教員としての気付き

インシュアランス生保版(2022年2月号第3集)に執筆したコラムです。
1か所訂正があります。原文では「学習指導要領の改訂で4月から中学・高校の金融経済教育が拡充される」となっていましたが、中学校はすでに2021年度から施行されていて、この4月から施行となるのは高校だけでした。お詫びして訂正いたします。
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福岡で専任の大学教員になって2年近くになる。私の教員生活はコロナ禍とともに始まり、今もコロナとの共存を余儀なくされている。それでもこの間、様々な発見があった。

まずは最近実施した定期試験について。選抜を目的とした入学試験とは違い、単位を付与するための試験は、こちらが必要と考える水準に学生が到達しているかの確認が重要である。私なりに試した結果、最も適切な出題方法は、意外にも「穴埋め問題」で、しかも、文章中の空欄に入れる候補となる用語をいくつも示している形式だというのが現時点での感触である。
私が講義で最も伝えたかった内容をきちんと理解している学生であれば、満点かそれに近い得点を取る一方、たとえ毎回講義に参加していても理解が十分ではないと思われる学生(小テストで確認)は、総じて高得点にはならなかった。用語を暗記していたとしても、用語を「知っている」と「理解している」とでは次元が違う。正誤を問う問題であれば対処できても(正誤問題は適当に選んで当たる可能性も高い)、候補となる用語の多い穴埋めは、内容を理解していないと正しく埋まらない。「記述式のほうが試験として優れている」「穴埋め問題は教員の手抜き」ということではなく、要は目的に応じた出題を心掛けるということに尽きるのだろう(穴埋めだとコピペの心配もない)。
もっとも、用語が示してあると解答する側が易しく感じるのか、多くの学生がすぐに解き終えてしまい、時間を持て余していたようだった。次回は何か工夫するとしよう。

学生の反応からも気付きがあった。担当するリスクマネジメント論の講義の中で、企業が取るべきリスクを取らないことは、リスクマネジメントの失敗であるという話をしたところ、反響が大きく、「印象に残った」「リスクを取らないとリターンを得られないというのに納得した」「リスクを避けることがリスクマネジメントではないのですね」といった感想が数多く寄せられた。
社会人経験のない学生にとって、そもそも企業活動をイメージするのが難しい。多くの学生は、「リスクとリターンは表裏一体の関係」「保険などを活用しながら避けたいリスクを避け、取りたいリスクを取るのが経営者の仕事」といったことを学ぶ機会がないまま、社会に出ていく。その結果、リスクという用語が危険や損失としてのみ使われ、社会にはゼロリスクを求める空気が蔓延し、企業も慎重になって稼ぐ力は一向に高まらない、とまで言ってしまうのは飛躍しすぎだろうか。
学習指導要領の改訂で4月から高校の金融経済教育が拡充される。個人としての金融リテラシーを高めるための教育ではあるが、単に金融商品の知識を得るだけにとどまらず、リスクとリターンの考え方など金融の基本的な考え方が普及し、徐々に現状が変わっていくことに期待したい。
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※写真は若松(北九州市)です。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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