話題となっていた書籍「エンベディッド・ファイナンス」をようやく読みました。
日本語では「組込型金融」と言ったらいいのでしょうか。非金融企業が既存サービスに金融サービスを組み込んで提供することを指し、本書によると、フィンテックの潮流としては、「フィンテック企業の登場と金融機能のアンバンドル化」「オープンAPIによる銀行とフィンテック企業との協業実現」に続く第3の波に位置付けられるとのことです。
読んでいて気が付いたのは、エンベディッド・インシュアランス(組込型保険)の事例として紹介されているのは損保分野ばかりということです。モバイル端末の補償保険、ANAのキャンセル保険、テスラの自動車保険、マイクロソフトのサイバー保険などなど。
決済、融資、バンキング(口座提供や資金移動など)、保険、投資の5分野のうち、エンベディッド・ペイメント(決済)が最も先行しているのは、物を買うと代金の支払いが必ず伴い、組み込んでシームレスになることで利便性が高まったと消費者に実感してもらいやすいからだと理解しました。とはいえ、本書で紹介されていないだけで、事業会社が提供する商品・サービスの一環として生命保険や医療保険が組み込まれていて、消費者が自然な流れで加入するという事例はすでにありそうですし、今後増えていくのではないかと思います。
損保分野がエンベディッド・インシュアランスとの相性がよさそうなのは、損害保険は何かの商品・サービスを購入したり、利用したりするのと同時に加入することが多いからかもしれません。つまり、シームレスの程度はともかく、加入シーンとしてはもともとエンベディッドされているのですね。
大手損保の販売チャネルを見ても、保険専業の代理店による販売は全体の3割弱で、自動車ディーラーや整備工場、不動産業、金融機関、旅行業といった兼業チャネルが比較的大きなシェアを占めているようです。ですので、技術面の進展次第でエンベディッド・インシュアランスの流れが加速する可能性は高そうですし、あとは保険会社の戦略次第なのでしょう(卸売業者として黒子に徹する、自らがプラットフォーマーとなる、はたまた、時計の針を止める努力をする、などでしょうか)。
このあたりは専門家の話をうかがいたいところです。
※写真は大学近くの梅林(うめばやし)の梅です。