建設的な対話

 

日本価値創造ERM学会のシンポジウムで、
オムロンのIR担当役員である安藤聡さんと
京都大学・川北英隆教授の対談を聴いてきました。

オムロンはIR優良企業として知られています。
対談といっても、専ら川北さんが安藤さんに
問いかけるスタイルでしたが、安藤さんのお話は
なかなか刺激的なものでした。

投資家には日本版スチュワードシップ・コードが、
上場企業にはコーポレートガバナンスコードが
それぞれ入り、企業と投資家の「建設的な対話」が
期待されています。

しかし、安藤さんによると、長期視点を標榜する
投資家であっても、対話を通じて有益と感じるのは
わずか1割程度とのことでした。

なかには、「会社がスチュワードシップ・コードを
採択したので、対話をしなければならない」から
対話を希望する不勉強なアナリストもいるとのこと。

セルサイドのアナリストへの目線も厳しく、
レポートがショートターミズム(短期志向)のもの
ばかりで、本源的価値を見ようとするアナリストは
ごくわずかという話でした。

もっとも安藤さんは、建設的な対話のためには
企業による情報開示が必要とも話していました。

同じ趣旨のコメントを、最近読んだ、
「点検 ガバナンス大改革」(格付投資情報センター編)
でも見つけました。

「2つのコードが機能し始めた状況のなかで、
 筆者は『投資家の行動は確実に変わりつつ
 ある』と実感しているが、一方で劇的に変化
 したとはいえないことも事実である」

「建設的な対話やその先にあるエンゲージメントを
 行うためには、まず企業がESG(環境、社会、
 ガバナンス)を含めた、さまざまな経営情報を
 自発的に開示することが必要条件だからである」

 ※いずれも同書から引用

もちろん、機関投資家が長期視点で分析・評価し、
企業価値向上のために有益な提案を行うことを
求められているとはいえ、それは十分条件であり、
まずは企業による情報開示が必要ということです。

コードを制定し、社外取締役を入れたからといって
それだけで攻めのガバナンスが実現するのではなく、
むしろここからがスタートなのでしょう。

※写真は山形新幹線「つばさ」です。
 いまはこのようなカラーなのですね。

 

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解約返戻金の推移

 

生保の四半期開示を時系列でみると、いくつかの会社で
2013年頃から解約返戻金が高水準で推移していました。
ただ、昨年後半から減少に転じ、ピークは過ぎた模様です。

解約返戻金が多かったのは、オリックス(ハートフォード)、
エヌエヌ(旧アイエヌジー)、三井住友海上プライマリー、
東京海上日動フィナンシャル、マニュライフ、などなど。

この顔ぶれは、かつて銀行チャネルで変額個人年金の
販売上位だった会社ですね。

第二次安倍内閣が発足した2012年末の少し前からの
株価上昇で、2000年代前半に購入し、元本割れしていた
変額年金の時価が元本を上回るまで回復したのでしょう。

最低保証があるのに解約するのは、預金代替として
変額年金を購入していた契約者が、再び元本割れとなる
事態を嫌ったのかもしれませんし、あくまで想像ですが、
銀行に勧められ、他の商品に切り替えたのかもしれません
(変額年金を買うときも銀行に勧められたはずですし…)。

このあたりの現場情報がわかれば、手数料開示などの
議論をするに際し、参考になりそうですね。

それでは、高水準だった変額年金の解約返戻金が、
昨年後半あたりからなぜ落ち着いたのでしょうか。

2万円だった日経平均株価が16000円まで下がったように、
変額年金の時価が再び下落した影響はありそうです。

直近の2016年4-6月期は、その前の期に比べると
株価下落の影響はマイルドだったはずなのですが、
解約が落ち着いているにもかかわらず、変額年金の
資産残高は前の期並みに減っています
(時価下落以外の影響も考えられますが…)。

あるいは、時価が回復したら現金化したいという契約者は
概ね解約してしまい、年金として受け取ろうという層が
残っているという可能性もありますね。

このあたりの契約者行動は、おそらく日本の変額年金の
輸入元である米国とは同じではないように思います。

※築地市場の正門にあった移転案内が撤去されていました。
 環状2号の工事はどうなってしまうのでしょう(写真右)。 

 

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銀行窓販の販売手数料(2)

 

8月22日から26日にかけて、大手銀行が相次いで
生命保険の代理店手数料の開示を公表しました。

<各社のニュースリリース>
みずほフィナンシャルグループ
三井住友銀行
三菱UFJフィナンシャル・グループ
りそなホールディングス
三井住友信託銀行
新生銀行

各社の公表文を確認すると、手数料開示とともに、
受領方法の変更についても例外なく触れています。

すなわち、一時払い保険料の代理店手数料を
契約時に一括して受けとっていた従来の方法を見直し、
契約時のコンサルティング等の対価(=販売手数料)と
契約後のアフターフォロー等の対価(=継続手数料)に
分けて受け取るというものです。

継続手数料にどの程度の重点が置かれるのか、
手数料総額が変わるのか、変わらないのか、
そして、これらの取り組みが保険販売にどう影響するか、
などが今後の注目点でしょう。

手数料開示についても、ほぼ横並びの書きぶりです。

「資産運用分野における顧客本位の取組」「2016年10月」
「保険会社の同意が前提」「特定保険契約が対象」
という内容になっています。

ただし、三井住友信託は、「特定保険契約商品をはじめ
とする保険会社各社の同意を得られた商品」だそうです。

横並びの記述が目立つ中で、三井住友銀行だけは
日経報道の通り、営業拠点の評価基準の見直しに
言及しています。

実際の手数料水準にかかわらず、商品区分ごとに定めた
一律の料率で評価するとのことで、投資信託に続き、
保険でも今年度からそのような運営としたそうです。

大手銀行による自主的な開示は、おそらく主な地銀にも
広がるのではないかと思います。

保険会社としては、全体としての手数料水準の高騰を
抑える効果が期待できる一方、手数料テーブルが
最も高いところに張りついてしまう気もしますね。

さらに、これが他のチャネルにも及ぶのか、あるいは、
特定保険契約以外の貯蓄性商品にも広がるのかは、
金融審議会WGでの議論次第なのでしょう。

※写真は築地の場外市場です。鳥藤の弁当を買いました。

 

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鉄分の濃さを感じるとき

 

前回のブログ(マイナス金利政策の副作用)は
いつもよりアクセスが多かったようです。
果たして9月の日銀「総括的な検証」はどうなるか。

さて、今回は一転して夏休みモードですみません。
鉄分といっても栄養素ではなく、鉄道のほうです。

時々ブログに鉄道関連の写真を載せるので、
私が電車好きであることがうかがえると思います。

とはいえ、本物の鉄道ファン(?)に比べると、
知識も行動力もまだまだだと思います^^

それでも、自分で「鉄分の濃さを感じるとき」が
時々あります。

1.電車の走行音に反応してしまう

最近の新しいビルだと、すぐ隣りを電車が走っても
ほとんど何も聞こえず楽しくないのですが、
少し古い建物だと、電車の走行音が聞こえますよね。

電車の音が聞こえると、ついそちらを見てしまい、
周りの人に怪訝な顔をされてしまいます
(ちなみに音だけではなく、姿が見えても反応します)。

身近なところで思いつくスポットは、淡路町にある
某協会(損保ですね)のビルでしょうか。

先日もセミナーの講師を務めるため伺いましたが、
隣りに中央線や総武線がゴトゴトと頻繁に走る、
楽しいところです。

もちろん、電車が通るたびにスピーチが途切れたりは
しませんでしたので、ご安心ください。

2.窓側の席に座りたがる

通勤電車のベンチシートではなく、新幹線のような
座席配置の場合、私は好んで窓側の席を選びます。
窓からの景色をボーっと眺めるのが好きなのです。

数週間前に京急線の快速特急に乗る機会があり、
関東では珍しい、新幹線のような座席配置の電車でした。
これなら三浦半島からの長距離通勤も苦になりません。

ごくたまに困ったことが起こります。

日本の新幹線には、座席ごとに窓がありますよね。
ところが、古いタイプの特急や海外の新幹線などでは、
2列の座席で窓一つという配置も結構多いのです。

普通の人にとって、鉄道は単なる移動手段なので、
皆さん、かなりの確率でブラインドを下げようとします。

景色を眺めていたい私には、前(または後ろ)の人が
いつブラインドを下げようとするか、ドキドキものなのです。

前後の人がブラインドを下げようとしたら、どうするのか?
...ご想像にお任せいたします。

3.車内を見渡す

最近まで自覚していなかったのですが、あるとき指摘され、
気が付いた習慣です。

私は電車に乗ると、無意識に車内をチェックしているようで、
いつも乗る東横線の車両と、座席の特徴や窓の大きさ、
網棚の形、製造年や製造した場所、あるいは広告の傾向
などの違いを見つけては、喜んでいるように思います。

同じ4つ扉の通勤電車でも、よく見ると結構違うものです。

例えば、東京メトロの古い車両(東横線でも走っています)
の窓は、私の目線よりも低く、かつ、小さくて嫌いなのですが、
当時は地下鉄の窓は小さくていいという考えだったのかも
しれません。

珍しい車両に乗るとうれしくなります。
所要のため相鉄線に乗ったら、「パワーウィンドウ」「鏡」
のある電車が健在で、思わずニンマリしました
...これは鉄分がかなり濃いコメントかもしれませんね。

自覚しているだけで、これだけ思い当たるのですから、
無自覚な行動はもっとあるのでしょうね。

※写真は函館の市電です。

 

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マイナス金利政策の副作用

 

けさ(13日)の日経1面「マイナス金利、3000億円減益」
という記事をご覧になったでしょうか。

あくまで報道ベースですが、マイナス金利政策により
3メガバンクの損益が3000億円の悪影響を受けるという
調査結果を金融庁がまとめたということです。

この記事の最後にさらっと次の記述がありました。

「長期運用で影響が表れにくい保険会社も、マイナス金利に
 入った長期国債などの変動影響を時価で評価したところ、
 1年間で自己資本比率が半分に減った社もあった」

ここでいう「自己資本比率」の分母・分子の定義は
記事ではわかりませんが、減益(でも黒字)どころか、
「自己資本比率が半分に減った」ですからすごい話です。

記事の「保険会社」は、普通に考えれば生保でしょうね。

ちなみに、最近発表された2016年4-6月期の生保決算
を確認しても、マイナス金利の副作用を示すような結果は
見当たりません。

ただ、いくつかの上場生保の投資家向け資料には、
この調査結果を裏付けるようなデータが載っています。

例えば、第一生命のEV(エンベディッド・バリュー)は
マイナス金利政策の影響のない2015/3の約6.0兆円から、
直近の2016/6には3.7兆円に減っています
(いずれも超長期金利の補外に終局金利を用いた方法)。

T&Dグループは四半期ごとにEVとともに、ESR
(経済価値ベースのソルベンシー比率)を公表しています。
分母のリスク量に対し、分子の時価資本がどの程度あるかを
示した指標です。

これを見ると、T&DグループのESRは、2015/12月末の210%から、
直近の2016/6末には130%に下がったことがわかります
(終局金利を採用した場合には162%)。

ソニー生命のESRも、2015/12末には173%だったものが、
2016/6末は95%(終局金利採用ベース)となりました。

上場していない生保は手掛かりをあまり出していません。
とはいえ、国内系生保の商品戦略や資産運用・ALM戦略に
大きな違いは見られないため、上場生保で起きていることは、
非上場生保でも同じように発生しているとみるのが妥当でしょう。

したがって、「時価評価で見た自己資本比率が半減」というのは、
半減かどうかはともかく、一部の例外的な話ではなく、
業界全体で健全性が圧迫されていると考えるべきでしょう。

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※写真は函館・倉庫街近くで見つけた和洋折衷住宅。
 1階が和風、2階が洋風という函館特有の建物です。

 

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函館五稜郭

 

夏休みに函館に行き、夜景や町歩きを楽しみました。

横浜と同様に、開港により大きく発展した函館ですが、
北洋漁業や造船業が厳しくなった1980年代あたりから
衰退がはじまり、近年では人口流出が著しいようです。

写真は五稜郭と、その中にある旧函館(箱館)奉行所です。

城好きではなくても、この不思議な形をした城郭を
ご存じのかたは多いと思います。

五稜郭は開港した箱館の要として置かれた箱館奉行所を
取り囲む城郭(土塁)として1864年に完成しました。
日本で初めての西洋式城郭です。

どうして幕末にこのような形の城ができたかというと、
設計を担当した蘭学者の武田斐三郎が、フランス軍艦から
伝わったヨーロッパ式の築城術を参考にしたためだそうです。

武田斐三郎は佐久間象山の西洋兵学塾で砲術や築城術を
学んだ人物ですから、従来の日本式の築城ではだめだと
考えたのかもしれません。

五稜郭には、大砲や小銃による銃撃戦を想定した工夫が
随所にみられます。

先端部を鋭角にすることで死角をなくし、侵入した敵には
十字砲火を浴びせることができました。

城郭の内部には大砲の標的になる高い建物を置かず、
大砲の衝撃を吸収できるように、石垣(土塁)は低く、
厚みがあります。

立地面でも工夫がみられます。
当時の大砲の射程距離を意識し、港から3km離れた内陸に
建てられました。近くを流れる亀田川の水も活用できます。

このような五稜郭ですが、その後戊辰戦争(箱館戦争)の
舞台となり、落城してしまいます。

新政府軍の軍艦の大砲は最新型だったので、
内陸に作った五稜郭にも砲弾が届いてしまいました。

しかも、「大砲の標的になりそうな高い建物を置かない」
と書きましたが、右の写真のように、箱舘奉行所の上部に
太鼓楼があり、これが艦砲射撃の標的となったようです。

最新型の城だったのか、時代遅れだったのか。
そんなことを考えつつタワーから城を眺めました。

 

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社外取締役インタビュー

 

昨日(7/30)のNHKドラマ「百合子さんの絵本」
第二次世界大戦中、スウェーデン駐在武官として
諜報活動を行っていた小野寺夫妻の話でした。

価値ある情報を送っても、東京では活用されない。
戦後の座談会のシーンも、いかにもという感じ。

キャストが香川照之、薬師丸ひろ子だったので
見ごたえのあるドラマでしたね。

なお、先日ご紹介した「大本営参謀の情報戦記」にも、
ヤルタ会談でのソ連参戦決定を伝える小野寺電が、
大本営作戦課で握り潰されていたことが記されています。

情報と言えば、2016年版のディスクロージャー誌
(または統合報告書)が各社のサイトにアップされつつ
あります。

最近の特徴として、ここ数年のガバナンス改革を反映し、
報告書に「社外取締役インタビュー」を掲載する会社が
増えているようです。

2016年版を確認したところ、大手保険グループでは
第一生命と明治安田生命が社外取締役インタビューを
載せていました。

ご参考までに、インタビューの項目は次の通りです。

<第一生命 ジョージ・オルコット氏(慶大教授)>
 ・日本企業および第一生命のガバナンスを
  どう評価しているか

 ・取締役会における社外取締役の役割

 ・グローバル企業においてガバナンス面で
  考えていくべきことは何か

<明治安田生命 服部重彦氏(島津製作所相談役)>

 ・これまでの当社のコーポレートガバナンスの
  取り組みをどう評価しているか

 ・筆頭社外取締役として果たすべき役割は何か

メガ損保グループの2016年版報告書は未公表ですが、
2015年版の損保ジャパン日本興亜HDの報告書には、
社外取締役4名からのメッセージがありました
(東京海上HDは社外監査役インタビューがありました)。

ちなみに、メガバンクの報告書には、3グループともに
社外取締役インタビューが掲載されています
(みずほは取締役会議長メッセージ)。

インタビューを掲載しても、情報として役に立たない、
形だけのアピールで意味がない、という声もありそうです。

ただ、インタビューを受ける社外取締役にとっては
いい意味でのプレッシャーとして機能するのではないかと
私は前向きに受け止めています。

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※久しぶりにプロ野球観戦に行きました。
 野球よりもファンの観戦(観察)が面白かったです^^

 

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IFRSの適用状況

 

本題に入る前にセミナーのご案内です。
8月9日(火)の18:00から損保総研で講師を務めます。

「マイナス金利下における経営環境の変化と
今後の保険会社経営の方向性」という演題で、

 ・マイナス金利政策のインパクト
 ・ソルベンシー規制の進展
 ・新たな環境下での保険会社経営の方向性

についてお話する予定ですので、ご関心のあるかたは
ぜひご参加ください ⇒ 損保総研のサイトへ

さて、一部報道にもありましたが、22日(金)に開催された
企業会計審議会・会計部会の資料によると、国際会計基準
(IFRS)を任意適用する会社(適用予定を含む)が121社に
達しました。このうち適用済の会社は86社です。
金融庁のサイトへ

この「121社」は金融庁による7/15時点のデータですが、
東証の資料によると、6月末時点の任意適用(予定を含む)
会社は141社で、時価総額は東証全体の29%とのこと
(このうち適用済の会社は85社、17%)。

適用会社が着実に増えているなかで、保険業や銀行業には
実のところ適用会社が存在しません。

大手保険グループや大手銀行は外国人投資家が多く、
海外展開も積極的に進めているのに、不思議ですよね。

保険業と銀行業でIFRSの任意適用会社がないのは、
IFRS第4号「保険契約(修正版)」とIFRS第9号「金融商品」
という、両者に影響の大きい会計基準が未完成だったことが
大きいと思います。

ただし、第9号は2018年に発効することになっており、
第4号の修正版も早期の発効に向けて動いていますので、
こちらの制約はいずれ解消されるでしょう。

もう一つの制約としては、業法の存在が挙げられます。
保険業や銀行業にはそれぞれ保険業法、銀行法があり、
事業報告書を作成、提出しなければなりません。

IFRSを任意適用した場合、規制上の手当てがなければ、
有価証券報告書の連結決算をIFRSで作成したとしても、
事業報告書は従来通り、日本基準で求められるので、
二種類の連結決算を作る必要があると思われます。

保険業や銀行業のIFRS任意適用を促すのであれば、
金商法と業法の関係、さらには健全性規制との関係を
整理する必要がありそうです。

※早大でも「ポケモンGO」でした。

 

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ドイツ生保と低金利

 

少し前の話で恐縮ですが、IMFがドイツ銀行を
システミックリスクの影響が最も大きい銀行と
指摘したというニュースをご覧になったでしょうか。

遅まきながらIMFの報告書(6/29公表)を確認したら、
これはドイツに対する金融セクター評価プログラム
(FSAP)のストレステストに関するものでした。
IMFのサイトへ

FSAP GERMANYなので、G-SIBに指定されている
ドイツ銀行のシステミックリスクに関する分析結果が
載っていたのですね。

次回のFSAP JAPANでは、3メガバンクの分析結果が
出ることでしょう。

ところで、この報告書にはドイツ生保のストレステスト
の結果も示されています。

金利低下や株価下落、公社債のスプレッド拡大
といったショックに対し、ソルベンシーIIのSCR比率
(日本で言えばソルベンシーマージン比率でしょうか)
がどこまで影響を受けるかをテストしたものです。

ショック時の数値もさることながら、二種類のSCR比率、
すなわち、16年間の経過措置(※)の適用前後の比率で
ストレステストを行っているのが目を引きました。

 ※ソルベンシーIIでは低金利下での経過措置として
  16年かけて割引率または責任準備金を必要水準に
  段階的に収束させることが認められています。

これによると、2014年末のドイツ生保のSCR比率は、
ストレス前でも、経過措置の適応がなければ、
中央値は100%程度であり、100%を下回っている会社も
多いことがわかります
(100%が資本とリスク量がバランスした状態です)。

アリアンツやミュンヘン再保険など大手保険グループは
ソルベンシーII対応状況を投資家向けなどに公表し、
グループベースでみたSCR比率が良好な水準にあると
示しています。

しかし、ドイツの生保業界全体としては、やはり金利水準
低下の影響は深刻だということなのでしょう
(特に中堅会社の状況が厳しい模様)。

なお、ドイツの金融当局であるBaFinは6/30のリリースで、

・直近の2016年3月末の状況を分析したところ、
 金利水準が2014年末より大きく下がっているにも
 かかわらず、IMFのテスト結果よりも良好だった。

・BaFinでは8月に直近のソルベンシーII報告に関する
 何らかの公表を行うつもりである。

といったコメントをしていますので、8月の公表を
待ちたいと思います。

※月島もんじゃストリートに行きました。

 

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銀行窓販の販売手数料

 

6日の金融審議会(市場ワーキング・グループ)では、
金融機関による顧客本位の業務運営実現に向けた
取り組みの一環として、銀行による保険の販売手数料
開示問題がテーマにあがった模様です。

しばらくしたら議事録がアップされると思いますが、
今のところ当日の資料のみ公表されています。
金融庁・金融審議会のサイトへ

知人の保険ジャーナリストによると、金融審WGの議論が
あくまで金融機関による貯蓄性保険の手数料だけなのか、
あるいは、営業職員や一般代理店が販売する貯蓄性保険
まで広がるのかに注目とのことでした。

確かに、保険会社から見ると、前者であれば金融機関
という一つのチャネルだけの話ですが、後者となれば、
保険商品のあり方全般に影響が及ぶかもしれません。

ご参考までに、2013年6月の金融審・保険WG報告書では、
「2-3-2 乗合代理店に係る規制について」のなかに
次の記載があります。

「手数料の開示については、上記のような見直しを通じて、
 乗合代理店による保険商品の比較販売について、一定の
 適切な体制が整備・確保されると考えられることから、現時
 点において、一律にこれを求める必要はないと考えられる」

「仮に、手数料の多寡を原因として不適切な比較販売が行
 われる事例が判明した場合には、手数料開示の義務づけ
 の要否について、改めて検討を行うことが適当である」
 (脚注62)

銀行にとって販売手数料の重要性は年々高まっています。

6日の金融審WGの資料には、販売手数料に占める割合と、
平均手数料率の推移が載っていました(スライド6)。
7日の日経の図表はここから引用したものです。

販売手数料が銀行決算にどれほど貢献しているのかは、
直近決算データとなると、個別に見ていくしかありませんが、
2014年度までならこの日銀レポート(銀行・信用金庫決算)
時系列で確認できて便利です。

国内業務の資金利益が減少傾向となっているのに対し、
大手行、地域銀行ともに役務取引等利益は増えています。

大手行の場合は、近年伸びている国際業務部門が
資金利益や役務取引等利益に寄与しています。

しかし、大手行の国内業務部門、あるいは地域銀行で
役務取引等利益の伸びを支えているのは、保険と投信の
販売手数料であることがわかります
(詳しくはレポートの15ページを参照)。

※週末にプライベートの東京湾クルージングを
 体験することができました。

 

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