損保代理店数の減少

日本損害保険協会によると、2010年度の代理店実在数が
20.2万店まで減ったことがわかりました(7月28日公表)。
12年連続の減少だそうです。

他方、損害保険の募集従事者数は増え続けています。
2010年度は217.3万人でした。
損保協会のHPへ

この統計で興味深かったのはチャネル別のデータです。
代理店数のうち約5割を占めるのは自動車関連業
(自動車販売業、自動車整備工場)で、
1店当り5.9人が損保に従事しています。

これに対し、募集従事者数で最大勢力は金融業で、
全体の3割、65.9万人を占めています。
このうち銀行等(銀行、信金、信組、農協)は47.5万人、
1店当り従事者数は403.9人となります。

同じ「損保代理店」でもずいぶん違いますね。

保険専業の代理店数は3.3万店、従事者数は32.7万人でした。
1店当りの従事者数は9.6人となります。
2008年度の代理店数は3.6万店、従事者数は20.2万人、
1店当り5.5人だったので、かなりの変化です。
特に従事者数の増加が目立ちます。

単に零細代理店が減り、大型化が進んだというだけではなく、
委託型の拡大や保険会社からの社員派遣などが
影響しているのかもしれません。

※明治大学で開かれている国際保険学会
 「APRIA2011」に出席しました(初日のみ)。

 

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当期利益(剰余)の推移

 

生損保のディスクロージャー資料が出そろいつつあります。
いわゆる「○○生命の現状」という冊子です。

「直近5事業年度における主要な業務の状況を示す指標」
で大手生保の当期純剰余(株式会社は当期純利益)
の推移を追うと、4社合計で毎年1000億円前後の変動しかなく、
非常に安定した業界のように見えます

・2007/3 から 2011/3 にかけての当期純剰余の推移
 (大手生保4社合計。第一生命の契約者配当準備金繰入を加味)

  7965 → 6690 → 5407 → 6574 → 5773 (億円)

この5年間の生保の経営環境は安定していたでしょうか?
例えば、日経平均株価は17000円から8100円に下がり、
その後11000円に戻った後、直近は9700円でした。

このような株価変動を受けて、4社の保有株式の時価は
▲6.5兆円 → ▲6.5兆円 → +2.5兆円 → ▲2.0兆円
となっています。

株式を保有していれば、株価変動の影響が業績に表れるのは
当然の話です。
それでも当期純剰余(純利益)が安定して推移しているのは、
株価変動の影響がごく一部しか表れていないのと、
各種準備金の取り崩しや売却益の計上などがあったためです。

他方、日本生命を除く3社はEV(エンベディッド・バリュー)を
公表しています。2011/3のEVの前期差は次の通りでした。

 第一 ▲3960億円 (当期純利益は▲579億円)
 住友 ほぼ横ばい (当期純剰余は+17億円)
 明安 ▲1710億円 (同▲37億円)

EVは前提により結果が大きく振れる(=だから使えない)
という声をしばしば耳にしますし、確かに注意が必要です。

しかし、結果が大きく動かない当期純剰余(純利益)が
もっと使えない指標であることは、明らかではないでしょうか。

※「サン宝石」ってご存じですか?
 通販がメインですが、ららぽーと横浜にショップがあります。

 

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保険流通業の販売データ

 

先週から今週にかけて、内部の研修で講師を務める一方、
外部講師の話を聞く機会が何度かありました。
人の話を聞くと、知識を吸収できるというだけではなく、
自分の考えを整理することができたりもしますね。

ある講師のかたの話を聞いていて、ふと気がつきました。
保険会社の販売データはあっても、保険流通業の販売データは
意外にないのですね。特に生保がそうです。

「A生保で○○億円、B生保で△△億円・・・」
という保険会社ごとの販売情報はある程度公表されていても、
「A代理店で●●億円、B代理店で▲▲億円・・・」
という販売会社ごとの情報はどうも少ないように思います。

営業職員が生保販売の大半を占める時代であれば、
おそらくこれで特に問題はなかったのでしょう。

しかし、これだけ保険ショップや金融機関の存在感が高まると、
大手生保(営業職員チャネル)の販売動向を見ているだけでは、
保険流通の全体像をつかむことはできません。

特に保険ショップや比較サイトのようなニューチャネルは、
以前も書きましたが、「除く大手生保」の世界なのですね。

業界紙あたりで保険流通の販売統計(大手販社は会社ごと)を
出してくれると便利なのですが。

 

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経済ジャーナリスト座談会

久しぶりに風邪でダウンしてしまいました。
夏風邪はしんどいですね。皆さんもご自愛下さい。

フジサンケイビジネスアイが19日、20日にわたり
経済ジャーナリストによる緊急大型座談会を掲載しています。
テーマは「『失われた30年』に突入しないために」です。
座談会(1) 座談会(2) 座談会(3) 座談会(4)

分量が多いので見出しだけ拾ってみましょう。

「震災契機に価値観見直しを」「円高対策が急務」
「戦略ミスの言い訳」「政治・官僚・財界に距離間」
「国際競争に勝てる技術必要」「世界にもまれな愚策」
「特区に自由さ必要」「世界から英知集める仕組みを」
(以上が19日)

「株価上げて経済を活性化」「銀行が機能喪失」
「東電問題 3つの論点」「原発政策 国民に選択肢提示を」
「改革のエンジンに再び火を」「戦う姿勢必要」
「技術の統合力欠く」「ジャーナリズムが市場磨く」
(以上が20日)

最後の「経済ジャーナリズムへの苦言、提言」で
磯山友幸氏が、

「経済ジャーナリズムの仕事は、ある企業の価値を
 正しくマーケットに示して、マーケットを磨くということ」

とおっしゃっていて、共感を覚えました。

巷に溢れる情報は発表ものか広告含みばかりですものね。
発表ものは通信社に任せて、少なくとも経済紙の記者は
調査・分析報道のようなものに力を入れてほしいです。

それには1、2年のローテーション人事では難しいでしょうし、
何より経営がそのような戦略を打ち出すことが重要です。

よく見ると、座談会メンバー6人のうち、5人が日経出身でした。

※写真の人形は「ミズキー」と言います。
 地元・港北区のキャラクターなのだそうです。→ ミズキーのおへや
 「浜梨物語」のところに座っているので、
 お菓子のキャラクターだと思っていました。

 

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ライフステージは忘れろ

週刊金曜日という雑誌を読んでいたら、
メディカル保険サービス取締役の後田亨さんによる
「損しないための生命保険講座」という記事がありました。

後田さんは乗合代理店として保険のコンサルティングを
行っているかただそうです。
後田さんの公式サイトがありました

記事のなかに、次のようなくだりがあります。

「そもそも、保険という金融商品が、そんなにいくつもの
 目的にかなうものではないことに気づいたのです」

「保険での対応がふさわしいリスクを考える際、
 次の三点を意識したらいいはずです。
 ①めったに起きないこと
 ②起こったら大変な経済的打撃を受けること
 ③いつ起こるかわからないこと 」

実は私が職場や大学で保険について話す機会があると
(特に需要サイドから見た保険の話をする場合です)、
図を描いたりして、しばしば同じような話をしてきました。

ただ、保険を販売する立場のかたによる記事だったので、
非常に新鮮に感じました。
「『ライフステージ』は忘れてもいいのではないか?」
とまで述べているのですから。

もちろん、「めったに起きない」「経済的打撃」について
どこまでをそう捉えるかはケースによって違うでしょうし、
それをどんな手段でどうカバーすべきかも様々でしょう。
また、安心を提供するというメンタル面も無視できません。

しかし、商品主導、売り手主導になりがちななかで、
このような考え方を普及させることは、結局のところ、
買い手だけではなく、売り手にとっても有益なのだと思います。

※酷暑のため、この日(15日)の最大使用電力は
 この夏最大の4640万KWに達したそうです。
 まだ7月半ばなのですが...

 

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欧州のストレステスト

 

近ごろ話題の「ストレステスト」といえば、
首相の指示で実施が決まった原発の耐性試験のことですが、
欧州の銀行を対象にしたストレステストも注目を集めています。

欧州銀行監督機構(EBA)は現地時間の15日に
テストの結果を公表する予定となっています。
欧州の91の銀行が対象で、不合格となった銀行は
資本増強を求められることになると言われています。

ところで、ご存じのかたも多いとは思いますが、
同じ欧州で保険会社を対象にしたストレステストが行われ、
4日に結果が公表されています。
EIOPA(欧州保険年金監督機構)のHPへ

欧州銀行のストレステストとは違い、ソルベンシーⅡ、
つまり、これから導入される規制をベースにしたテストで、
足元で資本不足かどうかを判定するためのものではありません。

発表によると、テストには221の保険グループ・会社
(グループを1社とすると129社で、市場の約6割をカバー)
が参加し、最も厳しいシナリオでは13社がMCR
(ソルベンシーⅡの最低所要資本)を維持できない
という結果になりました。

ただし、より注目されている所要資本であるSCRについては
記載が見当たらず、足元で最も懸念されているソブリン問題は、
Sovereign Stress Scenarioとして別途テストを行っています
(6社がMCRを維持できないという結果でした)。

このような、当局等がシナリオを決め、業界全体で行う
ストレステストについては、別の機会にでも、
もっと考えてみたいと思います。

 

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全体最適の保険ALM

前回に続き、長年の知り合いの本のご紹介を。

キャピタスコンサルティングの森本祐司さんたちが
「【全体最適】の保険ALM」という本をきんざいから出しました。
特別寄稿として私も5ページだけ書いています。

ALMといえば資産と負債の総合管理のことですが、
本書では「資産・負債の経済価値およびその変動」を
重視すると明確に定義しています。
本書のALMの目的は企業価値を安定的に向上させることです。

また、タイトルにある「全体最適」とは、何か数式を解けば
「客観的」に正解が得られるようなものではなく、
企業のリスクに対する姿勢により決まる「主観的」なもの。
いいかえれば「リスクアペタイトの設定」のことです。

つまり、ここでいうALMは限りなくERMに近いものであり、
従来のALM のイメージしか持っていない人には
発想の転換が必要かもしれません。
ぜひ理解していただければと思います。

保険会社のALM/ERMに関する本で
これだけまとまったものは、なかなか見当たらないでしょう。

ところで以前、住宅ローンの収益・リスク管理について
このブログで書いたことがあります。
住宅ローンの収益性評価

通常のローンと違い、住宅ローンは期間が長いだけではなく、
デフォルト率の経年変化や期限前返済の存在などから、
収益・リスク管理がそう簡単ではありません。

しかし、銀行における住宅ローンの存在感が
これだけ大きくなっているにもかかわらず、
銀行で住宅ローンのALMを経済価値ベースで行っている
という話をほとんど聞いたことがありません
(皆無とは言いませんが、一般的ではなさそうです)。

ということで、銀行など保険業界以外のかたも、
「銀行のリスク管理は保険会社よりも進んでいる」
というプライドや幻想を捨て、本書に目を通していただければ
きっと何か得られるものがあると思います。

 

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生保営業のたまごとひよこ

長年の知り合いである森田直子さんが初の著書
「生保営業のたまごとひよこ-成長するためのヒント-」
(保険毎日新聞社)を出しました。

保険毎日新聞社の連載記事のなかから
お勧めの42本をまとめたものだそうです。

この本のテーマは、あくまで私の理解ですが、
「営業の仕事を長く続けるにはどうしたらいいか」
です。
(森田さん、違っていたらごめんなさい^^;)
そのためのヒントが随所にちりばめられています。

読んでいて感じたのは、当たり前かもしれませんが、
「地道で基本的なことをいかに継続するか」
「急がば回れ」がいかに重要かということ。
森田さんが試行錯誤してたどり着いた結論が
これだったのですね。

特に「見直し相談」のところなどは、なるほどなあと
感心しました。

同時に、営業は科学なのだということを改めて感じました。

森田さんがこの本で惜しみなく紹介している内容は、
単なる「地道な努力」「忍耐」といった根性ものではなく、
トライ&エラーのなかから合理的な手法を追求した結果、
得られたものです。
ここをはき違えると全く違う話になってしまいます。

保険毎日新聞の連載は今も続いているようですので、
少し気が早いですが、第2弾が楽しみですね。

 

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こんな公表がありました

 

今回はいろいろ気になる公表等があったので、そのご紹介です。
それぞれコメントしたいところですが、諸般の事情によりご容赦下さい。

1・経済価値ベースのソルベンシー基準についての検討体制強化について
  (日本アクチュアリー会)
 日本アクチュアリー会のHPへ

HPによると、より専門性の高い課題を集中的に検討するために、
4つの特別課題WGを新設しています。
また、金融庁との連携による定期的な検討会である
「ソルベンシー・ジョイント・スタディ・グループ」についての記述もあります。

2.「金融検査結果事例集」の公表等について(金融庁)
 金融庁のHPへ

毎年このような事例集が公表されているようです。
本編のP113からが保険会社です。

3.委託調査に係る報告書の公表について(金融庁)
 金融庁のHPへ

保険関連では「主要国の保険制度に関する調査」があります
(すみません、まだ目を通していません)。

4.東日本大震災に係る地震保険金が総額1兆円超に
  (日本損害保険協会)
 損保協会のHPへ

6/21についに1兆円に達しました。
阪神大震災では783億円であり、その後の普及率上昇を踏まえても、
あらためて今回の震災による影響がいかに大きかったのかがわかります。

5.なぜ今「ぶつからない」クルマが増えているのか(日経)
 日経新聞のHPへ

ネットで見つけた気になる特集記事です。
損害率上昇に悩む損保にとって朗報なのでしょうか。
それとも保険が要らなくなるという話なのでしょうか。

写真の列車(フランスで乗りました)も実は気になる存在でして、
パンタグラフがあるのに架線がないところを走るので変だなあと思い、
あとで調べてみたら、2007年に登場した「ハイブリッド列車」でした。
電化区間は電車、非電化区間はディーゼルカーとして走るのだそうです。

 

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自然災害リスクのモデル

 

3月23日のブログで自然災害リスク分析会社の評価モデルが
ある種の「共通言語」のような存在になっていると書きました。

このうちの1社であるRMSが最近、米国ハリケーンのモデルを
大幅に見直したことが、再保険市場に影響を与えている模様です。

6月2日のWSJによると、RMSのモデル見直しの結果、
100年に1度の確率で発生するハリケーンによる
テキサスでの予想損失が、従来の2倍になったそうです。
他の地域でも予想損失見込額の大幅増加がみられるとか。

モデルによる当初の予測が実際の結果と大きく異なることも
しばしばあるようですし、「共通言語」のようになっている
3社のモデルでも、まだまだ発展途上と言うべきなのでしょう。

ただ、マーケットで「共通言語」として使われていると、
今回のようにモデルの大幅見直しが行われた場合には、
かなり混乱が生じることは想像に難くありません。

さりとて他に頼るものもなく、モデルの限界を踏まえたうえで
再保険取引やリスク管理を行っていくしかないのでしょうね。

※写真左はミュンヘン、右はチューリヒのトラムです。

 

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