日系生保の中国ビジネス

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日本生命が中国での合弁生保のパートナーを変更したと発表しました。
これまでのパートナーだった上海広電が経営危機に陥ったこともあり、
中国農業銀行(中国4大銀行の一つ)系の金融サービス会社である
長城資産管理公司を新たな合弁相手として再出発するそうです。

合弁相手の経営危機がきっかけですが、合弁相手の変更により
従来のエージェントを通じたビジネス中心から銀行窓販中心へと
ビジネスモデルも大きく変わるのではないでしょうか。

中国の保険市場の規模はまだまだ小さいものの、
経済成長とともに高成長が続いています。

ただ、外資の実質的な参入規制はかなり厳しいです。
例えば生保の場合、外資の出資制限は50%となっており、
外資系企業として50%出資の合弁会社を設立するか、
あるいは中国系企業に部分出資するかしかありません。

地域制限や種目もあります。外資系企業への免許は通常、
地域限定免許かつ種目制限付きです。
もっとも、今回の日本生命のリリースには、
「中国全土における事業展開を目標」とあるので、
もしかしたらハードルを越えることができているのかもしれません
(あくまで想像ですが…)。

参入規制が厳しいのは、商品・サービスで見劣りする
中国系企業を守るためと言われています。
最初に上海に進出したAIG(100%出資)が短期間のうちに
市場シェアを獲得したため、という話も耳にしたことがあります。

他方、東京海上や住友生命のように、部分出資で中国企業として
参入したケースでは、成長は速いものの、今度は当初の出資比率を
維持できないという問題が発生するようです(一般論として)。

中国は日本の大手として無視できる市場ではありませんが、
成長の果実を得られるのはいつになるのでしょうか。

 

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民主党政権のはずが…

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郵政・金融担当大臣に国民新党の亀井静香氏が就任し、
消費者・少子化担当大臣には社民党の福島瑞穂氏が就任しました。
金融・保険セクターに関係の深い大臣はいずれも民主党ではなく、
連立相手からの選出です。
民主党は金融を重視していないのでしょうか?

欧米ではいまだに金融危機の火がくすぶっていますし、
規制強化の動きはまさに佳境に入っているところ。
日本からも意見を言っていかなければなりません。

「今の金融は極めて異常で金融機関は反省しなければならない」
「金融機関は社会的使命をもっと考えるべきで今の状況はそれとかけ離れている」
(17日付日経の亀井大臣のコメント)

なかなか大変なことになってきましたね。

※写真はパリのカフェです。

 

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ヨーロッパ便り(その5)

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ヨーロッパの都市に行くたびに、路面電車と自転車の存在感が
高まっているなあと感じます。

最近の路面電車はLRT(Light Rail Transit)と呼ばれています。
昔ながらののんびりした乗り物ではなく、最先端の交通手段です。
低床車なので乗りやすく、スピードもかなり出ます。
写真はアムステルダムのトラムですが、最近ではパリにも
LRTが登場したようです。

そのパリを歩いていて目立つのが、VELIB(ヴェリブ)というレンタサイクルです
(右の写真)。
町のあちこちに無人のステーションがあり、クレジットカードなどを使って
自転車を借りる仕組みになっています。
パリの道路は車が多く、自転車レーンの整備もまだまだですが、
おそらく何年か経てばもっと走りやすくなるでしょう。

オランダやドイツの都市ではもっと自転車が目立ちます。
特にオランダでは自転車が都市交通の重要な乗り物とされていて、
主な道路には必ず自転車レーンがあります。
市内を走る自動車が少ないので、おそらく制限しているのでしょう。

いずれにしても、自動車中心の都市交通から脱却しようという
取り組みなのでしょう。

 

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ヨーロッパ便り(その4)

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日本に帰ってきました。
昨日は夜の飛行機だったので、ビュルツブルクにちょっと寄り道。
人気の観光ルートであるロマンチック街道の起点の町です。

観光客ばかりかと思いきや、土曜日の中心部は買い物客がたくさん。
日曜日は基本的にお店が休みなので、土曜日は買い物の日なのですね。
大きな荷物を持った家族連れがたくさんいました。

ドイツには小売店の営業時間に関する法律があって、
数年前までは、平日は午後6時ころまで、土曜日は午後2時までしか
営業できませんでした。日曜日は営業禁止です。
労働者や規模の小さい小売店を保護するのが目的だったように思います。

ただ、近年は徐々に営業時間の制限が緩められています。
数年前には平日も土曜日も午後8時まで営業できるようになり、
さらに、今ではかなりの州で平日の24時間営業や日曜日の営業が
可能となりました(州によって違います)。

ビュルツブルクのあるバイエルン州の現状は確認できていません
(ネットによると、他州よりも緩和されていない可能性が高そうですが…)。
ただ、見たところ「土曜日の買い物」という習慣は続いているようです。

 

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ヨーロッパ便り(その3)

 

オランダ、フランス、ドイツと移動してきましたが、
通貨がどこもユーロというのが非常にありがたいです。
それに鉄道でも飛行機でも出入国審査がないので、
国内旅行の感覚です(これは通貨統合以前からだと思います)。

加えて言葉の問題。
フランスのアクサやドイツのアリアンツといった国際企業では、
本社でも半数近くが外国人という部署が珍しくないようです。
ドイツ人とイタリア人、イギリス人がみんなで話をするときに使う言葉は
英語なんだそうです。

そこまでいかなくても、英語の国際語化は一段と進んだように思います。
「フランス人は英語を知っていても知らないふりをする」
という有名な話がありますが、もはや伝説でしょう。

基軸通貨のドルを持ち、英語を母国語とする米国と、
通貨統合でユーロを立ち上げ、英語を共通語とするEU圏。
二大勢力のなかで日本が存在感を発揮するには
どうしたらいいのでしょうか。
ルールに従うだけではなく、ルールを作る側にまわったほうが、
たぶん幸せですよね。

 

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ヨーロッパ便り(その2)

 

ホテルのネット接続がうまくいかず、更新が遅れてしまいました。
以前もヨーロッパ出張ではネット関連で苦労したことがあります。
このあたりは米国のほうが進んでいるようですね。

かつてはヨーロッパでもチップは必須だったように記憶しているのですが、
いまやホテルでもレストランでもチップなしで大丈夫のようです。

ホテルでもボーイさんが部屋まで荷物を運んでくれても、さっさと帰っていきます。
タクシーも基本的にチップ不要です(渡せば受け取るのでしょうけど)。
米国のように、チップを渡し忘れると待っている、あるいは請求する、
なんてことはありません。

ガイドブックには「請求に『サービス料』が入っていればチップ不要」
などとありますが、周りを見ると、そうでなくてもチップを置いていないようです。
ただ、高級店は違うのかもしれません…行っていないのでわかりません^^。

米国ではホテルやレストランからの収入が極端に低いので、
どうもチップが収入の重要な部分を占めているという話を聞きます。
「いいサービスのためにはチップが必要」という考えも根強いです。

ただ、チップの習慣がない日本の旅行者にとって、
15%ものチップを払うのは苦痛ですよね(少なくとも私には)。
ヨーロッパの変化を見ると、固定給をもっと上げたほうが
サービスの底上げにつながるでは、などと感じてしまいます。
経済学ではどうなっているのでしょうね。

保険アナリストとしては、何となく生保営業職員の給与制度の話に
通じるものがあるように感じました。

 

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ヨーロッパ便り(その1)

 

金融市場混乱の影響は米国の金融機関だけではなく、
ヨーロッパの金融機関にも大きな影響を与えました。

日本では米国の金融機関については大きく報道されるのですが、
ヨーロッパの動向は断片的にしか伝わってきません。
英国やオランダをはじめ、各国政府は自国の金融機関に
公的資金を何度も投入したり、リスクの高い不動産関連資産の
保証をしたりといった支援を行っています。

もちろん、支援を受けた金融機関では、コスト削減やリスク圧縮、
事業見直しなどの再建計画を立て、実行しているところです。
決算発表等でリストラ計画の進捗状況を公表し、
「計画を上回るペース」などと報告する金融機関も見られます。

ところが複雑なのは、欧州連合(EU)の存在です。
欧州連合の執行機関である欧州委員会はこの8月、
政府の支援を受けている金融機関に対し、
改めて大規模なリストラを求めました。
競争条件の公平さを保つため、個人・法人向けを問わず、
売却などによる事業再編を促しているようです。

自国政府とは別に、国際的な上位組織からリストラ計画の
見直しを求められるとは、日本ではなかなか考えにくいことです。

ただ、今週発表になった、中央銀行総裁・銀行監督当局長官グループ
(バーゼル銀行監督委員会の上位機関)のリリースでも、
規制の強化とともに、「国際的な調和」が何回も出てきます。

ポスト金融危機の世界では、国際的な組織や会合の影響力が
これまで以上に大きくなっていくのでしょう。
日本も国際的な場でいろいろ主張していかないと、
他人が作った規制を単に受け入れるだけになってしまいます。

※写真はアムステルダムです。自転車が目立ちます。

 

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ヨーロッパ出張

このところテレビによく出ている「鳩山さんのそっくりさん」が
私に似てると、妻と息子から言われました。
鳩山さんに似ているのではなく、そっくりさんのほうです(笑)。
自分ではあまりそのように思わないのですが...

自分でも似てるなあと思ったのは、オメガトライブのカルロストシキさん
(わかりますか?日系ブラジル人です。ちなみに今は似ていません)。
20年前の話ですが、彼が出ているテレビを観て、
自分が歌っているのではないかと思いました^^

ところで、このブログは成田空港で書いています。
7月の台湾、8月の米国に続き、今回はヨーロッパです。
もともと、この出張が最初に決まっていたところ、
次々に新たな出張が入り、毎月どこかに出かけるはめになりました。

G20がロンドンで開催されたばかりですが、
日本にいると、ヨーロッパの経済・金融情勢はいまひとつよくわかりません。
うまくブログを更新する時間があれば、
米国のときのように、いろいろとコメントしたいと思います。

 

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IASBの円卓会議

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7/16のブログで書いた金融商品会計の見直し案について
IASB(国際会計基準審議会)が東京で円卓会議を開いたので
私も出席してきました
(FASB=米国財務会計基準審議会との合同開催)。

IASBのHPへ

現在の保有区分は主に「満期保有目的」「売買可能」「トレーディング」です。
これをIASBは「公正価値/純利益」「取得原価」の2区分に集約する案を、
FASBは基本的に「公正価値/包括利益(売買目的、株式は純利益)」にする案を
それぞれ出しています。

円卓会議は午前、午後の2回開かれました。
午前の参加者は20人程度で、このうちアナリスト関係が6人、
コンサルタントが3人程度、銀行・生保関係が4人、メーカーが2人、
ASBJ=日本の企業会計基準委員会から3人、といったところでしょうか。
海外からの参加者もいました(韓国、香港、シンガポールなど)。

加えて、オブザーバーがたくさん。50人くらいいたでしょうか。
これは私には想定外でした。

会議では参加者がIASB/FASBのメンバーに対し、質問やコメントをしました。
名札を縦にすると、順番に発言の機会が与えられるスタイルでした。

やはり一番多かったのが、いわゆる持ち合い株式の評価についての発言でした。
IASB案では例外として、公正価値でも包括利益でOKという案を出しています。
ただ、売却益や配当収入が純利益に反映されないため、
多くの参加者からこの点についてコメントがありました。

IASBからは「例外の例外を作ろうというのだから、単なる要望ではなく、
そうするべき明確な理由を提案してほしい」とのこと。
そうでなければ動けないという感じでした(あくまで個人的な印象ですが)。

私はと言えば、発言者のなかで最もつたない英語で次のようなコメントをしました。

・FASBの「公正価値/包括利益/売買損益を純利益に反映」を支持
 IASB案では現行の「満期保有」よりも自由度が高くなってしまうのが難点
・保険負債が公正価値になると、保険会社は資産・負債が時価・時価に、
 他方、銀行は資産・負債とも償却原価が大半となると見られ、
 両者を比べるのが難しくなる
・分析上、純利益をそれほど重視していない。ただ、多くの人が参考にしているので、
 「純利益に反映」ではなく、「包括利益/売買損益を純利益に反映」が妥当

2時間はあっという間でしたが、かなり疲れました(TT)

※写真は大倉山「ピオン」のケーキです

 

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ソルベンシー・マージン比率の見直し案公表(その2)

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今回もソルベンシー・マージン比率(SMR)の見直し案について。

見直し案が実現すれば、大手生保のSMRは現行の半分程度に
下がるとのことですが、自分でもざっと見てみました。

国内系生保では株式保有が多い会社ほど比率が下がるようです。
これはもともとの見直し案の通りです。

例の、「全期チルメル式責任準備金超過部分(全チルV超過部分)」
+「劣後特約付き債務」<「中核的支払余力」 という限度を設けた影響は、
少なくとも2009/6末時点では、それほど大きくなさそうです。

ただし、中核的支払余力の計算には「その他有価証券評価差損」
を含むのがミソとなっています(差益は含みません)。
つまり、内部留保の取り崩しだけではなく、有価証券含み損が拡大しても
中核的支払余力が減少し、全チルV超過額&劣後債務の算入限度が減り、
限度に達した会社ではソルベンシー・マージン比率が大きく下がる仕組みです。

また、新聞にコメントを出した段階では気がつかなかったのですが、
ソニーやオリックス、プルデンシャル、ジブラルタ、三井住友海上メットライフ
といった会社は、全チルV超過部分が中核的支払余力に比べて大きいため、
現状では比率がかなり下がるとみられます。

だからといって健全性に問題があるわけではありません。
おそらく経済価値ベースに移行した場合には、
また景色が違ってくるように思います。

※写真は地元・大倉山です。

 

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