保険流通業の販売データ

 

先週から今週にかけて、内部の研修で講師を務める一方、
外部講師の話を聞く機会が何度かありました。
人の話を聞くと、知識を吸収できるというだけではなく、
自分の考えを整理することができたりもしますね。

ある講師のかたの話を聞いていて、ふと気がつきました。
保険会社の販売データはあっても、保険流通業の販売データは
意外にないのですね。特に生保がそうです。

「A生保で○○億円、B生保で△△億円・・・」
という保険会社ごとの販売情報はある程度公表されていても、
「A代理店で●●億円、B代理店で▲▲億円・・・」
という販売会社ごとの情報はどうも少ないように思います。

営業職員が生保販売の大半を占める時代であれば、
おそらくこれで特に問題はなかったのでしょう。

しかし、これだけ保険ショップや金融機関の存在感が高まると、
大手生保(営業職員チャネル)の販売動向を見ているだけでは、
保険流通の全体像をつかむことはできません。

特に保険ショップや比較サイトのようなニューチャネルは、
以前も書きましたが、「除く大手生保」の世界なのですね。

業界紙あたりで保険流通の販売統計(大手販社は会社ごと)を
出してくれると便利なのですが。

 

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経済ジャーナリスト座談会

久しぶりに風邪でダウンしてしまいました。
夏風邪はしんどいですね。皆さんもご自愛下さい。

フジサンケイビジネスアイが19日、20日にわたり
経済ジャーナリストによる緊急大型座談会を掲載しています。
テーマは「『失われた30年』に突入しないために」です。
座談会(1) 座談会(2) 座談会(3) 座談会(4)

分量が多いので見出しだけ拾ってみましょう。

「震災契機に価値観見直しを」「円高対策が急務」
「戦略ミスの言い訳」「政治・官僚・財界に距離間」
「国際競争に勝てる技術必要」「世界にもまれな愚策」
「特区に自由さ必要」「世界から英知集める仕組みを」
(以上が19日)

「株価上げて経済を活性化」「銀行が機能喪失」
「東電問題 3つの論点」「原発政策 国民に選択肢提示を」
「改革のエンジンに再び火を」「戦う姿勢必要」
「技術の統合力欠く」「ジャーナリズムが市場磨く」
(以上が20日)

最後の「経済ジャーナリズムへの苦言、提言」で
磯山友幸氏が、

「経済ジャーナリズムの仕事は、ある企業の価値を
 正しくマーケットに示して、マーケットを磨くということ」

とおっしゃっていて、共感を覚えました。

巷に溢れる情報は発表ものか広告含みばかりですものね。
発表ものは通信社に任せて、少なくとも経済紙の記者は
調査・分析報道のようなものに力を入れてほしいです。

それには1、2年のローテーション人事では難しいでしょうし、
何より経営がそのような戦略を打ち出すことが重要です。

よく見ると、座談会メンバー6人のうち、5人が日経出身でした。

※写真の人形は「ミズキー」と言います。
 地元・港北区のキャラクターなのだそうです。→ ミズキーのおへや
 「浜梨物語」のところに座っているので、
 お菓子のキャラクターだと思っていました。

 

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ライフステージは忘れろ

週刊金曜日という雑誌を読んでいたら、
メディカル保険サービス取締役の後田亨さんによる
「損しないための生命保険講座」という記事がありました。

後田さんは乗合代理店として保険のコンサルティングを
行っているかただそうです。
後田さんの公式サイトがありました

記事のなかに、次のようなくだりがあります。

「そもそも、保険という金融商品が、そんなにいくつもの
 目的にかなうものではないことに気づいたのです」

「保険での対応がふさわしいリスクを考える際、
 次の三点を意識したらいいはずです。
 ①めったに起きないこと
 ②起こったら大変な経済的打撃を受けること
 ③いつ起こるかわからないこと 」

実は私が職場や大学で保険について話す機会があると
(特に需要サイドから見た保険の話をする場合です)、
図を描いたりして、しばしば同じような話をしてきました。

ただ、保険を販売する立場のかたによる記事だったので、
非常に新鮮に感じました。
「『ライフステージ』は忘れてもいいのではないか?」
とまで述べているのですから。

もちろん、「めったに起きない」「経済的打撃」について
どこまでをそう捉えるかはケースによって違うでしょうし、
それをどんな手段でどうカバーすべきかも様々でしょう。
また、安心を提供するというメンタル面も無視できません。

しかし、商品主導、売り手主導になりがちななかで、
このような考え方を普及させることは、結局のところ、
買い手だけではなく、売り手にとっても有益なのだと思います。

※酷暑のため、この日(15日)の最大使用電力は
 この夏最大の4640万KWに達したそうです。
 まだ7月半ばなのですが...

 

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欧州のストレステスト

 

近ごろ話題の「ストレステスト」といえば、
首相の指示で実施が決まった原発の耐性試験のことですが、
欧州の銀行を対象にしたストレステストも注目を集めています。

欧州銀行監督機構(EBA)は現地時間の15日に
テストの結果を公表する予定となっています。
欧州の91の銀行が対象で、不合格となった銀行は
資本増強を求められることになると言われています。

ところで、ご存じのかたも多いとは思いますが、
同じ欧州で保険会社を対象にしたストレステストが行われ、
4日に結果が公表されています。
EIOPA(欧州保険年金監督機構)のHPへ

欧州銀行のストレステストとは違い、ソルベンシーⅡ、
つまり、これから導入される規制をベースにしたテストで、
足元で資本不足かどうかを判定するためのものではありません。

発表によると、テストには221の保険グループ・会社
(グループを1社とすると129社で、市場の約6割をカバー)
が参加し、最も厳しいシナリオでは13社がMCR
(ソルベンシーⅡの最低所要資本)を維持できない
という結果になりました。

ただし、より注目されている所要資本であるSCRについては
記載が見当たらず、足元で最も懸念されているソブリン問題は、
Sovereign Stress Scenarioとして別途テストを行っています
(6社がMCRを維持できないという結果でした)。

このような、当局等がシナリオを決め、業界全体で行う
ストレステストについては、別の機会にでも、
もっと考えてみたいと思います。

 

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全体最適の保険ALM

前回に続き、長年の知り合いの本のご紹介を。

キャピタスコンサルティングの森本祐司さんたちが
「【全体最適】の保険ALM」という本をきんざいから出しました。
特別寄稿として私も5ページだけ書いています。

ALMといえば資産と負債の総合管理のことですが、
本書では「資産・負債の経済価値およびその変動」を
重視すると明確に定義しています。
本書のALMの目的は企業価値を安定的に向上させることです。

また、タイトルにある「全体最適」とは、何か数式を解けば
「客観的」に正解が得られるようなものではなく、
企業のリスクに対する姿勢により決まる「主観的」なもの。
いいかえれば「リスクアペタイトの設定」のことです。

つまり、ここでいうALMは限りなくERMに近いものであり、
従来のALM のイメージしか持っていない人には
発想の転換が必要かもしれません。
ぜひ理解していただければと思います。

保険会社のALM/ERMに関する本で
これだけまとまったものは、なかなか見当たらないでしょう。

ところで以前、住宅ローンの収益・リスク管理について
このブログで書いたことがあります。
住宅ローンの収益性評価

通常のローンと違い、住宅ローンは期間が長いだけではなく、
デフォルト率の経年変化や期限前返済の存在などから、
収益・リスク管理がそう簡単ではありません。

しかし、銀行における住宅ローンの存在感が
これだけ大きくなっているにもかかわらず、
銀行で住宅ローンのALMを経済価値ベースで行っている
という話をほとんど聞いたことがありません
(皆無とは言いませんが、一般的ではなさそうです)。

ということで、銀行など保険業界以外のかたも、
「銀行のリスク管理は保険会社よりも進んでいる」
というプライドや幻想を捨て、本書に目を通していただければ
きっと何か得られるものがあると思います。

 

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生保営業のたまごとひよこ

長年の知り合いである森田直子さんが初の著書
「生保営業のたまごとひよこ-成長するためのヒント-」
(保険毎日新聞社)を出しました。

保険毎日新聞社の連載記事のなかから
お勧めの42本をまとめたものだそうです。

この本のテーマは、あくまで私の理解ですが、
「営業の仕事を長く続けるにはどうしたらいいか」
です。
(森田さん、違っていたらごめんなさい^^;)
そのためのヒントが随所にちりばめられています。

読んでいて感じたのは、当たり前かもしれませんが、
「地道で基本的なことをいかに継続するか」
「急がば回れ」がいかに重要かということ。
森田さんが試行錯誤してたどり着いた結論が
これだったのですね。

特に「見直し相談」のところなどは、なるほどなあと
感心しました。

同時に、営業は科学なのだということを改めて感じました。

森田さんがこの本で惜しみなく紹介している内容は、
単なる「地道な努力」「忍耐」といった根性ものではなく、
トライ&エラーのなかから合理的な手法を追求した結果、
得られたものです。
ここをはき違えると全く違う話になってしまいます。

保険毎日新聞の連載は今も続いているようですので、
少し気が早いですが、第2弾が楽しみですね。

 

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こんな公表がありました

 

今回はいろいろ気になる公表等があったので、そのご紹介です。
それぞれコメントしたいところですが、諸般の事情によりご容赦下さい。

1・経済価値ベースのソルベンシー基準についての検討体制強化について
  (日本アクチュアリー会)
 日本アクチュアリー会のHPへ

HPによると、より専門性の高い課題を集中的に検討するために、
4つの特別課題WGを新設しています。
また、金融庁との連携による定期的な検討会である
「ソルベンシー・ジョイント・スタディ・グループ」についての記述もあります。

2.「金融検査結果事例集」の公表等について(金融庁)
 金融庁のHPへ

毎年このような事例集が公表されているようです。
本編のP113からが保険会社です。

3.委託調査に係る報告書の公表について(金融庁)
 金融庁のHPへ

保険関連では「主要国の保険制度に関する調査」があります
(すみません、まだ目を通していません)。

4.東日本大震災に係る地震保険金が総額1兆円超に
  (日本損害保険協会)
 損保協会のHPへ

6/21についに1兆円に達しました。
阪神大震災では783億円であり、その後の普及率上昇を踏まえても、
あらためて今回の震災による影響がいかに大きかったのかがわかります。

5.なぜ今「ぶつからない」クルマが増えているのか(日経)
 日経新聞のHPへ

ネットで見つけた気になる特集記事です。
損害率上昇に悩む損保にとって朗報なのでしょうか。
それとも保険が要らなくなるという話なのでしょうか。

写真の列車(フランスで乗りました)も実は気になる存在でして、
パンタグラフがあるのに架線がないところを走るので変だなあと思い、
あとで調べてみたら、2007年に登場した「ハイブリッド列車」でした。
電化区間は電車、非電化区間はディーゼルカーとして走るのだそうです。

 

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自然災害リスクのモデル

 

3月23日のブログで自然災害リスク分析会社の評価モデルが
ある種の「共通言語」のような存在になっていると書きました。

このうちの1社であるRMSが最近、米国ハリケーンのモデルを
大幅に見直したことが、再保険市場に影響を与えている模様です。

6月2日のWSJによると、RMSのモデル見直しの結果、
100年に1度の確率で発生するハリケーンによる
テキサスでの予想損失が、従来の2倍になったそうです。
他の地域でも予想損失見込額の大幅増加がみられるとか。

モデルによる当初の予測が実際の結果と大きく異なることも
しばしばあるようですし、「共通言語」のようになっている
3社のモデルでも、まだまだ発展途上と言うべきなのでしょう。

ただ、マーケットで「共通言語」として使われていると、
今回のようにモデルの大幅見直しが行われた場合には、
かなり混乱が生じることは想像に難くありません。

さりとて他に頼るものもなく、モデルの限界を踏まえたうえで
再保険取引やリスク管理を行っていくしかないのでしょうね。

※写真左はミュンヘン、右はチューリヒのトラムです。

 

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海外旅行傷害保険

 

6月7日のブログでスーツケースの破損について書いたところ、
知り合いの保険代理店の皆さんから、
「海外旅行傷害保険に入っていれば、保険が使えるかも」
というアドバイスをいただきました。

さっそく手続きしてみたところ、電話と書類提出だけで
保険金を受け取ることができました。

事故発生が6月5日、事故の相談をしたのが15日、
書類を送ったのが20日、そして保険金の支払いが24日でした。
予想外に対応が早くて、うれしかったですね。

私が普段使っているクレジットカードには保険サービスがあり、
海外旅行傷害保険に加入しているという認識はありました。

ただ、携行品損害、つまり、身の回り品が偶然な事故により
盗まれたり壊れたりした場合の補償までは、
皆さんにご指摘されるまで全く気がつきませんでした。
そういうユーザーは多いのではないでしょうか。

「電話と書類提出だけで」とさらっと書きましたが、
実は電話がなかなかつながらず、これには参りました。

まずカード会社(=保険代理店)に電話しろとあるので
さんざん待たされた挙句、やっとつながったと思ったら、
「保険会社に直接連絡して下さい」という案内です。

少々イラっとしながら教えられた保険会社の番号にかけると
やはりつながりません。しかも、やっと出てきた相手は、
「こちらから電話するのでお待ちいただけますか」とのこと。
30分後か1時間後かわからないと言われてしまいました。

しかし、さすがに職場でいつかかってくるかわからない
電話を待ち、保険金の請求をするわけにもいきません。
夜なら比較的すいている、夜中でもOKとの情報を聞き出し、
ようやくその日の夜にこちらの状況を伝えることができました。

保険金の請求って、結構大変なものなのですね。
勉強になりました。
海外旅行保険の比較サイトとか見てもなかなかわかりえない事ですね。

ちなみに携行品損害保険金は買い替え費用ではなく、
壊れたスーツケースの時価(=償却後の価格)から
免責金額3000円を引いた金額が支払われました。
新しいスーツケースの半額くらいにはなったので、助かりました。

※写真はフランス・プロヴァンの商店街で見つけた保険代理店です。

 

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IFRS適用時期の見直し

 

自見庄三郎金融相は21日の記者会見で、
国際会計基準(IFRS)の強制適用時期について、

「少なくとも 2015 年 3 月期についての強制適用は
 考えていない」
「仮に強制適用する場合であっても、その決定から
  5-7 年程度の十分な準備期間の設定を行う」

と発表しました。 金融庁HPへ

2010年以降の国内外の様々な変化、とりわけ、
東日本大震災の発生と、産業界からの要望などが
大きかったと報じられています。

ただ、国内事情もさることながら、個人的には他国の状況、
特に米国の姿勢が全面採用から後退していることが
大きいように感じます。

会計でも保険規制でも、「国際化」を進めようとする欧州と、
自国ルール重視の米国、という構図が鮮明です。
金融危機の発生から3年がたち、ここにきて米国は
一段とその姿勢を強めているように見えます。

日本は欧州と米国の間にいて、見方によっては
いいポジションと言えるのかもしれません。
IFRS財団初のサテライトオフィスが北京でなく
東京に置かれることになったのも、このような状況が
影響しているのでしょう。

しかし、中国やインドの台頭もあり、単なる先送りは
かえって日本の立場を弱くするだけになってしまいます。
会計基準統一の方向性自体が変わらないのだとしたら、
やるべきことは「いかに発言力を高めるか」ではないでしょうか。

※写真はスイス・チューリヒです。

 

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