02. 保険会社の経営分析

生保の新契約動向

5月8日のブログでご案内したRINGの会オープンセミナーが2週間後に迫ってきました。リアル参加かオンライン視聴かで迷っているかたも多いのではないかと思います。リアル参加はおそらく上限があるでしょうから、そろそろ申し込んだほうがいいかもしれません。
<申し込みはこちらへ>

さて、今回は生命保険会社の新契約動向を、少し長いスパンで見てみましょう。いずれも新契約年換算保険料(ANP)です。
まずは大手生保4社の動向から。

上のグラフが個人保険の15年推移、下のグラフが個人保険に占める第三分野(医療保障・生前給付保障等)の割合です。
日本生命と他の3社でやや傾向が違うようです。他の3社の回復が遅れているように見えるのと、経営者向け保険や第三分野の取り組み方針の違いがありそうです。日本生命は他社よりも死亡保障を重視した戦略をとっているとみられます。

次は「ソニー」「プルデンシャル」「メットライフ」「アフラック」「アクサ」です。
なかなか興味深いグラフとなっています。なかでもアフラックの動向が気になります。

最後は損保系生保3社です。
足元は緩やかな回復といったところですが、15年間で見ると、あんしん生命と他の2社でグラフの形がかなり異なっています。

これらをもとに各社の販売戦略を確認すれば、もう少しいろいろなことが見えてくるのではないかと思います。

※あじさいの季節になりましたね。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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生保の規制対応が一巡

最初にセミナーのご案内です。
今年も損保総研の特別講座で講師を務めることになりました。
保険会社経営の今後を探る ~最近の環境変化を踏まえて~」という演題で、6月28日(火)の18:00開催となっています(申込締切は21日)。zoomによるライブ配信なので、お茶の水の損保総研に行かなくても参加可能です。ご関心のあるかたはぜひご参加ください。

さて、主要生保の2021年度決算が出そろい、5月27日の日経には決算のまとめ記事のほか、「超長期債 買い手消える日(有料会員限定)」という記事が出ていました(ポジションというコラムです)。

「資本規制への対応で買ってきた生命保険会社の対応が一巡した(後略)」

「(市場参加者のコメント)『買い増しは昨年度までに一巡した。需給面で生保の超長期債への買い圧力は今後弱まる』と話す」

このようなことが書いてあったので、文字通りポジショントークとは思いつつ、まずは「一巡した」と言えるほど買い増しが進んだのか、決算発表で残存期間別の公社債残高を公表している主要生保10社の数字を確認してみました。
この1年間で10年超の公社債を増やした会社は7社ありましたが、前年度よりも増加が目立ったのは第一と大同くらいでした。住友や朝日のように、10年超の公社債を数期連続して減らしている会社もありました。

次に、規制対応が必要なのかどうかです。
各社が任意で公表しているESR(第一、明治安田、T&D、富国、ソニー)や金融庁フィールドテストなどから判断すると、そもそも新規制になると資本不足状態という主要生保はおそらくなさそうです。ただ、金利リスクの占める割合が大きく、金利変動によりESRが大きく動いてしまうので、金利リスクを減らしたいと考えている会社が超長期債の購入などを行っています(金利が下がると分子の資本が減るうえ、分母のリスク量も増えてしまう会社が一般的なようです)。

このあたりの判断は会社によって異なっていますし、2016年のマイナス金利政策の導入以降、生保業界の超長期債購入ペースは明らかに鈍化しました(金利リスクを減らしたいと考えていても、超長期金利があまりに低い水準になって実行を躊躇した)。これが全体として買い増しに転じたのは2020年度からなので、わずか2年間で金利リスクを減らしたいと考えている会社が目標を達成したとは考えにくいです。

なお、金利リスクの手掛かりとなるEVの金利感応度は、円金利だけではなく海外金利も同時に変動するので、要注意です。円金利の上昇はEVにプラス(超長期の負債を抱えているため)、海外金利の上昇はマイナス(保有資産の価格が下がるため)なので、これだけ外国公社債の残高が増えると相殺される度合いが大きくなり、感応度分析の役割を果たさなくなりつつあります。
実際、2021年度決算では海外金利の上昇によって外国公社債の価格が下がり、円金利の上昇によるプラス効果を打ち消すという事態が生じました。
会社の経営状況を外部ステークホルダーに伝えるには、いくつかの会社が今回の決算発表で行ったように、円金利と海外金利に分けた感応度を開示すべきだと思います。

※写真はドーム球場近くのビーチです。

 

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2021年度の大手損保グループ決算

大手損保グループの2021年度決算が出そろいました。
全般的にまずまずだった模様ですが、なかでも海外保険事業は、2020年度のようなコロナ関連損失がなかったうえ、レートアップ効果などもあり好調だったと言えそうです(ただし、MSアムリンのC/Rは引き続き100%超でした)。

国内損保事業で注目したのは、自動車保険の損害率があまり戻らなかったことです。
各社のE/I損害率(損害調査費を含む)は、事故件数がざっくりみて平年の▲5~10%水準だったことから、引き続きコロナ前の水準に比べると低い損害率でした。

東京海上日動 60.8 ⇒ 54.3 ⇒ 56.8%
MSI    59.4 ⇒ 55.9 ⇒ 57.7%
ADI    58.2 ⇒ 53.0 ⇒ 56.1%
SOMPO  59.8 ⇒ 54.9 ⇒ 55.7%

なお、資産運用利益が伸びたという報道もありました(そのようなコメントをした会社があったのでしょう)。中核損保に関して言えば、実現ベースでは好調に見えたとしても、運用成果を示す「時価利回り」は2020年度に比べるとかなり低かったというべきでしょう。

東京海上日動 9.55 ⇒ 3.07%
MSI    11.00 ⇒ 4.38%
ADI    12.38 ⇒-0.38%
SOMPO  8.11 ⇒ 2.50%

とりあえず今回は速報版ということで、さらに分析を進めたうえで、いくつかの媒体で記事などをご覧いただける予定です。

※来福した両親に福岡を案内しました。

 

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上場生保グループのEV

上場生保グループの2021年度決算の発表がありました。
ちらっと眺めただけですが、中核子会社のEV(エンベディッド・バリュー)があまり増えていない(あるいは減った)のが意外と言えば意外でした。

金融市場の環境はざっと以下の通りでした。
(2021年3月末 ⇒ 2022年3月末)。

<国内金利>
10年国債利回り 0.10% ⇒ 0.22%
30年国債利回り 0.67% ⇒ 0.91%

<米国金利>
10年国債利回り 1.74% ⇒ 2.34%

<国内株式>
日経平均株価 29179円 ⇒ 27821円

<為替>
円ドルレート 110.70円 ⇒ 121.69円

そして各社の単体EVはこちらです。

第一生命  51274億円 ⇒ 49766億円(▲3%)
太陽生命  11146億円 ⇒ 11345億円(+2%)
大同生命  20588億円 ⇒ 21481億円(+4%)
かんぽ生命 40262億円 ⇒ 36189億円(▲10%)

かんぽ生命は自己株式の取得(3588億円)と、新契約価値がマイナスという特殊要因があるものの、他社は新契約価値の上乗せがあるうえ、国内金利が上昇し、円安が進んだにもかかわらず、EVは増えませんでした。個別には他の要因もありますが、海外金利の上昇がかなり効いた模様です。
国内金利が上昇するとEVはかなり増えるのですが、海外金利が上昇すると逆にEVが減ってしまうということが、T&Dとかんぽ生命のIR資料(EVの感応度分析)で示されていました。

もっとも、過去にEVの感応度分析で国内と海外に分けた開示があったのはT&Dだけ(グループベースのみ)だったので、ここまで海外金利の影響が大きいとはわかりませんでした。外貨建債券の保有残高が増えたので、内外を分けた金利の感応度分析の情報が不可欠なのだとわかりました
(加えて為替の感応度も必要ですね)。

※大学のバラが見ごろを迎えています

 

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金融市場の動揺

このブログのインフラ面を支えていただいているウィズハートの木代さんが、保険代理店業務のほうで「ウクライナ支援付き保険」の販売を始めました。まずは妊婦さん向け医療保険(アイアル少短、エクセルエイド少短)の代理店手数料の50%をウクライナに寄付するというもので、今後さらに他の保険にも広げていくのだそうです。こうした取り組みもあるのですね。

さて、今週のInswatch Vol.1128(2022.3.14)に寄稿した記事をご紹介します。
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期末の市場価格が決算を左右

ウクライナ危機で金融市場が動揺しています。株式リスクや信用リスクの大きい保険会社、あるいは金融市場に連動する保険契約を多く抱える保険会社では、3月末の市場価格によって2022年3月期決算の内容が大きく変わってきます。
ちなみに株式保有と決算の関係ですが、2019年7月に公表された会計基準では、それまであった「期末の貸借対照表価額に期末前1か月の市場価格の平均に基づいて算定された価額を用いることができる」という規定がなくなりました。基準を適用した会社では、3月末の株価が会計上の純資産やソルベンシー・マージン比率に直接反映されます(減損の判断基準としては引き続き平均価額を使えるようです)。

どの程度の影響なのか

昨年6月に金融庁が公表した「経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する検討状況について」には、新規制導入のためのフィールドテストの結果として、2020年3月末時点における生命保険会社および損害保険会社のESR(経済価値ベースのソルベンシー比率、単体ベースの全社単純合算)とともに、所要資本(リスク量)の構成比が掲載されていました。
所要資本に占める市場リスクと信用リスクの割合は次の通りです。市場リスクによる影響、すなわち、市場価格の変動が保険会社の経営に与える影響は非常に大きいことが改めて確認できます。

 市場リスク  生保:52% 損保:59%
  うち株式  生保:28% 損保:58%
  うち金利  生保:31% 損保: 3%
  うち為替  生保:25% 損保:21%
 信用リスク  生保: 9% 損保: 4%

約2年前の数値ではありますが、その後の資産構成の変化などを踏まえても、傾向として大きく変わっていないと考えられます。ただし、ここでの株式リスクには子会社・関連会社株も含まれているので、特に損保では過大評価となっている可能性がある点にご留意下さい。

上場会社と非上場会社の情報格差は大きい

保険会社のステークホルダーが知りたいのは全社の合算値ではなく、個々の会社の経営リスクでしょう。市場リスクのうち株式リスクであれば、昨年12月末時点の株式保有残高はわかるので、株価下落の影響をある程度つかむことができます。ところが、株式以外の市場リスクや信用リスクに関する情報は非常に少ないのです。金利も為替もクレジット投資も外部からわかることは限られています。
その点、上場会社(持株会社グループなど)は投資家・アナリスト向けに任意の情報開示を行っていて、誰でも各社のサイトからアクセス可能です。例えば第一生命の場合、昨年12月末時点におけるオープン外債(為替リスクのある外債)は一般勘定資産の4.4%を占め、保有する外債の約8割がヘッジ付きであり、外債のうちBBB格のものは外債全体の約10%、といった情報を得ることができます。

各社の経営姿勢が問われる

保険業界には「上場会社はディスクロージャーが進んでいて当然」という感覚があるかもしれません。しかし、保険会社が提供する商品・サービスは自らの経営内容が直接的に影響するという点を忘れてはなりません。もし保険会社の経営が傾けば、将来の 保障(補償)が危うくなりますし、有配当契約の場合には、業績が順調であれば契約者は配当還元を期待できます。1年契約が主流の損害保険であっても、経営内容は引受方針や契約更改時の保険料率に影響を与えます。
ですから、保険会社は法令や業界基準として決められた項目を淡々と開示すればいいのではなく、契約者に有益と考えられる情報を積極的に出していく経営姿勢が求められています。いくらディスクロージャー誌のページ数が多くても、肝心のときに知りたい情報を得られないのであれば、保険業界は情報開示に後ろ向きと言われても仕方がありません。
顧客本位の経営とは保険販売や保険金・給付金の支払いに関することだけではないと思うのですが、いかがでしょうか。
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※写真は特急ゆふいんの森。念願の展望車です。

 

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大手生保の資産構成の動向

昨年11月28日のブログと同じように、公表された大手生保の資産運用実績を、10月下旬に各社が特定メディアに説明した資産運用計画と比べてみました。概ね説明通りの実績となっているように思います。

【日本生命】
「2021年度下期の一般勘定資産の運用方針では、海外の社債などクレジット資産を中心に投資する計画だ。米国債や日本の超長期債への投資は足元の金利水準が魅力的ではないとして慎重な姿勢を崩していない」(10月26日ロイター)

クレジット資産かどうかはわかりませんが、9月末と12月末を比べると、外国公社債と外国株式等が増えています。
責任準備金対応債券区分の残高が増えているので、「魅力がない」とする日本の超長期債もおそらく購入が続いているのではないでしょうか。1-3月の動向に注目です。

【第一生命】
「円建て債券は責任準備金対応債券の積み増しにより残高を増やす一方、国内株式はリスクコントロールのため売却する。外貨建て債券については、金利や為替の水準次第だが、足元の水準程度での推移であれば残高の大きな増減は見込んでいない」(10月26日ロイター)

計画の通り、引き続き国内公社債を増やし、国内株式を減らしています。HDのIR資料によると、資産デュレーションは9月末の17.5年から12月末は17.6年と、やや伸ばしたといったところでしょうか。
外国公社債の残高はそこそこ減っているようです。IR資料に「外貨建債券運用の状況」という開示があり(今回が初めてでしょうか?)、外貨建債券の約80%が為替ヘッジ付きだそうです。
今さらですが、プロテクティブの確定利付き資産は、BBB格以下が46%を占めているのですね。

【住友生命】
「長引く低金利環境でのリターン確保を目指し、為替リスクをヘッジしないオープン外債を数千億円規模で積み増すほか、外部委託での海外クレジット投資にも力を入れる方針を示した。一方、国内債券は25年の経済価値ベースの資本規制導入を前に金利リスクを削減するため、超長期国債をメインに1000億円程度積み増す方針」(10月26日ロイター)

為替ヘッジ状況の手掛かりはありませんが、確かに外国公社債が9月末に比べて2000億円以上増えています。外国株式等も増えていて、「外部委託での海外クレジット投資」がここに含まれるのでしょうか。
国内公社債はそれほど増えていないように見えます。

【明治安田生命】
「25年の経済価値ベースの資本規制導入に向けて、円建て債券の積み増しや国内株式の売却によりリスク低減を図る一方、総合的な利回り確保のために外貨建てクレジット資産や外国投信などへの投資にも積極的に取り組む方針を公表した」(10月25日ロイター)

12月末時点では、国内株式の売却はあまり進んでいないように見えますが、責任準備金対応債券区分の残高は引き続き増えています。外国公社債や外国株式等が増えていて、クレジット資産や外国投信に積極的に取り組んだ結果なのかもしれません。

【かんぽ生命】
「円金利資産は総資産が縮小する見込みのため残高を減らす一方、国内株式やオルタナティブ資産を積み増す計画を示した。外貨建て債券については、為替ヘッジ付き・オープンともに残高は横ばいを見込むが、特にオープン外債には慎重な姿勢を見せた」(10月27日)

総資産が3か月で1兆円ほど減るなかで、確かに国内株式や外国株式等は増えていますし、IR資料からも内外株式とオルタナ投資の増加が確認できます。
資産が減っているのは旧区分だけではなく、新区分も減っているのですね。

※終着駅シリーズ。北九州の若松駅です。

 

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新契約ANPの減少傾向

前回のブログ(Inswatch掲載記事の紹介)では、「(大手生保の)営業職員チャネルによる個人向け販売はまだコロナ前には戻っておらず、ざっくり言って8割程度と見るのが妥当かと思います」と書きました。
コロナ禍による落ち込みからの回復度合いとしてはこれでいいのだと思いますが、時系列で見ると、2017年度あたりから新契約年換算保険料(ANP)は減少傾向にあります。つまり、新契約ANPの減少傾向はコロナ以前からの動きでして、4-9月期で減少傾向に歯止めがかかったかどうかは微妙なところです。

この背景には、前回触れた「経営者(法人)向け保険」の影響のほか、日銀のマイナス金利政策と長期金利の低下を受けて、予定利率が下がった影響も大きいと考えられます(2017年4月に一時払い保険以外の標準利率が1%から0.25%に下がりました)。
予定利率の引き下げで貯蓄性のある商品の販売が難しくなり、税制見直しで経営者向け保険の販売がダメージを受け、第三分野に注力することで新契約価値を確保しようとしてきたのが、ここ数年の大手生保の姿だと言えそうです(ただし、この4-9月期に2019年度の第三分野ANPを上回ったのは4社のうち明治安田のみ)。とりわけ新人層にとって、ドアノック商品がなくなり、コロナで顧客訪問もままならないというのは厳しい環境でしょう。

保険料明細表の廃止

ところで、保険分析業界(?)で愛用されているインシュアランス生命保険統計号に、令和元年版から「払込方法別収入保険料明細表」の掲載がなくなったことに(今さらですが)気が付きました。金融庁に提出する様式のうち「保険料明細表」が廃止されたためだそうです。
この統計には「初年度保険料」と「次年度以降保険料」の区分や、初年度保険料に占める「一時払」「年払」「月払」といったデータが示されていて、タイムラグを考慮する必要がある(未経過保険料も計上されるため)とはいえ、貯蓄性保険や経営者向け保険の販売動向などを知る貴重な手掛かりでした。
おそらく各社ディスクロージャー誌の「保険料明細表」と、生命保険協会の「生命保険事業概況(CD版)」があれば、引き続き個社データを取ることはできそうです。ただ、金融庁が様式を廃止したというのが気になります。他の統計と重複しているのであれば廃止は妥当ですが、果たしてそうなのでしょうか。

※小倉駅のモノレールです。駅ビルに入っていく姿はどこか「近未来」を感じさせます。

 

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生命保険会社の4-9月期決算から

今週のInswatch Vol.1115(2021.12.13)に生保決算に関する記事が載りましたので、ご紹介いたします。
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11月に各社の決算発表がありましたので、今回は主に新契約年換算保険料(新契約ANP)のデータから、長引くコロナ禍における各社の業績がどうだったのかを探ってみました。

大手生保:営業職員チャネルはコロナ前の8割程度か

昨年度のこの時期(2020年4-9月期)は営業活動の自粛により業績が大きく落ち込んだため、今回のデータを前年と比べてもあまり意味はありません。では、コロナ前の一昨年度(19年4-9月期)と比べればいいかといえば、ご存じのとおり、19年2月の「バレンタイン・ショック」で法人向け保険の販売が大打撃を受けた時期にあたります。足元の回復状況をつかむには、もう少し長い期間を見て判断する必要がありそうです。
そこで、まずは営業職員チャネルを主力とする大手生保(日本、第一、住友、明治安田)について、個人保険の新契約ANPを20年度、19年度、18年度、17年度と比べてみました。

【日本】 159  111  88  65%
【第一】 230   96  88  71%
【住友】 136   84  70  66%
【MY】 126  103  72  89%

日本生命の場合、新契約ANPが昨年度よりも59%増え、19年度と比べても11%増えています。しかし、18年度対比では12%少なく、17年度対比では35%も少ない状況です。19年度に比べるとコロナ前まで回復したように見えますが、日本生命は法人向け保険の販売に積極的だったので、それが落ち込んだ19年度対比でプラスになったと考えられます。
第一生命は昨年度の営業自粛期間が長かった影響が20年度対比の数値に表れていて、18年度対比では12%減、17年度対比では29%減でした。住友生命や明治安田生命は本体で銀行窓販に力を入れているため、その影響も考慮する必要があります(明治安田生命はチャネル別の数値を公表)。
いずれにしても、営業職員チャネルによる個人向け販売はまだコロナ前には戻っておらず、ざっくり言って8割程度と見るのが妥当かと思います。

損保系生保:回復は遅い

【あんしん】 132  132  61  51%
【MSA 】 111  94  53  69%
【ひまわり】 116  109  73  72%

同じように損保系生保3社のデータを見ると、18年度や17年度対比では、先ほどの大手生保よりも低い水準です。
損保系生保の主力チャネルは損保代理店のクロスセルに加え、生保プロ、保険ショップです。生保プロを中心にバレンタイン・ショックの影響を強く受けて以降、それを補うほどの業績を挙げられていないとうかがえます。
ただし、第三分野の新契約ANPは18年度や17年度対比で伸びている(MSA生命は17年度対比のみプラス)ので、収益性はむしろ高まっているものと考えられます。

非対面販売へのシフトは進んでいない?

昨年の4-9月期は自宅にいる消費者が多かったためか、いわゆるネット生保が業績を伸ばしました。この4-9月期を見ると、アクサダイレクト生命の新契約ANPは前年対比で17%増と2ケタ成長を続けたものの、ライフネット生命はほぼ横ばい、SBI生命は7%減でした。他にもネット販売に注力しているとみられる会社の業績は軒並み低調でした(ネット販売が低調だったかどうかは不明です)。
当時の「第1波」に比べると、21年4、5月の「第4波」や7-9月の「第5波」のほうが、感染者数がはるかに多かったのですが、生命保険の巣ごもり需要は高まらなかったようです。日本では幸いコロナによる死者数が国際的にみて少ないがゆえに、コロナで生命保険のニーズが高まるようなこともなく、ネットで保険加入という流れが続かなかったと考えられます。

9月に公表された直近の「生命保険に関する全国実態調査」(21年4~5月調査)によると、今後加入するなら「インターネットを通じて」という回答が17%と過去最高となり(18年調査では12%)、「保険代理店の窓口や営業職員」という回答(12%)を上回っています。
チャネル別の業績データがないので、ネット販売に注力する会社の決算数値などからの推測ですが、潜在的にはネット加入のニーズがあるとはいえ、コロナを契機に非対面チャネルへのシフトが急速に進んでいるという状況ではなさそうです。
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※写真は博多駅です。

 

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生保の資産運用方針(続き)

生保の資産運用方針シリーズの仕上げとして、4月に報じられた大手各社の運用計画と、先週公表された4-9月期決算を比べてみましょう。

【日本生命】
「円債のほか、通貨スワップで円金利化した外国社債を含む『国内債券等』を積み増す方針を示した。また海外金利上昇とヘッジコスト低下を受け、為替リスクを取らないヘッジ付き外債を増やす一方、オープン外債の残高は減少させる」(2021年4月23日ロイター


10年超の国債が増え、オープン外債の残高も減っていました。ただ、「通貨スワップで円金利化した外国社債」「為替リスクを取らないヘッジ付き外債」はどちらもヘッジポジションに含まれてしまうので、決算資料からはわかりません。

【第一生命】
「25年に予定される経済価値ベースでの新たな資本規制導入に向けて金利と株式のリスク削減を進める一環として、円債の残高を積み増す一方、国内株式は減少させる方針を示した。一方、収益力強化とリスク分散の観点からオルタナティブ投資を強化する」(2021年4月22日ロイター


決算資料では10年超の国債が増え、国内株式の減少も確認できました。オルタナティブ投資は外国籍なら「外国株式等」でしょうか。6月末にはかなり増やしたようですが、その後は一転して減少しています。

【住友生命】
「為替リスクをとらないヘッジ付き外債を1000億円単位で減少させる一方、オープン外債は利回りがとれる国を中心に1000億円単位で増加させる。一方、国内債券は金利リスク削減のため、超長期債をメインに数千億円規模で残高を積み増す方針」(2021年4月22日朝日新聞(元はロイター)


為替ヘッジのポジションが1000億円程度減り、為替ヘッジなしが約3000億円増えています。他方で10年超の国債は減少、10年超の外国公社債も大きく減っていて、決算資料からは金利リスクの削減が進んだようには見えませんでした。EVレポートの開示がなくなってしまったようなので、こちらで金利感応度を確認することもできません。

【明治安田生命】
「国内金利が上昇する局面で超長期債中心に積極的に積み増す方針を継続する。円建て債には新規財源3兆9000億円の約4割を配分する。為替ヘッジ付き外債は償還が多くネットでは減少。オープン外債は円高時に投資を検討する。海外株を増加させる一方、国内株はやや減少させる計画だ」(2021年4月23日ロイター


運用計画の通り、10年超の国債が増えています。円高ではなかったものの、為替ヘッジのないポジションが増えています。外国株式等が増え、国内株式はやや減少となっていますが、「外国株式等」はオルタナティブ投資も含まれているため、株式が増えたかどうかはわかりません。

いかがでしたでしょうか。現在の開示状況では曇りガラス越しに見ているようなもどかしさがありますね。

 

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「生保の資産運用方針」

インシュアランス生保版(2021年11月号第4集)に執筆したコラムです。「主張」という名前のコラム欄なので、毎回できるだけ何かを主張するようにしています。
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毎年4月下旬と10月下旬になると、国内系の主要な生命保険会社の資産運用方針に関する記事が出る。直近では「主な生命保険会社による2021年度下期(2021年10~22年3月)の運用計画が27日、出そろった。米国を中心により高い利回りが見込める社債を計6200億円程度、積み増す計画だ」(10月27日の日経電子版より引用)といった記事があった。この報道によると、下期は外国社債投資を増やす会社が目立つとのことだ。

不思議なことに、報道される各社の資産運用方針は一部の報道機関にしか公表されず、契約者をはじめ一般には示されていない。この10月には少なくとも日本生命、第一生命、住友生命、明治安田生命、太陽生命、かんぽ生命が資産運用説明会を開催した模様だが、そこでどのような情報が示されたのかは報道を通じてしか知ることができない。決算発表前のこの時期に、主要生保はなぜメディアに限定した情報開示を行うのだろうか。

疑問は他にもある。生保各社は何のため、誰のために資産運用方針をメディアに公表しているのだろうか。
もし自社の経営内容を伝えるためだとしたら、受け手としては情報の取り扱いに気を付けなければならない。なぜなら、会社によって足元の支払余力の余裕度も、リスクテイク方針も異なるはずなので、例えば同じ「オープン外債を○○億円増やす」という内容でも、その意味は違ってくるからだ。
個社情報の伝達ではなく、金融市場参加者に向けたマーケット情報として資産運用方針を説明しているのかもしれない。そうだとしたら、個社の運用方針の違いに意味はない。全体としてどのような資産を増やす/減らすのかが伝わるような情報提供を行うべきだ。

困ったことに、報道された生保の資産運用方針の実行状況を後から確認しようとしても、決算発表資料やディスクロージャー誌ではわからないことも多い。例えば各社が外国社債への投資を増やす方針だとして、実際どうだったのかを調べようとしても、一部の会社を除き、信用格付け別の開示はないし、そもそも外国社債の残高が公表されていない。為替ヘッジの状況はデリバティブ取引の時価情報でかろうじて推測できるものの、外貨建負債(公表されていない)が少ないことが前提である。先に引用した日経記事に「30年物を軸に超長期の日本国債を買い入れる動きも続く」とあるが、決算発表資料等には「10年超」というくくりの開示しかなく、本当に30年債を軸に購入したのか確認しようがない。

生命保険会社は資産運用方針を一部報道機関のみに説明するのではなく、決算発表時でいいので一般にも公表すべきである。そして少なくともその説明が確認できるような情報開示が必要だ。メディアも単に保険会社が説明する資産運用方針を報じるだけでは、仕事をしたことにはならない。
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※友泉亭公園は黒田藩の別荘だったところです。

 

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