インシュアランス生保版(2022年4月号第4集)に執筆したコラムです(見出しはブログのオリジナル)。このブログの読者には目新しい内容ではありませんが、経営情報の利用者として繰り返し声をあげていきます。
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最近、生命保険会社のディスクロージャーの現状について改めて確認する機会があった。経済価値ベースのソルベンシー規制(新たな情報開示を含む)の導入まで、まだ数年を要することを踏まえると、契約者保護の観点から緊急性の高い最低限の情報として次の3点の早期開示を強く求めたい。
資産内容の開示不足
まず、資産内容の開示として、「10年超の公社債の内訳」「信用格付別の資産」「外国証券・その他の証券の内訳」を示す必要がある。
生保にとって金利リスクの管理は極めて重要だが、「有価証券残存期間別残高」の開示が「10年超」でひとくくりとなっていて、外部からは管理状況がほとんどわからない。
また、昨年11月の本欄で「生保の資産運用方針」を取り上げた際にも多少触れたが、生保がメディア向けに資産運用方針を説明し、「海外クレジット投資に注力」「オルタナティブ投資を強化」などと報じられても、開示情報が乏しく、実際の行動がどうだったのかを確認できない事態が続いている。
外貨建負債の情報がない
2つめは、外貨建負債の残高開示である。外貨建ての保険の販売状況も開示情報からはよくわからないのだが、円建てよりも予定利率が高い外貨建保険を提供している会社は少なくないとみられる。ところが、各社のバランスシートに保険負債としてどの程度外貨建ての負債が積み上がっているかを示す情報はほとんどないに等しい。
おそらく外貨建負債の為替リスクは外貨建資産を持つことでヘッジしているはずなので、現在入手できる情報だけでは、外貨建資産が増えたからといっても、それが資産運用戦略の一環なのか、あるいは外貨建負債が増えたからなのかを判断できない。
漢字生保の場合、外貨建資産は一般勘定資産の3割程度を占め、重箱の隅をつつくような話ではない。
個人向け配当のタイムリーな開示を
3つめは、個人向け有配当商品の契約者配当総額である。各社は決算発表時に「配当準備金繰入額」を示しているものの、このなかには団体保険や団体年金保険の配当原資も含まれている。
団体保険は基本的に1年間の保障を提供するもので、その配当は保険料の事後精算という性格が強い。団体年金保険は運用商品であり、その配当は保証利率を上回る運用成果を還元するものである。いずれも個人向け保険の配当とは性格が異なるため、これらを合わせて「配当性向」「配当還元割合」などとして示しても、個人保険や個人年金保険の契約者にとって有益な情報ではない。
多くの会社が年度決算の結果、個人向け保険としてどの程度の配当を実施したのかを知る手掛かりを出していないのは異常である。
以上の3点は最近浮上した課題ではなく、筆者は何年も前から開示を求めてきたものである(上場会社はいずれも自発的に情報を開示するようになった)。非上場会社には自発的な開示を期待できないというのであれば、あとは制度開示に期待するしかなさそうだ。
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※キャンパスの緑が濃くなりました。ツツジもきれいです。