前回のブログ(Inswatch掲載記事の紹介)では、「(大手生保の)営業職員チャネルによる個人向け販売はまだコロナ前には戻っておらず、ざっくり言って8割程度と見るのが妥当かと思います」と書きました。
コロナ禍による落ち込みからの回復度合いとしてはこれでいいのだと思いますが、時系列で見ると、2017年度あたりから新契約年換算保険料(ANP)は減少傾向にあります。つまり、新契約ANPの減少傾向はコロナ以前からの動きでして、4-9月期で減少傾向に歯止めがかかったかどうかは微妙なところです。
この背景には、前回触れた「経営者(法人)向け保険」の影響のほか、日銀のマイナス金利政策と長期金利の低下を受けて、予定利率が下がった影響も大きいと考えられます(2017年4月に一時払い保険以外の標準利率が1%から0.25%に下がりました)。
予定利率の引き下げで貯蓄性のある商品の販売が難しくなり、税制見直しで経営者向け保険の販売がダメージを受け、第三分野に注力することで新契約価値を確保しようとしてきたのが、ここ数年の大手生保の姿だと言えそうです(ただし、この4-9月期に2019年度の第三分野ANPを上回ったのは4社のうち明治安田のみ)。とりわけ新人層にとって、ドアノック商品がなくなり、コロナで顧客訪問もままならないというのは厳しい環境でしょう。
保険料明細表の廃止
ところで、保険分析業界(?)で愛用されているインシュアランス生命保険統計号に、令和元年版から「払込方法別収入保険料明細表」の掲載がなくなったことに(今さらですが)気が付きました。金融庁に提出する様式のうち「保険料明細表」が廃止されたためだそうです。
この統計には「初年度保険料」と「次年度以降保険料」の区分や、初年度保険料に占める「一時払」「年払」「月払」といったデータが示されていて、タイムラグを考慮する必要がある(未経過保険料も計上されるため)とはいえ、貯蓄性保険や経営者向け保険の販売動向などを知る貴重な手掛かりでした。
おそらく各社ディスクロージャー誌の「保険料明細表」と、生命保険協会の「生命保険事業概況(CD版)」があれば、引き続き個社データを取ることはできそうです。ただ、金融庁が様式を廃止したというのが気になります。他の統計と重複しているのであれば廃止は妥当ですが、果たしてそうなのでしょうか。
※小倉駅のモノレールです。駅ビルに入っていく姿はどこか「近未来」を感じさせます。
※いつものように個人的なコメントということでお願いします。
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