生損保決算は分析途上ということで、別の話を。
大学のガバナンス不在が取り沙汰されていますが、日本企業のコーポレートガバナンス改革もまだまだ道半ばという印象です。コーポレートガバナンス・コードの改訂(もうすぐ公表されると思われます)や、経産省CGS研究会(第2期)が5/18に発表した「第2期中間整理-実効的なコーポレートガバナンスの実現に向けた今後の検討課題」など、新たな取り組みや課題整理が次々に出てくるのも、形は整えても魂が込められていないという現状があるのでしょう。
コーポレートガバナンス・コードは法令ではなく、上場企業に求められる行動規範であり、それぞれの原則を実施(コンプライ)してもいいし、実施しないのであれば、その理由を説明(エクスプレイン)すればいい、というものです(コンプライ・オア・エクスプレイン)。
ところが、東証が集計したコーポレートガバナンス・コードへの対応状況(2017年7月時点)を見ると、一部の原則を除いて圧倒的に「コンプライ」が多くなっています。
しかし、例えば先日のブログ「いつまで『社長が社長を選ぶ』なのか」で紹介したような、98%のコンプライにもかかわらず、確認してみると実態は違っているということが、徐々に見え始めています。
公表内容のボイラープレート化(=ひな型的で具体性を欠く記述)も目立ちます。先週末に参加した日本ディスクロージャー研究学会の大会では、業種の異なる3社の役員報酬に関するディスクロージャーが、全く同じ文言となっているケースが紹介されていました。おそらく外部の専門家によるひな型をそのまま使っているのでしょう。
コーポレートガバナンス・コードの「コンプライ・オア・エクスプレイン」は、実施すればいいというものではなく、自らのコーポレートガバナンスを確認し、ステークホルダーに理解してもらうためのものだと思うのですね。
それなのに、コンプライしているという事実と、紋切り型の記述(それも開示項目のみ)しか出さないとなると、外部からは評価のしようがありませんし、内部規律も働かないでしょう。コンプライでもエクスプレインが必要なのです。
(その意味で、上場保険会社のERM関連情報の開示は参考になると思います)。
非財務情報の開示には、引き続き課題がたくさんありますね。
※写真は横浜市大です。横須賀のワインを初めて飲みました。