働く人への保険

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インターネット生保のライフネット生命が
2月下旬から新商品「就業不能保険」の販売を開始しました。

ライフネット生命のHPへ

以前、ニッセイ基礎研究所の明田裕さんが「共済と保険」で
「『ディサビリティ』こそ生保・共済事業のフロンティア」という
非常に興味深い論文を書かれていたのを思い出しました。

論文の「はじめに」から引用すると、

・狭義の「医療・介護」分野の将来は必ずしもバラ色ではない

・障害・就業不能のリスクは相対的に高まっていることから、
 「医療・介護」の幅を広くとらえてこれらを包摂し、
 消費者の認知度の向上を含めた対応を進めていく必要がある

と、障害・就業不能(ディサビリティ/Disability)市場の将来性に
注目しています。
ライフネット生命の新商品はまさにこの分野です。

ざっとHPを見ただけですが、確かに私にとっても就業不能のリスクは
大きそうですし、備えが十分とは言えません。

ただ、気になったのが、①就業不能給付金の支払事由、
②日本における就業不能データの存在、です。

約款(HPで公表されています)を見ると、給付金が支払われるのは

「就業不能状態が日本の医師の診断書によって証明されること」

「就業不能状態とは、傷害または疾病により、日本国内の病院もしくは診療所への
 治療を目的にした入院、または日本の医師の指示により在宅療養をしており、
 少なくとも6か月以上、いかなる職業においても全く就業ができないと
 医学的見地から判断される状態(死亡したら就業不能状態ではなくなる)」

となっています。

「いかなる職業」でも「全く就業できない」状態のイメージをつかめないと、
お客さんがついてこないようにも思います。

②については単に私が知らないだけなのかもしれません。
日本にはこのような就業不能状態の発生/消滅データがあるのでしょうか
(ちなみに明田論文では公的年金の「障害発生率」が紹介されています)。

新商品では米国など海外のデータをそのまま参考にしているのか、
あるいは公的データが存在するのか(損保にはデータがあるかも?)。
付加保険料を抑えたといっても、実は安全割増をものすごく大きく
とっているのかもしれません。
しかも、実績として示されるのはかなり先のことです。

詳細は企業秘密でしょうし、もちろん監督当局の認可を得ているのですが、
難しい分野なので、何かもう少し手掛かりがあると安心できますね。

とはいえ、開業以来初めての新商品が「働く人の保険」というのは
新しいライフネット生命らしい取り組みだと思います。
こうやって会社のブランドが形成されていくのでしょう。

※写真左は那覇市内のビーチ。なんと泳いでいる人がいました。

 

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インタビュー記事のご紹介

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2月に私のインタビュー記事が2紙で掲載されました。

一つめは2/18(木)の保険毎日新聞です。
新春特別企画「『保険自由化』を振り返る」の第13回でした。

インタビューの骨子は次の通りです。

・自由化で変わったことは、①健全性を確保する枠組み、
 ②経営の多様化が進んだこと

・消費者にとって商品や購入ルートの選択肢が広がったが、
 多様化した商品をどうやって比較検討して購入したらいいか、
 その情報が欠けている

・保険会社は自らの財務基盤を将来にわたって安定させるために、
 リスク管理の実効性をどう高めるかが求められている

・生損保とも戦後中核としてきたマーケットが日本社会の変容とともに
 行き詰まりを見せており、保険市場の変化に対応したビジネスモデルの
 再構築が課題になっている

実のところ他のかたのインタビューを読んでいないので、
企画の全体像はよくわかっていません。

もう一つは2/22(月)のフジサンケイ・ビジネスアイです。
「生保陣取り合戦 第2幕」という特集記事のなかで、
私のインタビュー記事が載っています。

こちらも簡単にご紹介しましょう。

・金融危機で国内生保が有利になったというより、
 やっと同じ土俵での勝負が始まった

・差別化を図るために、外資は新たな販売チャネルの開拓や
 独自のビジネスモデルを作り上げた。結果的に、
 既存のやり方に固執する国内生保は外資にシェア拡大を許した

・新規契約が取れないからといって、ただちに経営危機に陥る会社が
 あるわけではないが、だからといって、このままでいいわけではない。
 外資にしても、いつまでもあぐらをかいていられるわけではない

・国内、外資にかかわらず、いかにニーズをとらえるかが
 本当の意味で問われる時代がきている

2月は他にもいくつか取材を受けているのですが、
一番多かったのは第一生命の株式会社化・上場に関するものでした。
ただ、残念ながら私は株式アナリストではないので、
あまりお役に立てなかったかもしれません。

※広島風お好み焼きは出前もできるのですね。
 ちょっとびっくりしました。

 

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「共済 中高年の味方に」

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2/28(日)の日経17面は共済の特集でした。
制度共済が中高年世代の保険見直しの切り札になる可能性がある、
という主旨の記事です。

記事の最後に私のコメントも載っています。
全労済、全国生協連、コープ共済連の大手3共済の経営に関して、
「資産の大半が現預金や公社債などで、金融危機でも痛手を受けていない」
というものです。

ただ、共済の経営内容に関する情報は非常に少ないです。
ディスクロージャーは徐々に進んでいるものの、
一般の人がみても経営内容をつかむのは難しいでしょう。
格付けを取得し、公表しているところもありません。

記事にはありませんが、3共済への一番の誤解は、
「こくみん共済や県民共済は国や県が運営している」というものでしょう。
名前や非営利性から公的なものと勘違いしてしまうのですね。

それから、万一経営が厳しくなった場合には、
更新時の掛け金を引き上げる、あるいは、保障を縮小することはありえます
(組合員が同意すれば)。
共済に入るということは、協同組合に参加するということなので、
むしろそれが自然なのかもしれません。

 

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米国の州保険監督体制

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直近のニッセイ基礎研REPORT(2010年3月号)に掲載された
「米国の州保険監督体制」(松岡博司さん執筆)によると、
各州の保険監督局で働く職員は1万人以上に上るそうです。

ニッセイ基礎研REPORTのHPへ

「財務健全性監督部門」「販売行動監督部門」「免許部門」だけでも
約3500人となる計算です。
もっとも、米国には保険会社だけで数千社ありますし、
この記事によると、監督対象は保険会社だけではないそうです。

他方、日本の金融庁は1462人(2009年度の定員)です。
このうち監督局が273人、検査局が430人となっています。
ただし、保険監督だけではなく、銀行や証券を含めた全体の数字です。

保険だけのデータは見つかりませんでしたが、
監督、検査、企画合わせても60~70人程度ではないでしょうか。
監督対象となる保険会社は意外に多く、100社を超えています。

日米の保険監督体制は規模だけ見ても相当違うことが伺えます。
米国ではこれだけ多くの監督官が働いているわけですから、
連邦規制がなかなか導入されないのも理解できます(是非はともかく)。

※宮島の表通りを一本裏に入ると、懐かしい町並みがありました。

 

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沖縄出張

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出張の後半は沖縄でした。

沖縄には県内シェア5割弱を誇る大同火災があります。
ほぼ沖縄県だけで営業している珍しい会社です。
ちなみに生命保険会社は本土復帰の際に他社に吸収されています
(琉球生命 → 日本生命、沖縄生命 → 協栄生命)。

沖縄の保険市場は本土とはいろいろ違います。
大企業が少なく、かつ、車社会なので、損保と言えば自動車保険です。
ただ、沖縄県は日本で数少ない人口増加県ですし、
自動車の保有台数も増えています。

火災保険も普及していますが、コンクリート造りの家が多く、
台風が来ても一般に被害はそれほど大きくならないようです。
もっとも、発生直後に襲ってくるので、事前の準備ができません。

地縁・血縁など横のつながりも強いようです。
これを象徴するのが「模合(もあい)」という民間金融の存在。
模合はグループで定期的に集まり、一定のお金を出し合って、
必要な人から順番にお金を受け取っていくという仕組みです。
シニア層だけではなく、若い人どうしの模合も普及しているとか。

※左の写真は沖縄の桜です(寒緋桜)。

 

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プロ代理店の勉強会

 

プロ代理店の集まりであるRINGの会のオフ会(勉強会)で
広島に行きました。 RINGの会HPへ

オフ会の内容はメンバー限りなので、ここで書くことはできませんが、
マクロ的な講演から実務上の情報交換、新たな取り組みの紹介など、
非常に前向きな勉強会でした(私も1コマ担当しました)。

私にとっても、このような現場の皆さんとの交流は貴重な機会です。
「現場でそのような動きがあるのか!」と驚かされることもしばしばですし、
例えば、本社は「あるべき姿」を実現するために打ち出した話が、
現場ではいつのまにか「あるべき姿」がどこかに行ってしまい、
目先の対応に追われるばかりになっていたりもします。

ただ、どの産業でもマクロとミクロのギャップはあるとはいえ、
とりわけ保険業界では本社と現場の距離が大きいように感じます。
どうしてなんでしょうね。

※厳島神社です。干潮で大鳥居まで歩けました。

 

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ジャーナリズムの試金石

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保険分野とは直接関係のない話が続きますが、ご容赦下さい。

朝日新聞の夕刊に、ジャーナリストの池上彰さんの
「新聞ななめ読み」というコラムがあります。
15日は「トヨタ大規模リコール ジャーナリズムの試金石」でした。
巨大スポンサーであるトヨタのリコール問題を
新聞やテレビがどう扱っているか紹介しています。

コラムによると、9日の豊田章男社長による緊急おわび会見を、
新聞やテレビは次のように伝えたそうです。

・他の民放がこの問題を扱うとき、なんとなく腰が引けていたのに比べ、
 NHK(夜7時のニュース)は堂々たる扱いだった。

・朝日新聞は「欠陥」ではなく「不具合」とマイルドに表現。
 記者会見の一問一答の見出しも社長に好意的な表現。
 全体としては微温的な扱い。

・読売新聞は「『安全』から一転『欠陥』」「トヨタ社長歯切れ悪く」と
 トヨタを厳しく批判する姿勢が紙面からうかがえる。

・日経新聞は経済紙なのに扱いが小さく、「信頼回復へ陣頭指揮」と
 社長を持ち上げるなど、トヨタへの批判的な視点が見当たらない。

内容の面白さもさることながら、コラムが掲載されている朝日新聞に
遠慮しない池上さんの姿勢にも好感が持てますね。

※鶴見線シリーズ。終点の扇町駅(左)と近くの運河(右)です。
 まさに京浜工業地帯という感じがしますね。

 

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学校の大画面テレビ

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息子の通う中学校に50インチの大画面プラズマテレビが入りました。
しかしこのテレビ、非常に評判が悪いようです。

テレビを載せる台が低い(教室で観ることを想定していない)ので、
前の席だと大きすぎて見にくく、後ろだと前にさえぎられてよく見えません。
薄型なんだから壁掛けにすればいいのに。
「大きいのでじゃま」という問題もあるようです。

しかも、以前のテレビよりも電気を食うので、全校テレビ朝会など
学校全体でテレビを使うとブレーカーがすぐに落ちてしまうとか。
だから全校でテレビを観るときは照明や暖房を切るのだそうです。
こうなると悲劇を通り越して喜劇ですよね。

調べてみると、これは地元ではなく、国の政策でした。
麻生政権時代の2009年4月に取りまとめられた経済危機対策で
「スクール・ニューディール」構想が提唱され、そのなかに、

「全てのテレビを50インチ以上のデジタルテレビに買い替える」

という内容が入っていたのですね(もちろん予算も)。

ちなみにHPには次のように書いてありました。

「迫力ある高画質な映像により児童生徒の興味関心を向上させるとともに、
 各教室にモニターとして置くことにより、パソコンやデジタルカメラの画面、
 プリント、教材等を拡大表示し大きな学習効果を期待できるものです」

文部科学省「スクール・ニューディール」構想

現場の要請ではなく上から突然降ってきた話だったため、
先のような何ともちぐはぐな光景になってしまったようです。
それにしても、もう少し工夫のしようはあると思うのですが。

※鶴見線シリーズ。この駅の名前は「昭和駅」なので、
 かつて記念切符が売り出されたことも。

 

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生保の業績報告

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生保の第3四半期(10-12月期)業績報告の発表がありました。

日本の四半期開示は4-12月累計で発表されます。
年度決算の姿を予想しやすいというメリットがある半面、
足元の変化をとらえにくいというデメリットもあるようです。

そこで主要生保(大手4社とかんぽ、ソニー、アリコ、アフラック)の
契約動向を四半期ごとに並べてみました。

四半期ごとに見ると、例えば住友が個人年金の販売を抑えたことが
確認できます、第一(フロンティア生命)は高水準を維持しています。
同じ大手でも、第三分野の年換算保険料の推移などから、
住友(第三分野に積極的)と他の3社で商品・販売戦略の違いが伺えます。

アリコジャパンにも注目です。1年前のAIGショック以降、
個人年金販売は引き続き低水準です。
ただ、個人保険分野では、第三分野の好調さに支えられ、
何とか踏ん張っているようです。

かんぽ生命の動向も興味深いです。
この四半期は個人保険の回復基調にややブレーキがかかる一方、
個人年金の販売を伸ばし続けています。
あまりいい傾向ではないかもしれません。

※きょう(14日)はバレンタインデーですね。
 写真の手作りチョコは果たしていずこへ?

 

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役員報酬の個別開示

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本日(2/11)の日経1面です。
金融庁は2010年3月期から上場企業等の情報開示を強め、
役員報酬の個別開示を義務付ける方針とのこと。

普通の記事のほかに下記のような「解説」がありました。

・金融庁が役員報酬の開示を企業に義務づけるのは、
 経営への監視を強めるのが狙いだ。

・だが、役員報酬が突出しにくい日本で、
 情報開示の義務化を急ぐ理由が本当にあるのか。
 コーポレートガバナンス改革を進めるうえで、
 優先的に取り組む課題かどうか疑問が残る。
 (他の優先課題については示されていません)

・開示の範囲について、国際的な合意があるとはいえない。

・日本企業の役員報酬は米欧ほど高くない。
 それでも厳しい情報開示を求める理由はなにか。
 政府の説明責任が問われる。

・日本の事情も考慮し、実効性があるかどうかを
 検証する必要がありそうだ。

私にはこれが「解説」とはとても思えませんし(社説ならわかります)、
反対意見にしては説得力が弱いように感じます。

個別開示の是非については、ここでは語りません。
ただ、一般的には経営の透明性を高めることが
ガバナンス強化につながると理解されているわけですし、
実際に情報開示も進んできました。

役員報酬の個別開示に経済界が反発するのはわかります。
しかし、どうして市場機能の一翼を実質的に担っているマスコミの一員
(しかも経済紙)である日経が、経営の透明性を高めようとする話に
否定的な記事を書くのでしょうか。

もし日本企業の役員報酬が米欧ほど高くはなく、
開示による効果が米欧ほどは期待できないにしても、
ある程度のガバナンス向上にはつながる(マイナスではない)
と考えるのが普通です。
他のガバナンス向上策とは違い、コストもほとんどかかりません。

開示によるマイナス効果が大きいというのであればわかりますが、
そうであるならば、読者としてはそれこそ解説してほしいです。

「日本で義務化を急ぐ理由があるのか?」と
国際的な流れとは異なる動きを主張しながら、
「開示範囲に国際的な合意がない」というのも変ですよね。

説明責任が問われるのは政府よりも日経のほうではないでしょうか。

※鶴見線シリーズ第2弾。
 この浜川崎駅は鶴見線から同じJRの南武線に乗り換えるのに、
 改札口を出て道路を渡り、別の改札口を入る仕組みになっています。
 左が鶴見線、右が南武線です。

 

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