07. 規制・会計基準

監督指針の改正案

先日のブログでも触れましたが、金融庁は本日(4/23)、
「保険会社向けの総合的な監督指針」の改正案を公表しました。

金融庁のHPへ

改正案は金融安定化フォーラム報告書やG20行動計画を踏まえているため、
金融危機の反省に立った項目が目立ちます。例えば、

・(出再先の)財務状況について、できる限り詳細に把握する
 必要があること
・(支店形態の場合)当該支店を対象としたストレステストの実施を
 行っているか
・統計的なリスク計測手法には限界があることを踏まえ、
 多様なリスク計測手法を活用(後略)
・(金融保証保険やCDS取引などに関して)担保の提供を想定した
 流動性の管理を行っているか

といった具合です。

リスク管理のところでは「統合リスク管理」が新設されています。
このなかで、取締役会等が報告を受けるべきものとして、
「経済価値評価に基づく保険会社独自の必要資本の充足状況」
とあり、目を引きました。

ストレステストについては、ヒストリカルシナリオだけでは不十分で、
仮想のストレスシナリオによる分析も求めています。さらに、
「相関関係が崩れるような事態も含めて検討」
「保有する資産の市場流動性が低下する状況を勘案」
などとあります。

ただ、ストレステストの結果をどう活用すべきなのかは
「具体的な判断に活用される態勢が整備されているか」
としか書いてありません。
ストレステストのうち、最悪の結果になるような事態に備えた
バッファーを持つべきということなのでしょうか。

 

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保険課長のインタビュー記事

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4/16のインシュアランス損保版に、金融庁の
長谷川靖保険課長のインタビューが掲載されました。

まず目を引いたのは、
「VaRに基づくリスク管理では必ずしも十分とは言えない」
「相関関係を無視して厳しいストレステストを実施し、その結果、
 資本が不十分と判明したら直ちに迅速な対応を」
というくだりです。

確かに今回の金融危機では保有資産の分散効果が効きませんでした。
ですが、ここまでスパッと言い切るとはちょっと驚きでした。
ストレステストはシナリオ次第で厳しくも緩くもなりますよね。
果たして金融庁はどのようなストレスシナリオを想定しているのでしょうか。
監督指針の改正案に注目しましょう。

もう一つは、比較情報の提供についてです。
「様々なツールを使い、比較情報の提供が促進されることが望ましい」
「今後、各社にさらに積極的に取り組むことを期待したい」
ということで、どうやら金融庁は何もしないスタンスのようです。

 

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ロンドン金融サミット

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日本縦断ツアーの疲れからか、風邪を引いてしまいました。
南→北ではなく、北→南のほうがよかったのかもしれません^^

ロンドンで開かれたG20首脳会議(金融サミット)は
残念ながら大きな成果を上げることができませんでした。

「自由貿易の堅持」ではとりあえず合意できたものの、
足もとの危機対応という点では、ほとんど見るべき成果が
なかったように思います。

やはりG20になって、各国の利害を調整するのが
一段と難しくなっているのでしょう。

個人的には、国際的な金融規制・監督を強化するための
「金融安定理事会(FSB)」(旧金融安定化フォーラムを改組)
に注目しています。
FSBの動きが保険監督にも影響を与えることになるでしょう。

もちろん、こちらもG20ベースなので、同じ問題はありますね。

 

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世界の保険監督官の会合

保険の勉強会で大阪に来ています。
とりあえず私のスピーチは終わったのですが、どうだったでしょうか?

今週は国際的な保険監督官の会合(IAISの関係です)に
オブザーバー参加する機会がありました。

テーマは保険会社がグローバルに展開するなかで、
保険会社の健全性をどう確保するかというもの。
保険監督は基本的にローカルベースなので、今回の金融危機で、
国境を越えて活動する保険企業への対応が課題として浮上したためです。

個人的に興味深かったのがバミューダです。
税制メリットから保険会社はたくさんあるのですが、
規模の大きい監督組織があるとは知りませんでした。
何でもアクチュアリーが100人以上いるとのこと。
主に損保のリスクを見ている感じでした。

米国の影が薄いのも保険監督者の集まりならではかもしれません。
米国は州規制なので、全体を代表する組織としてNAICがあるものの、
日本の金融庁などとは性格が全く違います。
それに州の監督官にグローバルな規制を求めるというのも
かなり無理があるように感じました。

※写真は奈良公園です。ホルンを吹くと鹿さんがたくさん走ってきます。

 

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「巨大保険会社 国際監督に穴」

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けさ(22日)の朝日新聞6面に興味深い記事がありました。
AIGの経営危機をきっかけに、国際的に活動する保険会社の
監督体制の不備が浮き彫りになったというものです。

例としてハートフォードの最低保証リスクの話が挙がっています
(記事にはそう書いてありませんが、最低保証リスクの話です)。
再保険を通じて、規制の厳しいところから緩いところへリスクが移るという、
古くて新しい問題です。

また、規制・監督は国ごとなので、グループ全体がどうなっているかは
当局が把握することはできません(格付け会社や市場は見ていますが)。
こちらは保険会社に限った話ではありませんが、
銀行には国際監督基準があり、一定の役割を果たしています。

記事にある、「(米国への出再は)単なる引き当ての節約が目的だろう」
という専門家の指摘はかなり乱暴だと思いますが
(日米まとめて管理したほうが効率的でしょう)、
リスクが見えにくくなっているのは確かです。

記事は「ソルベンシー規制の国際基準が必要」という趣旨ですが、
あわせて情報開示の国際基準も必要ですね。

 

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もう一つの共済問題

週刊東洋経済2008.11.29の共済特集「共済vs.生保」で
保険ジャーナリストの石井さんが取り上げていましたが、
12/1に公益法人制度改革法が施行となり、
公益法人が行う共済事業も保険業法の規制対象になりました。

http://www.fsa.go.jp/ordinary/ins_koueki/index.html

現行の公益法人は今後5年以内に新法人(一般または公益)に
移行する必要があります。しかし、共済事業をそのまま続けると、
無認可の保険事業者として保険業法違反になってしまいます。
新法人に移行するまでに、保険会社(少額短期事業者を含む)になるか、
共済事業を縮小・譲渡・廃止するか決めなければなりません。

石井さんによると、公益法人のうち共済を主目的に運営しているところが
990法人もあるそうです。おそらく規模の小さいところが多いのでしょうが、
「あんしん財団(旧KSD。会員事業所は24万件)」や
「日本フルハップ(関西ではCMで有名。加入者数は54万人)」
といった中小企業向けに広く共済事業を展開しているところもあり、
今後の動向が注目されます。

 

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米国生保への資本注入はどうなる?

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FRBがゼロ金利政策に突入しました。
ついにここまできたかという感じですが、信用収縮が起きているときに
金利を引き下げても効果はあまり期待できない、というのが
日本の経験からの教訓でしょうか。

ここ数日、米国生保の原稿を書いていて思うのですが、
米国政府の対応にはやっぱり頭を抱えてしまいます。

例えば11月以降、CMBS(商業用不動産担保証券)の価格が急落しました。
これには政府の方針変更が一役買っています。
米財務省の金融安定化策が、当初の不良資産買い取りから
資本注入プログラムに変わってしまったためです。

この資本注入プログラムは保険会社も対象になっていて、
ハートフォードやプルデンシャルといった大手保険会社も参加を表明しています。
ところが、本当に資本注入されるのか、されない会社があるのか...
といった宙ぶらりんの状態が続いており、市場の疑心暗鬼は晴れません。

新政権に多くを期待するのはどうかと思いますが、
少なくとも現政権のレームダック状態が終わる点はプラスでしょう。

 

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日経ヴェリタス「安易な会計ルール緩和に抗す」

本日(14日)の日経ヴェリタス、IASB理事である山田辰己さんの記事です。

・国際会計基準の緩和はEUからの強い政治的圧力を受けたもの。
 EUがルールを勝手に凍結し、情報開示が後退しないように決断した。

・「取引がほとんどない市場で金融商品の時価をどう決めるか」
 「時価評価の信頼度」「簿外の特別目的会社」などの課題には、
 情報開示を強化する方向で対応している。

・投資リスクを投資家に伝えるもので時価に代わるものはない。
 海外では時価会計をやめるべきだという極端な議論は出ていない。
 安易に会計ルールを変更すれば、市場の信頼を失うことを理解している。

IASBは国際会計基準の作成を担う組織で、理事は14人。
そのうち日本人は山田さんだけという、貴重な存在です。

昨今、金融機関の健全性を「自己規律」「行政による規制」「市場規律」
の3つで確保しようという流れから、金融危機が深刻化するなかで
「市場規律」を否定する動きがあるように思えてなりません。

危機対応の重要性を否定するつもりはありませんが、
さりとて「行政による規制」だけで実現可能なのでしょうか。
山田さんを応援したいと思います。

 

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