役員報酬の個別開示

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本日(2/11)の日経1面です。
金融庁は2010年3月期から上場企業等の情報開示を強め、
役員報酬の個別開示を義務付ける方針とのこと。

普通の記事のほかに下記のような「解説」がありました。

・金融庁が役員報酬の開示を企業に義務づけるのは、
 経営への監視を強めるのが狙いだ。

・だが、役員報酬が突出しにくい日本で、
 情報開示の義務化を急ぐ理由が本当にあるのか。
 コーポレートガバナンス改革を進めるうえで、
 優先的に取り組む課題かどうか疑問が残る。
 (他の優先課題については示されていません)

・開示の範囲について、国際的な合意があるとはいえない。

・日本企業の役員報酬は米欧ほど高くない。
 それでも厳しい情報開示を求める理由はなにか。
 政府の説明責任が問われる。

・日本の事情も考慮し、実効性があるかどうかを
 検証する必要がありそうだ。

私にはこれが「解説」とはとても思えませんし(社説ならわかります)、
反対意見にしては説得力が弱いように感じます。

個別開示の是非については、ここでは語りません。
ただ、一般的には経営の透明性を高めることが
ガバナンス強化につながると理解されているわけですし、
実際に情報開示も進んできました。

役員報酬の個別開示に経済界が反発するのはわかります。
しかし、どうして市場機能の一翼を実質的に担っているマスコミの一員
(しかも経済紙)である日経が、経営の透明性を高めようとする話に
否定的な記事を書くのでしょうか。

もし日本企業の役員報酬が米欧ほど高くはなく、
開示による効果が米欧ほどは期待できないにしても、
ある程度のガバナンス向上にはつながる(マイナスではない)
と考えるのが普通です。
他のガバナンス向上策とは違い、コストもほとんどかかりません。

開示によるマイナス効果が大きいというのであればわかりますが、
そうであるならば、読者としてはそれこそ解説してほしいです。

「日本で義務化を急ぐ理由があるのか?」と
国際的な流れとは異なる動きを主張しながら、
「開示範囲に国際的な合意がない」というのも変ですよね。

説明責任が問われるのは政府よりも日経のほうではないでしょうか。

※鶴見線シリーズ第2弾。
 この浜川崎駅は鶴見線から同じJRの南武線に乗り換えるのに、
 改札口を出て道路を渡り、別の改札口を入る仕組みになっています。
 左が鶴見線、右が南武線です。

 

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SBIがネット生保から撤退

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SBIホールディングスはSBIアクサ生命の株式をアクサに譲渡し、
ネット生保事業から撤退すると発表しました。
アクサグループが株式の95%を保有することになります
(残り5%はソフトバンクが保有)。

SBIホールディングスのトップは有名な北尾吉孝さんです。
ご記憶のかたは少ないかもしれませんが、
北尾氏が生保事業に出資し、短期間のうちに引き上げるのは
おそらくこれが2回目です。前回は大和生命でした。

相互会社だった大和生命は、2001年にソフトバンク・ファイナンス
と合弁であざみ生命を設立し、実質的な株式会社化を果たすとともに、
破綻した大正生命の受け皿会社となりました。

しかし、ソフトバンク・ファイナンスは2002年の時点では
すでにあざみ生命(2002年に大和生命に改称)の大株主では
なくなっていました。

このソフトバンク・ファイナンスの代表が北尾氏でした。

※写真は鶴見線の浅野駅と安善駅です(ローカルですみません)。
 明治時代の実業家である浅野総一郎、安田善次郎にちなんで
 名付けられたそうです。

 

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有楽町西武の閉店

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有楽町西武の閉店が話題になっています。
有楽町マリオンの登場は当時の銀座・有楽町界隈の
雰囲気を変えたと思いますし、待ち合わせ場所としては
超有名スポットだけに、閉店が話題になるのも無理はありません。

開業から今まで一度も黒字になったことがなかったそうですが、
考えてみれば、私もマリオンで待ち合わせをしたり、
映画を観たりはしても、西武で買い物した記憶は全くありません^^

ところで、この件を扱った日経流通新聞のコラム
「マーケティングの『非・常識』」(2/5)はなかなか面白かったです。

「百貨店はリスクを背負わない。売れ残ったら、
 問屋さんに返品すればいい業態」
「百貨店の人は百貨店以外にいいビジネスはないと思い込んでいる」
「(これらがネックとなり)脱百貨店をはかることができない」

このような説得力のある見立てをしているのが、
かつてグループを率いた堤清二氏(筆名は辻井喬氏)
というのを興味深く感じました。
つまり、有楽町西武だけの問題ではないということです。

かつて成功した業態がビジネスモデルや体質を変えるのは
そう簡単ではないということなのでしょう。

※写真は丸の内仲通りの夜景です。
 丸の内は新しい建物が次々にできていますね。

 

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今や監督当局が味方

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日経ビジネス2010年2月8日号に掲載された
野村ホールディングスの氏家純一会長インタビューから。

「悪用された部分や金融システムのほころびは規制されるべきで
 異論はない。実際、バーゼル銀行監督委員会やFSBが、
 技術的で合理的な議論を丁寧に積み重ねてきた」

「これらの成果をひっくり返すかのように、政治主導で突然、
 新たな規制が出来上がることに強い危機感を抱く」

「監督当局とは課題をしっかり議論できるが、残念ながら
 政治家に理解してもらうのは難しい。
 その意味で、今や監督当局はむしろ我々の味方だと、
 世界の金融機関トップは認識し始めている」

「規制する側とされる側が接近するということは、
 逆に言えば、それだけ状況が悪いということだ」

日本の「政治主導」はやや違う方向に向かっているようですが、
氏家さんの危機感はよくわかります。

※写真と記事の内容は特段関係ありません。念のため。

 

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年金保険 税改正で波紋

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2010年度の税制改正大綱に年金保険の税優遇廃止が
盛り込まれたという報道がありました(3日の日経です)。

数年前の逓増定期保険の税制見直しと同様、
節税目的で保険を売るビジネスの危うさが
浮き彫りになった格好です。

逓増定期のときには中小企業の経営者が顧客でしたが、
こんどは銀行や証券会社の富裕なシニア顧客でしょうか。
どのような売り方をしていたのかが問われますね。

もっとも、このところ銀行による保険商品の販売意欲が
再び高まっているという話をしばしば耳にします。
アフラックの決算をみても、四半期ごとに銀行チャネルの
新契約シェアが高まっています。

これで弊害防止措置が緩和されれば、プロ代理店にとって
いよいよ無視できない存在になるのでしょう。

※丸善に行ったらこんな本を見つけました↓
 何かの参考になるかもしれません。
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医療保険は入ってはいけない

FPの内藤眞弓さんがベストセラー「医療保険は入ってはいけない!」
の新版を発行しました。

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タイトルは2006年版と同じでも、中身は大幅に手が加えられています。
2006年版では公的医療保険の説明に多くのページを割いたのに対し、
今回の新版では、民間医療保険の限界を強調するとともに、
怪しいセールストークの解説が充実しています。

「レバレッジが効かない(=一度に多額の金額を受け取れない)
 保険からは早く卒業して、最強の自家製医療保険(=貯蓄)を作る」

という主張にも納得。
一時金を受け取るタイプの医療保険がもっと充実すればいいのですが、
モラルリスクとの戦いという面もあり、保険会社は苦闘しているようです。
今後の取り組みに期待しましょう。

内藤さんは、先進医療が「夢の治療法」ではないことも強調しています。
誤解している人が多いのではないでしょうか。
詳しくは本書をご覧下さい。

わかりやすい点は2006年版と同じですね。
私も見習いたいと思います。

 

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大都市圏への人口流入鈍る

2009年の総務省人口移動報告によると、
大都市圏への人口集中にブレーキがかかりました。

総務省統計局HPへ

新聞では名古屋圏(愛知県、岐阜県、三重県)が転入超過から
転出超過になったことを大きく取り上げています。
愛知県では2008年12月~09年2月、7~12月が転出超過となりました。

東京都でも2008年秋から転入超過数の減少が強まり、
2009年後半は転出超過傾向となっているようです。
リーマンショック後の景気低迷の影響を反映しているのでしょう。

ただ、全体的な移動者数が減っているとはいえ、
東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)への人口集中
というトレンドに変化が起きたと言えるかどうか。

2009年に3大都市圏以外で転入超過だったのは
茨城県(実質的に東京圏?)、滋賀県、福岡県、沖縄県だけで、
地方圏での人口流出傾向は変わっていないようです。

 

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「不良債権と金融危機」

またまた本の紹介です。今回は私が関わっているものです。

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内閣府・経済社会総合研究所が企画した研究会
(私たちは「バブル・デフレ研」と呼んでいました)
の成果を書籍にまとめたものが、年末に出版されました。

慶応大学出版会HPからそのまま引用すると、

「バブルの発生から崩壊、その後のデフレとその克服への対応。
 1980年代からの四半世紀日本経済の経済動向と経済政策を、
 様々な視点から点検・評価する。わが国を代表する研究者、
 官民エコノミストの総力を結集し貴重な反省・教訓を後世に伝える
 画期的研究シリーズ全7巻」

ということで、

本書「不良債権と金融危機」はその第4巻となります。

私は第6章「生命保険会社の経営悪化」を執筆しました。

この本だけでも13人が執筆し、488ページのボリュームです。
全部で7巻あり、それぞれに名だたる学者やエコノミストなどが
バブル・デフレ期の日本経済についての論文を寄せています。

しかも、各々の論文を単にまとめただけではなく、
分科会ごとに発表&議論の機会があり、それを反映させています
(当たり前かもしれませんが、念のため)。

それにしてもこの出版不況の折に、よく本になったなあと思います。
このあたりの事情は全くわかりません。
でも、研究の成果が本になるのとならないのとでは
やはり違いますよね。

多くのかたに読んでもらうといった性格の本ではありませんが
(アマゾンで買っても5040円です)、バブル・デフレ期の金融について
研究者等の視点から論じた貴重な書籍となっていますので、
機会がありましたらぜひご覧下さい。

 

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がん保険 いる?いらない?

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26日の朝日新聞「がん新時代」に医療保険の記事がありました。
「十分な貯蓄あれば不要」「年齢・加入期間で赤字も」という見出し。
著名FPの内藤眞弓さん、藤川太さんのコメント付きでした。

保険が得意とするリスクヘッジは、
「滅多に起きないけど、起きたら経済的に大変」
というリスクです。
自動車保険の対人賠償や火災保険、死亡保険などがそれにあたります。

これに対し、病気のように、
「それほど珍しくはなく、経済的にはそこそこの負担」
というリスクに対しては微妙なところです。
どのように備えるかは個人の好みが大きいように思います
(貯蓄が基本だとは思います)。

ただ、がんの場合、治る病気になっってきたとはいえ、
闘病生活には直接的な医療コストのほかにも
何かと費用がかさむようです(個人的な経験から)。

しかも、週刊東洋経済2010年1月23日号によると、
他の病気では死ななくなり、高齢化が進んだ結果
最後にがんで亡くなるケースが拡大しているとのこと。

入院リスクをカバーするだけなら貯蓄で十分と思えますが、
一時金を手厚くしたがん保険にはちょっと心が動きますね。

※写真は横浜の定番スポット
 「港の見える丘公園」「外人墓地」です。

 

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生命保険のカラクリ

前回に続き、保険関連書籍のコメント。
「生命保険のカラクリ」は昨年10月に出た話題の本です。
ようやく読むことができました。

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著者はライフネット生命保険の岩瀬大輔副社長です。
そう思って読んでも、自社の宣伝色はほとんどなく、
第三者の視点で生保業界や商品について書いてあります。

「一般人による一般人のための『生命保険入門』」とのことですが、
出口治明さんの「生命保険入門」(新版はまだ読めていません m(_ _)m )
とはまたテイストの違う本で、楽しく読めました。

世界の生保市場の収益力比較(日本が突出して高い)や
生命表の分析(「高い死亡率の設定で守られすぎ」)など、
きちんとデータの裏付けがあり、納得できる記述になっています。
岩瀬さんはコンサルティング会社出身ですものね。

価格に関する記述も多く見られます。

「(生命保険は)適正な価格がわかりにくい」
「売り手と買い手との大きな情報格差を活用して販売しようとする、
 業界の体質が変わっていない」
「商品の比較情報に対していまだに強い心理的抵抗がある」

などの指摘は、まさに私も同感です。

一般の人にはもしかしたら難しいところもあるかもしれませんが、
日本の生保業界を知るには大変参考になりそうです。

 

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