九州大学の山口裕幸先生の書籍『組織と職場の社会心理学』を読みました。
連載コラムを書籍化したもので、社会心理学の実証研究で明らかにされてきた事柄が数多く紹介されています
(前回のInswatchで取り上げた二重の思考システムの話も出てきます)。
例えば、第16章の「説得的コミュニケーション」では、相手の気持ちを動かす効果的な方法について、社会心理学の研究知見をいくつか紹介しています。
「フット・イン・ザ・ドア」手法:最初は相手が容易に無理なく受け入れられる依頼を行い、それが受け入れられたら、次の本来考えていた依頼を行う手法
「ドア・イン・ザ・フェイス」手法:最初に相手が拒否するに違いないほどの大きな要請を行って、まず相手に拒否させておいて、第二段階で、受け入れやすいようなほどほどの大きな要請を行う方法
「ロー・ボール・テクニック」:相手にとって魅力的な受け入れやすい条件を提示して、応諾を引き出したのち、後からその魅力的な条件を取り去るという方法
「ザッツ・ノット・オール法」:時間帯を区切って、通常の値段よりも値引きする方法
「不安・安堵法」:自分が何か避難されるようなことをしでかしたのかと不安を感じさせて、実はそれは思い過ごしであったと判明し、安堵させた直後に要請を行う方法
いずれも、一定の好条件が整ったときでなければ、十分な効果は引き出せないことがわかってきているそうです。ただ、研究が進むほど悪用もされやすくなるという面はありそうですね。
私が最も興味深く読んだのは、第21章「会議は何をもたらすのか」と第22章「会議の落とし穴」です。
・話し合えば的確な決定を導けるのか
・話し合いは創造的アイディアを生み出すか
・話し合いは相違を反映するか
・「裸の王様」現象による決定の歪み
・話し合えば情報共有できるという幻想の罠
これだけ見ても何となくわかると思いますが、例えば「ブレイン・ストーミングを取り入れれば、創造的なアイディアが生み出されるという安易な期待はもたないようにすることが大切」「話し合いの結論は手順一つでコントロールすることが可能」だなんて、ちょっとショックかもしれません。
確認したところ、本書のもとになったコラムは現在も連載中でした。月1の更新でしょうか。
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※吉野家とゴーゴーカレー、奇跡のコラボだそうです。学食(カフェテリア)にて。