連邦規制は実現するか(米国)

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オバマ大統領が17日に発表した金融規制改革案のなかに
「連邦レベルの保険規制当局の設置」があります。

そうです。米国の保険監督は州レベルで行われていて、
州によって規制がバラバラなのです。
そのような状態がもう135年も続いています。
NAICという組織がありますが、あくまで州当局の横のつながりであって、
全米を代表する規制主体ではありません。

昨年9月にAIGが経営危機に陥った際、
「某国の保険監督当局がAIG危機を受け、米国と連絡を取ろうとした時に、
 いったい誰に連絡すればいいのかわからなくて困った」
「IAISが(AIG本社のある)NY州の保険監督当局に連絡したところ、
 『CDSの問題は英国の話なのでここではわからない』と突き放された」
などといった話が伝わっています。

金融危機の再発防止に向けて、連邦レベルの保険規制当局を設けるのは、
ごく自然な流れのように思えます。
ところが、これがそう簡単ではないのです。

まず政治家が反対します。各州の保険庁には何百人もの職員がいるうえ、
州規制に対応するために作られた保険会社がたくさんあるためか、
州規制の見直しは雇用問題や税収の問題に直結するからです。

大手保険会社も規制改革にそれほど積極的ではなさそうです。
各州の監督を受けるコストは非常に大きいと思うのですが、
規制の緩い州に名目的な本社を置くなど、メリットもあるためでしょうか。

「連邦規制への移行」はこれまで何十年も議論され、実現せずにきました。
今回はAIG問題で州規制の欠点が国際的にも露呈したわけですが、
果たして連邦レベルの保険監督当局は実現するでしょうか。

※横浜線シリーズ第3弾は中山駅。
 ここから市バスでズーラシアに向かいます。

 

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「激震 変額年金」

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18日と19日の日経に「激震 変額年金」という記事が載りました。

AIGの信用不安、ハートフォード生命の主力商品の運用停止、
さらに今年になってから販売休止が相次いでいるわけですが、
記事ではこのような変額年金市場の異変をうまく整理しています。

私のコメントもあります。
「今回の教訓を機に、関係を正常化すべきだ」というものですが、
これだけでは何だかわからないので、少しだけ解説しますと、

・そもそも金利水準が低いなかで、「最低保証」「値上がり期待」
 「高い代理店手数料」の3つを満たすのは難しい。

・ただ、銀行の販売力を前に新規参入する保険会社が相次ぎ、
 銀行主導のマーケットになっていた。最低保証が日々上昇したり、
 リスク資産のウエートが高かったりする商品も見られるようになった。

・ところが、金融市場の混乱で、もし保険会社が破綻したり
 撤退したりした場合には、銀行も無傷ではないことがわかった。
 手数料ビジネスなので財務的なダメージはないが、
 顧客の信頼を失い、顧客基盤を棄損するおそれがあるためだ。

・もっとも、リテールビジネスを強化したい銀行にとって、
 保険・年金商品は不可欠な存在だ。
 今後は単に「いい商品」をとっかえひっかえ採用するのではなく、
 銀行と保険会社がパートナーとして長期的な関係を築いていく必要がある。 

という話をしました。
とはいえ、販売を休止したり、抑制したりという動きは続きそうですから、
今年度の変額年金の販売はかなり落ち込むのではないでしょうか。

※写真は娘からの「父の日プレゼント」です^^

 

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「保険金支払いの先送り」の記事

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17日の日経と朝日に掲載された日本興亜損保に関する記事です。

「保険金部門の担当役員が2月の会議で、保険金の支払い先送りを
 示唆するとも受け止められる発言をしていたことがわかった」(日経)
「役員が09年3月期決算で収益をかさ上げするため、社内会議で
 保険金支払いの決算への計上を遅らせるよう指示した疑い」(朝日)

これに対し、兵頭誠社長は18日の会見で(第三者委員会の調査を踏まえ)
「経営が関与した事実はない」と否定しています。

保険金支払いを意図的に遅らせるのは違法行為でしょう。
でも、年度内に発生した事故の支払いが翌年度にずれ込むことは
多々あります。その場合には支払備金を計上するので、
損益への影響はニュートラルです。

つまり、保険金の支払いが遅れても、損益に影響はありません。
損害率や収支残には影響しますが、「利益をかさ上げして配当し、
会社に損害を与えた」という悪質な話にはなりえません。

しかも、記事には指示が実行されたとは書いてありません。日経記事は、
「示唆するとも受け止められる発言をしていたことがわかった」です。

両紙はなぜ、このニュースをこの内容で掲載したのでしょうか?

※写真は横浜線の鴨居駅。ららぽーと横浜の最寄り駅です。

 

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日経ビジネスの損保特集

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6月15日号の日経ビジネスに損保業界のレポートが掲載されました。
「瀬戸際損保、生き残りの戦い」というタイトル。
「再編だけではまだ危ない」という副題が付いています。

ビジネス誌にありがちな再編の内幕ものではなく、
東京海上の有力代理店14社による代理店政策への不信や不満、
あるいは、損保主導ではない、代理店自身による再編の動きなど、
保険会社と代理店の関係にかなりの誌面を割いています。

記事には「事業費率を抑えるため、代理店数を半減」とありますが、
減少した代理店の大半は小規模なところなので、
半減しても事業費削減効果は限られています。
事業費率の低下は合併等に伴う人件費、物件費の引き下げ効果
(生保子会社への人員シフトもあり)が中心だと思います。

例によって、最後のほうに私のコメントも載っているので、ご紹介します。

「(政策保有株式について)本当に利益を生むのかという細かい分析は
 なかったのでは。株価が大きく下がるたびに巨額の損失を負ったが、
 それでも保有し続けてきた」

というものです。
記事によると、日本興亜では経済的付加価値分析(=EVAでしょうか?)
をユニットごとに行うそうなので、大いに期待したいです。

※写真は横浜線の小机駅。日産スタジアムの最寄り駅です。

 

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鳩山総務相の更迭

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この件ですが、世間ではどう受け止められているのでしょう?

13日の日経に郵政民営化委員会・田中直毅委員長が、

・「かんぽの宿」売却問題の本質は、民営化前に意味のない施設を
 でたらめな基準で造っていたことにある。
・第3種郵便の不正利用では、旧郵政がチェックが働かず自己修正できない
 組織であることが明らかになった。
・こうした問題を放置すればやがて巨大な赤字を生む。それを防ぎ
 200兆円近い郵貯を有効活用するのが郵政民営化の本質だ。

とコメントしていますが、私もその通りだと思います。

「国民の財産の不当な安売り」といっても「不当」の根拠は薄く、
そもそも2400億円もかけたことのほうがよっぽど問題でしょう。
6日の朝日新聞「かんぽの宿 ぬるま湯経営」では
ある施設の赤字経営の実態が報道されていましたが、
まさに「お役所仕事」といった実態が浮き彫りにされていました。

東京中央郵便局の建て替え問題も、文化的価値はわかりますが、
その点も含めて十分検討されたはず。

民営化後の郵政に問題がないとは言えません。
ただ、権力とはそのように行使するものではないと思うのですが。

※写真は小学校の黒板です。週末に授業参観がありました。

 

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日本興亜損保の統合反対事件

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損保ジャパンとの経営統合計画を進めている日本興亜損保に対し、
前社長などが統合計画に反対する文書を送付したとのこと。

OBが現在の経営陣に注文をつけるというのは、日本ではよく聞く話ですが、
このような形で外部に明らかになるのは異例のことでしょう。

「親密金融グループが離反する」「日本興亜の文化の破壊」など
気持ちはわかりますが、現在の経営陣の決断に対し、
OBが揺さぶってどうしようというのでしょう。

しかも、この統合計画ではまだ統合比率(株式交換比率)が
決まっていません。

「対等の精神」とはいえ、損保ジャパンの株主からすれば、
日本興亜損保をいくらで買うかという話です
(本来は統合計画発表と「いくらで買う」はセットだと思いますが...)。

買い値をこれから決めようというこの時期に、おそらく株主でもあるOBが
自ら価値を下げるような行動をとるとは、私にはまったく理解できません。

3月の統合計画発表以降、日本興亜の株価は低迷していますが、
果たして7月にも発表される統合比率がどうなるか注目です。

※写真は多摩川から見た川崎のビル群です。

 

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「ステップアップ!保険窓販」

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きんざいのFP向け月刊誌「ファイナンシャル・プラン」の6月号は
「ステップアップ!保険窓販」と題した窓販特集でした。

 ファイナンシャル・プランのHPへ

このなかに私のインタビュー記事が掲載されています。
「生命保険マーケットの概況と銀行窓販の今後の行方」というタイトルで、
保険マーケットの変化や銀行の置かれている現状などについてコメントしました。

特集では、三菱東京UFJ銀行の保険窓販レポートや、
RML株式会社・清水英孝代表による「生命保険のセールス話法」
などが掲載されています。

清水さんの記事は、金融機関の保障性商品販売について
どのような論理・技術が必要なのかを解説したものです。
これを読むと、セールスは科学なんだなあと思います。

「銀行窓販は損保系生保のモデルに似ている」という主張には私も同感です。

10年少し前、膨大な損保の顧客に対して生保を販売しようと参入した損保。
ところが損保系生保のクロスセル率は10年で5%前後にとどまっています。
今度は銀行が膨大な顧客基盤に対し、生保の保障性商品を
提供しようとしているわけですね。
今のところ成功モデルは必ずしも確立していないようですが、
果たしてどうなるでしょうか。

記事によると、損保系生保のクロスセル率が期待を下回ったのは、
損保系生保が見込み客の位置付けを間違えたことと、
モデルの異なる外資系生保の手法を採用したことなどが要因としています。

単に各種の生保販売話法を覚えるのではなく、
「関係性が薄く、生保を欲しいと思っていない顧客から契約を得るには
どうしたらいいか」を考えるべきという主張には説得力があります。

※写真は横須賀線・新川崎駅です。日吉と新川崎の近さを実感しました。

 

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前回の生保危機との比較

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月曜日(8日)発行の有料メールマガジン「inswatch」に、
日経平均株価が8000円を割り込んだ2002年度と
直近の2008年度の生保決算を比べた記事を書きました。

inswatchのHPへ http://www.inswatch.co.jp/

 ※inswatchは、保険の現場に強いジャーナリストとして定評のある
  石井秀樹さん、中崎章夫さんが編集人を務めるメールマガジンです。
  「保険代理店向け」とありますが、広く業界人におすすめです。
  私は2か月に1回、記事を書いています。

簡単にご紹介しますと...
 ソルベンシー・マージン総額は、2002年度<2008年度
 このうち有価証券含み益は、2002年度>2008年度
 内部留保(純資産+α)は、2002年度<2008年度
 他方、リスクの合計額は、2002年度≒2008年度
 ↓
 内部留保を積み上げてきたため、2002年度よりも体力にまだ余裕がある。
 ただし、保有資産のリスクを温存してきたため、内部留保は1年間で激減した。

もっとも、これはあくまで国内系生保9社の単純合算ベースでして、
個社ベースではいろいろです。

例えば、朝日生命と太陽生命のソルベンシー・マージン総額は
2002年度>2008年度 です。
しかし、両社とも資産運用リスクの抑制を進めてきたため、
ソルベンシー・マージン比率は 2002年度<2008年度 となっています。

反対に、大同生命は2003年度以降、内部留保を増やす一方で、
資産運用リスクも増やした結果、ソルベンシー・マージン比率が
2002年度>2008年度 となってしまいました。

なお、ソルベンシー・マージン比率の計算方法は
当時と今では多少違いがありますので、お含み置き下さい。

※写真は新横浜の駅ビルです。ずいぶん便利になりました。

 

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株価下落の影響

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今回も生損保2008年度決算から。

生損保のソルベンシー・マージン(支払い余力)総額は大幅に減りました。
大手生損保の場合、この減少分の実に8割前後が株価下落によるもの。
不動産関連投融資の損失や信用リスクの顕在化に苦しむ欧米勢、
あるいは日本の銀行とはリスク構造が明らかに違います。

外部からは「保有株式の変動リスクが大きい」と指摘されていたものの、
2003年以降の株価上昇局面でもリスク圧縮があまり進まなかったようです。

今回の株価下落局面ではどうだったのでしょうか。
各社とも「金融危機のなかでリスクを抑える方針」とのことでしたが...

決算データ(取得価額と減損額)から売却額を試算してみたところ、
大手で一定程度の株式を売却したと思われるのは
第一生命と明治安田生命、東京海上、日本興亜くらいでしょうか。
残高がほとんど変わっていないと見られる会社も多いですし、
日本生命や三井住友海上などはむしろ残高を増やしたようです。

リスクを抑える方針とは言うものの、最大のリスク要因である株式を
相場の上昇局面でも下落局面でも売れないというのであれば、
いったいどうするつもりなのでしょうか?

※写真は野川で見つけた水車です。

 

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変額年金の販売動向

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「変額年金販売が不調」(6/2朝日)という記事が一般紙に掲載されるなど
何かと話題の変額年金ですが、公表データが少なくて困ります。

例えば「どの保険会社の商品がどれだけ売れたか」という
基本的なデータが必ずしも公表されていません
(大手生保やアリコなどは記者クラブ向け資料で開示)。

ましてや「どの金融機関がどこの保険会社の商品をどれだけ販売したか」
などというデータはどこにもありません。
保険マスコミの皆さんにもっと頑張っていただきたいところなのですが...

さて、決算資料の「特別勘定の資産残高」の増減から
「特別勘定の運用収支」を差し引いた「純増部分」を見てみました。
年度内に販売した契約も時価変動の影響を受けるので、
これを「純増部分」と言うのはちょっと無理があるかもしれませんが、
あくまで参考ということでご容赦下さい。

2007年度の上位は
 ①アイエヌジー、②東京海上日動フィナンシャル、③三井住友海上メットライフ、
 ④ハートフォード、⑤住友、⑥マニュライフ...でした。

これが2008年度には、
 ①東京海上日動フィナンシャル、②第一生命&第一フロンティア生命、
 ③三井住友海上メットライフ、④住友、⑤アイエヌジー、⑥マニュライフ...
と変わっています。

ハートフォードやアリコジャパンのように純減となる会社がある一方、
第一生命グループやT&Dフィナンシャルのように好調な会社もありました。
ただ、全体としては売り上げが3割くらい減ったのではないでしょうか。

米国でも2008年の変額年金の売り上げは前年の2割減、
2009年1-3月期だけをみると前年同期を3割以上下回っています。
やはりAIGやハートフォードが販売シェアの順位を落としているようです
(VARDSレポートによる)。

日本でも2009年度はハートフォードが販売から撤退し、
住友とアイエヌジーが販売を休止するので、
上位の顔ぶれが大きく変わりそうです。

※写真は世田谷の等々力渓谷です

 

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