ファンドの保険会社買収

7月3日に初のオンライン開催となったRINGの会オープンセミナー。19日までの期間限定でダイジェスト版の動画(YouTube)が公開されています。

・第1部は「実践代理店!DX~デジタルシフトする進化系代理店に学ぶ~」
・第2部は「事業者の進化~DXの時代に生きる経営者に必要なもの~」
・第3部は「zoom展示会」※動画なし

保険流通の最新動向に関心のあるかた(あるいはRINGの会に関心のあるかた)は、どうぞご覧ください。

ファンドによる保険会社の買収

2日の日経「バフェット流経営に軸足(有料会員限定)」によると、米大手投資ファンドによる保険会社の買収が相次いでいるそうです。例えばブラックストーンは2021年に入り、オールステートやAIGの生保事業への投資を行っています。

投資ファンドにとって保険会社は長期資金の安定的な供給源に見えるのかもしれません。顧客からの預かり資産ではなく、保険金を支払うまで超長期にわたり返さなくてもいい資金だからです。
ただ、特に生保事業(変額ではなく、定額の保障)となると、過去の様々な失敗事例が頭をよぎります。例えばということで、韓国・大韓生命の事例を紹介しましょう。

韓国の大手生保であるハンファ生命は、20世紀末に経営危機に陥り、政府が救済した大韓生命を前身としています。大韓生命が経営危機に陥ったのは、韓国経済がアジア通貨危機という強いショックを受けたこともありますが、それ以上にガバナンス面の問題が大きく影響しました。要は財閥の会長が傘下の大韓生命をグループのために「活用」したのですね。

・海外に貿易会社を作り、大韓生命から資金を拠出
・返済見込みのないグループ会社を大韓生命が支援
・過大な本社ビル(大韓生命63ビル)への投資を実行
・大韓生命の資金で教会をいくつも建設
 (会長は熱心なクリスチャンだった)

ここまでひどい事例はなかなかないとは思いつつ、通常の事業とは違い、保険事業は先にお金(保険料)が入ってくるので、魅力的に見えてしまいがちです。投資ファンドの保険事業が、運用者にとって都合のいい貯金箱のようにならないといいですね。

※オリ・パラの記念切手を入手しました。

 

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メディアの信頼度

「平日のインターネットの利用時間が全年代(10~60代の平均値)で初めてテレビの利用時間を上回った」というニュースをご覧になったでしょうか。これは総務省情報通信政策研究所が2012年から行っている調査の結果でして、年代別に見ても、テレビ(リアルタイム)の視聴時間がネットの利用時間を上回ったのは50代と60代だけでした。
新型コロナ感染症の流行下で行われた調査だったため、動画配信などネットの利用が通常よりも増えた可能性もありますが、これまでの傾向からすれば、逆転は時間の問題だったのでしょう。ちなみに休日はまだ平均値でテレビがネットを上回っていて、ネットがテレビを上回っているのは10代と20代だけでした。

それにしても、休日の10代、20代のネット利用時間は290分(=4時間50分)、60代のテレビ視聴時間(リアルタイム&録画)は370分(=6時間10分)という結果には驚きました。休日なので8時間睡眠とすると、10代、20代は起きている時間の約3割をネットとともに過ごし、60代は起きている時間の4割弱でテレビがついていたということになりますね。

この調査ではメディアの信頼度についても調べていて、全世代平均で最も信頼度が高かったのは新聞でした。年代別に見ると、30~60代はいずれも新聞の信頼度が最も高く、20代でも新聞とテレビが同じ信頼度となっていました。
多くの人は「いち早く世の中のできごとや動きを知る」ためにはネット(10~40代)またはテレビ(50代と60代)を利用し、「世の中のできごとや動きについて信頼できる情報を得る」手段として新聞と答えた人は15%程度であるにもかかわらず、メディアとしての信頼度は新聞が一番というのは興味深い結果です。あまり利用していないけど、社会としては重要な存在という認識なのでしょうか。

※ご当地ヒーローに遭遇しました!

 

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経営者の「逃走」を止める

日経新聞の朝刊に「やさしい経済学」というコラムがあるのをご存じでしょうか(経済教室と同じ面です)。経済に関するテーマを研究者が何回かに分けてわかりやすく解説するというもので、執筆者によっては「やさしくない経済学」だったりもします(個人の感想です^^)。

8月17日からは東京都立大学の松田千恵子さんによる「新時代の企業統治」が始まりました。松田先生はかつて格付会社ムーディーズでアナリストだったかたで、2011年から現在の大学(当時は首都大学東京)を拠点に活躍されています。
1回あたり800字程度しかないコラムでコーポレートガバナンスの解説を行うのは、自分だったら途方に暮れてしまいそうですが、各回とも充実した内容で、かつ、大変わかりやすくて参考になります。

19日のコラム(3回目)では近年の日本のガバナンス改革について触れ、

 守りのガバナンス:経営者の「暴走」を止める
 攻めのガバナンス:経営者の「逃走」を止める

とありました。「逃走」という表現はこれまで思いつかなかったので、社外取締役の経験も豊富な松田先生ならではの表現なのかもしれません。そういえば松田先生は以前、別のコラムで「社外取締役」という言葉のおかしさについても書いていました。

「それ(=社外取締役という言葉)が意味を持つのは、終身雇用の下で『ウチの論理』が通用する身内を大事にしてきた企業だけだ」(2018年12月25日の日経夕刊コラム「十字路」より引用)

今回の連載はこれまでのところ、(1)経営者の暴走を防ぐ仕組み、(2)従業員を律する内部統制、(3)「攻め」の経営で成長促す、(4)未分化だった「監督」と「執行」、と続いてきました。おそらく全10回ですので、後半のコラムも楽しみにしたいと思います。

※今シーズンも各種かき氷を美味しくいただきました♪

 

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コロナ感染の保険金支払い急増

8月12日の日経フィナンシャルに「国内損保、加入が増えない理由 2つの仮説」を寄稿しました。有料媒体なので、購読されていらっしゃる方はぜひご覧ください。

さて、ネットで「コロナ感染の保険金支払い急増」というニュースを見て、念のため各社の発表を確認してみました。ニュース(読売新聞)はこちらです。

住友生命は4-6月期のデータを公表していなかったので、3社合計(日本生命、第一生命、明治安田生命)の新型コロナ関連の死亡保険金・入院給付金を出してみました。グループ傘下の国内生保合算です。

 2020年4-6月  24.2億円(2.9億円)
     7-9月  23.7億円(4.1億円)
    10-12月  27.6億円(7.4億円)
 2021年1-3月 128.8億円(27.5億円)
     4-6月 140.8億円(37.0億円)

 *( )は入院給付金のみ

生命保険会社の保険金支払いが急増したのは4-6月ではなく、1-3月からだとわかります。
足元で新規の感染者が急増しているので、私たちはつい「デルタ株で感染者が増えて、保険金支払いも増加した」と受け止めてしまいがちです。しかし、感染者が増えてから死亡者が増えるまでに時間差があるので、1-3月の保険金支払いは主に年末年始の第3波によるもの、4-6月は主にGW前後の第4波によるものです。
5月や6月に比べると7月以降の死亡者は今のところ少ないので、足元で死亡保険金が急増しているということはありえません。とはいえ、記事に「保険金の支払いも急ピッチで増えている」とあるのは、入院給付金が増えているのでしょう。

4-6月期の保険金等支払金(うち保険金)は3社合計で5,464億円ですので、依然として、保険金支払いによる財務面の影響を心配するような水準では全くありません。ただ、足元の第5波に伴い、どの程度死亡者が増えるのか。高齢者のワクチン接種は概ね一巡したので、死亡率は抑えられると期待していますが、果たしてどうなるでしょうか。

※福岡・南蔵院の涅槃仏です。日本では珍しいのではないでしょうか。

 

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ディスクロージャー誌の公表

今週のInswatch Vol.1097(2021.8.9)では保険会社のディスクロージャー誌について書きました。ご参考までにブログでもご紹介します。
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前回は1回目のワクチン接種(モデルナ)での副反応についてお伝えしましたが、2回目ではちょうど24時間後に微熱が出て、それが9時間くらい続きました。熱があっても体調は良好で、食欲もあります。接種した左腕の筋肉痛のほか、なぜか腰の右側が痛くて、これらはまだ数日続きそうです。副反応は個人差が大きいですね。ご参考まで。

生損保がディスクロージャー誌を公表

早いもので、今年も保険会社のディスクロージャー誌が出揃う時期となりました(会社によっては「統合報告書」となっています)。さっそく、いくつかの会社のディスクロ誌をざっと確認したところ、近年のコーポレートガバナンス改革の一環として上場会社が情報開示の拡充を求められていることなどを踏まえ、前半の「本編」の記述を大幅に見直した会社があるようです(例えば明治安田生命など)。
ただし、後半の「データ編」の記述には大きな変化はなさそうです。こちらは新たなソルベンシー規制の導入(2025年の予定)とともに掲載内容の充実が図られることを期待することにします。

なぜ経営情報が必要なのか

そもそも保険会社の経営情報が市場関係者だけでなく、保険の利用者にもなぜ必要とされているのか、改めて考えてみましょう。
事業会社の場合、その会社の商品やサービスの利用者だからといって、それを提供する会社の経営内容を知る必要はあまりありません。会社の経営内容が悪化すると、商品やサービスの内容や品質が悪化する可能性もありますが、あくまでも間接的な影響です。ですから、事業会社の経営情報を必要としているのは専ら株主などの市場関係者となります。
これに対し、保険会社の場合、会社の経営内容はいわば商品・サービスの一部となっています。もし、保険会社の経営が傾けば、将来の保障(補償)が危うくなり、破綻した場合には利用者が損失を被ります。さらに、有配当契約であれば、利用者は保険会社の経営内容に応じた配当を期待できます。ですから保険会社の経営情報を必要としているのは市場関係者だけでなく、利用者(現在および将来の保険契約者)にも必要なのです。
だからこそ、保険業法第111条で経営情報の公衆縦覧が規定され、毎年ディスクロージャー誌が公表されています。

経営情報はどう伝わるか

とはいえ、平時に保険会社の経営内容に関心を寄せる利用者は少ないのではないでしょうか。保険の利用者は保障(補償)を得るために保険会社と契約しているので、株主などの市場関係者と違い、保険会社の経営情報を自ら得ようという動機に乏しく、平時であれば、おそらく保険会社の信用リスクを負っているという意識もありません。この20年間、個人分野の配当が低く抑えられてきたこともあり、配当を期待して生命保険に加入した人もごくわずかでしょう。
メディアによる情報伝達も20年前に比べるとかなり減っていて、かつ、画一的なものとなっています。保険会社の決算発表を継続して報道している全国紙の記事を確認したところ、近年の生保決算は「保険料等収入」と「基礎利益」、損保決算は「正味収入保険料」と「当期純利益」を報じるパターンが圧倒的に多く、情報源として不十分な状態が続いています。

ディスクロージャー誌の分量は多く、読みこなすのは大変です。しかも、経営データとして十分な内容かといえば、特に生保については外部環境や経営実態等の変化に開示項目が追いついていないと感じます。
とはいえ、保険の利用者にとって有用な情報が掲載されているのは間違いありません。例えば「業績ハイライト(主要な経営指標を掲載)」「直近5事業年度における主要業務の状況」をフォローすれば、その会社の大まかな経営内容がつかめますし、会社によってはESR(経済価値ベースの健全性を示す指標)や「重要リスク」などの情報も公表しています。保険販売に関わるかたは、平時からこれらの情報に接しておくべきではないでしょうか。
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※写真は福岡・篠栗町にある山王寺です。

 

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大手損保の4-6月期決算

7日の日経新聞に「損保大手、災害多発に備え」「危険準備金8%増」とあったので、決算データを確認してみました
(ちなみに危険準備金と異常危険準備金は別物なので、「異常」を省略したらダメですね)。
異常気象への備えということなので火災保険の異常危険準備金を確認したところ、繰入・取崩をネットした積増額は以下のとおりでした。

 東京海上日動 35億円( 75億円)
 三井住友海上 44億円(▲81億円)
 あいおいND ▲1億円(▲48億円)
 損保ジャパン 36億円( 88億円)
 
 *( )は前年同期の積増額

各社が総じて異常危険準備金を繰り入れたのは確かです。ただ、数字の大きさからみて、異常気象への備えを急いでいるという感じではなさそうですね。記者さんがどうしてここに注目したのか、ちょっとよくわかりませんでした。
そもそもリスクに備えた支払余力という観点からすると、何も異常危険準備金ではなくてもかまいません。各社が公表するESR(経済価値ベースのソルベンシー比率)には多少の余裕がありそうなので(推測を含む)、積み増しを急ぐ理由はないのかもしれません。

国内損保事業で言えば、注目は火災保険の収入保険料が伸びていることでしょうか。
元受正味保険料の前年同期比はご覧のとおりです。

 東京海上日動 +10.0%(+5.4%)
 三井住友海上 +5.6%(+4.6%)
 あいおいND +6.7%(+5.9%)
 損保ジャパン +8.8%(+3.1%)

 *( )は2020年4-6月期の伸び率

料率引き上げ効果が大きいのか、あるいは、コロナ禍でも契約を伸ばしているのか、今ある情報だけでは何とも言えないので、引き続きよく観察したいと思います。特にコマーシャル分野がどうなっているのか知りたいところです。

注目の(?)自動車保険の損害率は以下のとおりでした。昨年度の異常値から戻るのは予想どおりとはいえ、一昨年度に比べるとかなりの低水準です。料率引き上げ効果のほか、コロナの影響が続いているのかもしれません。

 東京海上日動 56.5% ⇒ 46.2% ⇒ 52.3%
 MSAD合算 54.8% ⇒ 47.1% ⇒ 50.7%
 損保ジャパン 63.1% ⇒ 48.1% ⇒ 53.9%

 *2019年度⇒2020年度⇒2021年度
 *E/Iベース

※長崎はトラムが走る町です。もうすぐ新幹線も走ります。

 

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法人税のいびつな構造

今回のブログはインシュアランス生保版(2021年8月号第1集)に執筆したコラムのご紹介です(見出しはブログのオリジナルです)。
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国の税収が過去最高を更新

財務省によると、2020年度の国の税収総額が前の年度を4%上回り、過去最高を更新した。コロナショックの影響で名目GDPが4%も減ったにもかかわらず、法人税は増え、19年10月の税率引き上げ効果もあって消費税も増えた。もっとも、一般会計の歳出はコロナ対応もあって税収の2倍に膨れ上がっていて、増収効果は霞んでしまっている。

名目GDPが減っても法人税が増えたのは、「携帯電話やゲーム、自動車、食品といった産業の業績が好調」「米国や中国などの景気回復の恩恵もあり、製造業を中心に業績は底堅い」(いずれも日本経済新聞より引用)とのこと。08年のリーマンショック後には法人税が大きく落ち込んだのとは対照的である。新型コロナの影響で観光業や飲食業を中心に売り上げが大きく落ち込み、各種の中小企業支援策が実行されている状況なのに、「業績が底堅い」とはどういうことなのか。
推測を含むが、今回のコロナショックで影響を受けた中小企業は、もともと法人税をあまり納めていなかったので、税収への影響が小さかったと考えると、納得がいく。

誰が法人税を納めているか

最近公表された国税庁による令和元年度分の会社標本調査によると、利益計上法人は全体(274万社)の38%にすぎず、6割以上が欠損法人である。しかも、当年度の法人税11兆円のうち、会社数では0.6%にすぎない資本金1億円超の法人が約5割を負担し、資本金5千万円超(会社数では2.5%)まで広げると約6割を負担している。つまり、法人税の多くを負担しているのは少数の大企業であり、中小企業は法人税をあまり納めていないという実態が浮かび上がる。

このところ欠損法人の割合は年々下がっている。12年度には70%だったものが、19年度は61%となった。ただし、この間の変化は景気回復による業績の改善を示しているというよりは、高齢化に伴う廃業のほか、国税庁の尽力により、節税対策が年々難しくなってきたことも大きいように思う。経営者の皆さんにも心当たりがあるかもしれない。それでも6割の企業が法人税を納めていないというのはまともな状態ではない。

適切な支援のあり方は

こうした法人税のいびつな構造を踏まえると、政府が税収を増やすには中小企業への補助金的な支援ではなく大企業の生産性向上を支援し、かつ、消費税を支払う消費者を支援するのが合理的という結論になる。おそらく財務省はそんなことはわかっているのだろうけど、政治からの要請もあり、何かあると「中小企業支援」となってしまうのだろう。
見込みを上回った税収も、経済対策として多くが中小企業向けに使われてしまいかねない(国債の償還財源となる分を除く)。給与天引きによって確実に税金を徴収される勤め人のひがみに聞こえるかもしれないが、実際に誰が税金を納めているかを明確に示し、そのうえで税金の使い道を議論してほしい。
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※写真はハウステンボスの夜景です

 

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長崎の鐘

娘の「リベンジ修学旅行」に付き合って、2年ぶりに長崎に行ってきました。
熊本地震で高校の修学旅行が中止となったリベンジをしたいとのことで、プランニングを委ねられたので、初日は中華街からオランダ坂、グラバー園をめぐって異国情緒を堪能し、2日目は原爆の爆心地だった浦上地区を訪ね(午後はカステラめぐり)、3日目は娘の希望でハウステンボスまで足を伸ばしました。

2020年のNHK連続テレビ小説「エール」にも登場した長崎の鐘。浦上天主堂のアンジェラスの鐘は原爆で吹き飛ばされましたが、2つのうち1つは瓦礫の中から見つかり、今も1日に3回鳴っています。
原爆資料館で熱線、爆風、放射線による被害の甚大さを学び、夏空の爆心地で2人で空を見上げたあと、正午に鳴った浦上天主堂の鐘の音はきっと心に響いたのではないかと思います。

被災した浦上天主堂はしばらく廃墟が残っていたそうです。原爆の記憶として残したいという要望が強かったものの、最終的には廃墟を撤去したうえで、今の天主堂が1959年に再建されました。
2018年に長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産がユネスコ世界遺産に登録された際、浦上天主堂は登録されませんでした。建物自体に歴史的価値はないのかもしれませんが、浦上天主堂はキリシタンの歴史を知るうえで重要なだけでなく、「なぐさめ はげまし 長崎のああ 長崎の鐘が鳴る」(長崎の鐘より)の舞台です。世界遺産とはいったい何なのか、考えてしまいます。

 

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なぜ「他社の経営経験」なのか

7月16日(金)に日本代協 阪神ブロックWebセミナーで講師を務めました。
演題は「2020年度決算にみる大手損保グループの経営戦略」で、大手損保グループの経営が依然として市場環境の変動によって大きく振れることや、損保4社の各種指標の違いなどをご覧いただいたうえで、中期経営計画の注目点をお話ししました。いかがでしたでしょうか。

阪神ブロックといってもzoomを使ったセミナーだったので、私は福岡でスピーチを行いましたし、おそらく参加者の皆さんも各地に広がっていたのではないかと思います。懇親の場がなく、参加者の反応がわからないのは残念ですが、便利な時代になりました。

社外取締役の要件

最近、授業でコーポレートガバナンスの話をしていて、改めて気になったことがあります。
現在のコーポレートガバナンス・コードの補充原則4-11①の最後に、「独立社外取締役には、他社での経営経験を有する者を含めるべきである」とあるのをご存じでしょうか。2021年6月の改訂時に加わった文言です。
CGコード(修正履歴付きPDF)

改訂について議論したフォローアップ会議の資料によると、「独立社外取締役には、企業が経営環境の変化を見通し、経営戦略に反映させる上で、より重要な役割を果たすことが求められるため、他社での経営経験を有する者を含めることが肝要」なのだそうです。
しかし、そもそも日本のコーポレートガバナンス改革は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指すものであり、その背景には日本企業の経営陣が適切なリスクテイクをせず、株主に求められる資本コストを上回るリターンを総じて稼げておらず、世界に差をつけられてしまっていることがあります。それなのに「他社の経営経験を有する者を含めるのが肝要」とはどういうことでしょうか。
他社の経営経験者となると、多くの場合、日本企業の社長OBなどが候補になることを想定しているのでしょう(CEO等の経験者に限られるという趣旨ではないとはありますけど…)。しかし、過去30年間の日本の経営が総じてうまくいかなかったから、政府がガバナンス改革を進めているのですよね。どうしてこのような改訂になったのでしょうか。

なお、ガバナンス特集を組んだ週刊東洋経済(2021年7月10日号)のインタビュー記事で、東レの日覺社長は「(企業によって事業や状況は全く異なるので)よその経営経験者に社外取をお願いして経営方針を相談し、「いい意見をもらった」と喜ぶトップがいるのならば、そのトップはすごくレベルが低いから今すぐ辞めたほうがいい」と語っていました。
日覺社長は「会社の大事なことは社外の人間ではなく、事業をよく理解している社内の人間で話し合って決めるべきだ」とも語っていて、私の問題意識とはやや異なるようですが、社外取締役に何を期待するのかを考えると「他社の経営経験を有する者を含めるのが肝要」という結論にならない点は同じでした。

※15分の船旅を楽しみました。

 

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火災保険の元受保険料と出再保険料

今週のInswatch Vol.1093(2021.7.12)では火災保険の出再保険料について書きました。ご参考までにブログでもご紹介します。
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幸いにも大学の集団接種枠を活用できたので、さっそく1回目のワクチン接種(モデルナ)をしたところ、夜になって微熱が出たり、体がだるくなったりしました。微熱はすぐに下がり、体のだるさも翌朝にはなくなりましたが、接種した左腕の筋肉痛は終日続きました。
接種会場で医師から、「2回目の後は症状が出ることが多いので、予定を入れないほうがいいですよ」と言われました。しかし、1回目でもこうした反応が出ることもありますので、ご参考にしてください。

火災保険の収益改善が進むか

6月25日のinswatchプロフェッショナルレポートでは、大手損保グループの20年度決算について、独自の視点でご紹介しました。そこでは触れなかったのですが、このところ大手損保では、総じて火災保険の元受保険料の伸びを上回るペースで出再保険料が増える傾向が見られます。20年度の各社の元受保険料に占める出再保険料の割合は次のとおりです。

東京海上日動 39.7%(前期比+0.6ポイント)
三井住友海上 43.6%(前期比△2.8ポイント)
あいおいND 42.5%(前期比+1.3ポイント)
損保ジャパン 42.8%(前期比+0.5ポイント)

この背景には、日本の自然災害発生だけでなく、数年前から世界の再保険市場が料率上昇トレンド(いわゆるハードマーケット)になっていることが挙げられます。ハードマーケットで日本の保険会社が前年度と同じ再保険カバーを購入するには、前年度よりも高い再保険料を支払う必要があります。それが嫌だったら再保険カバーを縮小し、自らリスクを引き受ける部分を増やすしかありません。開示情報からは各社の対応状況を正確につかむことはできませんが、出再を抑えた会社もあるように見えます。
世界的には、ハードマーケットは損害保険会社の収益改善が進む経営環境と見られています。原油価格が上がればガソリン代が上がるのと同じように、再保険市場がハード化すれば元受の保険料率も上がるのは本来の市場の姿です。ところが日本では保険料は公共料金のような扱いを受けたり、企業との長期的な関係を意識したりするあまり、価格転嫁が難しい状況が続いてきました。各社とも火災保険の収益が低迷しているのは大規模な自然災害の発生というだけではなく、リスクに見合った保険料を得られていないためと考えられます。
ERM経営を標榜する各社がリスクに応じたプライシングをどこまで追求できるのか、今年度以降の火災保険の収益に注目しましょう。

元受保険料の多くを出再する会社もある

ところで、外資系の損害保険会社では、元受保険料に比べて正味収入保険料が極端に小さい会社がしばしば見られます。例えば、AIG損保の火災保険の正味収入保険料は19年度も20年度も元受保険料の約17%、チャブ損保も約19%です(19年度)。アリアンツやチューリッヒのように火災保険の元受保険料の大半を出再しているところもあります。
これらの会社は多くの場合、同じグループ内の保険会社に出再し、グループ全体で再保険管理を行っていると考えられます。グローバル保険グループとしての引き受け規律を求めるため、国内勢に比べ、総じて市場原理をより意識した引き受けとなる傾向が強いようです。ただし、これだけ出再割合が大きいと、もし何かの理由でグループからの規律が緩んだ場合、日本の会社としての引き受け規律が働くのかと、少し心配になります。
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※梅雨明けしました。キャンパスも暑いです。

 

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