営業職員チャネルによる生命保険の販売シェアが5割前後まで下がっているにもかかわらず、営業職員以外の保険流通に関する公表データは限られています。業界紙の皆さん、ぜひ保険流通の全体像がわかるような報道をお願いします(データ付きで)。
いくつかの大手保険代理店が株式を公開し、業績動向を含めた経営情報を投資家・アナリスト向けに公表しているので、最近の数字などを確認してみました。
アドバンスクリエイト(2002年上場)
日本最大級の保険比較サイト「保険市場(ほけんいちば)」を運営し、コンサルティングプラザ「保険市場」での対面販売や提携代理店による協業販売、非対面チャネルによる販売などを行っています。かつてのような保険ショップで集客する事業ではなく、サイトで集客し、対面・非対面チャネルにつなげるビジネスモデルを確立しています。
同社の売上高の8割以上は保険代理店事業です。2020年4-6月期の売上高は前年より17.5%減りましたが、その後は売り上げが回復しています。3月からオンライン面談を導入したことのほか、サイトで集客するビジネスモデルがコロナ禍でプラスに効いていると考えられます。
NFCホールディングス(2014年上場)
ニュートン・フィナンシャル・コンサルティングとして創業し、日本最大級の保険コールセンターを持つ代理店のほか、買収により来店型保険ショップの保険見直し本舗、損保販売を中心とするE保険プランニングなどを擁する大型保険流通グループ。親会社は光通信です。
売上高の7割が保険サービス事業となっていて、2020年4-6月期も前年並みに売上高を確保しました(7-9月期、10-12月期は増加)。これは、2020年1月にE保険プランニングを子会社化したことが寄与しているとみられ、保険見直し本舗の新契約年換算保険料はこの時期大きく落ち込みました(10-12月期は前年並みに回復)。もっとも、経営者向け保険の税制見直しや外貨建て保険の予定利率の引き下げなど、コロナ禍以外の影響も大きいようで、業績トレンドをつかむのが難しいです。
アイリックコーポレーション(2018年上場)
来店型の保険ショップ「保険クリニック」を運営するほか、自社で開発した保険分析・検索システム「保険IQシステム」に強みを持つグループです。
売上高に占める保険販売事業は6割程度で、2020年4-6月期(前期比3.7%減)よりも1-3月期(同23.1%減)のほうが目立ちますが、NFCと同じく、経営者向け保険の税制改正や外貨建て保険の予定利率引き下げも影響しているようです(7-9月期、10-12月期の売上高はおおむね前年並み)。
このところ保険販売事業以外の売上高が拡大していて、システム販売やFC店舗の増加などが貢献しているとみられます。
いかがでしょうか。各社の売上高がコロナ禍でも総じて堅調に見えるのは、売上高の多くを占める手数料収入には、契約時に受け取る初回手数料のほか、次年度以降手数料などがあるからかもしれません。とはいえ、各社の開示情報をざっと見たかぎりでは、それぞれが独自のビジネスモデルを確立していることも大きいのではないかと思いました(ここから保険流通全体を語るのはちょっと厳しいかもしれませんが…)。
※いつものように個人的なコメントということでお願いします。
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