大手生保の健康増進型保険

インシュアランス生保版(2018年8月号第4週)に寄稿したコラムをご紹介します
(今回も見出しを付けてみました)。

大手生保が相次いで投入

今年に入り、大手生保が相次いで健康増進型の保険を市場に投入している。
第一生命が3月に発売した「ジャスト」では、契約時に健康診断結果を提出すると保険料が安くなる「健診割」を導入し、加入時の健康状態によってはさらに保険料が割引となる。住友生命がこの7月に発売した「バイタリティ」では、健康状態を把握し、改善活動を行うとポイントが貯まり、翌年の保険料が安くなったり、特典が得られたりする。がん検診や運動習慣など加入者自らがポイント獲得に動けるところが話題となっている。明治安田生命も加入者の健康増進を支援する新商品を来年4月に発売するという。

社会的な意義

健康診断の受診や運動習慣といった健康増進活動は、そもそも国民にどの程度普及しているのかご存じだろうか。
厚生労働省の直近データによると、健診や人間ドックの受診状況は67%(20歳以上)と、3人に1人は受診していない。また、1年以上の運動習慣者(1回30分以上を週2回以上実施)は3割前後にとどまっている。こうした現状を踏まえると、健康増進型保険には確かに社会的な意義もありそうだ。

生命保険の販売では加入者のニーズを掘り起こす必要があり、「あなたが亡くなったらご家族は大変ですよね」「入院すると何かとお金がかかりますよ」など、万一のリスクを強調する「脅し」セールスとなりやすい。ところが健康増進型の保険では、「保険加入をきっかけに、健康になって長生きしましょう」「ついでに保険料も下がるし、特典もあります」というポジティブな提案ができる。顧客に保障だけでなく、健康改善も提供できるということで、今まで以上に現場はやりがいを感じられるかもしれない。
もちろん加入者としては、健康増進活動も大事だが、自分に合った保障を買わなければ本末転倒である。

「旧世界」の賞味期限を延ばす

歴史の長い国内系生保は現在も、営業職員による対面販売を事業の中核としている。これに対し、シンプルでわかりやすい商品を低価格で、保険ショップや通販など多様なチャネルを通じて提供するという新たな世界も広がっている。
筆者はこれらを、営業職員モデルの「旧世界」、保険会社や大型代理店がしのぎを削る「新世界」と呼んでいるが、市場全体の新契約の4~6割を今でも「旧世界」が獲得しているのは、「新世界」で見られるような顧客に選ばれるための直接的な競争がなく、新契約の多くを膨大な既存顧客市場から上げているためだと理解している。それぞれの会社が閉じた世界で顧客との信頼関係強化に努め、一定の成果を収めてきた結果と言えよう。

大手生保による健康増進型保険も、保障内容や価格設定などから判断するかぎり、「新世界」から顧客を奪うというよりは、営業職員モデルの賞味期限を延ばそうという取り組みに見える。あるいは、賞味期限となる前に健康関連データを蓄積し、次の時代に備えるという意味もあるのかもしれない。

※くまモンの電車に乗りました。銀座線の車両ですね。
 中はこんな感じ↓

 こんな電車もいました。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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