07. 規制・会計基準

金融行政方針の公表

 

金融庁が21日に、本事務年度(2016/7-2017/6)の
金融行政方針を公表しましたので、その感想など。
金融庁のサイトへ

今回の行政方針では、次の3つを金融行政運営の
基本方針として掲げました。

 (1)金融当局・金融行政運営の変革
 (2)国民の安定的な資産形成を実現する
   資金の流れへの転換
 (3)「共通価値の創造」を目指した
   金融機関のビジネスモデルの転換

最初に「金融当局・金融行政運営の変革」を置き、
検査・監督のあり方の見直しや自らのガバナンス
改善に取り組もうとしているところが斬新です。

金融行政の中身に関し、総じて言えることは、
「健全なリスクテイクの促進」だと受け止めました。

例えば、話題となっている「日本型金融排除」
(担保や保証等に過度に依存した与信判断)
の実態把握の狙いは、地域金融機関に対し、
事業性評価に基づくリスクテイクを促す施策です。

国内で活動する預金取扱金融機関については、
各種リスクテイクが収益・リスク・資本のバランス
という面から適切な戦略となっているかに着目し、
対話を行うともあります。

家計における長期・積立・分散投資の促進も、
日本の家計金融資産を現預金から投資に
シフトできるよう、環境整備を図ろうというもの。

さらに、保険会社向けの記述(25ページ)にも、

「保険会社との対話を通じ、環境変化に対応する
 リスク管理を伴った健全なリスクテイクを促す」

とありました。ただし、

「低金利環境の継続等により、経済価値ベースでの
 必要資本の確保とリスクテイクによる収益の確保
 とのトレード・オフの問題が生じている」

すなわち、経済価値ベースでみると、必要資本を
確保するのがそう簡単ではない状況なので、
少なくとも、余裕があるのにリスクを取っていない
という認識を持っているわけではなさそうです。

特に生保については、

 ・保険負債の質の改善
 ・リスク管理と一体となった資産運用の最適化
 ・ストレスシナリオの想定と対応

などが対話のテーマに挙げられています。
こうした認識下での「健全なリスクテイク」なので、

「ERMの活用は健全性に関する取組みが中心」
「収益力の向上に関する取組みは今後の課題」

とは言うものの、銀行のようなリスクテイク拡大を
促すというよりは、具体的な手法はともかく、
保険会社が収益・リスクをどうコントロールするか
に着目するのだと私は理解しました。

※写真は坂本(滋賀県)の町並み。
 石垣の連なりが美しいです。

 

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IFRSの適用状況

 

本題に入る前にセミナーのご案内です。
8月9日(火)の18:00から損保総研で講師を務めます。

「マイナス金利下における経営環境の変化と
今後の保険会社経営の方向性」という演題で、

 ・マイナス金利政策のインパクト
 ・ソルベンシー規制の進展
 ・新たな環境下での保険会社経営の方向性

についてお話する予定ですので、ご関心のあるかたは
ぜひご参加ください ⇒ 損保総研のサイトへ

さて、一部報道にもありましたが、22日(金)に開催された
企業会計審議会・会計部会の資料によると、国際会計基準
(IFRS)を任意適用する会社(適用予定を含む)が121社に
達しました。このうち適用済の会社は86社です。
金融庁のサイトへ

この「121社」は金融庁による7/15時点のデータですが、
東証の資料によると、6月末時点の任意適用(予定を含む)
会社は141社で、時価総額は東証全体の29%とのこと
(このうち適用済の会社は85社、17%)。

適用会社が着実に増えているなかで、保険業や銀行業には
実のところ適用会社が存在しません。

大手保険グループや大手銀行は外国人投資家が多く、
海外展開も積極的に進めているのに、不思議ですよね。

保険業と銀行業でIFRSの任意適用会社がないのは、
IFRS第4号「保険契約(修正版)」とIFRS第9号「金融商品」
という、両者に影響の大きい会計基準が未完成だったことが
大きいと思います。

ただし、第9号は2018年に発効することになっており、
第4号の修正版も早期の発効に向けて動いていますので、
こちらの制約はいずれ解消されるでしょう。

もう一つの制約としては、業法の存在が挙げられます。
保険業や銀行業にはそれぞれ保険業法、銀行法があり、
事業報告書を作成、提出しなければなりません。

IFRSを任意適用した場合、規制上の手当てがなければ、
有価証券報告書の連結決算をIFRSで作成したとしても、
事業報告書は従来通り、日本基準で求められるので、
二種類の連結決算を作る必要があると思われます。

保険業や銀行業のIFRS任意適用を促すのであれば、
金商法と業法の関係、さらには健全性規制との関係を
整理する必要がありそうです。

※早大でも「ポケモンGO」でした。

 

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ドイツ生保と低金利

 

少し前の話で恐縮ですが、IMFがドイツ銀行を
システミックリスクの影響が最も大きい銀行と
指摘したというニュースをご覧になったでしょうか。

遅まきながらIMFの報告書(6/29公表)を確認したら、
これはドイツに対する金融セクター評価プログラム
(FSAP)のストレステストに関するものでした。
IMFのサイトへ

FSAP GERMANYなので、G-SIBに指定されている
ドイツ銀行のシステミックリスクに関する分析結果が
載っていたのですね。

次回のFSAP JAPANでは、3メガバンクの分析結果が
出ることでしょう。

ところで、この報告書にはドイツ生保のストレステスト
の結果も示されています。

金利低下や株価下落、公社債のスプレッド拡大
といったショックに対し、ソルベンシーIIのSCR比率
(日本で言えばソルベンシーマージン比率でしょうか)
がどこまで影響を受けるかをテストしたものです。

ショック時の数値もさることながら、二種類のSCR比率、
すなわち、16年間の経過措置(※)の適用前後の比率で
ストレステストを行っているのが目を引きました。

 ※ソルベンシーIIでは低金利下での経過措置として
  16年かけて割引率または責任準備金を必要水準に
  段階的に収束させることが認められています。

これによると、2014年末のドイツ生保のSCR比率は、
ストレス前でも、経過措置の適応がなければ、
中央値は100%程度であり、100%を下回っている会社も
多いことがわかります
(100%が資本とリスク量がバランスした状態です)。

アリアンツやミュンヘン再保険など大手保険グループは
ソルベンシーII対応状況を投資家向けなどに公表し、
グループベースでみたSCR比率が良好な水準にあると
示しています。

しかし、ドイツの生保業界全体としては、やはり金利水準
低下の影響は深刻だということなのでしょう
(特に中堅会社の状況が厳しい模様)。

なお、ドイツの金融当局であるBaFinは6/30のリリースで、

・直近の2016年3月末の状況を分析したところ、
 金利水準が2014年末より大きく下がっているにも
 かかわらず、IMFのテスト結果よりも良好だった。

・BaFinでは8月に直近のソルベンシーII報告に関する
 何らかの公表を行うつもりである。

といったコメントをしていますので、8月の公表を
待ちたいと思います。

※月島もんじゃストリートに行きました。

 

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銀行窓販の販売手数料

 

6日の金融審議会(市場ワーキング・グループ)では、
金融機関による顧客本位の業務運営実現に向けた
取り組みの一環として、銀行による保険の販売手数料
開示問題がテーマにあがった模様です。

しばらくしたら議事録がアップされると思いますが、
今のところ当日の資料のみ公表されています。
金融庁・金融審議会のサイトへ

知人の保険ジャーナリストによると、金融審WGの議論が
あくまで金融機関による貯蓄性保険の手数料だけなのか、
あるいは、営業職員や一般代理店が販売する貯蓄性保険
まで広がるのかに注目とのことでした。

確かに、保険会社から見ると、前者であれば金融機関
という一つのチャネルだけの話ですが、後者となれば、
保険商品のあり方全般に影響が及ぶかもしれません。

ご参考までに、2013年6月の金融審・保険WG報告書では、
「2-3-2 乗合代理店に係る規制について」のなかに
次の記載があります。

「手数料の開示については、上記のような見直しを通じて、
 乗合代理店による保険商品の比較販売について、一定の
 適切な体制が整備・確保されると考えられることから、現時
 点において、一律にこれを求める必要はないと考えられる」

「仮に、手数料の多寡を原因として不適切な比較販売が行
 われる事例が判明した場合には、手数料開示の義務づけ
 の要否について、改めて検討を行うことが適当である」
 (脚注62)

銀行にとって販売手数料の重要性は年々高まっています。

6日の金融審WGの資料には、販売手数料に占める割合と、
平均手数料率の推移が載っていました(スライド6)。
7日の日経の図表はここから引用したものです。

販売手数料が銀行決算にどれほど貢献しているのかは、
直近決算データとなると、個別に見ていくしかありませんが、
2014年度までならこの日銀レポート(銀行・信用金庫決算)
時系列で確認できて便利です。

国内業務の資金利益が減少傾向となっているのに対し、
大手行、地域銀行ともに役務取引等利益は増えています。

大手行の場合は、近年伸びている国際業務部門が
資金利益や役務取引等利益に寄与しています。

しかし、大手行の国内業務部門、あるいは地域銀行で
役務取引等利益の伸びを支えているのは、保険と投信の
販売手数料であることがわかります
(詳しくはレポートの15ページを参照)。

※週末にプライベートの東京湾クルージングを
 体験することができました。

 

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標準利率の設定

 

国債利回りがマイナスになったことを受けて、
金融庁は標準利率の算出に関する係数や
ソルベンシーマージン比率のリスク相当額
(予定利率リスク)のリスク係数を整備するそうです。
金融庁のサイトへ

いずれも、これまで設定されていなかった
マイナスゾーンの係数を設けるというもので、
従来の枠組みを大きく変える案ではありません。

まあ、標準利率がマイナスになり得る点は
過去にない大きな変化なのかもしれません…

予定利率リスクのほうから取り上げると、
今回の案によれば、予定利率が0%以下の部分は
リスク係数が0なので、予定利率リスクが存在しない
ということになります。

とはいえ、経済価値ベースのソルベンシー規制を
検討しているなかで、このような対応となるのは
わからないでもありません。

他方、標準利率については、安全率の整備に
とどまらず、指標となる国債利回りについても
見直すという考えはなかったのでしょうか。

今のルールでは、指標となる国債利回りは
一部を除き、10年国債利回りです。

他方、大手生保の保有する公社債の7、8割は
10年超の超長期国債であって、10年国債を
ALMの中心に据えている会社はありません。

つまり、生保のALMと責任準備金のルールが
ズレてしまっているのですね。

こうなってくると、責任準備金が積み上がる商品を
今後も提供し続けるのかという話になってきます。

週刊ダイヤモンドでも書きましたが、
マイナス金利は生保の資産運用面だけではなく、
営業戦略への影響も大きいことがわかります。

※写真は台北郊外にある三峡の町並みです。
 「牛角」というクロワッサン風のパンが名物だとか。

 

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規制改革の再考

 

遅まきながら、話題になった金融庁長官の
香港での講演録を読んでみました
(英文のみですが原文はこちら)。

終わりの見えない国際的な金融規制改革について、

①コストを上回る効果が得られるのか?
②銀行規制の強化がシステム強化につながるのか?
③危機の本質に踏み込んだ改革なのか?
④将来起こりうる危機に対応できているのか?

といった問題意識を提示しています。

講演で引用されている「イーストランド号事故」の
Financial Timesの記事はこちらです。

タイタニック号の事故では救命ボートの少なさが
問題となりましたが、救命ボートを義務付けた結果、
ボートの重みで不安定になった遊覧船が転覆し、
タイタニック号を上回る犠牲者が出たのだそうです。

記事の執筆者であるクロズナ―氏は元FRB理事で、
ちょうど100年前にシカゴ川で起きた事故の教訓は
金融規制の参考になるとしています。

話を長官講演に戻しましょう。

講演では、「リスク管理のコンプライアンス化」にも
言及がありました。

今や規制の要求する資本が経済資本、すなわち、
金融機関がリスク管理上、必要と認識する資本を
上回ってしまい、リスク管理があたかも規制対応と
なっているとの指摘です。

リスク管理のコンプライアンス化が進むと、
銀行のリスクに対する見方が均質化してしまい、
金融危機に脆い状況に陥るとの懸念を示しています。

現在の国際的な金融規制改革に対する、
日本の金融庁長官によるこのような健全な指摘が、
内外の規制にどう反映されるのか、注目したいです。

※東京農大の「収穫祭」に行ってきました。

 

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大手保険に国際資本規制

 

「金融庁は2020年をめどに大手保険会社に国際的な資本規制を
 適用する方針を固めた」(15日の日経)

「金融庁が、大手保険会社に対し、平成32年をめどに国際的な
 資本規制を適用する方向で調整を進めていることが15日、
 分かった」(16日の産経)

金融庁が国際的に採択した資本規制(ここではICSのほう)を
適用しないという選択肢があるとは考えにくいのですが、
それはさておき、各紙とも保険商品や資産運用への影響を
懸念するトーンです。

「負債の計算方式が『償却原価』から『時価評価』に変わる」、
あるいは、「保険契約の価値を厳しく見積もる手法を導入」
と、経済価値ベースの評価を懸念しているように見えます。

しかし、ICSの対象となりそうな第一生命やメガ損保各社の
投資家向け説明会の資料を見ると、いずれの会社でも
経済価値ベースでのリスク量と資本量を公表しており、
すでに対応済みの状況と言えそうです。

<参考>
 第一生命の決算・経営説明会資料(28ページ)
 東京海上の新中期経営計画IR説明会資料(18ページ)

それより気になるのは、次の2点でしょうか。

1.ICSは現在、2つの評価方法の収斂を図っていますが、
  2019年になっても収斂できなかった場合、どうなるのでしょうか。

2.国際規制とは別に、金融庁は国内規制の見直しも検討中です。
  経済価値ベースのソルベンシー規制が俎上に載ってから
  もう8年になり、この間、フィールドテストも複数回行いました。
  「広範な議論」に加え、そろそろスケジュールを示してほしいところ。
  いつまでも国際規制を待っている必要はないと思うのですが…

※先日、久しぶりに横浜のシーバスに乗りました。

 

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金融行政方針と保険

 

金融庁が今事務年度(2015年7月~2016年6月)の
「金融行政方針」を発表しました。
金融庁のサイトへ

かつては監督局が業態別の「監督方針」を公表し、
検査局が「検査基本方針」を出していましたが、
一昨年度からは両者を統合した「金融モニタリング
基本方針」となり、今年度はより部局横断的な方針
となりました。

保険分野について確認すると、
「④ 金融機関による資産運用の高度化の促進」で、

「特に、保険会社の資産運用能力の向上は、
 自身の競争力強化にとって重要であると同時に、
 顧客の利益や国民の安定的な資産形成、さらには、
 我が国資本市場の発展に寄与する」

というくだりを見つけました。

「ビジネスモデルにおける資産運用の位置付けや
 運用の高度化に向けた取組みについて、経営としての
 問題認識や取組みの状況を確認する」

とのことです。具体的にはよくわかりません。

ただし、20ページからの【保険会社】のところでは、
統合的リスク管理の促進として、

「資産・負債の総合的な管理(ALM)等が適時適切に
 実施されているかを確認する他、各保険会社等の
 特性に応じた取組みを促す」

とありますので、「運用の高度化」が一人歩きしない、
負債特性を軽視(無視)したリスクテイクを促さない
ことを願っています。

他に、前回からの変化ということでは、

「当局の審査の考え方を出来るだけ早い段階で周知
 することにより、保険会社等の創意工夫を活かした
 商品開発や商品改定が迅速に行われるようにするため、
 商品開発部門や日本アクチュアリー会及び損害保険
 料率算出機構との対話を進める」

という記述がありました。具体名が書いてあるので、
それぞれの団体と協議を行うということなのでしょう。
対話の成果が公表されるといいですね。

※東京・三田の保険代理店「ライフィ」を訪問しました。
 50社以上の保険会社を取り扱っているのだそうです。

 

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銀行勘定の金利リスク

 

先週(8日)、バーゼル銀行監督委員会が
銀行勘定の金利リスクに関する市中協議文書を
公表しました。
金融庁のサイトへ

現在のバーゼル規制では、第1の柱として求められる
自己資本比率の計算に銀行勘定の金利リスクは
入っていません。

保険会社の健全性規制を見慣れた人からすると、
えっ、そうなの?という声も聞こえてきそうですが、
第2の柱で対応することとなっています
(アウトライヤー規制と呼ばれるものですね)。

第2の柱の場合、各国当局の判断に委ねられるため、
もし基準を超過しても、機械的に資本積み増しの
対象にはなりません。

公表された市中協議文書では、第1の柱に入れる案
(リスク量を計測し、自己資本比率の分母に反映)と、
現在の第2の柱を強化する案の二つが示されました。

バーゼル委員会ではパブコメを募集し(9/11締切)、
その後議論を再開するようなので、決着までには
まだ時間がかかりそうです。

「銀行の国債保有に新規制」との報道もありましたが、
確かに保有する国債の金利リスクが反映されるとはいえ、
これはちょっとミスリードのように思います。

今回の案は、国債の信用リスク(ソブリンリスク)を
反映させるような規制案ではありません。

また、金利リスク計測の対象は、資産として保有する
国債だけではなく、貸出金、負債の預金も入ります
(資産と負債の金利リスクが相殺されます)。

負債サイドでは、定期預金に加え、コア預金
(実態として長期間滞留する流動性預金)も対象です。

基本的な枠組みは財務会計ベースではなく、
経済価値ベースということになりますね。

さてさて、どのような案に落ち着くのでしょうか。

※アジサイがきれいな季節になりましたね。

 

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IFRS適用レポート

 

金融庁は国際会計基準(IFRS)を任意適用した企業の
実態調査を行い、そのレポートを公表しました(15日)。
金融庁のサイトへ

まず、日本におけるIFRS任意適用企業(予定を含む)が
すでに75社に達していることに驚きました。
米国会計基準からの移行が相次いでいる模様です。

業種別には、電気機器、医薬品、卸売業、サービス業、
情報・通信業、輸送用機器、化学といった業種で
適用企業が多いとのことです。

他方で任意適用企業が存在しない業種もあり、
このなかには「銀行業」「保険業」が含まれています。

保険業の場合、保険契約(IFRS4)がまだ策定中なので、
現時点で任意適用がないのは仕方がないかもしれません。
しかし、グローバル展開を志向する保険グループの場合、
IFRSの任意適用は時間の問題のようにも思えます。

レポートによると、任意適用を決めた理由としては、

 ・グループとして経営管理上のモノサシをそろえる
 ・同業態社との比較可能性の向上を目指す

などを挙げる会社が多かったようです。

そして、移行による実際のメリットをたずねると、
任意適用を決めた理由と概ね共通していますが、

 ・会計や財務報告のあり方について、経営層を含め
  全社的に議論する良い機会となっている
 ・業績面での子会社との認識の相違を避けられる

といった回答も見られます。

「誰がIFRSへの移行を提案したのか」という質問への
回答も興味深い結果が出ています。

回答の半数が「経理部門」、半数が「CEO」「CFO」でした。
経理部門という回答、つまりボトムアップが過半数だと
想像していたのですが、トップダウンも多いのですね。

レポートでは移行によるデメリットも確認しています。
回答を得た46社のうち、27社が「実務負担の増加」を挙げ、
複数帳簿管理や開示量の増加などが聞かれたようです。

ちなみに、「のれんの定期償却がない(=日本基準と違う)」
「株式評価損がP/Lに計上されない(=日本基準と同じ)」
といったコメントはレポートには出てきませんでした。

※久しぶりに月島でもんじゃ焼きを食べました
 (もんじゃ焼きの写真は撮り忘れました)

 

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