02. 保険会社の経営分析

日本の保険会社はどこで資本を使っているか

inswatch Vol.1023(2020.3.9)に寄稿した記事をご紹介します。
金融市場の混乱で株安、円高、金利低下となっているので、まさにリスクテイクが裏目に出ている状況で決算期末を迎えそうです。
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経営リスクの数値化

保険会社のリスクマネジメント手法の1つに、経営リスクを数値で示し、自己資本等と対比するというものがあります。
保険会社の抱える経営リスクのすべてを数値化することはできないにしても、保険引受に伴うリスクや株価下落に伴うリスクなど、主要なリスクカテゴリーに関しては、リスクを1年間に一定の確率で発生しうる損失額として数値(金額)で示す実務が普及しています。
これらを自己資本等と対比することで、経営として抱えているリスクが経営体力の範囲内に収まっているかどうかを確認できます。

資本の活用

同じ話を資本の出し手(株式会社の株主や相互会社の社員)から見るとどうなるでしょうか。
資本の出し手が保険会社に出資しているのは、保険会社の経営者がリスクを引き受けることでリターンを上げ、そこからの還元を受けるためです。リスクを引き受けるとは、すなわち資本を使うということ。だからこそ、リスクのことを「所要資本」とも言います。資本の出し手としては、出資した資本を有効に使ってもらいたいので、保険会社が実際にどこでどれだけ資本を使っているかは重要な情報です。
多くの上場保険グループが内部管理として計測したリスクと自己資本等を公表しているのは、このような背景があります。

どこで資本を使っているか

昨年12月に金融庁が公表した資料「2019年フィールドテストの結果概要」の7、8ページに、金融庁が指定した手法により計測した保険会社の経営リスク(所要資本)の内訳が載っています。
有識者会議の資料(PDF)

<生命保険会社(単体ベース:41社計)>
・保険リスク 34%(解約・失効リスクが最も大きい)
・市場リスク 54%(株式、金利、為替のリスクが大きい)

<損害保険会社(単体ベース:51社計)>
・保険リスク 36%(巨大災害リスクが最も大きい)
・市場リスク 58%(株式リスクが大きい)

いかがでしょうか。PDFファイルで元の図表をご覧いただいたほうが、より明らかなのですが、日本の保険会社は保険引受に伴うリスクよりも、市場リスク、つまり金融市場の変動に伴うリスクのほうがずっと大きいことがわかります。保険会社なのに不思議に思えますよね。

資本の使い方は適切なのか

資金の出し手からすると、保険会社の経営者は資本をいわば「本業」である保険引き受けではなく、主に資産運用でリターンを上げるために使っているという現状をどう考えるかということになります。
もし、日本の保険会社が資産運用に強みを持ち、中長期的に高いリターンを上げることが期待できるというのであれば、適切な資本の使い方をしていると言えるでしょう。ただ、過去のトラックレコードからすると、必ずしも結果が出ていないようにも見えます。
保険会社の経営者は今の資本の使い方について、資本の出し手が納得できるような説明をする必要があります。相互会社であれば、説明の相手は契約者です。
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※写真は早稲田大学です。授業開始は4月20日以降だそうです。

 

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格付情報の活用

かつての生保危機の時代に比べると、保険会社の格付が注目されることは少なくなりました。
それでも格付会社の出す情報は、ディスクロージャー誌やIR資料とともに、保険会社の経営内容をつかむうえで貴重な情報源です。

格付会社の出す情報は格付符号だけではありません。例えば私が以前所属していた格付投資情報センター(R&I)の場合、原則として1年に1回は格付を見直し、格付に変化がなくてもコメントを発表しています。
R&Iのサイトへ

R&Iは2月21日に大手生保グループ4社(日本、第一、住友、明治安田)の格付を維持したと公表しました。
4社ともAAゾーンという高い格付ですが、リスク耐久力に対する次のような共通したコメントに注目しました。

「2019年度はグローバルに金利低下が進行し、ALM(資産・負債の総合管理)リスクが大きい大手生保の経営への逆風は強まっている。国内の超長期金利は8月から9月にかけて2016年6月末以来の水準まで切り下がり、〇〇生命グループの経済価値ベースのリスク耐久力は格付対比で見劣りする状態まで悪化したとR&Iでは考えている」

その後、金利が若干ながら持ち直し、リスク耐久力もやや回復したため、現時点で格付の見直しを行わなかったということですが、R&Iは金利の影響をかなり気にしていることがうかがえます。

公表文を細かく見ると、リスク耐久力の評価に違いがあることも見えてきます。

<日本生命グループ(AA)>
「資産運用リスクの削減に取り組んでいるものの、収益確保の観点から大幅な削減は進められていない。株式リスクも大きく、リスク耐久力は金融・資本市場の変動の影響を受けやすいことからAAゾーン下位と評価している」

<第一生命グループ(AA-)>
「(自己資本の拡充やリスクコントロールなど)これらを勘案すればグループのリスク耐久力はAAゾーンに見合う水準を維持できるとみている」

<住友生命グループ(AA-)>
「(前略)株式など価格変動リスクの保有は大手生保の中でも低く、ALMリスクをコントロールしている。グループのリスク耐久力の安定性は相対的に高く、格付に見合う水準を維持できるとR&Iはみている」

<明治安田生命(AA-)>
「資本の充実度を背景にリスクを取って利回り確保に取り組んでおり、株式リスクなど資産運用リスクの削減はあまり進んでいない。経済価値ベースでみると金利低下の影響が上回り、EV(エンベディッド・バリュー)は減少傾向にある。リスク耐久力はAAゾーン下位と評価している」

保険会社の格付情報がメディアで取り上げられることは滅多にありませんが、生保の経営内容に関心のあるかたは、時々格付会社のサイトをチェックしてみてはいかがでしょうか
(ただし、S&Pとムーディーズは無料で得られる情報は限定されています)。

※エール交換だそうです

 

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生損保決算のインタビュー

保険毎日新聞にインタビュー記事が載りました。1月8日が生保、9日が損保です。
半年前と同じく、単に決算データの解説をするのではなく、決算数値をもとに保険会社の経営内容についてコメントするというもので、恥ずかしながら写真付きです
(8日と9日で写真が微妙に違うようです)

【生保】大きなイベントの影響、色濃く反映

生保では、現時点では各社が掲げる「保障性商品への回帰」が順調かどうか、決算データからではまだわからないというコメントをしました。

ただ、「これまで経営者向け保険に注力していた保険会社や販売チャネルが一般の個人向け保障性商品の販売に戻れるのかというと、結構難しいと思う」
「経営者向け保険は、節税という明確で顕在化しているニーズがあり、かつ、単価が非常に高い。それに比べて保障性商品は、第三分野であればある程度ニーズは顕在化しているかもしれないが、単価は低く、第一分野の商品であれば、個人にしっかりコンサルティングを行い、ニーズを掘り起こさないと売れない。両者はかなり違う世界だと考えている」とも話しています。

外貨建て保険を中心とした国内系生保のリスクテイクについても、やや踏み込んだ話をしています(といっても、いつもここで書いているような内容です)。

【損保】垣間見えたグループ経営のリスク

損保では、自然災害の影響を受けた国内損保事業ではなく、国内生保事業や海外事業に着目したコメントをしました。
国内生保事業については、クロスセルを行う損保系代理店、経営者向け保険に強みを持っていた生保プロ、保険ショップに代表される乗合代理店といったそれぞれのチャネルが経営リスクを抱えており、今回の決算でマネジメントの難しさが垣間見えたという内容です。
海外事業については、MS&ADグループの「のれんの減損」に着目したコメントをしています。

ということで、機会がありましたらご覧ください。

※写真は韓国・釜山の魚市場です。

 

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ムーディーズのレポート

25日の保険毎日新聞で「ムーディーズ 強固な基礎利益と資本基盤で『安定的』」という見出しをみて、ため息をついてしまいました。

この記事はムーディーズが12月5日に公表したレポートを紹介したもので、確かにムーディーズのサイトにも、「日本の生命保険会社は低金利にもかかわらず、強固な基礎利益と資本を維持し、2020年の見通しは安定的」とありました。

記事によると、超低金利にもかかわらず、強固な基礎利益を維持しているのは、保険関係利益(危険差益、費差益)が基礎利益の約80%を占めているからで、「利差益が占める割合は約20%にすぎないため、基礎利益は金利変動の影響を受けにくい」とのことです。
しかし、基礎利益が金利変動の影響を受けにくいのは利差益の占める割合が小さいからではなく、基礎利益の運用収益である利息配当金等収入が金利変動の影響をほとんど受けないためです。金利水準が下がっても、過去に購入した公社債の利息には影響しませんよね
(同様に生命表改定の影響も、団体保険を除けば徐々にしか出てきません)。

資本基盤についても、金利低下による負債価値の増大を見ていないようです。ソルベンシーマージン総額の増加トレンドをもって「資本は継続的に増加」というのは誤解と言わざるを得ません。
ムーディーズが日本の生命保険市場にどの程度の影響力があるのかはわかりませんが、本当にこのような理解で保険会社の信用力を評価しているのでしょうか。保険会社の経営者が、「だから基礎利益が重要なんだ」などと考えていないことを祈ります。

たまたま手元に格付投資情報センター(R&I)の肝付アナリストが寄稿した7月の週刊金融財政事情があったので、こちらも確認してみました。

「(基礎利益など)会計上の利益は増加も、ボラティリティが上昇」「経済価値ベースの健全性は再び悪化」「(ハイブリッド証券の発行などにより)ESRは上昇するものの、資産運用リスクが温存されたままでは、市場ストレスに対する脆弱性の大幅な改善にはつながらない」といった、やや厳しめの評価となっているようです。

格付会社によって見解が異なるのは健全な姿ですし、R&Iの評価が正しいとも限りません。
でも、生保経営に対する理解度がこれほど違うというのは、困ったことだと思います。

※なぜか再び東京ドームでした!

 

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外貨建資産の増加

inswatch Vol.1010(2019.12.9)に寄稿した記事をご紹介します。
今回は生保の資産運用について取り上げています。
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一般勘定資産の3割を占める

生保の4-9月期決算の発表があり、各社の9月末の資産構成も公表されました。
過去10年間の国内系生保の資産構成(一般勘定)推移を見ると、外貨建資産の割合が一貫して高まっていったことがわかります。9社合計ベースでは、2009年度末には13%だったものが、この9月末には29%となりました。参考までに、国内株式の割合は約10%でほぼ横ばいです。
外貨建資産には外国株式や海外インフラファンドなども含まれますが、その8割以上は外国公社債です。各社が公表するデリバティブ取引の状況から推測すると、外貨建資産の6割強は為替リスクをヘッジした公社債(いわゆるヘッジ付き外債)が占めているようです。

外債投資の狙い

日本の生保が長期資金の担い手としての社会的な役割を果たしてきたのは事実です。ただし、それはあくまで結果であって、生保はそのために保険料を集めているのではありません。
生保の資産運用に求められる役割は次の2つです。1つは長期にわたる保険契約を全うするため、保険商品に内在する金利リスクをヘッジすること。もう1つは追加的なリスクテイクによりリターンを追求することです。優先順位が高いのは当然ながら前者で、金利変動の影響とどう向き合うかが生保資産運用の最大課題となっています。

外債投資の位置づけは、後者の「追加的なリスクテイクによるリターン追求」です。為替リスクのあるオープン外債ではなく、為替リスクを外したヘッジ付き外債であっても、超長期にわたる保険負債の金利リスクをヘッジしようとする投資行動ではなく、前者の役割ではありません。
ヘッジ付き外債は通常、中長期の外債を購入し、短期間の為替ヘッジを継続して行うというものです。現物とヘッジの期間をずらすことで、生保は円建ての公社債よりも高いリターンをねらうことができます。「円金利があまりに低いので、運用利回りを少しでも高めたい。でも、為替リスクは抱えたくない」ということで、今では生保の主力資産となっています。

「基礎利益」が誤ったインセンティブに

外債投資がここまで増えた理由の1つとして、私は「基礎利益」の存在も大きいとみています。
基礎利益はもともと、「生保は毎期の逆ざやを期間損益では吸収できず、体力をすり減らしているのではないか」という外部からの疑問に答える形で公表された指標です。確かに当時(2000年前後)はメディアや保険評論家による誤った情報も多く、公表には一定の効果があったと思います。
しかし、近年の動きを見ると、外債投資に伴う利息収入の増加が基礎利益を支えていて、生保の基礎的な収益力を示す指標とは言いがたい状況となっています。しかも、外債投資に伴う為替リスクやヘッジコスト、あるいは海外金利リスクは基礎利益に反映されません。「メディアに取り上げられるから」「風評リスクが心配」といった目先の理由で基礎利益の拡大を図るのは、長期にわたる保険契約の全うをむしろ難しくしているように思います。

なお、生保が外貨建て保険の販売を増やしていることも、外貨建資産が増える一因となっています。おそらく国内系9社ベースであれば、外貨建ての保険負債の割合は全体の数%だと思いますが、会社によっては外貨建て保険に注力し、かなりの規模となっているところもあるようです。
ところが、生保業界は外貨建て保険負債の規模を公表していません。外貨建て保険の見合いとしてオープン外債を保有するのと、円建て保険で追加的なリターン確保のためにオープン外債を持つのとでは、やっていることの意味がまるで違います。生保の経営リスクを外部に理解してもらい、それこそ余計な風評を発生させないために、速やかな情報開示を求めます。
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※香港の動きも気になります。

 

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「生命保険の不都合な真実」

最近、私よりちょうど20歳若い記者さん(柴田秀並さん)が「生命保険の不都合な真実」という新書を出しました。
2018年から保険業界を担当するようになり(今は金融庁担当とのこと)、取材活動を進めるなかで、生命保険業界が本当に顧客のためになっているのかという疑問を感じたことが、柴田さんが本書を執筆する動機になったようです。
確かに昨年から今年にかけての生命保険業界の話題といえば、外貨建て保険の問題や節税保険をめぐる騒動、乗合代理店へのインセンティブ、そして、かんぽ生命(郵便局)の不正販売と、顧客本位とはかけ離れたことばかりでした。

柴田さんはこう書いています。

「保険の議論をするのは非常にハードルが高い。率直に言って、難しいからだ。一介の新聞記者に対して、業界に精通した人からは『キミが不勉強なだけでみんな知っているよ』とか、『そんなこといまさら書いてどうするの?』といった反応が取材の過程でしばしば返ってきた」

そういう対応もありそうだなあと気の毒に思いつつ、あえて言えば、大手新聞社の記者さんの担当期間が短かすぎるのですね。新聞社のローテーション人事について柴田さんに文句をいっても仕方がないのですが、経済誌のようにある程度じっくり取材活動ができれば、少なくとも決算報道で保険料収入と基礎利益の説明をしておしまいということはなくなるのではないでしょうか。
これから経済価値ベースの規制が入ろうというときに、大手メディアの役割は決して小さくないと思いますので、機会を見つけてインプットを続けていくしかないのかもしれません。

とはいえ、本書は現場でのしっかりした取材をもとに近年の問題を掘り下げているので、生保業界に関心のあるかたには大変参考になると思います
(もし続編があれば、営業職員チャネルについても深掘りしていただきたいです!)。

ちなみに第1章に次のような記述があります。

「ある大手生保の財務企画(資産運用部門の企画部門)にかかわる幹部は、『基礎利益は、会社の成績を見るうえで、いまや弊害のほうが大きいかもしれない』と認めた。だが、それでも業界は表向き、基礎利益の多寡を誇る。『マイナス金利時代には、会社の順位をはかるのは基礎利益ですよ』ある生保企業の広報担当者にこう説得されたことがある。(中略)いま思うと、その人は『確信犯』だったのかもしれない」

確信犯だったらまだいいのですが、本気でそう考えていたら困ってしまいます。

※写真は香港から深圳に入ったところです
(出国・入国審査があります)

 

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生保決算から

上場生保の4-9月期決算発表がありました。
新契約が大きく減った会社のデータから、生保の「業績」について考えてみましょう。

かんぽ生命の業績上方修正

7月中旬から積極的な勧奨活動を停止した影響で、かんぽ生命の新契約は大きく落ち込みました。個人保険の新契約年換算保険料は前年同期と比べて▲28.7%、7-9月だけだと同▲57.6%でした。通常の営業活動を再開できる時期が見えていないため、通期でも相当な落ち込みが見込まれます。
ところが現行の会計では、新契約の不振は増益要因となります。新契約が減り、当期に計上する収入も減るのですが、それ以上に新契約を獲得するためのコスト(代理店手数料や広告宣伝費など)が減るためです。

日経の報道によると、決算発表翌日の株価が急騰し、その理由として「多くの市場関係者は減益を見込んでいたが一転増益となったことで、好感した買いが膨らんだ」とのこと。そんなバカなと思うのですが、株価が上がったのは確かなので、何か別の理由があるのでしょう。
新契約の減少は当期の会計利益を増やす要因とはいえ、会社価値への影響はどう考えてもマイナスです。すでに株価には織り込まれていたのかもしれませんが、さすがに新契約がこれだけ減れば新契約EVはかなり減ったでしょうし、加えて、将来にわたり新契約を獲得する力(=のれん)も影響を受けているでしょう。

経営者保険ブームの反動

4-9月期決算を発表した生保のなかで、中小企業市場に事業基盤を持つ大同生命と、昨年、経営者保険が大ヒットしたネオファースト生命の新契約年換算保険料は、いずれも大きく落ち込みました
(大同生命は前年同期比▲60.9%、ネオファースト生命は同▲93%)。

しかし、大同生命の会計損益は好調でした。「新契約高の減少に伴う標準責任準備金積増負担の減少を主因に」という説明があり、基礎利益も中間純利益も増益となっています。
他方で大同生命はEVを公表しており、4-9月期の新契約EVは前年度の3割強にとどまっているとのこと。金利水準の影響などもあるかとは思いますが、さすがに新契約の減少が影響しているのでしょう。

ネオファースト生命のほうは、もう少しややこしいことになっています。
新契約年換算保険料が大きく落ち込む一方、新契約件数は増加となり、中間純利益は減益で、新契約EVは半減という結果でした。
主力商品が経営者保険から第三分野にガラッと変わったため、会計損益は新契約獲得コストがかさんで減益となったようです。新契約EVは、前年同期の経営者保険のボリュームが非常に大きかったため、第三分野だけでは追いつかず、前年に比べると大きく減ったということなのでしょう。

生保で「業績」というと、会計損益のことを指す場合もあれば、契約獲得状況を指すこともあります。
いずれにしても、知りたいことは「業績」の数値そのものではなく、その結果として会社価値がどう変化したかであるはずなので、公表された手掛かりを上手に使っていきたいものです。

※親知らずを抜きました(涙)

 

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2つの投資案件

大手保険グループの東京海上とSOMPOがたまたま同じ日(10月3日)に投資案件について公表しました。
その内容はそれぞれの経営戦略を象徴しているかのようでした。

米国保険事業を強化

東京海上ホールディングスが公表したのは米国保険事業の買収です。
HNW(High Net Worth、富裕層)向けに特化したスペシャルティ保険グループPrivilege Underwriters(ピュアグループ)を31億米ドルで買収するというもので、米国での大型買収は2008年のフィラデルフィア(買収金額は約5000億円)、2011年のデルファイ(約2000億円)、2015年のHCC(約9000億円)に続くものとなります。

このピュアグループのビジネスモデルが興味深いのはフィー主体というところです。
ピュアグループはあくまで保険契約者が所有するレシプロカル(≒共済)の業務運営を行うのであって、引受リスクをコントロールすることで利益を得る通常の保険事業とは異なるのですね。

なお、本件は「当社が目指す『持続的な利益成長と分散の効いた事業ポートフォリオ』の実現の一環」とのことです。ただし、地域分散という観点からすると、米国事業への集中度合いは際立っています。
というのも、東京海上が5月に公表した事業別利益(2019年度予想)3730億円のうち、国内損保1420億円に対し、海外保険は1770億円で、このうち北米が1590億円です。北米が海外事業の9割近くを占めていて、かつ、国内損保を上回っている状況なのです。今回の買収によって、北米の利益ウエートが一層高まることになりますね。

シェアリングエコノミー市場への展開

SOMPOホールディングスが公表したのは駐車場シェアリング事業への新規参入です。
駐車場シェアリング事業の最大手であるakippa(アキッパ)社の株式を取得し、関連会社化しました(持ち分は33.4%)。

シェアリングサービスは日本でも徐々に普及しつつありますが、駐車場シェアリングは比較的新しい分野で、アキッパ社が事業を始めたのは2014年とのこと。
現在の会員数は約150万人、駐車場の拠点数は全国で約3万ですが、SOMPOグループの保険代理店が駐車場を開拓することで、2022年には駐車場拠点を20万に拡大し、会員数1000万人を目指すそうです。

SOMPOグループは2019年に入り、個人間カーシェアリング事業とマイカーリース事業に参入(いずれもDeNAと合弁)するなど、MaaSと呼ばれる移動のサービス化に取り組んでいます。
本件自体の投資規模は10億円単位だと思いますが、将来を見据えた布石として興味深いものと言えるでしょう。

※この週末は地元のお祭りです。

 

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生保の契約動向

生保の4-6月期決算が出そろったようです。
経営者保険の販売が多かったと考えられる会社の契約動向を確認してみました。

特化型の会社

経営者保険に特化した戦略をとっている会社(エヌエヌ生命など)や、経営者向けが多かったとみられる会社(マニュライフ生命、FWD富士生命など)では、個人保険の新契約年換算保険料(ANP)が、まるでジェットコースターのような動きをしています。1-3月期に急増した後、この4-6月期には一転して急減となり、前年同期を大幅に下回る水準となりました。

例えばエヌエヌ生命、マニュライフ生命の新契約ANPは次のとおりです。

      10-12月 1-3月 4-6月
 エヌエヌ  259  644  29億円
 マニュ   234  375  51

      前期比  前年同期比
 エヌエヌ △95.4% △84.7%
 マニュ  △86.4  △68.4

損保系生保

特化型の会社ほどではありませんが、損保系生保の新契約ANPも4-6月期は前期比および前年同期比で大きく落ち込みました。
経営者保険以外の要素も加わっているとは思いますが、損保代理店による生保クロスセルや保険ショップでの販売が中心であれば、ここまで前年同期比で落ち込むとは考えにくいです。

      前期比  前年同期比
 あんしん △55.3% △58.6%
 MSA   △49.1  △29.1
 ひまわり △45.7  △38.9

大手生保など

日本生命は前期比では落ち込んでいるものの、前年同期比ではそうでもありません。会社全体で見れば、主力商品を販売しつつ、経営者保険にも力を入れていたということかもしれませんが、銀行窓販による増収が下支えとなった面もあるようです。
参考までに、日本生命グループの営業職員等チャネルは前年同期比△19.1%でした。

第一生命グループ(第一生命とネオファースト生命)は前期比、前年同期比ともに大きく落ち込んでいます。グループとして経営者保険にかなり傾斜していたと言うべきか、あるいは、ネオファースト生命の経営者保険が大ヒットしていたと言うべきなのか、評価が分かれそうです。
もっとも、第一生命だけでは前年同期比△3.9%で、落ち込みは軽微でした(銀行窓販は第一フロンティア生命が担当)。

      前期比  前年同期比
 日本   △52.6% △15.1%
 第一G   △62.5  △55.8
 住友   △ 9.1  △13.2
 明治安田 △31.6  △31.6

コンサルティングセールスを主力とする2社(ソニー生命、プルデンシャル生命)も年払保険料がそこそこ大きく、数値もジェットコースター型となっています。
ただし、特化型の会社とはちがい、前年同期比ではそれほど落ち込んでいないので、経営者保険の落ち込みをそれ以外の保険販売でカバーできたということかもしれません。

     10-12月 1-3月 4-6月
 ソニー  150  277  140億円
 POJ    183  273  163

      前期比  前年同期比
 ソニー  △49.4% △12.6%
 POJ   △40.2  △ 6.1

公表データからわかるのはこのくらいでしょうか。

※写真は沼津港です(8/4撮影)

 

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業界紙のインタビュー記事

7月9日と10日の保険毎日新聞に私のインタビュー記事が載りました。
いずれも2018年度決算の総括と19年度の展望ということで、9日が生保、10日が損保でした。
これまでブログで紹介した決算関連のコメントと基本的には同じ内容ですが、以下のような話もしています。

基礎利益について(9日)

「もともと基礎利益という指標は、生保業界で破綻した会社が出たり、毎年多額の逆ざやが計上されていたりした時代に、『生保会社は、逆ざやが危険差益や費差益で埋めきれないで、支払余力を取り崩して身を削っているので、何年間かたつと支払余力がなくなってしまうのではないか』という外部からの誤った見方に対する反論として、三利源損益を見せる代わりに、それらの合算に近い基礎利益という指標を開発し、公表したという経緯がある。(中略)当時は意味があったのかもしれないが、今の状況では基礎利益に意味を見いだすのは難しい。メディアで取り上げるから経営が重視せざるを得ないというおかしなことになっている」

損保の事業費構造(10日)

「各社の事業費率の構造のうち、諸手数料および集金費、つまり、代理店手数料まわりの部分は高止まりしており、場合によっては正味収入保険料に対して上昇している。(中略)代理店の大型化に伴い、代理店手数料テーブル(水準)が高い代理店の募集人が増えた結果だとは思うが、この状況を保険会社としていつまで許容できるのか。今後の動向に注目していきたい」

海外展開の影響(10日)

「今後、海外事業における収益の貢献が一定程度を占める保険グループでは、かつてのように国内中心の事業運営で、国内の経営陣だけが経営を担っていくことは難しくなってくるだろう。仮に海外で買収した企業には高い規律を求め、リスクに対する高いリターンを要求する一方で、国内では従来通りの『シェア重視』『利益よりはトップラインを重視』といったダブルスタンダードになっている保険グループがあるならば、今後はそうしたグループ運営はできなくなっていくだろう。(中略)保険グループが海外事業に注力すればするだけ、より経営の変革を迫られることになるだろうし、また、そうあるべきだと思っている」

※歩くのが不自由になって、エレベーターやエスカレーターのありがたさを実感しています。

 

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