きんざいに書きました

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今週の週刊金融財政事情(2009.12.21)に拙稿が掲載されています。
「金融危機と保険会社のリスク管理態勢」というタイトルです。

11月の日本アクチュアリー会・年次大会で発表した内容を
銀行と保険のつながりを中心に加筆修正しました。

ご参考までに前文を引用します↓

 米AIGの経営危機が金融システムの動揺を招いたように、
 日本でも銀行と生保の関係は強く、かつ、以前よりも多面化、
 複雑化している。このため銀行だけではなく保険会社のリスク
 管理態勢にも十分注意すべきである。

 筆者のインタビュー調査によると、リスク管理の実効性は
 保険会社によって大きくばらついていた。ある程度機能した
 会社では、経営意識の高さ、単一モデルに依存しない体制、
 実行可能性の高さといった特徴がうかがえた。

この号には保険関係の論文がもう一つ掲載されています。
タイトルは「金融危機後の国際的な保険監督規制の動向」。
損保協会の前国際部長で、現在はジュネーブ協会アドバイザーの
松下勝男さんによるものです。
最近の規制強化の動きをわかりやすくまとめています。

※銀座で白いプーさんをみつけました。

 

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RIS2009全国大会

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RIS(全国保険学ゼミナール)2009の全国大会が
日本大学商学部でありました。
全国の大学でリスクと保険について学んでいる
大学生が日大に集まり、研究成果を発表するという
いわば大学生の学会です。

RISのHPへ

2日間にわたる大会のうち、私は都合により2つの発表しか
参加できなかったのですが、予稿集のタイトルや発表要旨をみると
興味深そうなものがたくさんありました。

例えば、「CDSの問題点と今後の対応(大分大学)」
「かんぽ生命の未来(早稲田大学)」といった時事的なテーマや、
「国民年金の財源問題について(近畿大学)」
「失業者と雇用保険~世界経済不況の影響~(日本大学)」
「大学における資産運用のリスクマネジメント(一橋大学)」
といったテーマもあり、大学生の関心分野が伺えます。

私が参加した発表のうち、
「損害保険会社の海外進出の評価(東京経済大学)」は
非常にレベルが高かったです。

まず海外進出の現状を整理したうえで、
仮説を立て、株価データなどを使って実証分析を行い、
さらに大手損保3社へのインタビューも実施したうえで、
「(海外進出に対する)株主と会社の考え方に違いがある」
というまとめをしていました。

サンプル数が少ないことや分析結果の解釈など
荒削りな部分も多いとはいえ、これだけしっかりした分析と
発表ができる学生さんたちがいるんだなあと、
久しぶりにうれしくなりました。

今の大学生は3年になったら就職のことを考えなければならず、
専門性を磨く余裕がますますなくなっているようです。
そのような厳しい環境のなかでも、頑張って勉強している
RISの皆さんにエールを送りたいと思います。

 

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第一生命がEEVを公表

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第一生命グループは14日、2009年9月末のEEV
(ヨーロピアン・エンベディッド・バリュー)を開示しました。
上半期末のEVを開示したのはT&D保険グループに続き2例目です。

ニュースリリースへ

第一生命は2010年4月に株式会社化&上場を控えています。
EVは生命保険会社の株主価値を試算したものなので、
投資家にとって非常に重要な指標と位置付けられています。

2009年3月末は株価が低く、市場のボラティリティも高まっていたため、
市場が落ち着いた9月末のEVは確かに参考になると思います。

3月末に比べて修正純資産が5085円増加した(1.8兆円)のは
株価上昇による影響が大きいです。
保有契約価値が2387億円増えた(0.7兆円)のは、
主にリスクフリーレートの上昇によるとのことです
(15年以上の超長期ゾーンが上昇しました)。

ただ、新契約価値(上半期に獲得した契約の価値)は
前年度の4割にとどまっています。

新契約価値についてもリスクフリーレートの上昇が
プラスに効いているはずなのですが、
第一フロンティア生命の変額年金が4787億円も売れたので、
最低保証オプションの負担が足を引っ張ってしまったようです。
同社が下半期に販売を抑制する方向で検討するというのも
理解できる話ですね。

※写真は日本橋三越の巨大ツリーです。

 

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台風18号の支払見込額

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10月上旬に上陸した台風18号の保険金支払見込額は
約551億円だったそうです。

損保協会のニュースリリースへ

この台風は、50年前に大きな被害を出した伊勢湾台風と
上陸するまでほぼ同じコースをたどり、勢力も強かったので、
大きな被害が出る恐れがあると言われていました。

今回の「551億円」は史上12番目の支払額なので、
決して小さい金額ではないですが、正直言って、
関係者はこの程度の被害にとどまってホッとしたでしょう。

現在のソルベンシー・マージン比率の風水災害リスクは
伊勢湾台風に相当する規模の台風が発生した時の
推定保険金をリスク相当額としています。
金額は今回の10倍以上です。

上陸地点がやや東にずれた(=名古屋を直撃しなかった)ことや、
上陸後の台風のスピードが速かったことなどが
不幸中の幸いだったのでしょう。

とはいえ、地球温暖化の影響からか、強い台風は
発生しやすくなっているようです。
また、海面温度が高いと、日本に近づいても勢力が
衰えない傾向があるとのこと。
油断は禁物ですね。

※今年は地元の大倉山駅前にツリーが登場しました。

 

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損保協会の比較サイト

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日本損害保険協会が最近、自動車保険商品の比較サイトを開設しました。

損保協会・自動車保険比較サイトへ

最初は「保険料の比較ができないサイトなんて利用価値がない」
とも思ったのですが、価格以外にどの項目を比べればいいのかを
知るうえでは参考になりそうです。

例えば、人身傷害保険や車両保険の選択パターンが示されています。
主な特約や割引制度も示されていて、便利です。
主なサービスや商品の特徴も簡潔に記されています。

もちろん、リスク細分がどのような条件設定で行われているか
(年齢、運転者の範囲、免許証の色、使用目的、走行距離など)
という情報もあります。

数年前に開催された「比較討論会」では、業界団体に比較情報の提供を
期待する声が多く、私などは非常に違和感を覚えたものですが、
様々な制約があるなかで、損保協会の取り組みは評価したいと思います。
価格情報はないですが、リンク先で見積もりを出すことはできそうですし。

あとは生保と第三分野ですが、今のところ具体的な動きはなさそうです。
このままですむとは思えないのですが。

※渋谷で待ち合わせをしたら、モヤイ像がなくなっていました。
 なかなか面白い企みですね。

 

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変額年金の資産残高

今さらではありますが、生保の上半期報告のデータをみると、
変額年金の資産残高が過去最高となったことを発見しました。
主要12社の残高合計は16.7兆円で、この半年で18%増えています。

もちろん、時価が10%近く増えた影響もあるのですが、
住友、第一フロンティア、T&Dフィナンシャルなどの売り上げが
寄与しているようです。
銀行の手数料ニーズもあるとはいえ、貯蓄性商品へのニーズは
依然として根強いと言えそうです。

別件ですが、セミナーのご案内です。
クリスマスイブに金融財務研究会主催のセミナーで
スピーチをする予定です。
有料セミナーですが、ご関心のあるかたはどうぞ。
自分で言うのもなんですが、今回は面白いと思いますよ。

金融財務研究会のHPへ

※写真は横浜港の風力発電(風車)です。
 気がついたら風車がありました^^

 

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連邦規制は実現するか(続き)

以前このブログでも取り上げた米国の金融改革ですが、
どうやら「連邦レベルの保険規制当局」は実現しなさそうです。

連邦規制は実現するか(6/23のブログ)

正確に言うと、連邦レベルの保険当局は設立されるものの、
州単位の免許制度はそのままで、新たな保険当局は
モニタリングと国際問題への対応などを行います。

やはり州の影響力(というか政治力)は強いのですね。
米国が基本的に内向きな国であることを改めて認識しました。

そういえば自国の大統領が提唱してできた国際連盟にも
米国は加盟しませんでしたね。90年も前の話ですが。

 

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たった一人の反乱

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12/1(火)の夜に放送されたNHKの「たった一人の反乱」
「ミートホープを告発した男~赤羽喜六編」を観ました
(ご覧になったかたはいますか?)。

2007年に発覚したミートホープ社によるひき肉偽装事件を
NHKがドラマ仕立てにしたものですが、
赤羽さん本人のインタビューもあり、思わず引き込まれました。

赤羽さんは何とかして会社(社長)に偽装を止め、
真っ当な商売をしてもらおうと、苦悩に苦悩を重ねた結果、
事件を表に出そうと必死に取り組みました。

ところが、事件が発覚した結果(唯一取り上げたのが朝日新聞でした)、
ミートホープ社は倒産し、約100人の従業員は失業。
家族はマスコミの取材攻勢や外部からの嫌がらせに
追われることとなったのです。

番組のなかで赤羽さんは、
「(もし告発前に戻ったとしたら)今度は告発などしない」
と断言していました。

この事件により新たな食品偽装が次々に発覚し、
ミートホープ事件では動きが鈍かった行政も徐々に変わり、
間接的には消費者庁の誕生にもつながっています。

しかし彼のコメントはこうです。

「ヒーローなんかではない。まわりはみんな不幸になった」
「自分が罪にならないためにやったこと」
「得たものは何もない」「むなしい」

内部告発とはそこまで重たいものなのですね
(司会の山本太郎さんがとまどっていました)。

ただ、赤羽さんはなぜ家族(特に奥さん)に自らの苦悩を
話さなかったのでしょうか。
この世代の特徴と言ってしまえばそれまでですが、
今も二人が別れて生活しているという話を聞いて
ちょっとショックでした。

 

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パブコメの募集期間

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金融庁が中小企業金融円滑化法の政令案、内閣府令等案、監督指針等案、
金融検査マニュアル案を公表したのは11月30日午後でした。

ところが、同時に求めたパブリックコメントの締め切りは、
政令案が12月1日(つまり翌日)の11:00、内閣府令等案は同じく1日の18:00、
監督指針等案は2日の18:00だったと知って驚きました。

金融庁のHPへ

企業の資金繰りが厳しくなりがちな年末に対応した動きだとは思うのですが、
せめて1週間程度のパブコメ期間を設けることはできなかったのでしょうか。

HPには、「本件は、年末の中小企業金融の円滑化等に万全を期すため、
いただいたご意見を検討した上で速やかに決定する必要があり、
行政手続法第40条第1項で定める『三十日以上の意見提出期間を
定めることができないやむを得ない理由があるとき』に該当する」とありますが、
それにしても、という感じがします。

政治主導はいいのですが、この数年せっかく改善してきたプロセスの透明性を
後退させてほしくないですね。

※写真は絵本の「ちいさいおうち」みたいですが、
 東横線・田園調布駅の旧駅舎です。

 

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通販自動車保険の成長

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三井住友海上HDのIR資料を見ていたら、
「通販損保ランキング」という資料がありました
(三井ダイレクト損害保険のところですが、まだ更新されていないかも)。

三井住友海上グループホールディングスのHPへ

通販というと外資系のイメージが強いかもしれませんが、
上位6社(ソニー、三井ダイレクト、アクサ、チューリッヒ、
アメリカンホーム、そんぽ24)のうち、3社は国内系です。

6社の自動車保険元受正味保険料は1686億円(2008年度)。
市場全体の保険料が3.5兆円程度(AIUを含む)ですから、
通販6社のシェアは4.8%となります。

ただ、3.5兆円のなかには企業のフリート契約なども含まれるので、
個人向けを全体の7割とすると、シェアは7%近くに上がります。
通販社がメインターゲットにしている顧客層、例えば、
都市部の週末ユーザーであれば、すでにかなりのシェアを
通販社が確保しているのではないでしょうか。

しかも、通販6社の収入保険料は今も成長を続けています。
ややペースが落ちてきたとはいえ、年8%前後伸びていますし、
この上半期もソニーが前期比11.7%増、三井ダイレクトが同11.8%増、
そんぽ24が同19%増となっています。

収支面でも、ソニーはすでに発生ベースで
コンバインドレシオが100%を下回っています。
三井ダイレクトも100%割れが見えてきました
(成長している会社では正味ベースだと数値がかなり低く出るので
発生ベースをみる必要があります)。

英国のような爆発的な伸びはありませんでしたが、
いよいよ無視できない存在になってきましたね。

※写真は港北ニュータウンの緑道です。
 自転車での紅葉めぐりもいいですよ。

 

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