金融機関の気候変動対応

金融庁は4月25日に「金融機関における気候変動への対応についての基本的な考え方(案)」を公表し、現在意見を募集しています(5月26日まで)。
さすがに気候変動の話を耳にしたことがないというかたはいないと思いますが、いろいろな機関がそれぞれペーパーを出しているので、全体像をつかむのはそう簡単ではないと感じます。このペーパーでは最初のほうで「気候変動を巡る議論・背景」をまとめてくれているので、現在の状況がざくっとわかって便利かもしれません。

金融庁が「金融機関」と言う場合、実質的には銀行など預金取扱機関を指すことも多いです(単なるひがみ?)。しかし、このペーパーは保険会社も対象です。例えば、気候変動に関連する機会及びリスクの認識と評価について、「保険会社においては、リスクとソルベンシーの自己評価(ORSA)の一環として、気候変動に関連する機会やリスク、およびそれらを踏まえた戦略やリスク管理、資本の状況の妥当性を評価することも考えられる」という注記があったりします(21ページ)。

顧客支援の具体的な進め方についての記載は、銀行と保険会社に分かれています。
保険会社のところでは、「企業や産業が脱炭素化を進めつつ、自然災害の激甚化への強靭性を高める観点からは、保険会社の役割も重要である」としたうえで、生命保険会社については投資行動を通じた支援、損害保険会社については保険商品の提供を通じた支援に関する記述がみられます(42ページ~)。

もっとも、銀行にしても保険会社(特に損保)にしても、顧客支援として本質的になすべきことは変わらないのではないでしょうか。
顧客企業がやるべきことは、気候変動の影響を把握するだけではなく、気候変動を含めた全社的な機会とリスクの把握です、気候変動による影響だけ頑張って把握し、TCFD開示を行っても、全社的なリスクマネジメントができていなければ、持続可能な経営とはなりません。ですから銀行や保険会社に求められるのは、全社的なリスクマネジメントの構築支援ということになります。
事業会社のリスクマネジメントが総じて発展途上であり、保険の手当てを人事部や総務部が行っている現実を踏まえると、リスクの引き受けを本業としてきた保険会社にとってビジネスチャンス到来と言えるかもしれません。
コーポレートガバナンス改革と気候変動対応を切り口に、事業会社に目覚めてもらいましょう。

※戦前に存在した共同火災という会社のファイアマークを発見しました。竹原(広島県)にて。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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