02. 保険会社の経営分析

保険収支と損益の関係

 

ある筋からのご依頼により、この記事を取り上げました。
生命保険大手がM&Aに走る理由?

まず、念のため記事の要旨をお示しします。

①生保の海外M&Aは「かんぽ」上場が引き金。パイを「かんぽ」
 に奪われるとの危機感が、大手各社をM&Aに駆り立てる。

②保険収支(=保険料等収入-保険金等支払金)が3.7兆円、
 運用収支(=資産運用収益-資産運用費用)が11兆円と
 2014年度は運用収支が圧倒的に多い。つまり、経常利益でも
 運用益が大きな比重を占めることになる。

 生保大手がM&Aに走るのは、今後、高齢化と人口減少で
 保険料収入が減る一方、支払保険金が急増し、保険収支の
 悪化が加速するのが目に見えているから。

③独自のニッチ路線を行く会社もあるが、42社は多過ぎる。
 再編が進まない理由は、大半の生保がとる「相互会社」
 という企業形態にある。

 今後、海外に活路を見いだすことが難しい多くの中小生保の
 経営が行き詰まるのは目に見えている。破綻が続けば
 社会不安を起こしかねない。

 相互会社再編の道さえ開ければ、大手生損保主導による
 国内生保業界の健全化が見えてくる。

M&Aの背景に「かんぽ」上場があるかどうかはともかく、
②と③には事実とかなり異なる記述がありますので、
この点をコメントいたしましょう。

まず、②の「経常利益に運用益が大きな比重を占める」
ですが、「保険収支」について誤解があるようです。

ここで言う「保険収支」とは、その期の保険料等収入と
保険金等支払金を比べただけなので、損益とは無関係です。
おそらく筆者のかたは「責任準備金」の存在をご存じない
のだと思います。

生保は自転車操業(=その期の収入でその期の支出を賄う)
をしているのではありません。その期の保険料等収入のうち
翌期以降に支払いが見込まれるものは責任準備金に繰り入れ、
その期に支払う保険金や給付金、返戻金は責任準備金から
支払います。

確かに長期にわたり保険収支のマイナスが続くのは、
持続的成長を目指す観点からは好ましくないかもしれませんが、
その期の保険収支を見ても、会社が儲かっているかどうかは
判断できません。

運用収支と経常利益の関係にも誤解があるようです。

生保は平たく言えば契約者に一定の利率(予定利率ですね)
を保証しており、これを運用益で賄っています。

利率保証にかかる毎期のコストは責任準備金繰入額に
含まれているのでわかりにくいのかもしれませんが、
毎期数兆円のコスト負担があるので、運用収支11兆円が
そのまま利益とはなりません。

もし運用収支がそのまま利益となるのであれば、
「逆ざや」など発生しようがありませんよね。

長くなったので、③についてはごく簡単にコメント。

「再編が進まない理由は、大半の生保がとる『相互会社』
 という企業形態にある」

とのことですが、相互会社は今や5社しかありませんし、
中小生保は全て株式会社形態です
(総資産5兆円超の会社を「中小」とは言わないでしょう)。

以上から、筆者のかたは一見して生保経営について
ご存じではないことがわかるにもかかわらず、

・海外に活路を見いだせない多くの中小生保は経営が
 行き詰まる。破綻が続けば社会不安を起こしかねない

・相互会社再編の道さえ開ければ、大手生損保主導による
 国内生保業界の健全化が見えてくる

という刺激的(?)なご主張をしているわけです。

少なくとも保険関係者のかたであれば、これをそのまま
情報提供してしまうのは、私には疑問に感じましたので、
失礼ながら今回このようなコメントをした次第です。

※久しぶりに横浜スタジアムを見ました!

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

払込方法別収入保険料

 

各社のディスクロ誌とともに保険会社の経営分析
には欠かせない「インシュアランス統計号」に
「払込方法別収入保険料」という統計があります。

会社ごとに「初年度保険料」「次年度以降保険料」が
掲載されているだけではなく、初年度保険料の内訳
(一時払、年払、月払など)もわかります。

例えば、2014年度の初年度保険料(個人保険)のうち
年払のトップ3は、日本、エヌエヌ、あんしんでした。
「年払 ≒ 経営者保険」という傾向がありますので、
この顔ぶれには納得です。

全社合計データはこんな感じ(2014年度)

 保険料収入(個人保険) 24.5兆円
  うち 初年度保険料    8.8兆円
     次年度以降保険料 15.7兆円

  初年度保険料のうち
    一時払         6.5兆円
    年払           0.6兆円
    月払           1.6兆円

 <参考>
 保有契約年換算保険料 18.6兆円
 (個人保険)
 新契約年換算保険料(同) 2.2兆円

つまり、

 ・保険料収入の6割以上は既契約からの収入
  (ただし、一時払の収入で大きく変動)
 ・初年度保険料の7割以上が一時払の収入

なのですね。
一時払の影響が大きいことが一目瞭然です。
しかも、一時払の収入は毎年大きく変動します。

メディアが保険料収入で「首位奪回」と報じるのは
いったい何を伝えているつもりなのでしょうか。

年始の各紙トップインタビュー記事をみると、
メディアは相変わらず保険料収入を重視していて、
日本生命の筒井社長から、

「トップラインはきわめて重要だ」
「ナンバーワンにこだわる姿勢は堅持したい」

といった話を引き出しています。

しかし、日本生命の中期経営計画をよく見ると、
国内シェアNo.1は「件数・保障額・年換算保険料」
となっていて、単純な保険料収入ではありません。

他の数量目標も、「保有契約年換算保険料の伸び率」
「お客様数」「グループ事業純利益」などとなっていて、
少なくとも公表されているものに「保険料収入」はありません。

※写真はお茶の水です。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

生保決算から

 

保険料収入を売上高として「抜いた」「トップ奪回」
という報道に意味があるとはとても思えませんが、
生保の事業動向を見るうえでは保険料収入も
一つの手掛かりになるのは確かです。

かつてに比べ、生保各社の販売動向をつかむのは
難しくなっています。保険料収入や年換算保険料のほか、
契約高や件数、EVの新契約価値などから解読を試みても、
それだけではわからないことが多いです。

大手4社の指標をいくつか確認してみましょう
(4-9月期。いずれも前年同期との対比)。

 ①保険料等収入
 ②個人分野の新契約年換算保険料(ANP)
 ③うち医療保障・生前給付保障等(≒第三分野)
 ④個人保険の新契約高(=保険金額)
 ⑤個人保険の新契約件数
 ⑥EVの新契約価値

<日本生命>
①保険料等収入 +17.3%(+4300億円)
②新契約ANP  +8.1%
③うち第三分野 +24.6%
④新契約高 +28.5%
⑤新契約件数 +1.2%
⑥EVは非公表

「いずれも増加」と言えばそれまでなのですが、
保険料等収入の増加は主に団年特別勘定によるもの。
銀行窓販も1000億円程度の寄与となっていますので、
営業職員チャネルでは減少ということになります。

新契約件数も営業職員チャネルは横ばいでした。
新契約高の増加は昨年度からの「保障追加制度」
「一部保障見直し制度」等が関係ありそうです。

EVを公表していれば、上記の特殊要因があっても
新契約価値を増やせたのかどうかがわかるのですが…

<第一生命>
①保険料等収入 ▲5.9%(▲900億円)
 ※グループベースでは+7.8%(+2000億円)
②新契約ANP  ▲0.2%
 ※グループベースでは+9.7%
③うち第三分野 +3.6%
④新契約高 ▲45.3%
⑤新契約件数 ▲1.5%
⑥EVの新契約価値 983億円(▲17億円)
 ※グループベースでは1405億円(+34億円)

今回から米プロテクティブが加わったため、
単体とグループベースの動きが異なっています。

単体の第三分野が増え、新契約ANPと件数が横ばい、
新契約高が急減というのは、「部分保障変更制度」を
導入したことが大きいのではないかと思います。
なお、個人年金の販売増加も目立ちます。

<住友生命>
①保険料等収入 +18.5%(+2300億円)
②新契約ANP  +9.3%
③うち第三分野 +3.0%
④新契約高 ▲0.4%
⑤新契約件数 +10.3%
⑥EVの新契約価値 771億円(+66億円)

銀行窓販の一時払商品は減収だった模様なので、
保険料等収入の増加はそれ以外の要因です。
説明資料によると、営業職員チャネルで一時払終身の
販売件数が増加したとあります。

EVの新契約価値は増加となりました。昨年度と違い、
新契約マージンが下がらなかったことが大きいようです。

<明治安田生命>
①保険料等収入 +0.3%
②新契約ANP  +13.5%
③うち第三分野 +7.9%
④新契約高 +69.7%
⑤新契約件数 +0.3%
⑥EVの新契約価値 1141億円(+90億円)

説明資料によると、保険料収入は団体年金の減収を
営業職員チャネルが補う構図だったようです。
ここでも営業職員チャネルによる一時払商品の
販売拡大が見られます。

第一生命とは反対に、新契約高が7割増となる一方、
新契約件数は横ばいでした。転換純減が大幅に縮小
しているので、何らかの施策が影響しているのでしょう。

EVの新契約価値は昨年度に続き増加しました。
速報段階なので、新契約マージンがどうなったのか、
後日確認しましょう。

なんだか自分のメモのようになってしまいましたが、
解読作業の一端がご理解いただけるかと思います。

※写真は真壁の町並みです(茨城県桜川市)。
 東日本大震災で大きな被害を受けたため、
 今でも修復工事が続いています。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

損保決算から

 

18日に発表された上場損保の4-9月期決算から、
いくつかコメントしましょう。

2015年度の上半期は自然災害に伴う発生保険金が
3グループ合計で約1860億円となりました。

他方、株価下落による影響を見ると、株式含み益が
3グループ(国内損保)で約7620億円減っています。

つまり、確かに自然災害の影響も大きかったのですが、
株価下落による影響のほうが、たまたま会計損益に
反映されていないだけで、より大きかったとわかります。

各社が政策保有株式の売却を進めているのは、
このような状況を好ましくないと考えているからでしょう。

営業面で目立ったのは火災保険の増収です。

10月からの料率引き上げと、10年を超える長期契約の
販売停止を受けて、駆け込み契約が急増しました。
特に9月はものすごかったようです。

ただし、この増収は将来の先食いですので、
今後は業績面でマイナスに働くことになります
(売れなくなるという意味です)。

自動車保険も増収ですが、引き続き単価上昇の一方、
台数の伸び悩みが目立ちます。

 TMNF: 台数 +1.5%、単価 +2.9%、保険料 +4.5%
 MSI :  台数 +0.2%、単価 +3.7%、保険料 +3.9%
 ADI :  台数▲1.0%、単価 +3.7%、保険料 +2.6%
 SOMPO:台数▲0.6%、単価 +3.6%、保険料 +3.0%

単価上昇にはそろそろ歯止めがかかりそうなので、
台数を伸ばせるかどうかが焦点となるのでしょう。

※写真は南足柄市にある大雄山最乗寺。
 人気のパワースポットなのだそうです。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

上場生保の4-9月期決算

 

上場生保の4-9月期決算の発表がありました
(他の生保の決算発表はもう少し先です)。

ここでいう「上場生保」は、第一生命、T&Dグループ、
ソニー生命、ライフネット生命、かんぽ生命です。

第一生命は伝統的な営業職員チャネルに加え、
銀行窓販、海外保険事業などを展開しています。

T&Dの太陽生命は女性・家庭市場が事業基盤、
大同生命は中小企業市場、TDFは銀行窓販です。

ソニー生命は生産性の高いライフプランナーと
生保代理店によるコンサルティングセールス。

ライフネット生命はダイレクト販売の会社で、
かんぽ生命は郵便局ネットワークが強みです。

こうして見ると、上場生保は個別性が強いですね。

さて、4-9月期は外部要因として、内外株価の下落と
超低金利の継続がありました。

特にこの金利水準は、見かけ上の「順ざや」で
喜んでいるわけにはいかない状況でしょう。

各社のEV(速報値を含む)の動きを見ると、
第一生命とT&Dグループが3月末比で減少する一方、
ソニー、かんぽ、ライフネットはEVを増やしました。

第一生命は上場生保のなかでは株式保有が大きく、
太陽生命、大同生命はいずれも一般勘定の6%程度。
ソニー生命は株式をほとんど保有しておらず、
かんぽ生命の株式ウエートも1%台にとどまります。
4-9月期はこの差がEVの増減に影響したようです。

T&Dは減少ですが、自社株取得の影響を除けば
実質的に横ばいでした
(ライフネット生命は増資と前提見直しが大きい)。

報道を見ると、相変わらず保険料収入と純利益が
増えた、減ったというものが中心ですが、

「純利益8%減 一時払い保険の販売減響く」

というのは、さすがに首をかしげてしまいました。

※東海道線の根府川駅です(先週の写真です)。
 お土産にレモンを買いました。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

国内系生保の資産運用

 

遅まきながら生保の第1四半期報告から
直近の資産運用の動向を確認してみました。

結論としては、引き続き「ポートフォリオ・リバランス」
と言うほどの動きはありませんが、昨年度に続き、
外国公社債の残高を増やした会社が目立ちます
(ヘッジの状況は不明)。

ただし、大手4社を比べると、明治安田生命は
外国公社債の積み増しを抑えたように見えます。

同社は2015年度の資産運用計画の説明で、
「ヘッジ付外債は国内債券と比べて妙味が乏しい」
とコメントしているようなので、足元の投資行動と
関係があるかもしれません。

他方、中堅生保では、責任準備金対象債券区分の
公社債を減らし、外債投資を増やしている会社が
いくつか見られます。

経営体力の回復を受けて、リスクテイク方針を
やや見直したというのなら理解できるのですが、
異次元緩和のなかで利息配当金収入の確保を
ねらったものかもしれず、考え方が知りたいところ。

足元の株安・円高の影響も注視していきましょう。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

損保のディスクロ誌

 

隔月で連載している「inswatch」で、昨年に続き、
今月は損保のディスクロージャー誌を取り上げました。

昨年は、「inswatchではマニアックすぎる」として
取り上げるのを見送った「損害見積り額の推移表」を
今回はさらっと紹介してしまいました(汗)。

今回、字数の関係で取り上げなかったデータが
海外投融資(特に外国公社債)の推移です。

生保は外債投資のウエートが年々高まっていますが、
損保は会社によりバラつきが大きくなっています。

例えば、東京海上の外国公社債(外貨建)は
総資産の2、3%程度で推移しています。
三井住友海上も3%程度ですが、高まる傾向です。

他方、近年の損保ジャパン日本興亜では10%強、
あいおいニッセイ同和では15%程度を占めています。

これらが全てオープン外債ということではありませんし、
3メガ損保ともに海外で保険事業を展開しているので、
そちらでも為替リスクを取っているようなのですが、
こうして比べてみると、戦略の違いが明らかになりますね。

とりわけ、同じグループでもMSIとADIの運用戦略が
大きく異なるのはなかなか興味深いです。

※道東シリーズ。今回はハマナスの花とオホーツク海です。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

生保資金はどう動いたか

 

日銀の異次元緩和(2013年4月)から2年。
生保の資産構成はどう変化したのでしょうか。

まず、大手生保4社の一般勘定資産に占める
国内株式のウエートは、この2年で2ポイントほど
上昇しました。

しかし、その大半は時価上昇によるものです。
株式を実質的に減らしたかどうかは微妙ですが、
生保資金が株式に向かったようには見えません。

他方、外貨建資産のウエートは年々高まり、
一般勘定資産の2割前後に達しました。
もっとも、異次元緩和を受けたものというよりは、
その数年前からの動きです。

同時に、為替ヘッジのないオープン部分も
徐々に増えているようです。
住友を除く3社の為替エクスポージャーは
一般勘定資産の1割強となりました
(2年前は3社とも8%程度でした)。

国債など国内公社債はどうなったかというと、
一部に残高を減らした会社が見られるとはいえ、
責任準備金対応債券を増やす動きが続いており、
かつ、第一と住友は残存期間を伸ばした模様です。

その他有価証券区分の国内公社債が多かった
第一と明治安田は責準対応債券への移行を進め、
その他有価証券区分の公社債が全体の2割程度
となりました(4年前には5割前後でした)。

ということで、2014年度決算をざっと見るかぎりでは、
異次元緩和後の生保資金は外貨建資産への投資が
やや目立つものの、大きな変化は見られないようです。

※今年も慶大で講師を務めました。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

生保の業績推移

 

生保の2014年度決算が公表されました(28日など)。

相変わらずの「保険料等収入は売上高に相当」
には抵抗があるのですが、特に今回は日本生命と
第一生命(連結ベース)の逆転があったので、
報道では保険料収入に関するものが目立ちました。

そこで保険料収入をはじめ、大手4社の業績を示す
いくつかの指標を10年前と比べてみました。

まず、主力の個人保険分野の保険料収入を見ると、
10年前(2005年3月期)を100とした場合、直近時点
(2015年3月期)は127となりました。

これは、10年前には4社合計で5000億円程度だった
銀行を通じた貯蓄性商品(大半は一時払)の販売が、
ここ数年は3兆円規模まで拡大しているためです。
銀行窓販を除くと、保険料収入は微減となります。

他方、個人分野の保有契約高は激減しています。
10年前を100とすると、直近時点は62です。
死亡保障市場の縮小には歯止めがかかっていません。

最後に個人分野の保有契約年換算保険料を見ると、
102という水準です。
死亡保障市場の縮小を銀行窓販による貯蓄性商品と
第三分野で補う構図が読み取れます。

第三分野シフトが進んだとはいえ、大手4社の場合、
年換算保険料の2割にとどまっています。
10年前とそれほど変わっていないのは意外でした。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

損保決算など

 

3メガ損保の2014年度決算が発表されました。
ざっと眺めた段階ですが、2点ほどご紹介しましょう。

主力の自動車保険は収支改善となりました。
ただ、おやっと思ったのは収入面です。

3メガ損保(主要4社)とも増収ではあるものの、
単価上昇が主因で、契約台数は伸び悩みが顕著です。
東京海上は前期比1.4%増(ノンフリート)ですが、
あとの会社は横ばいから微減といったところ。

2014年度は自動車保険の収支改善のほか、
久しぶりに大きな自然災害がなかったので
(2011、2012、2013と自然災害が続きました)、
国内損保事業が完全復活したかに見えます。

でも、自動車保険の台数が増えないとなると、
あまり安心はできません。

株高、円安の恩恵を大きく受けたのが、ある意味
今回の損保決算の特徴と言えるでしょう。

各社は来期の会計利益を1600~2400億円と
見込んでいるのですが、保有する有価証券は
2014年度にその数倍も増えているのですから。

損保の会社価値にとって、最も大きな要素は
保有する株式の時価動向という構図は
あまり変わっていないようです
(=すなわちリスクが大きいということ)。

そこで、政策保有株式の売却について見ると、
2014年度は3メガ損保で動きがやや異なりました。

東京海上は簿価ベースで300億円程度の売却を
2014年度も続けた模様です。
SOMPOは前年度ほどではないものの、売却を継続。
他方、MA&ADは数字を見るかぎり、売却は足踏みです。

コーポレートガバナンス・コードも策定されたことですし、
損保の政策保有株式に対するスタンスがどうなるか。
今後の動向に注目したいと思います。

ところで、最後に少しだけ宣伝です。

2014年度の生損保決算発表やIR説明会が一巡した
6月9日に外部セミナーの講師を務めることになりました。

「保険会社ERM経営の現状と今後の方向性」という題で、
日本版ORSAをはじめ、保険ERM経営に関する話をします。
合わせて決算絡みの話もするつもりです。

ご関心のあるかたは、ぜひお越し下さい。
セミナーインフォのサイトへ

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。