世界の保険市場レポート

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前回(10/13)ご紹介した「World Insurance Report 2009」では、
販売チャネルの多様化が保険成熟市場での成功要因としたうえで、
実際に多様化戦略をとる際の課題や教訓について探っています。

もっとも、私には同レポートの2008年版のほうがより興味深く感じました。

「World Insurance Report 2008」

2008年版では、CapgeminiとEFMAが約11000名の保険顧客
(欧米8カ国と中国、インドで日本は含みません)
へのアンケート調査に基づき、保険市場の動向や顧客の行動特性、
販売ネットワークの利用状況などを分析しています。

成熟国では顧客1人当たり5.2件(生保1.5件、損保3.7件)の
保険に加入しているそうです。
すでに浸透率が十分高く、潜在需要は概して頭打ちです。

ただ、国によっては取引先を変えようとする顧客が増える兆しがあり、
なかでも英国の自動車保険は、平均継続期間が3.4年
(成熟国の平均では8.4年)なのだそうです。

販売ネットワークの利用状況についての調査もあります。
なかでもインターネット販売ネットワークの拡大は
主導的な保険会社も無視できない潮流になっているとのこと。
アンケートによると、損害保険だけではなく、生命保険でも
多くの顧客が将来(=今後3年以内の保険購入)のオンライン購入を
予想しています。

これに対し、向こう3年間で販売シェアを維持できそうなのは
総合代理店/ブローカー/IFAだけで、あとはシェアを失うという結果でした。

もちろん、国によって顧客のニーズや商品の用途、法規制、競争状況が
異なるので、販売ネットワークの利用状況もこれらに影響されるのですが、
一つの見方として参考になりそうです。

※写真はトレッサ横浜です。
 ユニクロは相変わらずのにぎわいでした。

 

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「生保・損保特集号」(続き)

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毎年秋に出る東洋経済の「生保・損保特集」をみると、
いまの保険市場や業界の動向がざっとわかるので重宝しています。
ようやく入手して、まだざっと目を通しただけですが、感想を少々。

まず、昨年同様、社長のインタビュー記事が非常に目立ちます。
表紙によると、トップ35人が登場しているそうです。
今回は編集長が変わったのですが、この点は昨年と似ています。

メインテーマである販売チャネル改革について、
各社のトップに語ってもらおうというのもわからなくはないですが、
社長が「うまくいってない」なんて言うわけはありませんから、
どうしてもPR色が強くなってしまいます。

読者としては、同じ販売チャネル改革をとりあげるにしても、
経済誌でしか読めないような客観的で批判精神に富んだ記事、
あるいは内幕ものを、もっと読みたいところですね。
次回に期待しましょう。

記事のなかで私が注目したのは、
「『4行4様』の販売体制 顧客基盤拡大へ本腰」
「マルチ販売チャネル構築力が成熟市場での成否を握る」
です。

前者は大手銀行の窓販戦略を比べたもの。
銀行によって保険販売への取り組み姿勢はかなり違うことがわかります。
できればレポートだけではなく評価もほしいところですが、
これはこれで参考になります。

後者はNTTデータ経営研究所の発行したレポートの紹介です。
「成熟市場ではマルチ販売チャネルが世界の保険会社にとって
 主な成功要因である」という調査結果をもとに、
日本の販売チャネル改革に必要となる要素を考察しています。

レポートもHPからダウンロードできるようです↓
「World Insurance Report 2009」

※写真の黄色いハートは、よく見ると丸いヒヨコでできています。
 「ぴよだまり」のぴよです。

 

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番組と広告のあいまいさ

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今回もメディア関連の話。

11日の朝日新聞・社会面に「俳優の服 HPで即通販 フジ系新ドラマ」
という記事がありました。
俳優が身につけた服やアクセサリーが、放送と同時に番組のHPで
購入できるという仕掛けの連続テレビドラマが始まるのだそうです。

記事には「番組か広告か あいまいさ懸念」という見出しがあり、
「ドラマは内容が勝負なのに、服を売ることが優先される可能性がある」
というテレビ局プロデューサー(匿名)のコメントや、
「放送の公共性から逸脱している可能性が強い」
「公共の電波を独占的、排他的に使ってあこぎな商売をしていいのか」
といった識者のコメントが載っていました。

しかし、何を今さらという感じがします。
テレビドラマのなかにCMが紛れ込むのは、私が指摘するまでもなく、
すでに珍しいことではありません
(というか、民放では普通のことでしょう。TVパブリシティと言うそうです)。

古くは「ウルトラセブン」にも、ヒロインが巨大化した宇宙人から逃げているのに、
わざわざ木曽川(日本ライン)の川下り船に乗るシーンがありました。

数年前の「古畑任三郎」でも、当時携帯のCMに出ていた田村正和さんが、
番組のなかでも携帯でCMを連想させるポーズをとるシーンをみました。

そう考えると、テレビは番組内CMだらけのように見えます。
ドラマのなかで、ある商品がそれと分かる形で映った場合には
広告と考えたほうがよさそうです(そうでない商品は隠していますので)。
ドラマではありませんが、旅番組やグルメ番組をみると、
これはどう考えても広告だなあと思うことがしばしばあります
(お店などの名前や住所が詳しく紹介された時など)。

まあ、民放の本質は視聴者にスポンサーのCMを見せることなので
(いい悪いは別として、そのような仕組みになっていますよね)、
今回のケースは、ドラマ仕立ての通販番組と考えればいいわけです。

むしろ、それとわからない形で番組にCMが紛れ込んでいることのほうが
問題が大きいように思うのですが...

※ドイツの新幹線で水を買ったら、紙コップに目盛がついていました(写真)。
 日本だと検尿を思い出しちゃいますね。こんなに目盛が上ではありませんけど^^

 

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大臣会見のオープン化

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「貸し渋り・貸しはがし対策法案」でにぎやかな金融庁ですが、
記者会見のオープン化を求める大臣・金融庁に対し、
記者クラブ側が「拒否」したため、クラブのメンバー以外の会見が
別途開かれるという事件があったそうです(6日)。

金融庁HP(大臣会見の概要)へ

財研記者クラブに加盟していないメディアは、
個別に毎回、幹事社の了解を取らなければ会見に参加できず、
参加しても質問ができないとのこと。

それをもっとオープン化しようという大臣に対し、
どうして主催者である記者クラブがすんなり応じないのか、
私には理解できません。

会見を記者クラブが主催するのは、政府が会見を自らの
都合のいいようにするのを防ぐためだそうです。

しかし、参加をクラブ加盟社に制限するのはどうしてなのでしょうか。
事前登録制にすればインサイダー取引等への対応は十分でしょうし、
多くのメディアが権力を監視したほうが国民にはいいはずです。

なお、知人のアイレイさんによると、記者会見のオープン化は
金融担当大臣だけではなく、民主党全体の動きだとか。

参考までに、日本新聞協会のHPをみると、記者会見について

「行政側にとって都合が良い情報だけを流す風潮を
 報道機関は厳しくチェックしていかなければならない」

「記者会見はクラブ構成員以外も参加できるよう、
 記者クラブの実情を考慮に入れ努めていかなければならない」

といった見解を出しています。ただ、その一方で、

「記者クラブは、その構成員や記者会見出席者が、クラブの活動目的など
 本見解とクラブの実情に照らして適正かどうか、判断しなくてはなりません」

などと書いてあり、やはりオープンにはしたくないんだなあとも読めます。

日本新聞協会HPへ(見解は「取材と報道」にあります)

いずれにせよ、今後の動きが楽しみです。

※写真はパリで見かけた「ボトル回収ボックス」です。

 

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損保と国際監督規制

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日本損害保険協会で2002年から最近まで国際部長を務めていた
松下勝男さんの講演会に出席しました。
演題は「金融危機の教訓と国際監督規制」。損保総研の主催です。

G20財務大臣・中央銀行総裁会議やFSB(金融安定化委員会)、
IAISなど、最近の金融・保険分野の監督規制動向のほか、
金融機関への規制をめぐる海外メディアの論調の紹介や、
米国の規制改革動向など、盛り沢山でした。

松下さんいわく、

・議論されているカウンターシクリカル(景気連動性を抑制する)
 な準備金は、損保の異常危険準備金に通じるものがある。
・オリジネーターが原資産のリスクの一部を保有すべきというが、
 再保険の世界では当然の話。

など、リスクに対する保険業界の先進性(もしくは保守性)について
コメントされていたのが印象的でした。

もっとも、ここからは私の感覚なのですが、
確かに日本の損害保険会社は保険引受リスクに対しては
(過去に海外再保険の多額損失事件があったとはいえ)
基本的に保守的な姿勢だと思います。

ただ、保険引受リスクとその他のリスク(資産運用など)が
別々に管理されているというか、保険リスクに対する姿勢と
資産運用リスクに対する姿勢が同じ会社でも異なっているように
しばしば感じます。

だからこそ、保険引受リスクに対して非常に慎重な会社が
多額の運用・保証に関する損失を計上したりするのかもしれません。

※写真はセンター南駅です。駅前の広場で野外コンサートをやってました。

 

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東洋経済「生保・損保特集号」

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先週末に2009年版の「生保・損保特集号」が出ました。
今回は「販売チャネル 終わりなき改革」という副題がついています。
必ずしも販売チャネルの話ではありませんが、
私も原稿を書いていますので、まずはそのご案内です。

東洋経済のHPへ

タイトルは「ポスト金融危機の保険経営」。
金融危機が保険会社経営に与えたインパクトについて触れたうえで、
ポスト金融危機の保険経営について、

 ①リスク管理態勢の見直し
 ②製販の関係正常化

という二つのテーマを述べています。詳しくは特集号をご覧下さい。

とは言いながら、実のところ手元にまだ特集号がないので
全体像を確認していません(冷汗)。
近いうちに特集号についてもコメントしたいと思います。

※前回に続きパリのマルシェ(市場)です。
 地下鉄Nation駅のそばで、水曜と土曜に開かれます。

 

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カテゴリーの細分化

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ブログを始めて約1年。過去の記事を探すのが大変になったので、
右下にある「Category Archive」を細かくしてみました。
ご活用下さい。

しばらくは引き続き週3回のペースで書いていくつもりです。

※写真はパリの市場で見た野菜や魚介類です。

 

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お宝保険

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1990年代前半までに加入した保険は「お宝保険」と言われています。
予定利率が高く、保険料が割安であるためです
(特に貯蓄性のある養老保険や終身保険、個人年金保険)。

1日の日経7面の特集記事「金融を問う」は保険についてでした。
見出しは「保険商品 見えぬ中身」「情報提供不足、比較難しく」です。

この記事のなかで「お宝保険」が出てきます。
FPのかたのコメントとして、「お宝保険の多くが転換されてしまった」
とありました。他のFPからもしばしば同じことを聞きますので、
現場ではお宝契約が転換されてしまった事例が非常に多いのでしょう。

しかし、だからといってお宝契約がなくなったわけではなさそうです。
データを見るかぎりでは、保険会社の勧めに乗らず、
お宝をキープしている契約者も決して少なくないと思われます。

直近の日本生命のディスクロージャー資料をみると、
1995年以前に契約した個人保険、個人年金保険の責任準備金は
依然として17兆円あり、全体の57%を占めています。

このうち個人年金(=転換話法が使いにくい)の内訳は不明ですが、
個人年金全体(1996年以降を含む)の責任準備金が8兆円なので、
少なくとも養老保険や終身保険といった、転換を勧められやすい
個人保険がまだまだ残っていることになりますね。

他の大手生保でも、概ね日本生命と同じような状況でした。

お宝契約が多数転換されてしまったのは間違いないのでしょうが、
賢い消費者も多いと言えそうです。

※地元・大倉山ではこの週末にお祭りがあります。

 

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SMR見直しのパブコメ

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金融庁が8月末に公表したソルベンシー・マージン比率の見直し案について、
あくまで個人的にではありますが、コメントを出しました
(なお、コメントの募集は29日の夕方に締め切られています)。

内容は二つ。
一つは責任準備金の一部(保険料積立金等余剰部分)に
算入制限を設けることについてです。
全く算入しないというのであれば、それはそれで理屈がつくのですが、

「期限付劣後ローン等の負債性資本調達手段等と合算して、
 中核的支払余力(コア・マージン)を限度とする」

という案が示されています。そうすると、

・トータルバランスシートアプローチ(=支払い余力を確保するにあたり、
 負債でも純資産でも同列に扱う)ではないということか?
 すなわち、負債中のサープラスは重視されないということか?
 経済価値ベースのソルベンシー規制に移行した際はどうなるのか?

・標準責任準備金(=純保険料式)の達成よりも、コア・マージンを
 優先すべきなのか?
 いわゆる純保行政との決別なのか、それとも両方求めるのか?

・経済価値ベースの負債評価やリスク管理を促す一方で、
 会計上の純資産をあまりに重視すると混乱を招かないか?

などの疑問が浮かんできます。このあたりを確認してみました。

もう一つは実施時期の問題です。
2012年3月期からの導入となっていますが、少し遅いのではないでしょうか。

EUで経済価値ベースのソルベンシー規制(=ソルベンシーⅡ)が
導入されるのが2012年。IAISもグローバル規制の実現に向けて
精力的に動いています。
日本のこの動きを無視することはできないはずですが、
この見直し案の実施直後に新たな見直しが可能なのでしょうか。

健全性規制に明るくないかたには、ややわかりにくかったかもしれません。
ご容赦下さい。

※写真は伊勢・おかげ横丁です

 

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生命保険の全国実態調査

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最初にお知らせです。
今週水曜日(30日)の午後、セミナーインフォ主催のセミナーで
講師を務めます。演題は「ポスト金融危機の保険会社経営」です。
少人数で3時間のセミナーなのでそこそこの値段ですが、
まだ席があるようですので、ご関心のあるかたはお越し下さい。
セミナーインフォのHPへ

生命保険文化センターによる「生命保険に関する全国実態調査」
の直近版が17日に公表されています(速報版)。
この調査は3年ごとに行われており、今回の調査は
2009年4月から5月にかけて実施されました。

全生保の世帯加入率は90.3%でした。
ただし、今回から都道府県民共済、コープ共済、全労済が
新たに集計対象となったので、従来ベースでは86.0%でした。

民間の生命保険会社だけでは76.2%と、3年前の76.4%から
ほとんど変わっていないように見えます。
しかし今回から、かんぽ生命(5.7%)が含まれているので、
単純に見れば、実質的には6ポイント近くも下がったことになりますね。

過去の統計では、数値がこれほど下がったことはありませんが、
前回を異常値とすれば、1994年度(82.5%)をピークに、
毎年1ポイントくらい下がっているトレンドとなります。

加入率の低下は、調査のたびに回収サンプルの世帯年収が減り、
かつ、高齢化が進んでいることが大きいようですが、
世代別の加入率(速報版では公表されていません)など、
もう少し細かいデータがあれば、さらに何かわかるかもしれません。

もう一つ注目したのは、生活保障に対する考え方です。
世帯主に万一のことがあった場合に期待できる経済的準備手段を
複数回答で聞いたところ、トップは生命保険となっているものの、
回答率は57.5%と調査のたびに下がっています。
ちなみに1997年度の調査では72.4%ありました。

預貯金等は43%で概ね横ばい。不動産も2割程度で横ばいです。
何が増えたのかといえば、「期待しているものはない」という回答で、
1997年度の12.6%から2009年度は21.3%に上がりました。

生保破綻や金融危機などを経験した結果、このような冷めた回答が
増えているのかもしれません。

※写真は米国で見た銀行ATMのドライブスルーと
 セルフ式ガソリンスタンドです。

 

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