本題とは関係ありませんが、この記事の「業界で縁起が悪いとされている地域」に思わず反応してしまいました(苦笑)
ただし、「早期解約の場合は保険会社の費差益がマイナスになってしまうケースが大半」ということはないと思います。
節税保険祭り終了、怒れる国税庁が鳴らした「生保業界再編」の号砲
問題は「順守率の低下」ではない
さて、私のほうは、22日の日経記事「統治指針、順守率が低下」「改定に対応追いつかず」(有料会員限定)が気になったので、こちらを取り上げます。
東京証券取引所がコーポレートガバナンス(CG)コードへの対応状況を公表したことを受けた記事です。
・東証がコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)への対応状況について2018年末時点の集計結果を公表
・「取締役の多様性確保」など2018年6月の指針改定で変更になった原則の順守率低下が目立った
CGコードを「統治指針」と表記するのはともかく、コンプライ率を「順守率」とするのはちょっと違和感があります。
このコードは上場会社が守るべきルールではなく、実効的なガバナンスを実現するための規範を示したものです(原則主義ですね)。ですから、文言や記載よりもその趣旨や精神が重要なのであって、すべての会社が100%のコンプライを目指すようなものではないのです。
「順守率が低下」というと、ルールを守っていない会社が増えたように読めますよね
(以下では「実施率」としておきましょう)。
とにかくコンプライ
改訂前のCGコードの実施率は非常に高い状況でした。高いからいいという話ではありません。上場会社はコンプライアンス対応と同じようにとらえ、原則の内容よりも、とにかくコンプライする方向に走ってしまったようです。
例えば、経済産業省が実施した「平成29年度コーポレートガバナンスに関するアンケート調査」では、CGコードへの対応状況について尋ねています。
そこでは、「コンプライしているものの、形式的な対応にとどまり、実質的な取組にまで至っていないものがある」という回答が28%、「他社の取組水準と遜色ない水準の取組を行う方向で検討いている」が16%、「コンプライすることが当然だという風潮になっていると感じ、強く意識している」が10%ありました(複数選択可)。
このアンケートへも形式的な対応(=優等生的な回答)をした会社があるはずなので、実際の数字はもっと大きいと考えられます。
経産省のサイトへ(参考資料2の26ページ)
形式的な対応で損をしている
東証が取りまとめたCGコードの対応状況で注目すべきは実施率が下がったことではなく、改訂後も実施率が総じて非常に高いことだと思います。
特に、原則3-1(情報開示の充実)が東証1部で92.7%(△1.5pt)、補充原則3-1(1)が99.6%(△0.3pt)という回答が実質を伴っているのであれば、金融審議会ディスクロージャーWG報告に基づく府令の改正も情報開示のガイダンスも必要ありません。
日本では原則主義にあまり馴染みがないとはいえ、形式的な対応をすることで、上場会社はせっかくの対話の機会を逃している、あるいは、開示情報が信頼されず、結果として会社価値を外部から低く見られることになるので、もったいないなあと思います。
※ハワイではなく、横浜で食べました