自然災害の保険カバー率

 

ミュンヘン再保険によると、東日本大震災による
経済損失は2100億ドル(約16兆円)に達するのに対し、
保険による支払額は約300億ドル、カバー率は14%だそうです
(17日の日経など)。

確かに、米国ハリケーン・カトリーナ(2005年)の約5割、
同じく米国のノースリッジ地震(1994年)の35%、
今年発生したニュージーランド地震の約5割に比べると、
日本の保険カバー率は低いと言えそうです
(ちなみに阪神大震災のカバー率は約3%です)。

もっとも、なぜか再保険会社からの言及がないのですが、
同じ自然災害でも台風による風水害のカバー率は
日本がそれほど低いわけではなさそうです。

例えば東京海上研究所の資料によると、
1991年台風19号のカバー率は5割以上、
2004年台風18号でも4割以上となっています。
東京海上研究所HPへ

かつては火災しか担保しなかった火災保険が
段階的に風水害を担保するようになり、
今や実質的に「風水害保険」となっているためでしょう。

つまり、保険カバー率が低いのは地震災害なのですね。

地震リスクのうち家計向け地震保険については
阪神大震災後に徐々に普及が進み、現在では、
火災保険加入者の約半数が地震保険に入っています。

しかし、統計がないので詳細はわかりませんが、
家計向け地震保険の金額に制限があることに加えて、
おそらく企業向けの地震保険があまり普及していないため、
地震災害の保険カバー率が海外に比べて低水準なのでしょう。

この背景には企業のリスクマネジメント意識が低かったことと、
損害保険会社が地震リスクの引き受けに慎重だったことが
あると思います。

地震リスクは低頻度・高損害かつ集積リスクなので、
保険会社がそう簡単に引き受けを増やせないのは理解できます。

ただ、保険会社の存在意義を考えると、今のリスクプロファイル
(大手損保の最大リスクは国内株式ですよね)でいいとは
とても考えられないのですが、いかがでしょうか。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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