ご案内が遅くなりましたが、日本保険学会の機関誌である「保険学雑誌」の最新号(第643号)に論文が掲載されています。タイトルは「近年の日本の保険行政における健全性規制の動向とその考察」で、1年半前に行った九州部会での発表をもとに、その後の情報をアップデートしつつ、まとめたものです
(アブストラクトのみ閲覧可能です)。
拙著「経営なき破綻 平成生保危機の真実」では、2000年前後に生じた中堅生保の連鎖的な破綻について、厳しい外部環境だけではなく、経営内部の問題が大きかったことを明らかにしました。ただ、自由化以前の保険行政による影響力の大きさを踏まえると、当時の保険行政がなぜ破綻を防げなかったのかという点について、もっと触れるべきだったのかもしれません。
今回の論文では、前半でこの問題を取り上げ、次のように整理しました。
・純保険料式責任準備金と株式含み益への依存を柱とした健全性確保の枠組みを続ける一方、1980年代に複数回の予定利率の引き上げや高水準の契約者配当を認めてしまったうえ、ロックイン方式の弱点を見過ごした。
・財務内容の手掛かりとなる経営指標が生保の経営実態を十分に反映していなかったため、問題を抱えた生保への対応が遅れた。
・1995年の保険業法改正でソルベンシー・マージン比率を導入する際、生保経営の深刻な状況を踏まえ、緩やかな基準としたことが裏目に出た。
保険会社に対する規制は1995年の保険業法改正の前後で対比されることが多いと思います。
しかし、健全性規制に注目すると、業法改正で整備が進んだというよりは、護送船団時代の不備が明らかになるなかで、リスクベースの新たな規制を導入しても十分機能せず、自己規律の活用という新たな取り組みも含め、いまでも試行錯誤が続いていると言えそうです。
※新車の「えのしま号」で藤沢へ(少し前ですが)