「絶滅の人類史」

絶滅した旧人類ネアンデルタール人が洞窟の壁画を描いていたというニュースがありました。
これまで洞窟壁画はすべて現生人類(ホモ・サピエンス)が描いたと考えられていたので、新しい発見です。

新たな発見により歴史が見直されるというのはよくある話ですが、とりわけ人類史は私が学生時代に学んだものから大幅に塗り替わっていることが、更科功「絶滅の人類史」(NHK出版新書)を読んでわかりました。
かつて猿人として習ったアウストラロピテクス(約420万年前に登場)のはるか前、約700万年前に(今のところ)最古の化石人類が登場し、これまでに25種くらいの化石人類が見つかっているのだそうです。いま生きているのは現生人類だけなので、他の種はみんな絶滅してしまったということになります。

旧人と新人は並存していた

話題のネアンデルタール人は現生人類が登場する前の「旧人」として習いました。ところが、彼らが生きていた時代は約30万年前から約4万年前までで、現生人類の起源も、本書によると約30万年前までさかのぼれるそうです。
つまり、ネアンデルタール人が絶滅するまでは、地球には少なくとも2種類の人類が並存していたということになります。

ネアンデルタール人の脳はなんと現生人類よりも大きく、発掘調査などにより、抽象的な概念を頭のなかで考えること、すなわち象徴化ができたとみられています。ニュースになった「壁画を描く」という行為はまさに象徴化ですし、本書では「貝殻のネックレス(と考えられているもの)」を紹介しています。
しかも、骨のかたちや使っていた道具などから推測すると、ネアンデルタール人はある程度の言葉を話していたと考えられているそうです。

なぜ私たちだけが生き残ったのか

ただし、結果として生き残ったのは私たち現生人類だけです。私たちよりも脳が平均的に大きく、身体的能力も優れていたネアンデルタール人がなぜ滅んでしまったのか。
そもそもの話として、暮らしやすい森林を出て(追い出されて)、外敵に見つかりやすい直立二足歩行をしていた人類が、なぜその後も生き残ることができたのかという疑問に対しても、本書では解説しています。

進化の不思議さを垣間見ることができる面白い本でした。

※写真は大倉山シリーズ第3弾。東横線開通90周年(渋谷-横浜が開通したのが1928年)を記念して、昔の塗装の電車が走っています。下の案内図はそのころ(昭和初期)のものだそうです。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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