14. 書評

督促OL修行日記

 

運良くとれた寝台特急「カシオペア」で北海道へ。
飛行機なら1時間半のところを、17時間もかけて
のんびり北に向かう、ぜいたくな旅でした。

ところで、車内で読んだ「督促OL修行日記」という本が
なかなか面白かったので、ご紹介。

本書は信販会社のコールセンターで督促の仕事、
つまり、債権回収をしている女性の体験記でして、
「お金を返して下さい」という電話をかけまくる日々だそうです。

「感情労働」という言葉をはじめて知りました

肉体労働は体を使って仕事をしてお金を得ます。
頭脳労働は頭を使って生み出したアイデアなどを
賃金に変えます。

これに対し、感情労働は自分の感情を抑制することで
お金を得る仕事で、いわば心を売ってお金を得ます。
顧客から一方的に罵詈雑言を浴びせられることもしばしば。
コールセンターや客室乗務員などがこれにあたります。

こうした仕事では心に疲労がたまりやすいので、
心を病む確率が他の労働よりも高いのだとか。

以前の職場にも「金融サービス利用者相談室」があり、
一般の人から相談を受け付けています。
聞くところによると、やはり大変な職場だったようです。

でも、考えてみれば、コミュニケーション力が重要なのは
感情労働系の仕事に限った話ではありません。
本書に書かれている「督促OLのコミュ・テク」は、
多くの人に役立つのではないでしょうか。

ご参考までに、筆者のブログもあるそうです。
督促(トクソク)OLの回収4コマブログ

 

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FP深田晶恵さんの新刊

 

同世代の売れっ子FP深田晶恵さんが、
「『投資で失敗したくない』と思ったら、まず読む本」
という本を出版しました。

投資デビューする前に読む入門書なのですが、
「ある程度売り手の事情を知っておいたほうがいい」
という深田さんの主張に思わずうなずいてしまいました。

例えば本書には、「金融機関で言ってはいけない言葉」
「窓口で使える言葉」がリストアップされています。

ネタバレになるので多くは書きませんが、例えば、
「そこそこ増える商品を選んでほしい」
「今、売れている商品は何ですか?」
は禁句なのだそうです(理由は本書に書いてあります)。

保険関連では一時払終身保険の話が載っています。
「一見おトクそうに見える一時払い終身保険」ということで、
「貯蓄目的であれば普通の貯蓄商品を使えばよく、
 わざわざ保険を買う必要はない」
というのが深田さんからのアドバイスです。

ところで、私の単なる知識不足だったのですが、
個人が買える国債は「個人向け国債」だけではなく、
本来の国債(「新型窓販国債」と言うそうです)も
購入できるのですね。

個人向け国債は中途解約時の額面保証がある代わりに
通常の国債よりも利率が低く、これしか選択肢がないのは
変だなあと思っていたので、私には目からうろこでした。

金融用語にはそれなりに通じているつもりですが、
実際には知らないことばかりだなあと、つくづく思います。

※写真はマラッカのチャイナタウン(?)です。

 

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保井俊之さんの著書

 

慶大先導研究センター特任教授の保井俊之さんの著書
「保険金不払い問題と日本の保険行政」を読みました。

保井さんは保険金不払い問題のまさにその時期に、
金融庁監督局の保険課長として最前線にいたかたです。

本書は保険金不払い問題そのものというよりは、
問題に対して行政処分を発動した金融庁の対応をもとに、
保険行政のあり方について論じています。

私がキーワードを勝手に挙げるとすれば、
「システムズ・アプローチ」でしょうか。

不払い問題への当時の保険行政の対応について、
問題をシステムの機能不全と捉え、勘と経験ではなく、
システムズ・アプローチにより解決した先行例であると
保井さんは述べています
(意図してこの手法を用いたわけではなさそうですが)。

また、本書では金融行政を次の4つに整理しています。
 ①コントロール(統制)指向
 ②コンプライアンス(法令遵守)指向
 ③コンバージェンス(目標集束)指向
 ④コンティンジェンシー(危機管理)指向

日本の保険行政は2008年にコンプライアンス指向から
コンバージェンス指向、つまり多様なステークホルダーの
選好に応えた規制設定と執行を行うものに転換したものの、

「金融危機への対応に追われ、その転換の歩みは
 遅々として進まないように見える」

「作られるルールをいたずらに厳しいものにすることは、
 (中略)結果として執行のなし崩し的な取りやめで
 規制の形骸化が図られ、規制の有効性そのものが
 毀損される場合が多い」

といった記述もありました。

たまたま昨日(26日)金融庁が監督方針・検査基本方針を
発表しています。これらはどのような評価になるのでしょうか?
金融庁HPへ

学術書なのでスラスラ読める本ではありませんでしたが、
日本の金融・保険行政についてここまで体系的に分析し、
さらに、分析結果に基づいて政策提言を行っている本書は、
非常に貴重な存在だと思います。

※写真は相変わらず本文とは全く関係ありません。
 先日の台湾旅行の時期がちょうど中元節だったので、
 町のあちこちで普通の人たちがお供えをしたり、
 「お金」を燃やしたりしていました。

 

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全体最適の保険ALM

前回に続き、長年の知り合いの本のご紹介を。

キャピタスコンサルティングの森本祐司さんたちが
「【全体最適】の保険ALM」という本をきんざいから出しました。
特別寄稿として私も5ページだけ書いています。

ALMといえば資産と負債の総合管理のことですが、
本書では「資産・負債の経済価値およびその変動」を
重視すると明確に定義しています。
本書のALMの目的は企業価値を安定的に向上させることです。

また、タイトルにある「全体最適」とは、何か数式を解けば
「客観的」に正解が得られるようなものではなく、
企業のリスクに対する姿勢により決まる「主観的」なもの。
いいかえれば「リスクアペタイトの設定」のことです。

つまり、ここでいうALMは限りなくERMに近いものであり、
従来のALM のイメージしか持っていない人には
発想の転換が必要かもしれません。
ぜひ理解していただければと思います。

保険会社のALM/ERMに関する本で
これだけまとまったものは、なかなか見当たらないでしょう。

ところで以前、住宅ローンの収益・リスク管理について
このブログで書いたことがあります。
住宅ローンの収益性評価

通常のローンと違い、住宅ローンは期間が長いだけではなく、
デフォルト率の経年変化や期限前返済の存在などから、
収益・リスク管理がそう簡単ではありません。

しかし、銀行における住宅ローンの存在感が
これだけ大きくなっているにもかかわらず、
銀行で住宅ローンのALMを経済価値ベースで行っている
という話をほとんど聞いたことがありません
(皆無とは言いませんが、一般的ではなさそうです)。

ということで、銀行など保険業界以外のかたも、
「銀行のリスク管理は保険会社よりも進んでいる」
というプライドや幻想を捨て、本書に目を通していただければ
きっと何か得られるものがあると思います。

 

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生保営業のたまごとひよこ

長年の知り合いである森田直子さんが初の著書
「生保営業のたまごとひよこ-成長するためのヒント-」
(保険毎日新聞社)を出しました。

保険毎日新聞社の連載記事のなかから
お勧めの42本をまとめたものだそうです。

この本のテーマは、あくまで私の理解ですが、
「営業の仕事を長く続けるにはどうしたらいいか」
です。
(森田さん、違っていたらごめんなさい^^;)
そのためのヒントが随所にちりばめられています。

読んでいて感じたのは、当たり前かもしれませんが、
「地道で基本的なことをいかに継続するか」
「急がば回れ」がいかに重要かということ。
森田さんが試行錯誤してたどり着いた結論が
これだったのですね。

特に「見直し相談」のところなどは、なるほどなあと
感心しました。

同時に、営業は科学なのだということを改めて感じました。

森田さんがこの本で惜しみなく紹介している内容は、
単なる「地道な努力」「忍耐」といった根性ものではなく、
トライ&エラーのなかから合理的な手法を追求した結果、
得られたものです。
ここをはき違えると全く違う話になってしまいます。

保険毎日新聞の連載は今も続いているようですので、
少し気が早いですが、第2弾が楽しみですね。

 

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人はなぜ逃げおくれるのか

 

「人はなぜ逃げおくれるのか-災害の心理学」
(広瀬忠弘、2004年、集英社新書)

東日本大震災が発生した際の反省もあり、
タイトルに惹かれて読みました。
著者の広瀬さんの専門は「災害心理学」です。

次の①と②のうち、どちらが正しいでしょうか。

①地震や火事に巻き込まれると、多くの人々はパニックになる。
②地震や火事に巻き込まれても、多くの人々はパニックにならない。

正解は②です。

私たちは何となく、「危険に直面したらすぐに逃げるだろう」
「みんなが逃げるのでパニックになるかもしれない」
といったイメージを持っていますよね。

ところが、実際には「これくらいなら大丈夫だろう」という
正常性バイアスが働き、危険をなかなか実感できず、
逃げ遅れてしまうことが多々あるそうです。
現代人は危険に対して鈍感なのですね。

また、映画やドラマの影響かもしれませんが、
災害や事故が起きると、人々が恐怖にかられ、
理性や判断力をかなぐり捨てて逃げまどう、
そんなイメージもあります。

しかし、災害時にパニックが起こることはまれであり、
そのような異常行動はめったに起きない、というのが
災害心理の専門家の「常識」なのだそうです。

著者は災害とパニックを短絡的に結びつける
古い災害感を「パニック神話」として警鐘を鳴らしています。

パニックを恐れて情報を過少に伝えてしまった結果、
大きな犠牲につながったケースはいくつもあるそうですし、
災害や事故の原因をむやみにパニックのせいにすると、
事態を曖昧にし、問題を糊塗する恐れがあるとのこと。

これはERMにもつながる話かもしれませんね。

※写真は井の頭公園です。

 

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「DENIAL(否認)」

 

GWの読書から。
邦題は「なぜリーダーは『失敗』を認められないか」。

ハーバード・ビジネススクールのリチャード・テドロー教授が、
「否認」が原因で経営危機に陥った有名企業の事例を
紹介しています。

否認とは、ある不愉快な現実に対し、本当ならひどすぎる、
だから本当のはずはない、と考える無意識の心の動き。
しかし、否認しても不都合な現実は消えません。
制御不能なまでに増殖し、企業を根底から覆すことになります。

「目の前の現実を認めない」という態度。
この「否認」は人間の本能の一部であり、
あらゆる個人、あらゆる組織に起こりうる現象です。

本書でテドロー教授は、否認を避けるための
8つの教訓を示しています。
当たり前のことばかりに見えるかもしれませんが、
実際の事例からの分析なので説得力があります。

1.危機を待ってはいけない

2.無視したり、否定したり、理屈をこねたり、ねじ曲げたりしても
  現実は変わらない

3.権力は人を狂わせる

4.最高意思決定者が聞く耳を持つこと

5.長期的な視野に立つ

6.相手をバカにしたり、呼び名をかえたりする傾向には要注意

7.真実を語る

8.たいていの人間は、たとえ間違っていようと
  過去の常識にしがみつこうとする

各章の事例は米国企業とはいえ、フォードやコカコーラ、
IBMなど、有名企業ばかりなので興味深く読めました。

※写真は前回ご紹介した松崎の岩科学校です。

 

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秋の読書

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読書の秋ということで、最近読んだ本の感想を少々。

「リーマン・ショック・コンフィデンシャル」(早川書房)

ニューヨーク・タイムズの金融担当記者である著者が
金融危機の当事者200人強へのインタビューを重ね、
2008年のウォール街やワシントンで何があったのかを
丹念にまとめたものです。

インタビューを通じて経営危機を浮き彫りにするという点で
拙著「経営なき破綻 平成生保危機の真実」に通じるところもあり、
その生々しい記述を興味深く読みました
(カタカナの名前を追いかけるのに多少難儀しました^^)。

やや本質とは離れた感想ですが、米国の金融機関トップや
金融監督の当局者は金融のプロフェッショナルなのだなあと。

もちろん彼らを支える組織はありますが、何というか、
少なくとも「営業しかわかりません」といった感じの人や
寝技だけで偉くなったような人は登場しません。
この点は「経営なき破綻」とはかなり違うように感じました。
それでも(それだからこそ?)危機を招いてしまったのですが。

他方、ポールソン財務長官(当時)の奮闘むなしく、
米下院はTARP法案を否決し、世界に衝撃が走りました。
議会や国民に事態の深刻さを理解してもらう難しさは、
日本の現状(財政問題など)を見ても、共通しているようです。

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「ドキュメント 宇宙飛行士選抜試験」(光文社新書)

職場のS課長の紹介がきっかけで読みました。
JAXAによる宇宙飛行士選抜試験に挑む10人の候補者を
NHKが密着取材したドキュメンタリーです。

宇宙飛行士ですから、私たちがイメージする試験とは違います。
例えば候補者を外部から閉ざされた環境で一週間も共同生活させ、
わざと危機的状況に陥れて対応状況を見る、ということをします。

いわば人間力を見る試験ということで、精神的なタフさが必要なのですね。

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「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの
 『マネジメント』を読んだら」(ダイヤモンド社)

「野球部の女子マネ」というところにやや抵抗があったのですが、
息子が読んでみたいというので、ついでに私も読みました。
読み始めると止まらなくなり、1日で読破です。
ベストセラーになる本とはこういうものなのかもしれません。

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※横浜にもビーチがあります。八景島の近くです。
 なお、本の写真はあえてどこにもリンクしてありません。念のため。

 

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ヤフー・トピックの作り方

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「ヤフー・トピックスの作り方」(奥村倫弘、光文社新書)を読みました。

ヤフー・ジャパンのトップページに行くと
真ん中に8本のニュース見出しが載っていますよね。
あのコーナーの話です。
ヤフー・ジャパンのHPへ

ひと月の閲覧数が45億ページ、訪問者数が6970万人
(2009年10月時点)という巨大サイトですから、
あらためて説明するまでもないかもしれませんね。
今や日本最大級のニュースサイトだそうです。

このヤフー・トピックスに編集部があり、
人による編集を基本としているとは知りませんでした
(グーグルニュースは機械による編集です)。

本書を読むと、インターネットの時代になって
「ニュース」の概念が大きく変わってしまったことを
思い知らされます。

「取材なしで書かれた記事をニュースと呼んでいいのか」
「ジャンクフード・コンテンツのほうが読まれる傾向がある」
「ニュースの真偽を見分けるにはとてつもない労力が必要」
などなど。

新聞と違い、ネットのニュースサイトでは
どの記事が読まれたかを簡単に把握できます。
しかも、サイトを支えているのは一般に広告収入です。

「報道的な価値と読者の『知りたい情報』、そしてビジネス的な
 価値との間で絶妙のバランスを取っていくのは非常に困難」

という記述がありましたが、まさにその通りでしょう。

報道的な価値(=閲覧数では測れない社会的価値)
のあるニュースを発信し続けるにはどうしたらいいか。

トピックス編集部には何とか今の方針を続けてほしいですが、
現場の頑張りだけでは限界があるようにも感じます。
本当にどうしたらいいのでしょうね。

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※写真は城端(富山県南砺市)です。
 「思わぬ掘り出し物」のようないい町でした。

 

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経営者の交代と報酬

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「コーポレート・ガバナンス 経営者の交代と報酬はどうあるべきか」
(日本経済新聞出版社)を読みました。

本書は制度的変化の解説や先進事例の紹介ではなく、
ある程度大規模なデータセットを用いて
日本企業のガバナンスの実態を分析した労作です。

筆者は、
「コーポレート・ガバナンスの基本は、経営者の交代と金銭的なインセンティブ」
ということを繰り返し指摘しています。

優秀な経営者には高い待遇を提供し、悪い経営者には退出を促す
ということです。

しかし、本書によると、日本の経営者は株価を最大化するような
インセンティブをほとんど持っていないことが明らかにされています。
しかも、業績が悪化しても交代しない社長のほうが多いようです。
イメージ通りではありますが、データ分析なので説得力があります。

「悪い人が悪いことをするのを防ぐことは容易ではないが、
 いい人が、善意で悪いことをするのを防ぐことも容易ではない」

という記述もありました。
私には後者のほうがより難しいように思えますが、どうでしょうか。

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※久しぶりに江の島へ。今回は娘とのデートでした♪

 

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