が大半を占めるなど、
中身は結構違うものですね。

そもそも構成比が大きく異なる点も示しておきましょう
(国内損保+国内生保+海外保険≒合計)。

 東京海上:1080+890+1200 ≒ 3220億円
 MS&AD : 760+ 140+ 250 ≒ 1200億円
 SJNK  : 609+ 800+ 142 ≒ 1569億円

ただし、お示ししている数値は会計損益ではないので、
グループにより計算方法が異なります。

例えば、国内生保は東京海上がTEV、MS&ADが会計損益、
損保ジャパン日本興亜がMCEVをベースとしています。
MS&ADのEV増加額は650億円の予想ですので、
会計損益よりもかなり大きくなっています。

こうして見ると、各社とも国内損保が回復してきたとはいえ、
国内生保や海外保険によるグループ利益への貢献が
引き続き大きいことがわかりますね。

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※写真は汐留のクリスマス・イルミネーションです。
 早くも先週から始まりました。

 

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ある種の保険をかける

 

日銀の追加緩和に驚いていたら、今度は衆院解散とか。
今回のバズーカ砲は消費税の再引き上げをサポートする
のだと思っていましたが、どうも違うみたいです。

仮に解散・総選挙となった場合、消費税を予定通り
引き上げるべきと主張する政党はあるのでしょうか。

しかも、出口どころか、さらなる日銀バズーカ砲の可能性も
高まったように思います。
保険会社にとっても、悩ましい日々が続きそうです。

ところで、日銀のホームページで、追加緩和を決めた
10月末の金融政策決定会合で反対した佐藤健裕委員の
講演(ロンドンでの講演の邦訳)を見つけたので紹介します。
日銀HPへ

「マクロプルーデンス政策と日本銀行の取り組み」なので、
主にマクロプルーデンス政策について述べたものですが、
今回の追加緩和についても簡単に触れられています。

 「私自身はこの決定に反対票を投じたことから、
 この政策変更について話すには微妙な立場にある」

としたうえで、

 「短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、
 これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延する
 リスクがある」

 「日本銀行としては、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、
 好転している期待形成のモメンタムを維持するため、
 ある種の保険をかける意味で、ここで『量的・質的金融緩和』を
 拡大することが適当と判断した」

という政策変更の説明がありました。「ある種の保険」ですか…

ちなみに黒田総裁は、「デフレという慢性疾患を完全に克服する
ためには、薬は最後までしっかりと飲み切る必要があるのです」
と病気の治療にたとえた説明もしています
(11/5のきさらぎ会における講演より引用)。

保険にしても薬にしても、わかったようなわからないような。
無視できないリスクがあるから保険に入るのでしょうし、
いくら薬を飲んでも、安静にして体力をつけなければ、
なかなか治らないと思います。

佐藤さんの講演に戻ると、それではなぜ反対したのか、
そこまでは書いてありませんが、次のような記述がありました。

 「私としては、消費者物価指数が前年比2%に達すれば、
 この政策はその使命を果たしたことになると単純に考えている
 わけではない」

 「日本銀行が目指す『物価の安定』とは、本来、全般的な経済状況
 が実体経済・資産市場ともに良好に推移するなかで、賃金の改善
 とともにバランスよく物価が上がっていく姿である筈」

 「人々の中長期的な予想物価上昇率のリアルタイムでの計測手法
 に決め手がない以上、政策の継続の必要性については、
 毎回の金融政策決定会合で政策委員会が改めて『判断』」して
 いくべきものと考えている」

予想や期待に働きかける政策というのは、実施の判断基準にしても、
政策効果の測定にしても、極めてアートの色彩が強いということが
うかがえますね。

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※写真は11月限定の「築地丼 特別弁当」。
 築地市場の老舗の食材を使った楽しい弁当でした。

 

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健康寿命

 

日本アクチュアリー会の年次大会に参加しました。

連日のMCでヘロヘロだった昨年の大会とは違い、
今年はアドバイザーを務めるERM委員会の企画
(そうだったのか!ORSA)をほんの少しサポートしただけで、
あとは純粋に参加者として楽しむことができると思いきや、
かつての部下が登場すると、なぜかこちらが緊張しました^^

「そうだったのか!ORSA」の会場は立ち見が出るほどで、
ORSAへの関心の強さがうかがえました。
司会とスピーカーを務めた皆さん、お疲れさまでした。

「ORSA報告書は当局にとって有益だが、標準化、画一化を
 図ろうという意図はなく、あくまで各社各様の取り組み」

という主旨のコメントを当事者から聞くことができたのは
大きな収穫だったと思います。

年次大会は他にも論文発表やパネルディスカッションなど
盛りだくさんでして、知見を深めることができます。

そのなかで、タイトルに挙げた「健康寿命」に関する発表は、
私には新鮮でした。

発表内容をここで紹介することはできませんが、
厚生労働省は健康寿命を「日常生活に制限のない期間」
と定義し、数値を公表しているのですね。

国民生活基礎調査(3年ごとに実施)と生命表をもとに、
健康寿命を算出するのだそうで、直近データ(2013年)を
先月公表しています。

これによると、2013年の健康寿命は次の通りです。

 男性 71.19年(平均寿命より 9.02年短い)
 女性 74.21年(平均寿命より12.40年短い)

平均寿命と健康寿命の差が10年前後というのは、
長いのか短いのか。しかも、女性の不健康期間が
男性よりも長いのはどうしてなのでしょうか。

厚労省は健康寿命を2001年データから公表しています。
男女とも年々伸びているとはいえ、平均寿命の伸びに
やや追いついていない結果となっています。

 平均寿命の変化 男性+2.14年、女性+1.68年
 健康寿命の変化 男性+1.79年、女性+1.56年
 (いずれも2001年から2013年の変化)

これも解釈がなかなか難しいです。
平均寿命が延びる要因と、健康寿命が延びる要因は、
必ずしも同じではないはずですよね。

健康寿命の場合、延命可能な医療技術の進歩よりも、
若いうちからの生活習慣などが影響してくるのでは
ないでしょうか。まだわからないことが多いようですが。

ということで、今回は「健康寿命という指標がある」という
ご紹介でした。

※写真は神楽坂です。先週、お祭りをやっていました。

 

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共済の研究会でスピーチ

 

黒田日銀の追加緩和には驚きました。
長期国債の保有残高を約30兆円追加し、
買入れの平均残存期間を最大3年程度延長するとか。
ETFとJ-REITの買入れも3倍増だそうです。

しかし、期待に働きかけるこの政策。
効きが悪くなったら、またバズーカ砲となるはず。
どうも不安が先に立ってしまいます。

ところで、先月京都である共済の研究会に出席し、
スピーチをする機会がありました。
参加者の多くは共済事業に日々関わる皆さんです。

私の役目は保険業界をめぐる最近の動向について
解説することでした。

現在進んでいる保険募集ルールの再構築や
金融庁の金融モニタリング基本方針に見られる
顧客と金融機関の好循環を目指す取り組みなどは、
共済事業にも決して無縁ではないでしょう。

同時に、研究会に参加して、共済事業への
プレッシャーの強まりも感じました。

技術面では共済も保険も同じです。
統計データから料率を決め、責任準備金を積み、
保障を全うするには、リスク管理が極めて重要です。
一部の共済団体では、統合的リスク管理(ERM)の
高度化を進めていると聞きます。

県民共済などが提供する「一律掛金・一律保障」は、
リスクの異なる若年層と壮年層が同じ掛金なので、
共済の相互扶助を体現しているように見えます。

ただ、考えてみれば、保険会社も団体保険で
同じような保障を提供しています。

それでは両者の違いがどこにあるかといえば、
組織のあり方なのだと思います。

保険会社は保障を提供するために加入者を集め、
安定した保障を提供できるようにするのであって、
加入者はあくまでサービスの利用者です。

他方、共済を提供する協同組合は、組合員のために
存在する組織です。組合員のためにサービスを提供し、
組合は組合員の自治で運営されます。

大規模化した共済の加入者に自治意識があるのか、
といった疑問はありますし、例えばJA共済であれば、
構成員が「専業農家」「土地持ち非農家」「准組合員」、
全労済であれば「労組組合員」「こくみん共済の加入者」
など、属性の大きく異なる組合員を抱えています。

それでも共済が保険とは違うと説明するには、
「加入者」ではなく「組合員」という意識を持ってもらう
取り組みを継続的に行っていくしかないでしょう。

もっとも、共済事業者の監督は保険行政(金融庁)に
一本化したほうがいいのではないかと思っています。
そうすれば、「監督が緩い」といった批判はなくなりますね。

※写真は宇治の平等院です。
 思わず10円玉を取り出し、見比べてしまいました。

 

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保険の国際規制が固まる

 

保険会社向け(正確にはG-SIIs向け)の国際資本規制となる
BCR(基礎的資本要件)の最終文書をIAISが公表しました。
IAISのサイトへ

来月15~16日のブリスベーンG20サミットで承認されれば、
保険会社に対する初の国際資本規制の策定となります。

文書を見ると、7月に公表された市中協議文書の内容から
大きくは変わっていないようで、Fair ValueやCurrent Estimate
にリスク係数をかけるシンプルな計算方法です。

注目されていたBCRの水準感は、7月の市中協議文書では、
「7、8月の調査結果を見てから決める」としていましたが、
変更の余地を残したうえで、とりあえず公表した係数を
そのまま適用することになりました。

・ALMリスクは対象外
・分散効果も明示的には考慮せず

というのも7月の市中協議文書と同じです。
ただ、損保のリスク計算では、自然災害などの巨大リスクを
明示的に反映するような計算式となった模様です。

今回のBCRは「保険分野に国際資本規制を導入する」
という意味では歴史的な話だとは思いますが、締切があり、
とにかく導入することを最優先したのでしょう。

しばらくはBCRの数値が公表されないこともあり、
むしろ次の議論(上乗せ資本の水準やICSの内容)が
どうなっていくのかに、より注目したいと思います。

ここから先は、日本のソルベンシー規制見直しとの関係も
気になるところですね。

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※写真の脇町潜水橋は、増水時には沈んでしまいます。

 

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うだつの町並み

 

美馬市脇町のうだつの町並みを10年ぶりに訪れました。
徳島駅からディーゼル特急で約40分の穴吹駅で降り、
吉野川の大きな橋を渡ってしばらく歩くと脇町です。

「うだつ」とは隣家と接する二階に設けた小さな壁です。
本来は防火が目的なのですが、江戸から明治にかけて
藍の商売や吉野川の水運で栄えた脇町では、商家が
競うようにして立派なうだつを上げ、今に残っています。

うだつの町を歩いていると、どこからか香ばしい匂いが。
見ると、おばちゃんが店で田楽豆腐を焼いています。
匂いにつられて中に入ってしまいました。

一人で熱々の田楽豆腐を食べながら店内を見渡すと、
窓ガラスに赤い字で「横倉生活改善グループ」とあります。

横倉生活改善グループは、標高600mの山の中にある
横倉地区の女性たちによるグループで、当初は不便な
暮らしを少しでも良くしようという活動だったようです。

しばらくして豆腐作りが始まり、今では豆腐のほか、
田舎だんごや寿司などを生産し、地域ブランド商品として
うだつの町などで販売しているとか。

おばちゃんいわく、

「山の中だから、このままだと誰もいなくなってしまうし、
 なんとかしなくっちゃ、ということで始まったんだよ」

「最近は補助金目当ての団体もあるみたいでしょう。
 うちはそうじゃないよ。ちゃんとやってるんだから」

よくよく聞いてみると、グループ結成は1969年だそうで、
もう45年も続いていることになります。

そのうちグループの女性たちが集まってきました。
お客は私だけだったので、

「お客さん、どこから来たの?」「お茶を入れようね」
「だんご食べる?(=お饅頭のようなだんごでした)」

といった調子で、気が付いたら「くいしん坊!万歳」の
松岡修造さんのようになっていました^^

このところ地方に行くと、「歴史ある町の吸収合併」
「山村留学の休止」といった寂しい発見が続いていたので、
久しぶりに元気な話を聞くことができました。

 

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