inswatchへの寄稿など

いくつかの媒体に執筆した記事が載りましたので、まとめてご紹介しましょう。
まずは直近のinswatch Vol.923(2018.4.9)に執筆した記事をそのまま転載します。

金融庁と業界団体の意見交換会

中央官庁の情報開示姿勢が問題になっていますが、インターネットの普及とともに、かつてに比べれば官庁から公表される情報は格段に増え、かつ、入手しやすくなっているのは確かです。
昨年から公表されるようになった「業界団体との意見交換会において金融庁が提起した主な論点」をもとに、保険業界に対する金融庁の問題意識を探ってみましょう。

金融庁と業界団体との意見交換会とは

この意見交換会は金融庁幹部と業界団体(実質的には業界各社のトップ)が直接会って話をするというもので、10年ほど前から行われているようです。
大蔵省不祥事の後、官と民の交流を過度に避けるような風潮が広がってしまった反省から、このような会を開くようになったと理解しています。

論点の公表が始まった昨年1月以降、「生命保険協会」「日本損害保険協会」との意見交換会はそれぞれ6回ありました。ちなみに「主要行」は12回、「全国地方銀行協会(地銀協)」「第二地方銀行協会」はそれぞれ13回だったので、銀行がほぼ毎月開催だったのに対し、保険は2月に1回という頻度でした。
開催頻度と金融庁の問題意識の関係は定かではありませんが、参考までに「日本証券業協会」は9回開かれています。

主な論点

最近公表された2月の意見交換会の主な論点は次のとおりです(保険業界出席分のみ)。

・マネロン等に関するガイドラインの公表 ※銀行業界と共通
・ERMの取組み
・金融業界横断的なサイバーセキュリティ演習 ※証券業界と共通
・検査・監督の見直し
・スチュワードシップ責任 ※生保のみ
・販売時の分かりやすい情報提供等 ※生保のみ
・「遺伝」情報の取扱い ※生保のみ

このうち「ERM」では、一部の生損保で地政学リスクやパンデミックなど定性的なリスクを網羅的に把握する取り組みが遅れているという指摘がありました。

「販売時の分かりやすい情報提供等」では、生命保険商品は特に複雑で、顧客との情報の非対称性に関する課題が多いという問題意識を示したうえで、

「特に、投信と類似の貯蓄性保険商品については、『運用』という同様の機能を提供する金融商品である以上、各種のリスクや、費用を除いた後の実質的なリターンなどについて、投信と同じレベルの情報提供・説明が求められる」

と、顧客に分かりやすい情報提供の工夫を求めています。
(なお、昨年12月の意見交換会では損保や乗合代理店の話も出ています)

金融庁の改革

「監督・検査の見直し」では、「検査マニュアルに書いてあるルールよりも良いやり方があれば、それを試みやすい環境を作りたい」「社内での議論に際し、一つひとつの問題を経営全体の中で考えやすい環境を作りたい」「金融庁の側においても、金融行政の根本目的に立ち返って考えることができる力をつけるようにしたい」と、新しい時代の金融行政を感じる記述が並んでいました。
もっとも、「金融庁の組織を変えたり、検査マニュアルをなくしたり、といっても、検査官がいなくなるわけでも、検査がなくなるわけでも、監督が甘くなるわけでもない」という記述も見られます。ここ数年、かつてのような立入検査が少ないため、仮に現場の規律が緩んでしまっているとしたら、要注意でしょう。(転載終わり)

次に、先日ご紹介したAERAの記事がサイトで読めるようになったので、こちらも張り付けておきましょう。
台風、豪雨、地震…自然災害「大型化」のいま、損保は破綻しない? 専門家が解説
保険会社、どう選ぶ? 知っておきたい三つの「指標」

もう一つ、先週の週刊金融財政事情(2018.4.9)の書評「一人一冊」で、大門正克さんの「語る歴史、聞く歴史」を取り上げています。岩波新書です。「オーラル・ヒストリーの現場から」という副題がついています(こちらはご紹介のみ)。

※写真はドンラム(DUONG LAM)村というところで、伝統的な農村集落として知られています。ハノイから車で1時間ちょっとです。

 

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ベトナムから日本へ

再びベトナムの話で恐縮です。
ハノイから羽田への帰国便に乗ったら、フライトはANAだったのに、周りがベトナム人ばかりで驚きました。満席に近いエコノミークラスのお客の大半がベトナム人だったのです。
私の隣に座った女性は新宿の日本語学校に通うとのことで、食糧でも入っているのか、かなり重たい荷物を持っていました(棚に入れるのを手伝ったら、ズシッときました)。前の席の3人組は観光旅行らしく、「渋谷のどこどこに行きたい」なんて話をしていたようです(たぶん)。

在留ベトナム人が急増

それにしても、日本のキャリアでここまで日本人が少ない便に乗ったのは初めてでした。ちょっと気になったので、帰国後に関係ありそうなデータを探してみました。

法務省が3月2日に公表した外国人入国者数(確定値)によると、2017年に日本に入国したベトナム人は32万人で、前年より31%も増えたそうです(入国者全体では同18%増)。日本を訪れる外国人が5年前の3倍に増えているなかで、ベトナムからの入国者は5倍にもなりました。

これだけ増えれば日本へ向かう便がベトナム人ばかりとなっても不思議はありません。
ただし統計を見ると、中国をはじめ他国の場合には、入国者の9割以上が観光などの短期滞在者なのに対し、ベトナムの場合、短期滞在目的は入国者の57%にすぎないこともわかりました。

そこで、次に3月27日公表の在留外国人数の推移を見てみると、ベトナム出身の在留者が急激に増えたのはこの5年間のことでした。いまやベトナム人在留者(26万人)はフィリピンやブラジルよりも多く、中国(73万人)、韓国(45万人)とともにトップ3の地位を占めています。

地方の人手不足を埋め合わせ

在留資格別の統計を見ると、ここにも際立った特徴がありました。ベトナムからの在留者は「技能実習」「留学」の割合が75%(在留外国人全体では32%)を占めています。しかも「技能実習」は前年の4割も増えました。

つまり、多少の想像を交えて言うと、日本を訪れるベトナム人が急激に増えているのは、観光もさることながら、いわゆる「出稼ぎ」が多いとうかがえます。もしかしたら「留学」も、主目的はアルバイトで稼ぐことなのかもしれません。
さらに統計を見ると、外国人在留者の多くが大都市圏に集中する一方、「技能実習」の外国人(ベトナム人が5割弱を占める)はむしろ地方に多いので、地方の人手不足を来日したベトナム人で埋めている構図が浮かんできます。

私の乗った帰国便がベトナム人ばかりだったのは偶然かもしれません。しかし、最近も「技能実習生として来日したベトナム人が福島県で除染作業に従事」というニュースもあったことですし、日本とベトナムの関係を改めて考えるきっかけになりました。

 

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2度目のハノイ

娘と2人でベトナムの首都ハノイに行ってきました。

せっかくの2人旅ということで、いろいろと考えた末、旧市街のB級グルメをめぐるウォーキングツアーに申し込んだところ、これが大当たりでした。
私たちが参加したのは、料理のプロ(アイさん)が案内してくれるというもので、アイさんの解説(英語です)を聞きながら、3人で夕方から夜にかけて旧市街を食べ歩きました
(ご参考までに「安南パーラー」という日本人が経営するカフェ経由で申し込みました)。

16:00に旧市街のカフェに集合し、ツアーの始まりです。

1.揚げバナナ

 冬のおやつのようです。路上で揚げたてをいただきました。

2.串焼の豚

 焼き鳥かと思ったら豚肉でした。アイさんから作り方を教えてもらいましたが、タレに漬け込み、炭火で焼くなど、結構手間がかかっているようです。これも路上グルメです。

3.ビアホイと揚げだし豆腐

 ビアホイとはハノイの生ビールで、普通のビールよりもアルコール度数がやや低めです。大きなタンクも見せてもらいました。つまみの揚げ出し豆腐も絶品でしたね。
 店内は男性客ばかり。アイさんいわく、「ここはハノイのメンズ・オフィスと言われています」とのこと。

4.揚げパン

 正確にはパンではなく、小麦をつかった棒状のもので、小さな店で揚げていました。
 店の前には行列ができていて、皆さん一人10本くらい買っていました。そのまま食べるだけでなく、フォーやおかゆなどに入れるのだそうです。

(アイさんのレストランでトイレ休憩)

5.民家で食べるフォー

 フォーも美味しかったのですが、何よりその場所にびっくり。自宅を一定時間だけ開放し、フォーを提供しています。お客は靴を脱いで店内(?)に入ります。
 フォーを食べているその横の部屋では、そこで暮らす子どもたちが遊んでいて、なんとも生活感あふれる「食堂」でした。

6.バインミー

 バインミーはフランスパンにチャーシューやパテ、野菜をはさんだサンドウィッチ。
 訪れた店(Banh Me 25)は旧市街の有名店とのことで、何といってもパンが美味しかったです。

7.チェー(伝統的なスイーツ)

 最後は暖かいスイーツで締めくくり。ゴマあんの入ったお餅のデザートと、あずき(正確には黒豆だそうです)のおしるこの2つを選びました。一見すると路面店のようでしたが、奥にカフェスペースがあり、こちらは女子ばかりでした。

いかがでしょうか。旧市街は普通に歩いても楽しいところですが、ガイドさんと行くB級グルメの食べ歩き、おすすめです。

 

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AERAに寄稿しました

今週発売のAERA(アエラ)2018.4.9号に、生損保経営の現状と、経営を知る手掛かりとなる指標について書いた記事が掲載されています。タイトルは「気になる海外のリスク」ではありますが、そこだけ取り上げたものではありません。
生保の注目指標として、あえて「基礎利益」はスルーして、エンベディッド・バリューを載せてしまいました^ ^

この号は「保険料『値下げ』の衝撃」という保険特集です。雑誌の保険特集というと、プロがすすめる保険商品ランキングや保険ショップ関連の記事が目立つ印象がありますが、AERAの特集はちょっと毛色が違っていて面白かったです。
例えばこちらとか、こちらには破綻や再編、行政処分の歴史が出ていて、足もとの動きだけでなく、業界動向を過去からの大きな流れで捉えようとしています。

破綻前日に「明日、これが紙くずになると知っているけど、売れないよな」と語った経営幹部が旧T社(もし生保だとしたら非上場の旧K社ですね)に本当にいたのかなあとは思いましたが…

※今年は「花筏(はないかだ)」も楽しめました。先週末の江戸川公園です。

 

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海外M&A研究会報告書

経済産業省の「我が国企業による海外M&A研究会」(座長は早大の宮島英昭教授)の報告書が公表されたので、さっそく読んでみました。
報告書の概要と、重要ポイントをまとめた「9つの行動」もあわせて公表されていますが、本文のほうが具体的にいろいろと書いてあり、参考になりそうです。
経産省のサイトへ

以前私は、東洋経済の特集号で保険会社の海外M&Aについて書いた際、M&Aそのものがゴールではなく、1)そもそも海外事業で積極的なリスクテイクを行うという経営判断がいかになされたのか、2)海外大型M&Aの実行、3)買収先をグループのメンバーとしていかに経営体制に組み込むか、の3つの局面について述べました。
この報告書でもM&Aの実行局面のみならず、「前」と「後」の重要性を踏まえ、「海外M&A成功に向けた3つの要素」として次の3つに整理して説明しています。

・M&A戦略ストーリーの構想力
・海外M&Aの実行力
・グローバル経営力

日本企業による海外M&Aの特徴

日本企業による海外M&Aを扱った報告書なので、日本企業を意識した記述をいくつかご紹介しましょう。

「いきなり大きな案件や複雑な案件に取り組むのではなく、ある程度小型の案件で自社の海外M&Aの経験値を高めてから、より複雑な大規模案件に取り組むという戦略的アプローチを意識的に実行している海外企業は多い」(p.18)

「特に投資銀行等の外部からの持込案件については、戦略より案件が先行し、準備期間が短く、結果として買収前の想定と、買収後明らかになった実態との乖離が大きいケースがある」(p.27)

⇒ 日本企業は身の丈に合った海外M&Aではなく、特に外部からの持込案件などで、対応可能範囲を超えたリスクを伴う案件や、買収金額が高すぎる案件に乗り出してしまう可能性が高いということかもしれません。

「日本企業の中には、交渉の場に大勢の関係者が参加するが、結局意思決定を行える者が誰なのかよくわからないケースや、交渉の場で提起された論点についてその場で決定せず持ち帰るケースがある。こうしたケースでは、売り手からすると意思決定者が誰かわからず、疑念が増し、信頼感を損なうことが懸念される。さらに最悪のケースは、条件交渉をFAや投資銀行の担当者に全て任せてしまうことである」(p.50)

⇒ 実感としてはケースバイケースのように思いますが、このような事例も多いのかもしれませんね。

「日本企業では『飲み会』や企業をあげた地域行事への参加など、業務時間外で従業員同士が集まる機会も多いことから、企業の価値観や風土融合を重視するのは日本企業の特徴と思われがちであるかもしれない。しかし、欧米企業でもPMIにおけるチームビルディングを通じて信頼関係を構築する取組みが行われており、また日本企業が欧米企業を買収する場合にも風土融合の施策に積極的であるという事例もみられた」(p.66)

⇒ 企業の価値観や風土融合を重視するのは日本企業だけの特徴ではないという指摘は、当然と言えば当然ですが、興味深いです。

「日本企業は、欧米の買収者に比べ相手企業の既存経営陣への依存度が高く、買収後も経営陣が買収前に有していた権限を害しないように独立した会社として運営する傾向が強いという指摘がある。しかし、経営ビジョンや価値観を共有できない場合や買収先のさらなる成長を目指すうえで経営者として実力や倫理観が不足と判断される場合には、躊躇なく買収前の経営陣を交代させることも必要である」
「企業価値を創出するのは買収者であり、買収者たる企業自身で主体的に買収プレミアムの回収を可能とする業績向上策に取り組むべきものであり、買収先の経営陣にその全てを任せていても、買収プレミアムの回収は担保されない」(p.68)

⇒ 「企業価値を創出するのは買収者」というのは重要な指摘ですね。

「海外M&A は買い手にとっても変革を実現する絶好の機会でもあり、海外M&A によって自身をグローバル化していくことも海外M&A の成果の一つである」
「欧米企業は、リスクは顕在化した時点で対応すればよいという姿勢である一方で、まだまだ日本企業はリスクを過度に回避しようとする傾向が強いとされる。過度のリスク回避、慎重さは、成長阻害要因であり、可能な限りの準備をして実施し、リスクが顕在化したらそれに全力で当たるという姿勢が重要ではないだろうか」(p.87)

⇒ M&Aにかぎらず、リスクテイクを促すのであれば、失敗に寛容な企業文化や社会風土(メディアを含む)が必要ですね。

ヒアリング協力企業の顔ぶれを見ると、金融・保険業は含まれていませんでしたが、実際の体験を踏まえた記述も多く、参考になると思います。

<ヒアリング協力企業>
 旭化成、亀田製菓、関西ペイント、グローリー、小松製作所、サトーホールディングス、サントリーホールディングス、ダイキン工業、電通、ニコン、日本板硝子、日本たばこ産業、日本電産、日本電信電話、日立製作所、ボッシュ パッケージング テクノロジー、丸紅、リクルートホールディングス

※写真は浜離宮です。

 

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20回目のオープンセミナー

保険代理店の情報交流組織であるRINGの会が主催する「RINGの会オープンセミナー」が今年で20回目を迎えます。
RINGの会 オープンセミナー

第1回のセミナーが開かれたのは1999年10月で、当時日本FP協会理事長だった牧野昇氏の基調講演の後、保険ジャーナリストの中崎章夫さんと石井秀樹さんをパネリストに迎えた「これからの保険業界」、RINGメンバーによるパネルディスカッション「勝ち残る代理店営業戦略は何か?」という構成だったようです。

1999年10月といえば、三井海上と日本火災、興亜火災の3社が将来の事業統合・再編を目指した包括提携を発表し、損保業界再編の口火が切られた時でした。その後、第1次再編、第2次再編を経て、現在のような3メガ損保グループが市場シェアの大半を占める状態となりました。
他方、生保では1999年6月に東邦生命の経営が破綻し、その後も中堅生保の経営破綻が相次ぐとともに、外資系・損保系生保の存在感が高まっていくことになります。

日本最大級の保険流通セミナーに成長

オープンセミナーに話を戻しますと、毎年1回のペースでセミナーが開かれ、近年はパシフィコ横浜の国立大ホールで1000人規模の保険流通関係者が集まる大イベントに成長しました。

私がオープンセミナーに関わるようになったのは2007年の第9回からで、途中からアドバイザーに就任したこともあって、これまでに5回登壇しています。
そして20回目の今回は、午前中のパネルディスカッション「自由化後20年 保険ビジネスはどこに向かうのか」のコーディネーターを務めることになりました。

パネリストは、生損保経営の経験があり、今は日本最大級の来店型代理店トップを務める窪田泰彦さん、長年にわたり外資系保険会社(AIGですね)の経営を担ってきた横山隆美さん、日本損害保険代理業協会の専務理事として10年近く保険代理店に寄り添ってきた野元敏明さんです。
いずれも保険業界を「よく知っている」皆さんですから、コーディネーターとしては、保険流通の現場ではなかなか聞くことのできない話をお届けできるのではないかと、自分でも楽しみにしています。

予定調和ではないプログラム

それはそうと、今回のプログラム全体を見わたすと、会場の多くを占めるであろうプロ代理店の経営者は1人(ソフィアブレインの小坂学さん)しか登壇しません。
第2部は保険会社の未来戦略の本当のところを中崎ジャーナリストが引き出そうという企画ですし、第3部は「真の顧客本位とは何か」について深掘りするものです。

これまでのオープンセミナーでは、第2部または第3部にプロ代理店の経営者がずらっと登壇し、成功事例や工夫している取り組みを語っていただく。それを聴いた会場のプロ代理店の皆さんも話に納得し、安心して帰る、というパターンが多かったように思います(あくまで個人的な見解です)。
しかし、20回目の節目を迎えた今回は、いろいろと検討した結果だとは思いますが、そのような予定調和的な企画ではない、ある意味挑戦的(挑発的?)なプログラムのようです。

「代理店が主役ではないのか?」「上から目線?」そんなお叱りもあるかもしれませんが、保険流通に関わる皆さんは、6月にぜひ横浜にお越しいただき、RINGの会の挑戦を正面から受け止めていただければと思います。

↓お申し込みはこちらから↓
RINGの会 オープンセミナー

 

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ネット損保 淘汰の波

3月20日の日経新聞にコメントが載りました。
「ネット損保 淘汰の波」「解禁20年 シェア1割届かず」という記事のなかで、ダイレクト自動車保険市場が伸び悩んだ背景について、

「価格競争に陥ることなくサービス競争を展開した大手損保の戦略が奏功した」

とコメントしています。
日経記事のサイトへ(有料版)

実は半年前の産経新聞の記事に載った私のコメントは、

「(今後の市場動向について)ゆるやかに増加する傾向は今後も続くだろう。ただ、インシュアテックの技術が進めば、ビッグデータなどを活用し、個人に合わせた個別性の高いサービスや保険が生まれることも考えられる」

「(インシュアテックの進展とともに)通販型保険の市場は今後、大化けする可能性がある」

というものでした。

どちらも取材では同じような話をしているのですが、20年もたったのに未だシェアが1割弱というところに注目すると今回のような記事になり、技術革新や技術革新に伴う社会の変化が従来の保険ビジネスを大きく変える可能性があると考えれば、産経記事のような話になるのでしょう。

※築地には戦前の町家建築が残っています。下の写真は築地本願寺です。

 

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公文書の書き換え

国立国会図書館では「調査と情報-Issue Brief-」という、時々の国政上の課題に関する簡潔な解説レポートを出しています。
2月27日号はタイムリーなことに「行政機関における文書管理-国の説明責務に係る論点と改善方策-」で、行政の文書管理制度がどのように変遷してきたかをわかりやすくまとめていました。

本稿によると、日本で国民共有の知的資源としての公文書管理制度が確立したのはつい最近のことだとわかります。久しく行政運営の能率化という内部目的のために行われてきた公文書管理に、情報公開制度の整備が進むなかで、ようやく2011年に「公文書等の管理に関する法律(公文書管理法)」が施行され、「国の活動を現在および将来の国民に説明する責務を全うすること」という目的が加わりました。

しかも、2016年に総務省が実施した「公文書管理に関する行政評価・監視結果報告書」では、公文書管理法の趣旨および公文書管理法に基づくルールについて、文書管理者を含む職員に十分徹底されていない状況にあるという指摘がなされているとわかりました。
本稿ではこうした状況を踏まえ、行政機関内部による改善と、外部の関与による改善を示しています。

今回の件で、公文書(決裁文書)の書き換えが起こりうるとわかってしまった以上、政府はかなりの取り組みをしなければ国民の信頼回復はできません。また、国民も忘れずに追求し続ける必要があります。

記録を残すことも促してほしい

おそらく今後、原因究明を進めるとともに、再発防止策が検討されるでしょう。その際、書き換えが起こらない仕組みを作るだけではなく、ぜひ文書主義の原則を徹底し、個人メモではなく行政文書として記録を残すことを促すような仕組みも作ってほしいと思います。

行政のみならず、日本では文書として記録を残す、あるいは、業務などを文書化するという習慣や文化が総じて薄く、議事録が残らないところで実質的な経営判断が行われていたり、担当者が変わると業務のやり方が大きく変わってしまったりしがちです。
しかし、家業であればまだしも、政府や大会社といった組織において、納税者や株主、債権者、従業員といったステークホルダーから透明性を求められるのは当然の話であって、「内輪の話は外に出さない」では済みません。

そもそも記録に残すのは意思決定を明快に行うためでもありますし、後世の歴史家だけでなく、今の自分たちに役立つ話でもあります。
なぜ記録を残すのか

決裁文書の書き換え発覚という前代未聞の事件を受けて、行政がかえって記録を残さなくなり、透明性が後退してしまうのであれば、文書管理制度を整備してきたこれまでの取り組みが無駄になりかねません。
表面的な書き換えや紛失の防止だけでなく、ぜひ「記録を残す」ことにも配慮した改革に期待したいです。

※小田急の複々線化がついに完成しましたね。いつか赤いロマンスカー(GSE)にも乗ってみたいです。

 

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自由化後の自動車保険

直近の「損害保険研究」(第79巻第4号)に「損害保険自由化20年目の検証」という、自由化後の自動車保険の推移に関する論文があり、興味深く拝読しました。筆者は元損害保険料率算出機構職員の大島道雄さんです。

自由化で保険料は下がらなかった

本稿で大島さんは、各種統計資料データから自由化後の自動車保険の推移を調査した結果、期待された事業費率の低下や保険料単価の低廉化は認められず、両者はむしろ上昇傾向にあることを指摘しています。

大島さんによる主な考察結果は次のとおりです。

<事業費率>
・自動車保険の事業費率は算定会料率時に比べ一時的であっても低下することはなく、2005年以降は逆に上昇している(損害調査費率の上昇が主因)。
・損保事業全体の事業費率の低下は、もっぱら保険会社の人件費削減によって賄われ、代理店手数料費率の低下には及んでいない。

<損害率>
・自動車保険の特約部分はどの年次においても極めて高い損害率を示し、全体の損害率の悪化を招いている。

<保険料単価>
・自由化以降、保険料単価を切り下げる競争が展開されたが、下押し効果は全体で見れば数%と推定される。
・他方、特約が多数販売され、自由化による保険料低減額以上の収入が得られている。
・年齢構成や車齢の伸びなど、自由化とは関係なく参考純率を押し下げる要因も長期にわたり認められる。

とりわけ、「インシュアランス統計号(=特約を含む保険料・保険金)」と「損害保険料率算出機構統計集(=参考純率に対応する保険料・保険金)」の差に着目することで、特約部分の単価や収支を分析しているのが素晴らしいと思います。

ダイレクト自動車保険の普及ペースが緩やかだったこともあり、単純な料率競争による収支悪化よりも、むしろ特約競争による収支悪化を招いたというのは、私の認識とも同じです。
しかし、特約競争による収支悪化も、本来必要な保険料をとれていなかったという意味では実質的に料率競争と同じですし、(大型再編もあって)人件費や物件費を引き下げたからこそ、この程度の料率引き上げで済んでいる可能性もあるので、保険料単価が自由化直後と同じ水準に戻ってしまっても、自由化の効果が全くなかったということではないかもしれません。

ただし、ここ数年にかぎれば、事故あり等級の導入によって、かつての自動車保険とは違い、実質的に少額損害をカバーしない保険に変わっています。自由化後の市場で担保範囲の半強制的な縮減が起きたことをどう捉えるか、という議論はありそうです。

企業代理店の存在

ところで、本稿では日本の損害保険販売網についても分析し、「根幹をなす大規模乗合代理店をはじめとする大規模代理店の存在が、代理店手数料費率の低下の阻害要因となったと考えられる」としています。数では全体の1/4弱にすぎない乗合代理店が、扱い保険料で70%を占めていることから、主に企業代理店(いわゆる機関代理店)であるとしているのですが、ここはちょっと違和感を感じました。

例えば、販売チャネル別営業成績を開示している損保ジャパン日本興亜(決算データ集を参照)では、企業代理店の収入保険料は全体の19%、自動車保険だけだと13%にすぎず、他方で専業プロが29%、自動車保険だけでは39%を占めています。市場全体でも「根幹をなす」と言うほど機関代理店の存在は大きくないかもしれません。

自動車保険では企業代理店よりもディーラー代理店が気になるところですが、何かを語れるほど公表データがないのが残念です。

※写真は井の頭公園です。池の水を戻しているところでした。

 

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金融機関窓販マーケット

日本生命によるマスミューチュアル生命の買収が発表されました(3月2日)。
三井生命を含む3社により、「金融機関窓販マーケットにおけるお客様からのご要望に幅広くお応えする体制構築を目指してまいります」ということで、日本生命はマスミューチュアル生命の富裕層向け商品供給力や証券会社・メガバンク等へのサポート体制を評価した模様です。
日本生命のサイトへ

現在の主力は外貨建て

その金融機関窓販マーケットでは、2007年12月の全面解禁から10年(銀行の場合)たったとはいえ、依然として販売の中心は一時払の貯蓄性商品となっています。
中核となる商品は、2008年のリーマンショックころまでは最低保証のある変額年金、その後は円建ての定額商品に移行しました。さらに、2012年あたりからは外貨建て商品の販売が目立つようになり、最近では、マイナス金利政策などによる円建て商品の退潮を受け、外貨建て商品が窓販マーケットの主力を占めています。

顧客の中心が預金を持つ高齢の「資産活用層」だとすると、ニーズが変わったというよりは、保険会社がその環境で供給できて、かつ、やはり金融機関が販売しやすいものが提供されているのでしょうか。
(資産活用層ではなく)資産形成層向けの商品に急に切り替えるのは無理だとしても、アベノミクス以降、ある程度株価に連動するような商品がもう少し売れてもよさそうなものですが、外貨なのですね。

2強の強みは何か

この市場は金融機関という第三者の有力チャネルが販売を担うことから、保険会社が市場シェアを確保し続けるのが難しいマーケットでもあります。実際、過去にはトップシェアの会社が毎年変わるようなこともありました。
しかし、ここ数年は「第一フロンティア生命」「三井住友海上プライマリー生命」が2強として、高いシェアを継続的に確保しているようです。

いずれも国内系なので、外貨の運用能力を販売会社向けにアピールするというのは無理がありそうですし、それぞれ「第一生命」「三井住友」の存在があるとはいえ、市場全体で2、3割のシェアを確保し続けるには、特定の親密先だけでは難しいでしょう。
ただ、両社は金融機関窓販に特化した保険会社という点で共通しており、商品開発力の早さとか、意思決定のスピードとかいった、専門会社であることのメリットを最大限活用できているのかもしれません。

会見によると、日本生命はグループ3社を無理に統合せず、それぞれの強みを生かしていくとのことで、その点は理解できますが、マスミューチュアル生命がいろいろな意味でユニークな会社ということもあり、せっかくの買い物をどう生かしていくか、今後の取り組みに注目です。

※築地市場で古い線路を再利用した柵がいくつもあるのを見つけました。当時の貨物線で使っていたものでしょうか?

 

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