生保の4-9月期決算から

 

東京に初雪の降った24日、非上場生保の
4-9月期決算発表がありました。

マイナス金利政策後の経営環境を受け、
各社がどのような戦略をとっているのか。
トップラインだけを見ても、各社の方針が
結構違うことがうかがえました。

例えば、大手4社の保険料等収入
(個人保険分野)はご覧の通りです。

 日本 15310億円(▲1434億円)
 第一  9342億円( +270億円)
 住友 14967億円(+4104億円)
 明安  8765億円(▲3292億円)

 第一フロンティア生命 5406億円
             (▲4513億円)
  ( )は前年同期差

日本生命の減収は銀行窓販が大半を占め、
営業職員チャネルは個人年金の増収により
むしろ増収の模様です。
ブログでも取り上げた「長寿生存保険」も
寄与しているとみられます。

第一生命は単体増収、連結減収です。
窓販に特化した第一フロンティア生命の
販売抑制が連結減収に反映しています。
単体の増収は個人年金が大きいようです
(年換算保険料が倍増)。

住友生命は保険料収入を大きく伸ばしました。
銀行窓販も増収のようですが、資料によると
平準払の個人年金の販売増加が主因とのこと。
若年層を取り込むため、入り口のツールとして
個人年金を販売し、次の保障性商品に
つなげる戦略なのでしょう。

明治安田生命は銀行窓販、営業職員ともに
減収となりました。特に銀行窓販の主力は
円建商品なので、販売抑制を強めたのでしょう。
営業職員でも平準払いに注力したとのことで、
第三分野の年換算保険料は二ケタ増です。

いつも目の敵にしている(?)保険料等収入も
このように使うと役に立ちますね。
もちろん、トップライン以外でも今回はいろいろ
見どころがあるようです。

※都心で雪景色は見られませんでしたが、
 朝の交通機関は大変なことになっていました。

 

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損保グループの決算発表

 

3メガ損保の2016年度第2四半期(4-9月期)
決算発表がありました。

前年同期に比べ自然災害が少なかったことや、
前年に見られた火災保険の駆け込みの反動減
などが公表資料からうかがえます。
政策株式の継続的な売却も確認できますね。

それにしても、近年の相次ぐ買収により、
海外事業の存在感は一段と大きくなりました。

例えば東京海上グループの正味収入保険料
(連結ベース)の内訳は次のとおりです。

 東京海上日動 10586億円(62%)
 日新火災      709億円( 4%)
 海外保険会社  5593億円(33%)
 合計       17008億円

生命保険料でも、全体で4344億円のうち
海外保険会社が1467億円を占めています。

MS&ADグループはアムリン買収が寄与し、
海外収入が一気に増えました。
以下が連結正味収入保険料の内訳です。

 MSI        7566億円(41%)
 ADI        6094億円(33%)
 海外保険会社  4514億円(25%)
 合計       18393億円
  
SOMPOグループは他の2グループに比べると
海外事業のウエートは限られています。
連結正味収入保険料の内訳は次のとおり。

 損保ジャパン日本興亜  10874億円(85%)
 海外連結子会社      1673億円(13%)
 合計             12795億円

ただし、エンデュランス買収が実現すると、
通年で2000億円程度の正味収入保険料が
加わることになります。

かつての国内損保事業に集中していた状態、
すなわち、日本の自然災害リスク(地震、台風)
による影響が非常に大きかった姿に比べると、
リスク分散が進んだのは確かでしょう。

あとは買収先がリスクをコントロールしながら
中長期的に投資に見合うリターンを上げることが
できるかどうか。
持株会社の経営管理がいかに機能するかが
問われるのだと思います。

※福井ではトラム(路面電車)が普通の鉄道に
 乗り入れていました。

 

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「決め方」の経済学

 

トランプ大統領誕生やアクチュアリー会等での
各種発表など、盛り沢山な1週間でした。

そんななか、たまたま読んでいたのがこの本
(「決め方の経済学」)です。

著者の坂井氏は選挙方式など「決め方」を
研究する経済学者で、「多数決を疑う」という
著書もあります。

本書も、「決め方で結果が変わる」という話を
わかりやすく説明していて、おすすめです。

「二択投票で多数決を正しく使いこなす」
を読むと、「陪審定理」というものがあり、
投票者の数が増えるほど、多数決の結果が
正しくなりやすいのだそうです。

ただし、それが成り立つには、

 ①多数決で決める対象に、皆に共通の目標が
  ある。
 ②有権者の判断が正しい確率が0.5より高い。
 ③有権者は各自で判断し、ボスに従ったり、
  空気に流されたり、勝ち馬に乗ろうとしない。

これらすべての条件が満たされている必要が
あります。

坂井さんによると、多数決を正しく使うのは
必ずしも容易ではなく、正しさが求められない
「どうでもいいこと」を決めるのに向いている
とのことです。

米大統領選の場合、有権者が次の大統領を
選ぶということなので①は満たされていますが、
②と③はどうだったのでしょうか。

もっとも、②③の条件を満たすべく、社会が
取り組めることはありそうです。

多数決により誰か一人を選ぶ必要がある以上、
例えば、有権者が正しく判断できるような環境を
整えるとか、教育・啓蒙活動を行うなどにより、
有権者がコイントスよりもマシな判断をするよう、
取り組んでいくというのが重要なのでしょう。

アクチュアリー会の年次大会(11/11)では、
「マイナス金利と保険会社経営」パネルのMCと、
ERM委員会「模擬経営会議」のナビゲーターを
務めました。

「模擬経営会議」は私にとってもチャレンジでした。
一種のケーススタディーなのですが、俳優さんたちに
場面を演じてもらい、それをもとに会場とやり取りし、
課題を考えていくというもの。

場面やケースを考え、筋書きを決め、リハを行い、
会場への質問項目を考えて…と準備が大変でしたが、
俳優さんたちの頑張りで、何とか形になりました。

ご覧いただいた方、いかがでしたでしょうか。

 

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訪日外国人2000万人突破

 

2016年に日本を訪れた外国人旅行者の数が
10月時点で2000万人を突破したそうです。

NHKニュースでは「国土交通省が発表」と
報じていたので元データを探したところ、
日本政府観光局(JNTO)のサイトにありました。

年間1000万人の達成が2013年ですから、
ここ数年の増加は目を見張るものがあります。
確かに先週末の京都も、外国人観光客と
思われる人たちで賑わっていました。

国・地域別の内訳をみると、圧倒的に東アジア
(中国、韓国、台湾、香港)が多く、全体の3/4を
占めています。
特に中国だけで全体の1/4を上回っていて、
訪日数の増加の牽引役となっています。

JNTOによると、中国人旅行者の訪問先上位は
タイと韓国に次いで、日本となっているようです
(台湾やシンガポール、米国、ベトナム等も上位)。

訪日中国人は男性よりも女性が多く(55%)、
20代と30代が全体の6割を占めています。

2015年に初めて日本に来た人は63%なので、
リピーターもそこそこ増えている模様です。
団体旅行が観光客の56%というデータもあり、
おそらく初めての人は団体旅行、リピーターは
個人旅行という傾向なのでしょう。

日本での訪問先も分散しつつあるようです。

中国のSNSを分析したトレンドExpress社の
調査によると、日本旅行で行きたい場所として
東京、京都、大阪のほか、奈良や鹿児島、福岡、
兵庫、北海道という回答もある程度見られます。

中国人観光客というと、団体で買い物旅行という
イメージが強いですが、リピーターが増えるにつれ、
だいぶ変わってきているのかもしれません。

※日本保険学会の年次大会(10/30)に
 ちょっとだけ参加しました。

 

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金融システムレポートほか

 

自分の備忘録も兼ねて、気になった話題を
いくつかご紹介します。

1.日銀「金融システムレポート」(24日公表)

日銀が半年ごとに公表しているレポートです。
1月末からのマイナス金融政策の影響を
銀行が強く受けていることを示しています。
日本銀行のサイトへ

レポートでは、銀行が低金利によって収益の
減少に歯止めがかからないリスクとともに、
リターンを求めて過度なリスクテイクに向かう
リスクについても分析しています。

マイナス金利政策は欧州でも見られます。
しかし、レポートによると、欧州系銀行は、

 ・預金金利に下げ余地があった
 ・口座維持手数料等の採用
 ・預金調達の割合が邦銀より小さい
 ・収益性の高い住宅ローンへのシフト

などにより、利ざやを維持できているとのこと。
歴史的低金利が長く続く日本とは経営環境が
異なるようです。

2.2015年国勢調査の確定値公表(26日)

国勢調査としては初めて人口が減り、
65歳以上の人口割合は26.7%となりました
(5年前は23.0%)。
この割合は世界で最も高い水準だそうです
(イタリアは22.4%、ドイツは21.2%)。
総務省統計局のサイトへ

合わせて下記の人口ピラミッドをみると、
今後の動きがわかります。

あと25年くらいたつと、団塊ジュニア世代が
65歳以上となり、人口割合はすごいことに
なっていそうです。

逆に言えば、シニアマーケットはしばらくの間
かなりのボリュームゾーンなので、この層を
どうやって取り込むかが、どの業界にとっても
重要なのでしょうね。
国立社会保障・人口問題研究所のサイトへ

3.保険の手数料開示

10月から大手銀行などが特定保険商品の
販売手数料を開示するようになり、関連する
記事がいくつか出ています。

R&I「ファンド情報」(2016.10.24)では、
開示のタイミングで手数料の受け取り方を
「 I から L 」に変える動きがあると報じています。

従来は販売時の一括受け取りだったものを、
販売時の手数料を抑える半面、5~10年ほどの
継続手数料を受け取るように変更することで、
「見せかけの手数料引き下げ」が横行している
というものです。

銀行は継続手数料も開示していますし、
継続手数料を設定することで、銀行が販売時の
手数料獲得だけに邁進せず、アフターフォローを
より重視するようになるかもしれません。

ですから、これを「見せかけの引き下げ」として
批判するのは、やや違和感があります。

もっとも、29日の日経に、メガバンクの事例として
外貨建て一時払い変額終身保険の手数料率が
掲載されていたのですが、これが合計9.25%
(初年度手数料4.00%、継続手数料0.75%)、
という数字でした(75歳までの場合)。

継続手数料は7年目までということなので、
解約や死亡による契約消滅を踏まえたうえで
設定しているのだとは思いますが...

この先、まだまだ動きがあるかもしれませんね。

※銀座の日産ギャラリーが新しくなっていました
 (NISSAN CROSSING)

 

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金融行政方針の公表

 

金融庁が21日に、本事務年度(2016/7-2017/6)の
金融行政方針を公表しましたので、その感想など。
金融庁のサイトへ

今回の行政方針では、次の3つを金融行政運営の
基本方針として掲げました。

 (1)金融当局・金融行政運営の変革
 (2)国民の安定的な資産形成を実現する
   資金の流れへの転換
 (3)「共通価値の創造」を目指した
   金融機関のビジネスモデルの転換

最初に「金融当局・金融行政運営の変革」を置き、
検査・監督のあり方の見直しや自らのガバナンス
改善に取り組もうとしているところが斬新です。

金融行政の中身に関し、総じて言えることは、
「健全なリスクテイクの促進」だと受け止めました。

例えば、話題となっている「日本型金融排除」
(担保や保証等に過度に依存した与信判断)
の実態把握の狙いは、地域金融機関に対し、
事業性評価に基づくリスクテイクを促す施策です。

国内で活動する預金取扱金融機関については、
各種リスクテイクが収益・リスク・資本のバランス
という面から適切な戦略となっているかに着目し、
対話を行うともあります。

家計における長期・積立・分散投資の促進も、
日本の家計金融資産を現預金から投資に
シフトできるよう、環境整備を図ろうというもの。

さらに、保険会社向けの記述(25ページ)にも、

「保険会社との対話を通じ、環境変化に対応する
 リスク管理を伴った健全なリスクテイクを促す」

とありました。ただし、

「低金利環境の継続等により、経済価値ベースでの
 必要資本の確保とリスクテイクによる収益の確保
 とのトレード・オフの問題が生じている」

すなわち、経済価値ベースでみると、必要資本を
確保するのがそう簡単ではない状況なので、
少なくとも、余裕があるのにリスクを取っていない
という認識を持っているわけではなさそうです。

特に生保については、

 ・保険負債の質の改善
 ・リスク管理と一体となった資産運用の最適化
 ・ストレスシナリオの想定と対応

などが対話のテーマに挙げられています。
こうした認識下での「健全なリスクテイク」なので、

「ERMの活用は健全性に関する取組みが中心」
「収益力の向上に関する取組みは今後の課題」

とは言うものの、銀行のようなリスクテイク拡大を
促すというよりは、具体的な手法はともかく、
保険会社が収益・リスクをどうコントロールするか
に着目するのだと私は理解しました。

※写真は坂本(滋賀県)の町並み。
 石垣の連なりが美しいです。

 

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不正なクロスセリング

 

本題に入る前に、コメント掲載のご紹介を。

14日の朝日新聞「保険『窓販』高い手数料」
(10月からの手数料開示を扱った記事です)で、
コメントが載りました。

「手数料が顧客の知らないところで上がって
 いくことは防げるだろう」

というものです。

日本の銀行窓販は複数の保険会社の商品を
銀行が取り扱うのが一般的なので、どうしても
手数料引き上げ圧力がかかりがちです
(もちろん手数料だけではありませんが)。

今回の手数料開示によって、水準を下げるのは
難しいとしても、引き上げ競争となるのを抑える
効果は期待できるのではないかと考えています
(甘いでしょうか?)

さて、米国大手銀行ウェルズ・ファーゴのCEOが
不正なクロスセリングの問題で辞任しました
(12日発表)。⇒ Wells Fargoのサイトへ

問題が表に出たのは9月8日です。
顧客に無断で預金口座やクレジットカードを
大量に作成していたということで、監督当局に
1.85億ドルの制裁金を支払うという内容でした。

ウェルズ・ファーゴの調査によると、2011年以降、
不正に開設した預金口座は150万件、
クレジットカードの発行は56.5万枚に上るとか。

金利水準が低いなか、預貸の利ざやで稼ぐのが
難しいのは米国も同じで、非金利収入のウエートが
高まる傾向にあります。
ウェルズ・ファーゴでは2015年の非金利収入比率は
47%に達しています。

なかでも同社は同一顧客への重ね売りに注目し、
20年ほど前からクロスセリングを推進してきました。
同社の顧客当りのクロスセル率は競合他社を
上回っている模様です。

ここまで不正な口座開設等が広がった背景は
まだよくわかりませんが、米当局(CFPB)によると、
「開設に伴うボーナス」「販売目標の存在」などが
挙がっています。

クロスセリングは日本の金融・保険業界でも
一般的な戦略です。

損保が設立した生保子会社のビジネスモデルは
損保代理店による生保クロスセリングでしたし、
日本の銀行でもクレジットカードや住宅ローン、
グループ会社の運用商品などを提供しています。

しかし、クロスセル戦略は顧客ニーズというより、
売り手のニーズが強く出た戦略だと思います。
多種目販売により顧客との関係を強めることが
できますし、何より顧客当りの単価が高まります。

もちろん、顧客にとって有利な場合もありますが
(例えば割引がある、まとめると便利、など)、
すべてがそうとは限らないでしょう。

もし顧客満足度を高めるようなクロスセリングが
できなければ、顧客との関係を強めるどころか
事業基盤を破壊してしまいます。
米銀の事例は対岸の火事ではありません。

※「鉄博ナイトミュージアム」に行ってきました!

 

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農協改革

 

滋賀県大津市に行きました。
目的は町歩き、ではなくスピーチでした。

農業開発研修センターが主催する
「JA共済総合研究会」で、JA共済にとって
隣接業界である保険業界の現状等について
話をしてきました。

保険業界(特に保険流通)が改正保険業法への
対応に追われている同じ時期(2016年4月)に、
農協改革を目指す改正農協法が施行となったのを
ご存じでしょうか。
農水省のサイトへ
 ※資料1と資料5がわかりやすいです

改正法では、「農協組織の主役は農業者であり、
次いで地域農協」ということで、地域農協による
自由な経済活動を促し、中央会・連合会には、
地域農協の活動を制約せず、適切なサポートを
求めるような各種の改革が盛り込まれています。

例えば、連合会は会員農協に対し、事業利用を
強制してはならないと規定されました。

また、これまでは全国中央会が農協の監査を
行ってきましたが、遅くとも2019年度からは
公認会計士による監査が義務付けられます。

正・准組合員数が逆転するなかで、議論となった
准組合員の利用規制に関しては、改正法施行後
5年間の利用状況などを踏まえ、検討するそうです。

農協改革はこれで終わりではなさそうなので、
保険業界にとっても、今後の農協改革の動向に
注目しておいたほうがよさそうです。

ところで、大津に行ったらぜひ見たかったのが、
長編成の路面電車です。

人口34万人の大津市では、京阪電車の2路線が
都市交通の重要な機能を担っています。

2つの路線のうち、京津線は京都の中心部では
地下鉄だったものが、峠(逢坂山)を超え、最後は
路面を走るという異色の路線です。
4両編成の電車が道路上を走る姿は壮観でした
(地元のかたには日常風景なのでしょうけど)。

路面区間に駅はなく、車両も現代風なので、
いわゆる路面電車のイメージとはかなり違います。

しかし、4両編成なので輸送力があり、
駅が小さくて簡素なので乗り降りも便利です。
路面区間を除けばそれなりのスピードで走ります。

ヨーロッパに行くと、長編成の市内電車が
郊外まで足を延ばす例をしばしば見かけます。
京津線はこれに近い路線ですね。

参考までに、もう一つの石山坂本線は2両編成で、
こちらは地域密着型の路線でした。
関東で言えば江ノ電に似ているかもしれません。

 

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2016年版の生保・損保特集

 

2016年版の週刊東洋経済臨時増刊
「生保・損保特集」に寄稿しました。

タイトルは「未曽有の利回り曲線平坦化に
生保経営はどう対応するのか」です。

ご参考までに見出しを引用すると、

・イールドカーブ平坦化で生保の健全性は
 実質悪化

・保障性商品を提供すれば低金利の影響は
 軽微だが…

・販社として品ぞろえ重視か、引受会社として
 規律重視か

ということで、だいたいの中身は推察して
いただけるのではないかと思います。

「保険は相続の際に受取人を指定できるので
 預貯金とは違う役目があるのに、売り止めって
 ありえない! 頭にきています」
 (41ページの覆面座談会から引用)

といった声があるなかで、引受会社としての
規律を維持できるかどうか注目しています。

今回の特集号は、第一特集がマイナス金利、
第二特集が保険デジタル革命でした。

確かに保険デジタル革命は、保険業の
ビジネスモデル自体を変えてしまうほどの
強烈なパワーを秘めているのかもしれません。

ただ、今のプレーヤーにとっては、現在の
逆境を乗り越えなければ、未来はありません。

「数年はマイナス金利が続き、それが終わっても
 低金利が続くシナリオは考えておくべきです。
 商品、資産運用、財務基盤の三つで構造を
 変える必要があります」
 (26ページの日本生命・筒井社長)

「貯蓄性分野では利率保証型は縮小し投資型が
 大きくなります。さらに貯蓄性から保障性商品に
 ポートフォリオを大幅にシフトします」
 (34ページの明治安田生命・根岸社長)

「マイナス金利が長期化するほど業界の破壊は
 進みます。(中略)業界にとってはよくないこと
 ですが、当社にはむしろ成長のチャンスです」
 (101ページのメットライフ生命・シャー社長)

トップがここまで発言するのですから、経営を
過去とは違う形に大きく変えていこうとしている
のでしょう。
「資産運用の高度化」「商品開発力の強化」
といった次元の取り組みではなさそうです。

会社ごとの戦略の違いが、来年の特集号が
出るころには見えてくるのかもしれませんね。

※写真左は「新田橋」、右は「平久橋」です。
 どちらも橋の近くに波除碑がありました。

 

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健康年齢

 

バイタルデータ(生体情報)、すなわち、BMIや血圧、
コレステロールといった健康状態に関連する指標を
使った保険商品・サービスが注目されています。

20日には、第一生命グループの一員である
ネオファースト生命が「健康年齢」を活用した
生活習慣病保険を12月に発売すると発表しました。
ネオファースト生命のサイトへ

ノーリツ鋼機グループの日本医療データセンターが
保有する約160万人の健診データ等の医療情報を
もとに健康年齢を判定し、更新時の保険料を決める
という仕組みです。

日本データ医療センターの医療情報を保険料算出に
活用した商品は、すでにノーリツグループが設立した
健康年齢少額短期保険会社で販売されています。
健康年齢少短保険のサイトへ

1年更新の医療保険で、5大生活習慣病(がん、
脳卒中、心筋梗塞、高血圧、糖尿病)で入院したら
80万円の給付金を受け取れるというものです。
毎年、「健康年齢」を算出し、保険料が決まります
(ネオファースト生命の「健康年齢」とは別の基準)。

試しに健診データを入力してみたところ、
実年齢よりかなり若い結果が出て、思わずニッコリ。

ただ、考えてみれば、どうしてこの健康年齢に
判定されたのか、〇歳という総合評価だけなので、
見当がつきません。

これまでのバイタルデータを使った保険では、
例えば「ノンスモーカーかどうか」などのように、
ある程度の納得感がある指標で割引が決まります。

これに対し、「健康状態が良好であれば、保険料が
安くなる(または、割引がある)」のはわかるものの、
何となくブラックボックス感が強いという印象です。

総合評価だけでなく、判定についての説明があると
いいのかもしれませんね。
更新時までの生活の参考になるかもしれません。

あるいは、健康年齢が低いと生活習慣病に
どの程度かかりにくいのかというデータを示すのも
一案ではないでしょうか。

リスク細分型の保険では、もちろん、信頼できる
客観的な指標を使うことが大前提ですが、
それをどう示し、顧客にいかに納得してもらうかも
普及のカギとなるように思います。

※写真は金山の大堰と小学校です。

 

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