生保の資産運用方針シリーズの仕上げとして、4月に報じられた大手各社の運用計画と、先週公表された4-9月期決算を比べてみましょう。
【日本生命】
「円債のほか、通貨スワップで円金利化した外国社債を含む『国内債券等』を積み増す方針を示した。また海外金利上昇とヘッジコスト低下を受け、為替リスクを取らないヘッジ付き外債を増やす一方、オープン外債の残高は減少させる」(2021年4月23日ロイター)
⇒
10年超の国債が増え、オープン外債の残高も減っていました。ただ、「通貨スワップで円金利化した外国社債」「為替リスクを取らないヘッジ付き外債」はどちらもヘッジポジションに含まれてしまうので、決算資料からはわかりません。
【第一生命】
「25年に予定される経済価値ベースでの新たな資本規制導入に向けて金利と株式のリスク削減を進める一環として、円債の残高を積み増す一方、国内株式は減少させる方針を示した。一方、収益力強化とリスク分散の観点からオルタナティブ投資を強化する」(2021年4月22日ロイター)
⇒
決算資料では10年超の国債が増え、国内株式の減少も確認できました。オルタナティブ投資は外国籍なら「外国株式等」でしょうか。6月末にはかなり増やしたようですが、その後は一転して減少しています。
【住友生命】
「為替リスクをとらないヘッジ付き外債を1000億円単位で減少させる一方、オープン外債は利回りがとれる国を中心に1000億円単位で増加させる。一方、国内債券は金利リスク削減のため、超長期債をメインに数千億円規模で残高を積み増す方針」(2021年4月22日朝日新聞(元はロイター))
⇒
為替ヘッジのポジションが1000億円程度減り、為替ヘッジなしが約3000億円増えています。他方で10年超の国債は減少、10年超の外国公社債も大きく減っていて、決算資料からは金利リスクの削減が進んだようには見えませんでした。EVレポートの開示がなくなってしまったようなので、こちらで金利感応度を確認することもできません。
【明治安田生命】
「国内金利が上昇する局面で超長期債中心に積極的に積み増す方針を継続する。円建て債には新規財源3兆9000億円の約4割を配分する。為替ヘッジ付き外債は償還が多くネットでは減少。オープン外債は円高時に投資を検討する。海外株を増加させる一方、国内株はやや減少させる計画だ」(2021年4月23日ロイター)
⇒
運用計画の通り、10年超の国債が増えています。円高ではなかったものの、為替ヘッジのないポジションが増えています。外国株式等が増え、国内株式はやや減少となっていますが、「外国株式等」はオルタナティブ投資も含まれているため、株式が増えたかどうかはわかりません。
いかがでしたでしょうか。現在の開示状況では曇りガラス越しに見ているようなもどかしさがありますね。