16日(金)の日本価値創造ERM学会の研究会で、
金融機関と事業法人のERM(エンタープライズ・リスクマネジメント)
を比較検討しようという試みがありました。
パネラーは事業会社代表として東京ガスの吉野太郎さん、
金融機関(銀行)代表はPwCアドバイザリーの原誠一さん、
保険会社代表はキャピタスコンサルティングの森本祐司さん。
いずれもこの分野の第一人者です。
同じERM、すなわち全社のリスクを統合的に管理する経営でも、
金融機関のERMは定量的アプローチ(=VaR、ECといったイメージ)、
事業会社が定性的アプローチ(=内部統制、危機管理のイメージ)
という違いを想像します。
しかし、お話を伺うと、必ずしもそうではないようです。
確かに事業会社の経営リスクの多くは計量化になじみにくいとはいえ、
経営陣の納得感を高めるには、定性と定量の組み合わせが大切なのだそうです。
吉野さんによると、その際の「定量」はざっくりしたもので十分とのこと。
それに今回の金融危機では、金融機関の定量的アプローチ、
すなわち、モデルを重視したERMの限界が示されたわけで、
両者のERMは実はそうかけ離れていないのかもしれません。
他方、金融機関のアプローチでは「損失は一定の確率で発生する」のに対し、
事業会社では「事故は絶対に起こしてはいけない」という発想になります。
この違いについて今回は深い議論にはなりませんでしたが、
私なりに理解すると、事業会社の場合も
「絶対に起こしてはいけないけど、起こりうるもの」
ということなのでしょう。
例えば、ガス爆発事故の可能性を限りなく小さくすることはできても、
ガスタンクがある以上、可能性をゼロにすることはできないと思います。
そう考えると両者の違いは実質的になくなるのではないでしょうか。
もっとも、日本の事業会社でERM、あるいは全社的なリスクマネジメントを
行っている会社がどの程度あるのか、という別の問題も見え隠れします。
それはともかく、私は保険アナリストなので、どうしても保険業界に知識が偏りがち。
今回のような機会は、いろいろ考えるきっかけになるので非常にありがたいです。
※写真は町内会対抗の運動会です。
私は今年も大縄跳びに出ました。
※いつものように個人的なコメントということでお願いします。
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