今回は保険約款に基づいて契約内容を変更する(した)というニュースを2つ取り上げます。
総合医療保険の保障内容変更
少額短期保険のjustinCase(ジャストインケース)は4月6日、「コロナ助け合い保険」をはじめ、同社が販売した全ての総合医療保険において、みなし入院の保険金額を10分の1に減らすと発表しました(7日から適用)。
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よくあるご質問
保険会社が既契約の保障内容を変更できるという内容を約款で定めているのは今回のジャストインケースだけではありません。ただし、この条項が発動され、契約者に不利益な内容の変更が行われた事例はこれまで聞いたことがありませんでした
(契約者に有利な内容の変更が行われた事例は耳にしたことがあります)。
ニュースリリースの下のほうにある「保険料収入と保険金支出の推移」を見ると、オミクロン株の爆発的な感染拡大を予測できなかったというよりも、おそらく逆選択を避けられなかった、つまり、濃厚接触者になったらこの保険に加入する、PCR検査を受ける予定の人が先にコロナ保険に加入しておく、といった動きを読めなかったのではないでしょうか。
保険会社にとってコロナ感染症に関連する保障(補償)の提供は、感染症なのでリスクが独立していない(=大数の法則が働かない)ということだけみても取り扱いが難しいとわかります。ジャストインケースはもともと、エッセンシャルワーカーなどの不安解消を念頭に、2020年5月という早期にコロナ助け合い保険を発売しており、善意が悪意に打ち負かされてしまったようにも思えます。
とはいえ、抜かずの宝刀が抜かれてしまった影響について、保険業界としてはしばらく注意してみていく必要があるかもしれません。
団年一般勘定の予定利率引き下げ
ん?と思った方がいるかもしれませんが、団体年金一般勘定の予定利率見直しは、約款に定める基礎率変更権に基づくものです。日本生命は4月6日、予定利率を現行の1.25%から、2023年4月1日から0.50%に引き下げると発表しました。
すでに2021年10月に第一生命が予定利率を引き下げているので、NHKをはじめ、ここまで多くのメディアが取り上げるとは思いませんでした。日本生命が何かをしようとすると、メディアにニュースバリューが大きいと見なされてしまうので、これでは機動的な動きがとりにくく、この点は経営者に同情してしまいます。
もっとも、2020年12月20日のブログで書いたように、今の団体年金一般勘定はリスクに見合ったリターンが得られにくく、ALMも難しいと考えていますので、タイミングとしても、0.50%という水準にしても、もう少し説明してほしいというのが率直な感想です。
団体年金一般勘定の資産構成をサイトで公表しているのは第一生命だけのようです。各社とも契約者向けの公表資料を作成していて、古巣のR&Iがこの資料をもとにニューズレター『年金情報』で時々取り上げています。これによると、日本生命は第一生命よりも「外国公社債」の割合が低く、「貸付金」「外国株式等」の割合が高いとのこと。詳細は『年金情報』2021年6月21日号をご覧いただければと思いますが、それなりに資産運用リスクを抱えているのは間違いなさそうです。
※写真は長府毛利邸(山口県下関市)です。ミツバツツジがきれいでした。