「大本営発表」というと、信用できない公式発表の
代名詞として使われています。
戦時中の大本営(軍の最高統帥機関)による
デタラメな公式発表がその由来ですが、最近、
この大本営発表を丹念に調べた本を読みました。
数字で振り返る大本営発表のデタラメぶり
として、大本営発表と実際の主力艦喪失数
の比較表が載っています(p.248-249)。
日本海軍の喪失数
大本営発表:空母 4、戦艦 3
実際の喪失:空母19、戦艦 8
連合国海軍の喪失数
大本営発表:空母84、戦艦43
実際の喪失:空母11、戦艦 4
発表が最初からデタラメだったのではなく、
戦局が厳しくなるにつれ、敗退をごまかし、
戦果を誤認・誇張するようになったようです。
特に架空の戦果の積み上がりようは
様々な要素が重なって生じたとはいえ、
何というか凄まじいものがあります。
ただ、さすがに本土空襲が日常的になると、
もはや「勝った、勝った」とすら言われなくなり、
「大本営発表は戦争末期まで『勝った、勝った』
と繰り返した」というイメージは誤解でした。
著者は、大本営発表がここまで破綻した原因
として、2つの内的要因と2つの外的要因を
挙げています。
<内的要因=日本軍の組織的な欠陥>
①組織間の不和対立
②情報の軽視
<外的要因>
③戦局の悪化
④軍部と報道機関の一体化
このうち著者が最大の原因としているのが
「軍部と報道機関の一体化」です。
報道機関は大本営報道部の下請けとなり、
チェック機能を手放してしまったわけですが、
ドラマなどで描かれるように、軍部が短期間に
一方的に報道機関を弾圧したというのではなく、
20年以上かけてアメとムチを巧みに使い分け、
徐々に懐柔していったとのこと。
政治と報道の一体化がどのような悲劇を
招いたのかを知るうえでも、参考になる本です。
※イチョウの黄葉も見納めですね。