02. 保険会社の経営分析

2018年度第3四半期報告から

2月14日までに生命保険会社の2018年度第3四半期の業績がほぼ出そろいました
エヌエヌ生命は過年度決算を再度訂正しているようで、第3四半期も未公表です)。

この四半期(2018年10-12月)だけを見ると、株価が下落し、長期金利も下がり、主要通貨に対して円高が進むという、多くの生保にとって金融市場は逆風となりました(下記参照)。
その影響はEVを見るとよくわかりますし、ソルベンシーマージン総額の減少などからも部分的にうかがうことができます。

日経平均 24120円 ⇒ 20015円(-17%)
TOPIX  1817 ⇒ 1494(-18%)

円・ドル  114円 ⇒ 110円(-4%)
円・ユーロ 132円 ⇒ 126円(-5%)
円・豪ドル  82円 ⇒ 77円(-6%)

10年国債利回り 0.13% ⇒ 0.01%
30年国債利回り 0.89% ⇒ 0.72%

この間、大手生保の資産運用がどうだったのかを公表資料から探ってみたところ、なんと大手5社のいずれもが、昨年9月末時点よりも外債投資を減らし(外国公社債の帳簿価額から推計)、責任準備金対応債券区分の国内公社債を増やしていました。
第3四半期報告では残存期間や為替ヘッジの情報開示がないので、為替リスクや金利リスクがどうなっているのかまではわかりませんが、これまでとは動きが変わってきているのかもしれませんね。

※この週末は地元・大倉山公園の梅祭りでした。

 

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きんざいの生保経営分析

直近の週刊金融財政事情(2019年2月4号)で「主要生保経営の現状と課題を探る」を執筆しました。
先日ご紹介した保険毎日新聞のインタビュー記事をより詳しくした感じです
(いずれも4-9月期決算を踏まえたものなので)。

インタビュー記事でも触れましたが、メーカー(商品提供会社)としての大手生保は販売チャネルの多様化に動く一方で、営業職員を主体とする販売会社としては、グループ化や業務提携により商品ラインナップの充実を図っています。

大手生保が保険ショップの買収を含め、マルチチャネル化を積極的に進めているのは、自前の営業職員チャネルだけではアクセスが難しい層が増えており、マルチチャネルに転じなければ先細りになってしまうという判断だと思います。新しい販売網はもはや営業職員チャネルの補完を超えた存在になりつつあるようです。
その一方で、大手各社の営業職員チャネルでは、他社商品を取り扱い、かつ、相応の業績を上げているケースが目立ちます。

他社商品の取り扱いがグループの範囲に収まる、あるいは補完的な分野に限られているのであれば、「メーカーによるマルチチャネル化」「販売会社による他社商品の取り扱い」の両立は可能です。でも、保険ショップやネット通販、乗合代理店といった、台頭するライバル販売チャネルに対し、それで販売会社としての競争力を維持できるかどうか。

決算分析と言いつつ、そのようなことも書いていますので、機会がありましたらご覧ください。

RINGの勉強会で金沢へ。茶屋街の近くで豆まきがあったようです。

 

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損保決算のインタビュー記事

生保に続き、損保についても保険毎日新聞にインタビュー記事が載りました(23日)。
「損保会社2018年度上半期決算の評価 植村信保氏(保険アナリスト)に聞く 重要な自然災害リスクの見極め」というもので、決算を踏まえた大手損保グループ経営の現状を次の3点で整理しました。

自然災害多発の影響が上半期決算に大きく影響した

・各社の支払い余力の水準やリスク管理体制を踏まえれば、1兆円規模といえども健全性を揺るがすほどのものではない。

・多発した自然災害をどう捉えるべきか、保険会社の見方は分かれている。災害発生のトレンドが変わってきているという見方もあれば、確率上は数十年に1回しか発生しないようなことが起きたとはいえ、あくまで想定の範囲内という見方もある。

・今後の自然災害リスクをどう捉えるかによって、保険会社としての備えもプライシング戦略も大きく変わってくるため、この見極めが非常に大事になる。

自然災害を除き、国内損保事業は堅調に推移した

・主力の自動車保険では、損害率が若干上がり気味ではあるものの、収支残を十分確保できている。過去の料率引き上げや等級制度の見直しが効いていて、今のところ安定している。

・今後の自動車保険の収支を悪化させる要因として、消費税率の引き上げと、債権法(民法)の改正による法定利率の引き下げがある。足元の料率引き下げトレンドに加え、火災保険の料率引き上げも見込まれている中で、この二つの要因をどこまで自動車保険の料率に反映できるだろうか。

国内損保事業への依存度が徐々に下がっている

・今回の上半期決算は、事業や地域の多角化が進んだことを実感させるものでもあった。3メガ損保グループの通期業績予想(連結純利益)がいずれも黒字かつ増益なのは、異常危険準備金の取り崩しに加え、国内生保事業や海外保険事業による下支え効果も大きい。

・特に国内生保事業は、会計上の貢献度は小さく見えるものの、保有契約もEVも拡大傾向が続き、グループ経営を支える存在となっている。

・海外事業展開については、買収による拡大だけでなく、業績の立て直しや事業再構築などの動きも起きている。買収時にどんなに慎重に見極めたとしても、その後想定外のことが起きやすい。東京海上グループが再保険事業を売却したのも非常に興味深い動きと受け止めている。

機会がありましたらご覧ください。
保険毎日新聞のサイトへ

※築地を歩くと古い建物に出会います

 

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生保決算のインタビュー記事

17日の保険毎日新聞にインタビュー記事が載りました。
「生保会社2018年度上半期業績の評価 植村信保氏(保険アナリスト)に聞く、外貨建資産が経営に大きく影響」というものです。骨子は次のとおりです。

「一般勘定の資産構成で外貨建て資産の占める割合は決算のたびに高まり、会計上の利益でも外貨建て資産の影響が大きくなっている」

「運用リスクを高めているとはいえ、健全性の面では大きな変化は見られない。新契約価値の積み上げに加え、この上半期には株価が上昇し、長期金利も若干だが上昇。円安も進んだため、生保のリスクテイクがプラスに働き、支払い余力の増強につながった」

「商品・販売面を見ると、外貨建て保険、特に貯蓄性の強い商品が売れたかどうかで各社の保険料収入が大きく変動するのが目立つほか、収益性が高く、会社価値拡大を支えている保障性商品の販売は比較的堅調であった模様だ」

「近年の保険会社のグループ化や業務提携の動きが販売面に表れていることも注目される」

機会がありましたらご覧ください。
保険毎日新聞のサイトへ

※写真は旧万世橋駅です。

 

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責任準備金組入率とは?

毎日新聞の投書欄に「保険批判への反論も載せて」という保険関係者による投書がありました(11日)。
ビジネス誌による生命保険特集に掲載されている保険コンサルタントや評論家による商品評価の内容が、独自の視点による一刀両断といった内容ばかりで、しかも、的外れの内容があまりに多いので、せめて保険会社の言い分も載せるべきという内容でした。
保険数理のプロに「読む度にため息が出る」と言わせてしまうような記事が例えばどのような内容なのか、興味がありますね。心当たりが全くないわけではありませんが…

やや話がずれてしまいますが、私もこの週末に日吉駅の書店(ローカルですみません)で思わずため息が出てしまいました。
保険関係のコーナーにはなぜか三田村さん(大手生保の出身だそうです)というかたの書籍ばかりが並んでいて、いずれも保険会社を見極める指標として「責任準備金組入率(積立率)」を薦めていました
(個社ごとに指標の推移が載っていました)。

ここで言う「責任準備金組入率(積立率)」とは、損益計算書の保険料等収入に対し、経常費用の1項目である「責任準備金等繰入額」の占める割合です。
この数字が概ね40%あれば健全な財務力がある会社と考えられ、数字が低い会社は積み立てるべき責任準備金を積めていないとのこと。
思わずのけぞってしまった読者も多いかもしれませんが、このかたは少なくとも10年以上前から同じ主張を続けています。

当期の保険料等収入と責任準備金等繰入額を比べて何がわかるのでしょうか。
シンプルに説明すれば、保険会社は当期の保険料等収入のうち将来支払う見込みの部分を責任準備金として繰り入れる一方、責任準備金を取り崩す(戻入する)ことで、当期の保険金や給付金の支払いに充てています。ただ、繰入額と戻入額はネット表示なので、満期や解約などが多ければ責任準備金等繰入額が小さくなったり、収益として責任準備金戻入額が計上されたりします。さらに言えば、保険料等収入も、貯蓄性商品の販売により大きく変動します。

ですから、組入率(積立率)が小さいのは、単にその期の保険金等支払金が相対的に大きかったというだけであり、積み立てるべき責任準備金を積めていないわけでは決してありません。
2000年前後に破綻した会社の数字がいずれも小さかったので、この数字を重視しているのかもしれませんが、当時は生保への信用不安が解約の増加につながり、責任準備金の戻入が大きくなったという話です。高水準の解約が続いているので指標が低水準で推移しているというのであればまだしも、単にこの数字の大小をもって生保の健全性を見極めるというのは、どう考えても無理があります。

ということで、今回は「ため息が出る」話でした。

※ビュースポットに立つと富士山が見えました

 

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保険料等収入の内訳は?

少し前に2017年度版のインシュアランス統計号(生保版)が出たので、メディアで取り上げられることの多い、生保の「保険料等収入」について改めて確認してみました。

企業年金の受け入れも保険料収入

まず、保険料等収入の「等」は再保険収入です。漢字生保ではごくわずかですが、プルデンシャルやマニュライフといった外資系、あるいは第一フロンティアなど、再保険を積極的に活用している会社では、「等」のあるなしで数値がかなり違ってきます。

保険料収入について、以前から「保険料収入を売上高と見るのは無理がある」と主張してきましたが、その最たるものは団体年金保険の保険料です。生命保険協会の資料も参考にすると、2017年度では、保険料収入32.4兆円のうち、約3兆円が団体年金でした(全社ベース)。

団体年金保険は「保険」といっても実質的には企業年金などから預かった資金を運用する業務なので、その期に新たな受託資産があるかどうかで保険料収入が決まります。例えば、大手4社(日本、第一、住友、明治安田)の2016年度の保険料等収入は2015年度よりも約2.2兆円少なかったのですが、意外にも団体年金の保険料収入が1兆円以上も減ったことが主因でした。マイナス金利政策を踏まえ、生保が新規の受け入れを抑えたのかもしれません。
いずれにしても、資産運用業務の資金受け入れを売上高と言うのは違和感があります。

個人保険の月払保険料に注目

個人分野(個人保険、個人年金保険)の統計は「初年度保険料」と「次年度以降保険料」に分かれています。
2017年度の場合、個人分野の保険料27.3兆円のうち、初年度保険料は8.4兆円でした(全社ベース)。つまり、当期の保険料収入のうち7割は、過去に獲得した契約から得たものということになります。

さらに、初年度保険料も「一時払」「年払」「その他(主に月払)」に分けることができます。
「一時払」は銀行窓販に代表される貯蓄性商品の販売に伴うもので、初年度保険料に占める割合が高いうえ、変動が大きいのが特徴です。例えば、2015年度には全社ベースで9.2兆円(初年度保険料の77%)だったものが、2017年度は5.6兆円(同67%)にとどまりました。

このように見ると、保険料収入だけで生保の業績を語ろうとすると、企業年金等の資金受け入れがあったかどうかと、一時払の貯蓄性商品が売れたかどうかを追いかけることになってしまうのですね。

生保の収益を支えているのは一時払の貯蓄性商品や年払の経営者保険というよりは、保障性商品である月払の個人保険です。2017年度の場合、個人保険の初年度保険料(一時払、年払を除く)は1.6兆円で、保険料収入の5%程度にすぎません。
もちろん、この部分にもドアノック商品として貯蓄性の高い商品が含まれてしまうとはいえ、会社価値という観点からはこの部分こそが重要で、ここが減少トレンドにある会社は要注意ということになります。

※写真は横浜です。赤レンガ倉庫でクリスマス市をやっていました。

 

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「逆ざや」の早期解消を目指すとは

きんざいにコメント

直近の週刊金融財政事情(2018.12.3)に生保決算に関する次のコメントが載りました。

「各社とも営業職員チャネルによる平準払い保険の販売が好調だったことが決算を下支えしたと考えられる」と評価しつつも、「引き続き外貨建て資産を増やす動きが見られるが、今後の金融市場の不透明感が高まっており、相場急変時に多額の損失が発生しないかどうか注意が必要」と警鐘を鳴らしている。

平準払い保険が売れても当期の会計利益には貢献しないのですが、実質的には外貨建て保険よりも重要ということで、このようなコメントになりました。

逆ざや解消には利配収入の増加が必要

三井生命が来年4月から社名を大樹(たいじゅ)生命に変更するという11月30日の日経記事に、「親会社の日本生命保険と運用ノウハウ活用などを進め、契約者に支払うお金が運用益を上回る『逆ざや』の早期解消を目指す」とありました。ニュースリリースにも他メディアの記事にも逆ざやがどうのという記述はないので、もしかしたら日経としてのコメントなのかもしれません。

確かに主要生保の多くは順ざやとなっているなかで、三井生命と朝日生命だけが逆ざや(=基礎利回りが平均予定利率を下回っている状態)です。これは両社の平均予定利率が他社よりもやや高いのと、基礎利回りがやや低いためです(三井はいずれも推計ベース)。

平均予定利率を一段と下げるには、過去に獲得した高利率契約の転換や解約を促すか、円建ての貯蓄性商品を大量に販売すれば可能です。しかし、いずれも会社価値という観点からはアウトでしょう。
逆に言えば、他社は団体年金や近年の円建て貯蓄性商品の販売で平均予定利率としては下がっていても、過去の高利率契約が残っている状況は全く同じです(追加責任準備金の積み立てをどう捉えるかは、ここでは論じません)。

他方、基礎利回りを上げるには、主な構成要素である利息配当金等収入を増やす必要があります。今の金利水準を踏まえると、円金利よりも利率の高い外国公社債と、配当の期待できる株式を購入すれば、利息配当金等収入は増えます。あるいは私募投信であれば、キャピタルゲインもインカム化できます(懐かしい響きですね)。
しかし、こうして基礎利回りを高め、逆ざやを解消しても、同時に資産運用リスクが拡大するため、経営は今よりも確実に不安定になってしまいます。株式や外国公社債を購入するために国内公社債を売却していれば、資産・負債のミスマッチに伴う金利リスクも増えているでしょう。

いくら親会社の運用ノウハウを活用できるといっても、逆ざや解消を目指すのが適切な経営戦略とはとても思えません。

外国証券への依存

ちなみに各社のディスクロージャー誌で利息配当金等収入の内訳を見ると、外債投資の拡大に伴って、外国証券の利息配当金の割合がかなり高まっていることがわかりました。
例えば2018年3月末時点において、日本生命や住友生命、太陽生命、大同生命、富国生命では、外国証券の利息配当金が利息配当金等収入の4割前後を占めています。

ここ数年の外国証券への投資拡大が順ざやに大きく貢献していることがわかるとともに、ここまで依存度が高まってしまうと、外国証券をそう簡単には売れないのではないかと心配になってしまいます。

※旧築地市場です。暫定道路ができて信号待ちが増えたので、会社が遠くなりました(涙)

 

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大手生保の業績動向

外貨建て保険はいくら売れたのか

22日に主要生保の4-9月期決算が出そろいました。
標準生命表の改定や健康増進型保険の登場など、業績面での注目ポイントは外貨建て保険の販売動向だけではないと思うのですが、新聞報道は「保険料等収入」だけ伝えればいいと割り切ってしまっていて、外貨建て保険など貯蓄性商品の話ばかりでガッカリします。
外貨建て保険に注目するのであれば、せめて4-9月期に外貨建て保険がいくら売れたのかという各社の数字を聞き出し、掲載してほしいです。

大手4社の業績動向

とはいえ、四半期ごとに各社の数値を眺めても、今回はいろいろな要素が混ざっていて、解読するのが難しいです。

<日本>
・個人保険の新契約高と新契約件数が大きく増えたのは、死亡保険の低料や新商品効果でしょうか。第三分野の新契約年換算保険料(ANP)も増えています。経営者保険が数字にどう反映しているかは、今回の開示だけではよくわかりません。
・他方で、新契約ANPが大きく減ったのは、単体では銀行窓販をはじめ貯蓄性商品が振るわなかったためと思われます。ただし、三井生命の増収は日本生命の販売網による一時払い外貨建て養老保険の販売が寄与している模様です。
・日本生命は残念ながらEVを公表していないので、新契約価値(4-9月に獲得した契約が会社価値にどの程度貢献したか)もわかりません。

<第一>
・グループベースでの大幅増収は第一フロンティア生命の貯蓄性商品の販売が好調だったことのほか、ネオファースト生命による経営者保険が貢献しています。
・第一生命は3月に健康増進型の主力商品「ジャスト」を発売しましたが、4-9月期は既存顧客の保障見直しを中心に販売したため、新契約価値が伸びなかったとのこと。今後の動向に注目です。なお、第一生命の新契約件数が大きく増えているのは、「ジャスト」は従来の主契約+特約ではなく、単品の組み合わせとなっているためです。

<住友>
・貯蓄性商品の販売減により保険料等収入は減収となり、メディアに「住友は減収」と書かれてしまいました。しかし、営業職員による保障性商品の販売は好調で、新契約価値はむしろ増えていることに着目すべきでしょう。
・健康増進型の新商品「Vitality」は7月発売で、その影響からか、7-9月の新契約高が急増(純新規と転換がともに改善)し、第三分野の新契約ANPも増えています。

<明治安田>
・昨年8月に発売した外貨建て保険が銀行窓販のほか、営業職員チャネルでも好調で、保険料等収入の増加に貢献しました。第三分野の新契約ANPも大きく増えていて、これは昨年12月発売のシニア向けの終身医療保険が寄与していると思われます。
・ただし、残念ながら4-9月期の新契約価値の公表が昨年からなくなってしまったので、利益率としてどうなのか気になるところです。

あくまで4社だけを見た印象ですが、改めて貯蓄性商品への強いニーズを感じるとともに、生命表改定を契機とした新たな商品戦略を評価するにはもう少し時間が必要だと思いました。

※写真はカエルとカマキリです(わかりますか?)

 

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相次ぐ自然災害の発生(続き)

先日inswatch Vol.949に寄稿した「相次ぐ自然災害の発生」(10/9のブログでご紹介)では、「場合によっては、年度別の支払い額が過去最高となった2004年(7449億円)に匹敵することもあるのかもしれません」と書きましたが、19日に日本損害保険協会から、3つの災害(7月豪雨、台風21号、台風24号)による支払見込額が合計9381億円という発表がありました。
日本損害保険協会のサイトへ

同じ日に3メガ損保グループの決算発表があり、これによると、国内自然災害による上半期の発生保険金(グロス)は合計1.1兆円に達した模様です。協会発表を3メガだけで上回るのは妙なので、協会ベースの最終的な支払額はもう少し大きくなるのかもしれません。

ただし、多額の支払い発生にもかかわらず、3メガ損保の2018年度業績予想(連結純利益)は、東京海上とMS&ADは年初予想を据え置き(2017年度から増益予想)、SOMPOは下方修正したとはいえ2017年度に比べれば増益予想です。
これは、再保険による回収があり、正味の支払見込額は5千億円強であることと、東京海上とMS&ADの場合、国内自然災害に伴うロスの約8割を異常危険準備金の取り崩しでカバー(SOMPOは7割強をカバー)することが大きく寄与しています。

それにしても、同じ発生保険金見込みでも、9月末だと実際の支払いが進んでおらず、異常危険準備金が取り崩しとならなくて減益で、通期決算では取り崩しがあるので増益というのは、何ともわかりにくいですよね。
だからこそ、各社は「修正利益」などを発表しているのですが、生保だけでなく損保でも経済価値的な見方が必要だということが理解できると思います。

その意味で私が最も気にしているのは、自然災害の発生トレンドをどう見るか、つまり、まだ過去のトレンドの延長線上と言えるのか、あるいは、地球温暖化などの影響でトレンドが変わってしまったと見るべきなのかです。後者だとするとなかなか大変です。

※久留里には町のあちこちに水場がありました。

 

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なぜ「経済価値ベースの評価」なのか

インシュアランス生保版(11月号第1集)に執筆した記事のご紹介です。
金融庁が公表した「これまでの実践と今後の方針」を受けたものとなっています。
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動的な監督として経済価値評価を採用

金融庁が公表した「金融行政のこれまでの実践と今後の方針(平成30事務年度)」を読むと、保険会社を取り巻くリスク等に関するモニタリングのなかに、動的な監督として「資産・負債を経済価値ベースで評価する考え方を検査・監督に取り入れていく」という記述を見つけた
(104ページ)。

生命保険会社の経営管理やリスク管理に携わっていないかたには「経済価値ベースで評価する考え方」といってもあまりピンとこないかもしれない。資産・負債を経済価値ベースで評価するとは、市場価格に整合的な手法で評価することであり、もっと噛み砕いて言えば、時価評価のことである。
現行の会計では資産の一部が時価評価される一方、負債の大半は取得原価で評価されている。資産が時価変動で動いても負債は固定されたままであり、それに基づいて計算されるソルベンシー・マージン比率は、支払余力や経営リスクを十分にとらえていない。

金利リスクをどう捕捉するか

ここまで読んでも、やはり自分には関係がないと思うかもしれないが、金融庁が業界団体との意見交換会で次のようにコメントしているのをご存じだろうか。

「わが国の生保は国際的にも突出した金利リスクを有していると認識」
「現行の監督の枠組みでは金利リスクの捕捉が不十分」

日本の伝統的な生命保険は超長期にわたり利率保証があるものが多かったため、生保会社が抱える金利リスクは非常に大きい。生保はその一部を、超長期国債などを購入することでカバー(ヘッジ)してきたものの、それでも金利リスクが突出しているという指摘である。
言い換えれば、今の800%、900%といった高いソルベンシー・マージン比率(経営リスクの4~4.5倍の支払余力を持つという意味)は「虚像」であり、だからこそ金融庁は、超低金利がニューノーマル化するなかで、将来にわたる健全性を確保する動的な監督として経済価値ベースの評価を取り入れるのだろう。
生保としては、リスクヘッジが難しいのであれば、少なくとも新たなリスクテイクには慎重にならざるを得ない。

経済価値ベースでみると…

中堅生保が相次いで経営破綻した時代から約20年がたち、当時の状況をご存じないかたも増えていよう。生保破綻の本質的なところは経営者や経営組織の問題に行き着くとはいえ、直接的には高金利の時代に個人年金など超長期の貯蓄性商品の販売に傾斜し、過度な金利リスクを抱えた状況のまま金利水準が下がってしまい、経営体力を蝕むようになったことが破綻の一因である。
当時、経済価値ベースの評価が普及していれば、経営管理の担当部門は経営陣に対し、より明確な形で警鐘を鳴らせただろうし、監督当局も早期警戒が可能だったはずだ。

今の生保の健全性に問題があるとまで言うつもりはないが、経営内容にそれほど余裕があるわけではないことを、業界関係者であれば知っておいたほうがいいだろう。
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※写真は新選組ゆかりの八木家です。

 

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